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下山晴彦さん、おまゆう公認心理師制度創設に至るまでの「仲間割れ」 

1.はじめに 

下山晴彦さんの臨床心理 マガジンi NEXT note、6月3日号 では国家資格公認心理師創設をめぐる「仲間割れ」について書いてあります。これはあくまで下山さん視点で、どうも医師団体と心理団体、そして下山さんの独自の視点とそれぞれ異なっているので検証してみます。

2.下山説(臨床心理マガジンiNEXT2021.6.3前掲から)

(1) 日本の精神医療の失態は精神病患者を長期に収容していたことから始まった。そこで厚生労働省は方向転換を迫られたが心理職を含めた多職種連携による包括支援を行うことになった。これは日本医師会や日本精神病院協会も合意をしていたよ。

(2) 河合隼雄先生は文科省と連携、医師の下で働く医療心理師と独立主体的に動く臨床心理士の二資格一法案を唱えた。(が、結局流れた※理由記載なし)

(3) 精神医療の問題があまりに深刻だったから公認心理師ができたんだよ。
New!(新説)

(4) この二資格一法案の中で臨床心理士を国家資格派にしようというのは河合隼男はじめとした強硬派・ユング派・精神分析派と医療と妥協しても国家資格化するという「妥協派」がありました(学歴要件には触れられていない。) 強硬派と妥協派の意見が遅れたから国家資格化が遅れたんだよ。強硬派が悪いんだよ。

(5) 日本心理学会(しもやみんの宿敵?東大の先生丹野さん率いる)が勝手に後出し公認心理師カリキュラム出して混乱しちゃった。そしたらね、医学とか法律とかいっぱい入れちゃったから、今の公認心理師試験が難しいのは日本心理学会を恨んでね。

(6)なんだか職能団体は2つになっちゃった。一つは日本公認心理士協会(医療との妥協派)
日本公認心理師の会(医療支持派-しもやみんの宿敵丹野さんの率いる団体)になっちゃった。僕は認知行動療法やってるからっていっても医療支持派「公認心理師の会」じゃないからね。

※ 二資格一法案からの歴史がすげえ書き換えられていて河合隼雄先生が全部悪いかのように感じるのは僕だけではないはずです。

3.日本精神科病院協会(日精協)の主張

※ここはただ「精神科医師」ではなく、精神科病院、クリニック経営者でなければ正会員になれないという、「お坊っ○や○団体」と口の悪い人は揶揄する団体です(僕は尊敬する精神科医師の先生方が星の数ほどたくさんいるのでそんなことはひとかけらも思っていません。思っていません。※大事なことなので繰り返しました。)

(1) 二資格の併存は現場の混乱を招くばかりだから僕らはとても困ったけれども反対してこの法案を流したんだよ。

(2) 「心理師」名の一法案にして医師の指示を受けるようにしようよ。

(3) 日精協は精力的にこの「心理師」の一資格一法案に対する働きかけを行ったことから、僕らの活動のおかげで公認心理師法は成立したんだよ。

4.日本心理臨床学会

(1) まず日本臨床心理学会というものがあってね、1964 年に国家資格の創設を目指して設立されました。しかし1969 年大会で、日本臨床心理士学会は資格問題について紛糾、理由は反権力闘争が盛んで、国家資格創設で心理職が権力を持つことで反対の声が強かったから。(現在でも日本臨床心理学会は「患者」の立場からの入会も認めています。)ということで学会は分裂。

(2) 1982 年に日本心理臨床学会が設立されていきなり国家資格を作るのは難しいからということで16学会が協力して日本臨床心理士資格認定協会が設立されて、臨床心理士資格が民間として 1989年にできた。(会長河合隼雄)

5.中間まとめ

あれ?下山説と日精協と日本心理臨床学会の言うことってずいぶん違うじゃん。というのが僕の印象です。だいたいにおいて下山説だと日精協が主張している医師団体側の働きかけが書いていないし、河合隼男先生が文化庁長官を異例の2期務めてその間に一資格一法案が進んだことも書いてないし、河合先生の尽力は「強硬派」になっちゃっているなあ、認知行動療法学派は公認心理師資格創設のためにナニを一体やった功績があるんだろう?というのが僕の印象です。

6.続き

さて、6月23日に下山さんの臨床心理マガジンi NEXTの続編 が出ました。

下山さんは、日本の心理職グループが対立分裂を繰り返してきたのでお互いに遺恨を残している、さて、そこで現場に出る心理職は基本技術として認知行動療法を学ばなければならない。「認知行動療法こそが心理職の共通言語になる。」とぶちあげている提唱してるわけです。

さて、この対談は伊藤絵美先生と下山さんとの対話となっているわけですが、伊藤先生は現在の公認心理師試験のあり方について否定はしていない。「認知行動療法は共通言語と(なり得るだろう)」という割とリベラルな立場、下山さんが「そうですよねえ、やっぱり認知行動療法しかないっすよねえ」と「あれ?伊藤先生付き合いがいいし真面目な性格なのは知ってるけど・・・いいように利用されているのでは?(あくまで個人の感想です。)

また下山先生は心理職が認知行動療法以外の技法を使うことも「仲間割れ」と呼んでいる…伊藤先生は自分の開業精神療法の軸として認知行動療法があることを紹介している、というそんな印象を受けてしまったのです。

お願い、
みんなワタシ(誰?)のために争わないで、特に下山さんはみんなと仲良くして!

というのが前回、今回の臨床心理i NEXT を読んだ印象でした。
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_