ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:Gルート他職種

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○ Gルート他職種公認心理師受験生の真剣さ

1.緒言

Gルート他職種受験者と院卒臨床心理士からのお互いの反発があり、陰性の感情を持つという悪循環が起こっています。ですが第1回試験が始まってからGルート他職種受験者を見ていると、実に真剣にこの公認心理師資格を取りたいという人たちもいます。

法律関係とか財務関係の資格やらなんちゃらの資格を取って、公認心理師の資格を取る人も確かにいて「どうやって受験資格を得たのさ、これってどうよ」と思われがちな人もいるわけですが、本人の内心はわからないわけで資格マニアなのか本来の相談業務に公認心理師資格をプラスしたいのかもしれないので一概に否定するわけにもいきません。

2.実情

3福祉士の人、言語聴覚士、作業療法士、看護師保健師が公認心理師の資格を取りたいのはなんとなくわからないでもないような気がします。

初めてできた心理の国家資格で学校に行かずして一発で資格を取れればそれは僥倖でしょう。仕事に深みも出ると思います。

ただ、僕のような心理職で心理で飯を食っている人間からすると、また周囲の心理職にも聞くと、じゃあ○福祉司etcの資格を取りたいの?と聞くと答えは「別に…」という人が多いわけです。

まあこれも不思議と言えば不思議なのですが、心理の国家資格というのはなかなかに魅力があるのだろうと思います。

確かに世の中には心理のよくわからない?心理資格があふれていて「なんちゃら傾聴アドバイザー」やら「メンタルヘルス心理カウンセラー○○士」みたいな資格は専門学校や通信講座にあふれています。

それだけ心理資格というのは魅力的です。ところが福祉関係で「○○福祉ケア士」みたいな怪しげな資格は聞いたことがありません。

3.Gルート他職種受験生の真剣さ

以前書いたことがありますが福祉職をやりながら後見人を行い、今度はストレスチェックテストをすることになったMさん、自分で福祉施設を立ち上げながら心理テストもやることになって一生懸命に勉強会に出ているK君、この人たちは十全に公認心理師資格を活用していると思います。

また、僕の知り合いで10年ほど前に臨床心理大学院に入り直して看護師から臨床心理士になった人もいます。「お給料は?」と聞くと「かなり減ったけどやりたい仕事だったからいいの」とのことで笑っていたので、それには感心したものです。

現状について書くと、今各種予備校があります。新卒者でも予備校を活用して受験する人もいますがGルート他職種の方々は心理学の基礎の基礎から勉強しなければならない。

それに加え、例えば福祉、看護なら現実的な対応をしなければならないところで心理職の対応はまず受容傾聴しながらアセスメントをしてまずなんでも医師の指示を受けて(この試験独自の感覚ですが)という、どれも当たっていてどれも間違っているような茫漠とした選択肢を選ばなければならないセンスを鍛えなければならないということで大変苦労してこの試験問題に当たるわけです。

そう考えると予備校を活用するというのはそれなりに賢い選択で、他職種Gルートの人はあと1回しか受験資格が残されていないのですから(1年前、どえらい人に「延長措置はないの?」と聞いたら「ない」と明言されました。)なかなか点数が伸びない人にとってはそれもひとつの選択なのかなと思います。

さて、ここで本題なのですが予備校は数十万円かかります。それでも必死で心理の門外漢(と言っては失礼かもしれませんが)この資格を取ろうとする彼らの姿勢は必死です。

家事の合間に録音を流しながら勉強したりなんとか仕事と仕事の間の時間に勉強したりと実にその努力する姿勢は真剣なものです。

だから心理職の人たちの中で確かに自分たちのテリトリー、エリアを荒らされる気持ちになる人もいるはいるのでそれはわかるわけですが、ただ「受けられるから受けて取っちゃえ」という半端な気持ちで受けて受かるような試験でないことは心理職のみなさんがいちばん良くわかっているのではないでしょうか。

人によってこの資格を取る動機はさまざまです。本当に他職種から心理職に転換した人も何人か知っています。

また、この資格を取得することによって心理のセンスを身につけられた、ということで他職種の仕事を続ける中で心理スピリッツを生かしている人もいます。

4.結語

他職種Gルート受験者に対する毀誉褒貶があるのは事実、公認心理師資格を取得するのならば自分の領域でより専門性を認められる学会資格などにチャレンジしてみたらどうか、その方が平易だし、仕事に直結するから、という見方も確かにあります。

しかしながらこの資格を取るために本当に石にかじりついてでも、何度も挑戦したり予備校に大枚払って自分が持てる全ての時間を注ぎ込んでいるのを見ると一概にこの人たちの努力を否定してはいけないなあ、その人なりの動機付けがあり、資格を取りたいという理由が何かあるのだなあと思うわけです。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_

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「意欲のない公認心理師受験は必ず失敗する」Gルート他職種の立場からの反論

1.はじめに

先日
「意欲のない公認心理師受験は必ず失敗する」

を掲載、早速反論があったのですが、建設的な反論は大歓迎、さっそく掲載させていただきます。そしてこの反論をしていただいた方がDルート心理職というところに大きな意味があるような気がしています。

2.反論

Aさん:今ふと思ったんやけどね
他職種受験者の多くは(全てではない)心理職に転職しようとして受験してる訳ではないと思うの。

心理の視点なり技術なりを自分の業務に取り入れて活かそうとしてるんじゃないかなって。
だったら別に、資格とらんでも研修とか受けたらええやんかって話やん?

でもその研修、どこで受けられるん?心理の研修って、対人支援職に広く開かれたものももちろんあるけど、「有資格者限定」のやつも多いやん。なかなか受けよう思っても機会がないんちゃうんかな。

やから、資格取ったらそういう研修にアクセスしやすくなるっていう期待が受験動機の人もおるんやないかな。いや、割合は知らんけど。
これまで心理が排他的に自分らだけのグループに閉じこもっていた結果という見方もできるんちゃう?

少なくともコメディカルは、コミュニケーション技術を身に着けようという動きが強い

医師の働き方改革による、タスクシフト、タスクシェアの考えを元に、検査技師や診療放射線技師も患者と接する機会が増えてきてる


3.考察

なかなか痛いところを突かれたようなAさんの指摘だったのですが、考えてみれ心理団体が行っている研修には他職種向けの、例えば「コメディカルのための、カウンセリング技術を使ったインフォームドコンセントのあり方」はどこも(多分)ほとんど行って来なかったわけです。

Gルート受験は2023年に終了するのですが、その後もこういった多職種間の情報共有という点は課題として積み残されていくでしょう。

以前、総合病院の心理職が時間外に熱心に他職種Gルートの人たちに公認心理師試験勉強を教えて合格者を出したという話を書いたことがあったのですが、当該心理職は「自分のやっている仕事を理解して欲しい」という気持ちもあったのでしょう。Aさんが言うとおり習っていたのはコミュニケーション技術を身につけたいと思った他職種の人たちかもしれません。

ただし、というかそれでも疑問は残るわけで、コミュニケーション能力を身につけるのと資格取得は違う。資格を取得したければ他専門職のように一度専門学校なり学部1年生に一回戻るべきでないか(実際2024年以降受験生は他学部から編入している)などという議論もあるでしょう。

またそれに付随してなぜGルートは学歴要件をつけなかったのか、少なくとも心理大卒や関係学部心理院卒に限るべきだったのではないか、「職務経歴書への職印押印は?」職務経歴書に「◯中学校体育教員」のみは落とすべきではないか、私設開業領域のように「心理相談・心理カウンセリング」と明記されていなければ受験資格はない、という話もしました。

小中高教員も教育相談、カウンセリング的な役割をすることはある、いや新入社員研修人事担当者もあるぞ、などなどAさんと僕とでいろいろな話をしたわけです。

僕は個人的には地域包括支援センターの相談員や高度な専門知識を要する介護職員はいいのではないかと思ったり、いややっぱりそれじゃ2024年以降組と厳しさが著しく分かれるのではないか、など思いました。

なかなかまとまらない(というかまとまりようがない)話だったのですが、私見としては心理正規ルートでも勉強しない人は全くしない、とりあえずこの試験は合格点に達していれば合格なので、自分は心理プロパーだという信念を持っている人は頑張って欲しいところだと思うのです。

また、心理の世界が閉ざされたものから外に開いたものとなるためには他職種をニーズをきちんと受け入れた上で情報発信していく、というAさんの提案には全面的に賛成したいと考えています。

4.ここまでのまとめを読んだAさんの感想

読んで思ったけど
もともと他職種が臨床心理士取るために大学院行ってるケースはある。それで臨床心理士取ったから心理職として働く訳でもない。
臨床心理士側としては(?)資格者には公認心理師受験資格を与えたい。
でも受験資格に1つの民間資格を優遇するわけには行かない。
そういう他職種臨床心理士が全員Dルートで行ければいいが、漏れたときに現任者枠で拾わないといけない。
的な思惑も?

臨床心理士が資格者増やすためにアレコレ広げすぎた?
臨床心理士の時から、学部含めた養成課程を準備しておけば変わったかも?

(本稿以上)
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Gルート公認心理師・資格の用法・用量

1.はじめに

公認心理師 G ルート他職種に対する批判もあり、「なんで俺たちの領域を荒らすんだ」という心理職の反発もあります。他方で「せっかく機会が与えられているのだから」とチャレンジして合格している人たちもいますので、どうせなら資格の生かし方を考えた方が建設的です。医師国家試験や看護師試験と違って「この資格を取得したから心理職に転身する」というGルートの人は少ないでしょう。

他職種 G ルートの人にとってはせっかく取った資格でも給料も上がるわけでもないし、自分の時間を注ぎ込んである人は家庭も犠牲にしてまで取得したこの資格、どういう使い道があるのか考えてみた方がいいと思います。ということで職種別に「現役で仕事を続けながら」どうこの資格を活用するかを考えてみました。

いずれにせよ今実習に来ている学生に他職種の人たちが「あ、俺○○として働いているんだけど公認心理師も持ってるんだけどね」とドヤ顔で言うのはとてもではないけれどオススメはしないです。

せっかく実習に来た学生の反発を買うばかりです。現役心理職の人たちと対等、それ以上に心理の知識をひけらかそうとするのも用法としては患者の症状を無視して劇薬をいきなり患者に与えるようなものだと思います。

2. 教員公認心理師

小中学校には必ずスクールカウンセラーが来ています。せっかく多職種連携を覚えたのですから、スクールカウンセラーと共同して児童生徒の処遇をどうしたいいのか、お互いに知恵を絞って考えるということはいかにもお役立ちのことのような気がします。

スクールカウンセラーは若手であれば確かに現場を良く知らないかもしれません。ベテランのスクールカウンセラーはスクールカウンセラーとしての教員との協業しての働き方を知っていますのでぜひ協力し合いながら仕事をして欲しいと思います。

学校の中では教員公認心理師は積極的に特別支援コーディネーターを行って欲しいと思います。公認心理師有資格者の養護教諭の先生は、やって来る子どもたちの顔を見て、どんな精神・身体的疾患の可能性があってどうやって医療につなげばいいのか、それは今行っている仕事と同じだと思いますが、公認心理師としてのさらに深い知識を生かしたら役立つと思います。やってくる児童生徒は被虐待児・非行少年も多く、この子たちがどういった処遇を受けるのが見通して職員会議で意見を述べてくれたならばほかの先生方も助かるでしょう。

特別支援学級の公認心理師の先生方も子どもの様子をよく観察しながら、子どもが卒業したらどんな道に進むのがよいのかこれまでより見えやすいと思います。

3. 保健師・看護師公認心理師

この人たちが行っている業務は実際に公認心理師が行っている業務と重なることが多いと思います。保健師さんが行う健康教育にはメンタルヘルス領域をぜひ重点的に入れて欲しいと考えます。相談業務を行う際、健康指導をする際にも公認心理師としての知識は役立つと思います。

看護師さんが、緩和ケアで亡くなる患者さん、その家族のケア、普段から接している患者さんの不安を和らげてくれたならば患者さんにどんなに役立つでしょう。その病院に心理職が在職しているのならば多職種共同ケースカンファレンスで情報交換をしてくれたならば心理職はかなり助かります。

4.福祉公認心理師

福祉場面では心理職が不在の施設も多いでしょう。無資格者も多く働いています。三福祉司は多くいます。実利的なことを言うと、公認心理師の福祉加算があれば助かりますし、施設の経営も安泰になります。これは大きなメリットです。運営する側も気持ちに余裕が出れば利用者さんへの態度もやわらぐと思います。

利用者さんにはさまざまなメンタルの問題を抱える人たちは多いでしょう。ぜひこういう人たちの力になって欲しいです。

児童相談所の職員、社会養護で子どもにかかわる職員も心理資格は必須ではないのですが、あればその理解にとても資すると思います。

5.司法場面

社会復帰調整官はダイレクトに対象者にかかわるのに公認心理師としての知識が役立ちます。ぜひ精神障害を持った人たちの医療的、福祉的な観点からの知識を生かして欲しいものです。
保護観察官も同じです。

少年院教官も入所少年の様子を見るのに心理的知識は役立つと思います。矯正心理職や家裁調査官は心理士無資格者はかなり多いのですが、公認心理師として幅広い視点を身につけていることは心強いです。

6.その他・及びまとめ

思いつくものはいろいろあります。医師、歯科医師、作業療法士、栄養士などで、どの職種の人たちも公認心理師スピリッツを持って仕事をすることはできるでしょう。

ただ、他職種 G ルート公認心理師の方々にはお願いしたいことがあります。Gルートというのは医師団体と心理団体が綱引きをした挙句できた鬼っ子のような存在です(言い方は悪いですが僕はそう思っています)。だからこそ受験期間も5年間に限られているわけですし、そこから先は学部で選抜された心理学専攻者で、さらに公認心理師課程を修めた「純粋培養組」のための試験になってきます。

ですから「使い道がない資格」だったら別に無理をして使わなくてもいいのです。むしろこの資格があるからということでそれを振りかざして資格を乱打するようなことがあると資格の存続にかかわるということです。心理検査を研修なしに行なう、SV なしに心理面接を行うなど、危険なことをしないで欲しいわけです。どんな心理検査やカウンセリングにも必ず侵襲性があります。その侵襲性を十分に理解した上で心理業務を行って欲しいと考えています。

Gルート他職種の人たちには厳しいことをかなり書きましたが、そういった目で見られているだろうし、また、見られることもあるだろうということは知っておいて欲しいのです。

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