ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:DSM-5

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◯ DSM-5毎回徹底復習・神経発達障害、統合失調症、双極性障害

まず、DSMの多軸診断システムが廃止されたことは神経発達症診断においても大きな変化をもたらしました。
ASDは何パーセントぐらい、ADHDは何パーセントぐらいとディメンション(多元的診断)可能になったということです。

特に神経発達障害において診断基準が変わりました。

・精神遅滞→知的障害と変更されています。
従来のIQのみによる診断でなく、生活能力を診断の中に取り入れています。

DSM-ⅣTRでは広範性発達障害という大きなくくりの中に
・自閉性障害
・アスペルガー障害
・レット障害
・小児期崩壊性障害
・特定不能の広汎性発達障害

という5つの下位分類がありましたが、DSM-5では神経発達障害はレット障害(遺伝因子がレット障害では特定されたため)ASDに全て包括的されることになりました。

診断基準にも変更がありました。DSM-Ⅳ-TRは、社会性、対人関係の交渉、コミュニケーション障害、想像力の障害に基づく興味・関心の限定というWingの3点が基準でした。

DSM-5では、
1.コミュニケーション障害と2.反復的な行動と興味という2つの分類に変更になりました。

この2つを満たさなければASDとは診断されません。

2.のみの場合は、社会的コミュニケーション障害と分類されます。PDDNOS(特定不能の広範性発達障害は社会的コミュニケーション障害の中に包含されていきました。)

DSM-Ⅳ-TRではPDD(広汎性発達障害)なのかASP(アスペルガー障害)なのかPDD-NOS(特定の不能の広汎性発達障害という診断のごみ箱のような概念)なのかという独立した疾患単位として 見ていたのが、支援を要する必要性、社会的なコミュニケーション能力、限定反覆された行動の社会適応度で、グラデーション様のスペクトラム概念を採用することになったのです。

ADHDは実はDSM-Ⅳ-TRでは発達障害の枠組みの中には入っていませんでした。

ADHD=行動障害→神経発達障害に分類し直されたこと、7歳→12歳以前に引き上げられ、17歳以上ならば下位項目基準が6→5に基準緩和され、さらに重症度判定も導入されるようになりました。学習障害が限局性学習障害になりました。

さて、ADHDの診断治療ですが、ストラテラにしてもコンサータにしても中枢神経を刺激するので興奮を与えるわけです。したがってその鑑別診断には双極性障害との峻別がとても難しいでしょう。

双極性障害でも躁がある程度抑えられている人ならば投薬は大丈夫でしょうけれども、中枢神経刺激薬の場合には躁転の可能性も捨てきれない。

ADHDの人が2次障害でうつを併発している場合にはSSRIやSNRIが有効だけれども双極性障害を併発している場合には使えないこともあり得るわけです。

小児期に神経発達障害が発見されていて、それが可能な場合は話し方教室のような通所で言語療法士や心理職による療育が行われることで成長してからの社会適応度がかなり高まる場合もあります。

特別支援学級、特別支援学校で子どもにSSTを行うのは、応用行動分析的手法を援用、困難さも伴いますが必要かつ有効な仕事です。

◯ 統合失調症スペクトラム障害
Scizophrenia Spectrum
統合失調症もDSM-5だと連続体のスペクトラムとして扱われています。

DSM-Ⅳだと統合失調症が独立していて、他の妄想性障害、統合失調症様障害、短期精神病障害のカテゴリーが重なることもあればまったく独立していることもあったという仮定で診断基準を構築していました。

DSM-5の診断基準ではA群パーソナリティ障害の
失調型人格障害、妄想性障害、短期精神病障害、統合失調症様障害、統合失調症とだんだん色濃くなるスペクトラムとなっています。

・有病率は0.8パーセント、10代後半から発症すると言われている遺伝的負荷の高い疾患です。

2014年の患者調査によれば入院患者266,000人のうち16,6000人、外来患者258,000人のうち70,000人です。

陽性症状としての被害的幻聴(「死ね」とか)妄想(見られている、盗撮されている注察妄想)幻視は統合失調症にはあり得ないと従来言われていましたし長い間論文にも書かれていましたが、虫が見えるなどの臨床例は僕も扱ったことがあります。

自我障害
させられ体験、作為体験、自我と世界との間が不分明になると思考もその境界が曖昧になり自生思考となり、自分の思考は漏れ出て、他人の思考が流入してくるように感じられます。

まとまりのない会話、行動、不統合

精神運動貧困、鈍麻、自発性低下
これらは統合失調症の陰性症状でよく出てきます。

病識障害

対人関係、身辺処理、ひきこもりなど(他の疾患でもお風呂に長く入れないことは多いですが)

DSM-Ⅳ- TRでは統合失調症の中の各状態を並べていたのが、DSM-5になって一気に整理されたようです。

統合失調症の中核症状は妄想、幻覚、解体した思考と会話、ひどくまとまりのない言動または緊張病性の行動です。

DSM-5では統合失調症スペクトラムの最初に統合失調症型人格障害
Scizotypal Personality Disorder
を持ってきていますが、DSM-5スタディガイドの症例を見ると超能力的、UFO、世界の終わりを信じ続けている女性の例が掲載されています。

スキゾタイパルパーソナリティ障害も遺伝因子が高く、すでにICDでは統合失調症の中に分類されています。

統合失調症スペクトラムの薬物療法はあらゆる定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬が使われてきました。

ヒルナミン、レボトミン、コントミン、ハロペリドール、セネストパチー(身体異常感覚)にはオーラップ

PZC

クエチアピン、エビリファイ、リスパダール(持続型注射が患者さんにはコンプライアンスの点でかなり楽なんだようです)、ジプレキサ、インヴェガ、

薬物反応耐性がある難治性の統合失調症にはクロザピンが奏功を呈するのですが、無顆粒血症の危険から週一回の血液検査が欠かせないのがネックです。

統合失調症スペクトラムにも精神療法は有効です。

エビデンス重視の認知行動療法が有効性を常に喧伝していますが、あらゆる精神療法に反応する可能性があります。

認知行動療法は妄想を持つ患者さんを説得するしようと論争になってしまうと逆効果となって脱落することもあるので、一学派の治療法にこだわらなくてもいいのではないかと思います。

双極性障害及び関連障害群

このブログでは双極性障害は何回か取り上げています。日本の有病率は0.7パーセントです。

入院を必要とするような高いテンションが特徴、時として大騒ぎをして暴れることもある双極Ⅰ型、うつが前面に出て来て、時に躁状態になるⅡ型、II型はラピッドサイクラーやウルトララピッドサイクラーとなることもあります。薬物性の双極性障害をⅢ型と呼ぶことがあります。

DSM-5ではクレッチマー以来、循環気質としてうつ病、躁うつ病として認められていた気分障害が、双極性障害は遺伝的疾患で、うつ病とはかなり違う発生機序として扱われることになりました。特に一卵性双生児研究では双極Ⅰ型は89パーセントの一致率です。

双極性障害はうつ病と同じ気分障害というくくりで扱われていたのが、気分障害という概念そのものがなくなったのです。

DSM-5でも統合失調症の次に双極性障害が記載されています。実際、遺伝子研究、家族研究を行うと一家族の中に双極性障害の父、統合失調症の娘など、非常にお互いの有病性が近似していることが判明しています。

双極性障害は精神療法としては認知行動療法がエビデンスがある精神療法として書かれています。躁やうつの時をどうやって乗り切るか、過ごすかは入院、通院とも本人の自覚や家族の協力が不可欠です。バイポラーワークブックが有名な翻訳書です。

ただし、双極性障害に他の精神療法が無効だというわけではありません。

特に躁の時には心理職と言えども管理的Administrativeなかかわりをしなければならない時があり、主治の医師がいない場合には家族に協力してもらい、医療保護入院にまでこぎつけないと病識のない患者さんが安定しないでしょう。

そういった意味ではかなり指示的diretiveな心理療法、というよりはケースワークを心理職がすることがあります。双極性障害は生活、社会リズム障害です。

社会的リズム療法だけでなく、双極性障害は寛解に近づくほどあらゆる種類の精神療法に反応して好転するというイメージが僕にはあります。

治療同盟が出来てしまえば、カウンセラーがリラックスを目的として病識ある患者さんの緊張を心理療法で緩めることは有意義なことです。ストレス、睡眠不足、激務を避けると落ち着いていくことが多いです。

双極性障害は、統合失調症と同じでまずはバシッと抗精神病薬を服用してもらってから、ムードスタビライザーで再発防止のための維持療法を行い、社会的寛解を促すことが多いです。

薬物療法としてはオランザピン(ジプレキサ)、アリピフラゾール(エビリファイ)、クエチアピン(セロクエル)、ゾテピン(ロドピン)クロルプロマジン(コントミン)、ハロペリドール(ケセラン)などの抗精神病薬、

ムードスタビライザーとしては第1選択肢としてラミクタール(ラモトリギンのジェネリックがやっと出ました)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)などの抗てんかん薬に加えて、炭酸リチウムが抗躁剤として使用されています。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬としてジアゼパム、ロラゼパム(ワイパックス)、クロナゼパム(リボトリール)が使用されることもあります。

ムードスタビライザーは臨床上、一剤使用か2剤使用が多いですが、3剤併用することもあります。相当症状を抑えるために苦労しているのだと僕は見ます。

photo by sora

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◯ パーソナリティ障害の診断基準・各クラスター・境界性パーソナリティ障害

1.診断

パーソナリティ障害の診断基準は何度も書いています。しつこいので何度も何度も書きます。

A群パーソナリティ障害は奇妙で風変わりなタイプ
妄想性パーソナリティ障害 (広範な不信感や猜疑心が特徴)
統合失調質パーソナリティ障害 (非社交的で他者への関心が乏しいことが特徴)
統合失調型パーソナリティ障害(会話が風変わりで感情の幅が狭く、しばしば適切さを欠くことが特徴)

B群 (感情的で移り気なタイプ)
境界性パーソナリティ障害 (感情や対人関係の不安定さ、衝動行為が特徴)
自己愛性パーソナリティ障害* (傲慢・尊大な態度を見せ自己評価に強くこだわるのが特徴)
反[非]社会性パーソナリティ障害 (反社会的で衝動的、向こうみずの行動が特徴)
演技性パーソナリティ障害 (他者の注目を集める派手な外見や演技的行動が特徴)

C群 (不安で内向的であることが特徴)
依存性パーソナリティ障害 (他者への過度の依存、孤独に耐えられないことが特徴)
強迫性パーソナリティ障害 (融通性がなく、一定の秩序を保つことへの固執(こだわり)が特徴)
回避性[不安性]パーソナリティ障害 (自己にまつわる不安や緊張が生じやすいことが特徴)

※ 厚生労働省「知ることから初めよう みんなのメンタルヘルス」から引用

さて、診断基準はDSM-5が医学書院から出ています。American Psychiatric Association DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引ポケット版は4,950円ですが何度も読み込むことは公認心理師試験を突破するには必要なことです。まだ持っていない方は買いましょう。(医学書院にそう書きます。と電話で話したら喜ばれました。)

著作権の問題があるので診断基準をそのまま掲載することはできませんが、
日本精神神経学会の林医師へのインタビューに境界性パーソナリティ障害の診断基準が掲載されています。(医学書院了解済)
https://www.jspn.or.jp/modules/forpublic/index.php?content_id=41
また、MSDマニュアルプロフェッショナル版内で検索するとDSM-5各診断基準が明示されています。

こちらは確認中なのでurlは貼りませんが、MSDマニュアル内で「パーソナリティ障害」と検索すると各パーソナリティ障害DSM-5の診断基準が出てきます。

境界性パーソナリティ障害は常に死への欲求が強く、家族や治療者に対しても果てしない理想化して強い愛情表現をして、しばしば治療者はこの人たちと逸脱した性的関係を持つことがあります。(複数の教科書に記載あり。)かと思うと一瞬後には激しいこき下ろしが始まり、何もかも相手を否定する、ありていに言えばジェットコースターに乗せられている、洗濯機の中で高速回転させられているような気持ちになるわけです。

と言ってもこの人たちも同様に家族、他者、治療者に対して同様の感覚を抱いていて「どうして私の目の前の人はこんなに私を激しく混乱させるのだろう」と思っています。したがって境界性人格障害Borderline personality disorder ; BPDの人たちは精神科治療現場でも厄介者扱いされることも多いのですが、本人は生きていることだけで苦痛を感じ、常に死への欲求を抱いていることが特徴です。

慢性的な空虚感を感じていることも多く、したがってOD過服薬やリストカットをすることもしばしばです。医療者は救命のために仕事をしています。

こういった患者さんの治療も行わなければならないのですが、自らを傷つける行為をする患者さんへと治療者が陰性的感情を抱くこともあります。OD、リストカットは内科救急や外科医療者よりも精神科心身管理者の医師が患者さんにより強い陰性的感情を抱くことが多いようです。

「薬は君を守るためにあるので傷つけるために処方しているのではない」「これが続いたら投薬治療はできなくなる」管理的な医師の言葉に攻撃性を感じて治療からドロップアウトしてしまう患者さんもいます。BPDの患者さんはセンシティブで、「人格障害」という言葉も嫌う人がいます。診断名をはっきりと言わない医師も多いです。

DSM-5がディメンション(あたかもグラデーションのような)診断基準システムになったとしてもDSM-Ⅳ-TRの多軸診断システムを捨て去っているわけではないです。

BPDは双極性障害、幼少期に虐待を受けたPTSDやC-PTSD 、不安症、統合失調症、物質・行動依存などあらゆる疾患との併存がありえます。うつ病性感情障害は約50パーセントとも言われています。「境界性パーソナリティの精神療法」成田善弘編

※ C-PTSD 複雑性慢性型心的外傷後ストレス障害Complex post-traumatic stress disorder はICD-11で初めて独立した疾患単位として取り上げられるようになりました。手ひどい(しばしば性的な)虐待や性被害体験はC-PTSDを引き起こします。なおトラウマ研究者Judith Lewis HermanはBPDそのものが被虐待体験があることがほとんどなのでC-PTSDの中に概念化することを提唱しています。

2.歴史的変遷

BPD概念歴史は精神分析の歴史とともに始まります。1906年精神分析家Paul Federnが、神経症のはずなのに精神病状態を示す患者について「潜伏性精神病」と名付けたことにこの中間的な病は始まります。1950年代にはこの境界例が疾患単位なのかそれとも他の病気の亜型なのかについて激しい論争が起こりました。前述書「境界性パーソナリティ障害の精神療法」にも精神分析家がこの境界例に多く関わって来たことが述べられています。

統合失調症ならば精神分析の対象にはならず、神経症圏ならば対象になるからです。Melanie Kleinの対象関係論は部分対象としての「よいおっぱい」「悪いおっぱい」の全体対象として見られず、悪いおっぱいの乳首を思い切り噛むような心性が境界例の人格構造を表しているような気がします。

精神分析学者Otto Friedmann Kernbergは境界例をパーソナリティ構造そのものの特異性に注目、境界パーソナリティ構造Borderline personality organization - BPOを仮定、広くBPO水準の中でsplitting、all-or-nothing thinkingの中で生きる自我同一性の拡散があると指摘しました。

Michael Balint1968年著の「治療論から見た退行」では彼が精神分析学者として、境界例患者には幼少期に築かれていたはずのエディパルな人間関係を他者と結ぶことができない「基底欠損領域」の存在を指摘しました。John G. Gundersonらが怒り、強い抑うつ感情、一時的な妄想様体験、不安定な対人様式について境界例研究を進めました。

境界性パーソナリティ障害がひとつの疾患単位として確立したのは1980年、DSM-Ⅲからです。このパーソナリティ障害概念確立にはそれまでの精神分析学者たちの膨大な研究が影響していたのは言わずもがなです。

BPD概念の理解、そしてこの苦痛を常に抱えている人たちへと共感するためには精神分析学概念の理解は必須と考えます。BPDの人たちは苦しみを常に抱えている。それを無視して虐待なんかなかったでしょう、あなたや他の治療者が作り出した偽の記憶でしょう。こういった侵襲的な 治療家も数多くいます。

3.治療

BPDはクラスターB群の中では最も苦しみを訴えることが多く、治療を求めて医療機関を受診することが多い層です。米国精神医学会治療ガイドラインコンペンディアムAmerican Psychiatric Associdtion Practice Guidelines for the Treatment of Psychiatric Disorders COMPENDIUMでは力動的精神分析療法の有効性がRCT randomized controlled trial無作為割付対象試験によって示されたとの紹介があります。もう一つの効果的治療法は後述する弁証法的行動療法、Dialectical Behavior Therapy, DBTです。

⑴ 薬物療法

薬理的学治療は日本の精神科で行われている第一選択肢です。というのも精神分析や弁証法的行動療法DBTを行う機関は僅少です。さて、コンペンデァアムに戻ると大うつ病症状には抗うつ剤SSRI、そしてその不安のあるBPD患者さんにはベンゾジアベビンBenzodiazepine系抗不安剤の投与が行われます。(ただし、Benzodiazepineは解離を勧める、脱抑制から感情や行動のコントロールが困難になるので使用。控えるべきだという意見も根強いです。)

双極性障害を併発している場合も多いですし、感情の障害の病であることから、Carbamazepine、商品名テグレトール、Sodium Valproateバルプロ酸ナトリウム商品名デパケン、Lithium carbonate炭酸リチウムなどのムードスタビライザー気分安定剤による治療が行われています。

コンペンデァアムには掲載されていませんがLamotrigineラモトリギン、商品名ラミクタール、Topiramate、トピラマート、商品名トピナも使用されています。これもコンペンデァアムには記載されていませんがSSRI無反応な患者さんも多いことから定型、非定型抗精神病薬も使われています。

⑵ 弁証法的行動療法DBT

DBTはMarsha M. Linehanによって編み出されたBPDに特化した精神療法です。Linehan自身が厳格な家庭で育てられ、彼女の両腕は傷だらけ、運転していると思い切り突っ込んでしまいたくなると言います。

日本でも訳書は出ています。金剛出版「弁証法的行動療法」「弁証法行動療法実践マニュアル」等です。心理教育、弁証法的な第三者的な「賢明な心」で物事をとらえるという枠組みです。

病理的行動はしばしばBPD患者さんにとっては当たり前のことだととらえられています。不特定多数の異性との避妊をしない性行為を当たり前ととらえているティーンエージャーには賢い心でそれは常識の範囲外と伝えなければなりません。

マインドフルネスに基づいた日記カード記入します。自ら致死的な行為を行うのをやめることがターゲットになります。スキル訓練として苦悩に耐えるトレーニングをします。苦悩耐性は一時的棚上げ、問題から注意を逸らすことなど。

対人関係効率化、情動制御もターゲットです。DBTについて書くことは多いです。対人関係においては自己主張して断られたからといって自己否定されたとはとらえない、自己主張はいかなるときでも行う権利がある、情動制御について、気をそらすためにコインをテーブルの上に何枚も立ててみる、氷を握りしめたりキャンディを口の中に入れてその味わいに注意するというものです。呼吸法も推奨されます。

DBTは個人カウンセリングと集団でのグループカウンセリングを並行して行います。危機に陥った際には治療者に夜間でも電話をすることができます。DBTにはペナルティもあります。自傷行為を行った際には次のセッションに出られません。

⑶ トラウマをターゲットとした治療

統計ではBPD患者さんのうち被虐待体験を持っているのは9割という説もあります。 PTSDを併発している場合にはEMDRや持続エクスポージャー法PE Prolonged Exposure Therapy(私見ですがトラウマへの暴露は侵襲性が高くPEは苦しいのではないかと思います。)対人関係療法Interpersonal psychotherapy、IPTも効果的と言われています。その他プレインスポッティグ、ソマティックエクスペリエンス、ブレインジム等は公認心理師試験には出ないと思います。

※ ちなみにメンタライゼーションもBPD治療には有効と言われています。

4.総括

この病は漂泊の病とも言われています。自我同一性が確立できず、性別違和に苦しむ人、職業観を獲得できない、学校に行けない、社会に出られない人もいます。反面統計を取ると5年、10年単位では回復率も高く、診断基準を満たさないと完治する人、高い感受性を生かしてサービス、接客、経営、心理カウンセラー、精神科医になる人もいるのです。

心理職にとっては、どの精神疾患でも同じですが、きちんとケースフォーミュレーションを行いゴールを短期的にも長期的にも定めてクライエントさんの状態を安定化させることに心を砕きたいものです。

特にこの疾患は治療者が巻き込まれやすく(BPDの「操作性」と言われていますが、特に操作をしようとしているわけではなくBPDの人の防衛反応です。)治療契約や限界設定limit settingをきちんとしておき、しばしば絶望感に襲われるこの人たちの行く道筋を燭光でもよいので照らして欲しいと思っています。

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◯ DSM-5攻略/睡眠障害

現任者テキスト、各社模擬試験でもDSM-5とDSM-Ⅳ- TRの変更点は重視されているようです。

試験は覚えていることを書き出す再生してでなく、正当選択肢にチェックする再認を試されます。

読んで模試を解いて記憶に残った回数だけ得点は高まります。

試験直前だと合格率がきわめて低いのではないかという社会心理学的現象を地で行くような噂も飛び交いますが、頑張りましょう。

◯ 睡眠-覚醒障害群

哺乳類と蝶類にはレム睡眠、ノンレム睡眠があります。

睡眠は、レム睡眠が、75パーセント、ノンレム睡眠が25パーセントです。

レム睡眠時には急速眼球運動が起こり夢を見ます。(仮説:右大脳半球と左大脳半球間の海馬を経由して短期記憶を長期記憶に写す、不快な記憶処理も行われていると思われます)

就寝するとすぐノンレム睡眠に入ります。

ノンレム睡眠は脳の休息状態、神経細胞ニューロンの働きも低下してしまいます。

ノンレム睡眠の間にはニューロンの修復、ニューロン結合の再構築など、神経細胞の自然治癒が行われているのではないかと考えられています。

レム睡眠は骨格筋緊張を抑制、運動器を休めます。

レム睡眠とノンレム睡眠は90分単位で繰り返されます。

人の睡眠は一晩に数回、短い覚醒が起きますが意識していません。

睡眠後半になると眠りは浅くなり、徐々に脳が活性化して目覚めます。

加齢で睡眠時間は短縮、10年で10分間短くなり、中途覚醒時間は10分ずつ増加します。

入眠までの時間には加齢の影響は出にくいです。

深いレム睡眠とノンレム睡眠は短縮、睡眠効率が低下して就床時間も起床時間も早まります。

現任者講習テキストを中心に記載しているのですが、

睡眠障害が
1.入眠困難
2.中途覚醒、睡眠維持困難
3.早朝覚醒

の場合、心理職であれば要医療の睡眠障害だということを検討するでしょう。

成人20パーセントがなんらかの不眠の訴えを持っていますが、メンタルな理由に起因するものは6パーセントです。

不眠の5P分類として

身体疾患に伴う不眠(Physical)
中枢神経系疾患(Parkinson病など),脳器質性疾患(脳梗塞など),循環器疾患(不整脈など),呼吸器疾患(気管支喘息など),消化器疾患(逆流性食道炎など),皮膚疾患(アトピー性皮膚炎など),など

生理学的不眠(Physiologic)
時差ボケ,入院,交代勤務,不適切な睡眠環境,など

心理学的不眠(Psychologic)
精神的ストレス,恐怖体験,死別などの喪失体験,など

精神疾患にともなう不眠(Psychiatric)
うつ病,統合失調症,など

薬理学的な不眠(Pharmacologic)
アルコール,向精神薬,インターフェロン,降圧薬,など

があります。

医学書院

●内科医が知っておきたいメンタルヘルスプロブレムへの対応
http://www.igaku-shoin.co.jp/misc/medicina/mental4402/index.html

DSM-5の不眠障害も(不眠=インソムニア)

入眠困難

中途覚醒、睡眠維持困難(中途覚醒後にどの程度の時間起きていた後に再び入眠できるかも聞きます)

早朝覚醒

のいずれか、または組み合わせが1週間に3回以上、3カ月以上続くことで判断します。

DSM-5の不眠障害は非器質的、薬物でない要因によるものを規定しています。

CBT-i不眠療法は入眠時間を遅くしても構わないので、だらだらと布団に入ってから眠れないと悶々としているよりも、眠くなったら眠る、遅くなっても遅寝早起きをして起床時間を一定にさせるという調整法です。

日光を浴びると14〜16時間後にメラトニンの影響で眠くなるという現象を利用しています。

ほか、睡眠障害としてはうつから来るとも考えられる過眠障害があります。

睡眠中に動き回ってしまう睡眠随伴症、パラソムニアは睡眠中や入眠時、覚醒時に泣き叫んだり暴れ回ったりする睡眠障害です。

ノンレム睡眠時に起きるノンレム・パラソムニアは錯乱性覚醒、睡眠時遊行症(重度の寝ぼけ)があります。

睡眠時遊行症だと起き出して冷蔵庫の中の物を食べ散らかしたり(若い女性に出現しやすいノンレム・パラソムニアの睡眠関連摂食障害)性的な行動に出ることもあり(ノンレム睡眠時に理性が眠っている状態で起きるあ睡眠時性行動症、セクソムニア)周囲は驚きます。

睡眠時驚愕症では激しいパニックを起こして暴れます。

いずれも睡眠時に起きているもので、本人の記憶はありません。

反復孤発性睡眠麻痺はいわゆる金縛りです。

レム・パラソニアは男性に多く、睡眠時の異常行動を記憶しています。

レム・パラソムニアはレビー小体型認知症やアルツハイマーへの移行に、パーキンソン病などとの関連が指摘されています。

抗うつ剤などの薬物でもレム・パラソムニアは発生します。


・ナルコレプシー

約4000人に1人の割合で発生、日中の強い眠気に耐えられず、昼寝をしてしまうことが多いです。

この病気の診断のポイントとなるのは情動脱力発作(カタレプキシー)と言って、みんなで談笑して笑ったりしていて、感情が刺激されるとがくんと脱力してしまい、そのまま眠ってしまうということです。

入眠直後からレム睡眠が始まるので入眠時幻覚が発生、金縛りも起きます。

治療法は薬物療法で、従前はリタリンが使われていたのですが、違法売買されて社会的問題となったことと、効き目がそれほど長時間でないことから、現在の薬物療法は持続時間が12時間と長いペモリンと、ペモリンよりも肝臓への負担が軽く、持続時間も12時間と長いモダフィニルが主流です。

夜間の睡眠を確保するための睡眠導入剤がナルコレプシーに併用されることもあります。

健康な睡眠のための指針です。

厚生労働省 睡眠12箇条 健康づくりのための睡眠指針2014
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf

1.良い睡眠で、からだもこころも健康に。
2.適度な運動、しっかり朝食、ねむりとめざめのメリハリを。
3.良い睡眠は、生活習慣病予防につながります。
4.睡眠による休養感は、こころの健康に重要です。
5.年齢や季節に応じて、ひるまの眠気で困らない程度の睡眠を。
6.良い睡眠のためには、環境づくりも重要です。
7.若年世代は夜更かし避けて、体内時計のリズムを保つ。
8.勤労世代の疲労回復・能率アップに、毎日十分な睡眠を。
9.熟年世代は朝晩メリハリ、ひるまに適度な運動で良い睡眠。
10.眠くなってから寝床に入り、起きる時刻は遅らせない。
11.いつもと違う睡眠には、要注意。
12.眠れない、その苦しみをかかえずに、専門家に相談を。

・睡眠時無呼吸症候群SAS(サス)は、睡眠時に繰り返し起こる呼吸停止です。

睡眠が浅くなるため日中の眠気が強くなります。

肥満による影響も指摘されていますが、人によっては痩せていても扁桃腺の距離が狭くて起きる、上向きで寝ていると起こりやすく、大きないびきをかくことがあります。

終夜睡眠ポリグラフで無呼吸回数時間を測定、SASの軽度、中度、重度の判定をします。

SASは循環器系に大きな負担を与え、心臓にも影響があるので、重度の場合には経鼻的持続陽圧呼吸療法(CPAP)が使用されます。

軽度でも、気道を確保してSASが起こりにくくするため、呼吸器科から口腔外科、歯科に依頼して個人用のマウスピースを作成、気道を広げることがあります。

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◯ DSM徹底攻略・神経発達症群・神経発達障害群およびペアレントトレーニング

・神経発達障害Neurodevelopment Disorders
参考:「時々息子を扱い切れない」
   「私の赤ちゃんは変わってると
    思う」

※ DSM-5スタディガイドから引用

DSM-Ⅳ-TRから DSM-5では診断分類が組み替えられました。

「全般性発達遅延、社会的(語用論的)コミュニケーション症のような新たな診断も含まれている」ようになりました。

(上掲書)

1.知的能力障害ID: Intellectual Disability)は

以前は「精神遅滞」と呼ばれていた診断名が知的能力障害(知的発達症)と呼ばれるようになりました。

従来は知能指数で測定していましたが、生活能力でその重症度を決めています。

2.自閉症スペクトラム障害Autism Spectrum Dlsorder

アスペルガー症候群、広汎性発達障害NOS(PDD-NOS Pervasive Developmental Disorder Not Otherwise Specified )「どこにも特定できない広汎性発達障害」という診断基準もわからない曖昧な概念やレット障害、小児崩壊性障害概念は全てASDに内包されています。

ASDは自閉症スペクトラム症、Autism Spectram Disorder概念はDSM-5で初めて取り入れられたものです。

ASDにおける基準Aは社会・情緒的相互関係ができるかどうか、例えば会話の際に常に同じ言語を繰り返していたり、非言語的コミュニケーションの理解ができない、外界の刺激に弱いなどです。

身振りによるコミュニケーションや比喩は通じにくいこと。

そして基準Aの社会的相互関係が保てないということです。

すなわち対人関係への重大な障害があるということです。

基準Aはこの3つを全て満たしていることが必要です。

基準Bは反復的発語、運動の独特の癖、
物の使用、特定の興味、儀式、日常行動における柔軟性のなさのうち2つを示しています。

触感における過敏さ、特定の光景や音への強迫症状も含まれます。

ASDは、発達早期に存在しなければならない(基準D)。

(以上基準について上掲書から引用)

また、サヴァン症候群として、数字の記憶、計算などに特異な才能を持つ人もいます。

3.注意欠陥障害、注意欠陥多動障害

Atention-deficit disorder,ADD

Atention-deficit hyperactivity disorder,ADHD

不注意優勢型、衝動型と分かれています。ASDと輻輳している場合もあります。

なお、 DSM-5から少し外れるのですが、療育・環境調整方法としては合理的配慮による環境調整、ソーシャルスキルトレーニング(幼児期に早期発見されると言語聴覚士の話し方教室に通
うことも有効です。

また、ペアレントトレーニングで、子どもにして欲しい行動を増やして強化する、して欲しくない行動についてはそのまま放置しておくという方法を親教育の中で学んでもらいます。

あまり反応が激しい時にはクールダウンさせるためにしばらく落ち着くまで1人にさせておくという方法があります。叱られると構ってもらえるという誤った学習をしている場合に有効です。

身体疾患でも、ぜん息の子どもが発作を起こしている時にだけ背中をさすったり優しく接していると子どもは無意識のうちに発作を起こす回数が多くなります。

親が吸引器を使って発作を収めさせ、そして何もないときに「◯◯君、発作も起きないし落ち着いているから◯◯君の笑顔見ると安心だわ」とほめるやり方は有効です。

ペアレントトレーニングの基本はうまくいっている時には正の強化子を与えるということです。何も制止したい行動がない時もほめます。その時間が連続していればほめます。

また、悪化してしまった時も無条件で叱るのではなく、まずはきちんと話を聞きます。

そうするともっと悪化した行動を起こそうとしてこの程度で収まっていたという場合もあるので、そこはほめてもいいところでしょう。

正の強化子として高価なおもちゃを与えなくてもよく、人間はほめるということが十分な強化子になります。

あまり高価な正の強化子を与えると問題行動を起こしてやめるとおもちゃを買ってもらえると思い、逆効果になります。

また、罰を与えても構いませんが、問題行動に見合った罰にしないといけません。

ゲームを1日1時間と決めているのに2時間やる→おやつ抜き

これは問題行動と罰が調和していません。

ゲームを2時間やった。→次の日はゲーム禁止

これならば問題行動と与える罰が調和しています。

重過ぎる罰もいけません。食事抜き、ゲーム機を叩き壊すなどの過激な罰は虐待ととらえられるでしょう。

・薬物療法
ADD、ADHDは中枢神経刺激薬でかなり楽になります。

Methylphenidate hydrochlorideメチルフェニデート(商品名コンサータ:腸内で徐々に溶ける徐放剤で、同じメチルフェニデートのRitalinリタリンよりも持続時間が長いです。)

ドーパミン、ノルアドレナリンを増加させ、注意力を高めます。

また同様の効果を持つAtomoxetine hydrochlorideアトモキセチン塩酸塩
商品名ストラテラカプセル25mg
があります。

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◯ DSM-5徹底攻略/ パーソナリティ障害

パーソナリティ障害はA群からC群まで10つのパーソナリティ障害を3つのクラスターに分析します。

・A群 変わり者、奇妙な信念、風変わり。(覚え方:変わっててもA《ええ》じゃん)

A群に入るのは

猜疑性パーソナリティ障害
シゾイドパーソナリティ障害
統合失調型パーソナリティ障害

です。

B群:気が変わりやすい、情動の不安定さ、人に迷惑をかけてしまう。(覚え方:Bビっと《ビビッとしてる》B群のパーソナリティ障害は先鋭です。人に迷惑をかけるタイプだと口の悪い人は言います。

B群は

反社会性パーソナリティ障害
境界性パーソナリティ障害
演技性パーソナリティ障害
自己愛性パーソナリティ障害

です。

C群について

C群は

回避性パーソナリティ障害
依存性パーソナリティ障害
強迫性パーソナリティ障害

です。

覚え方としては(Cーっ、《シーっ、》僕の邪魔をしないでちょうだい)です。

C群パーソナリティ障害の人々は恐怖に怯えていてかつ依存的でもあります。

パーソナリティ障害は重複することもあります。

A群

1.猜疑性(or)妄想性パーソナリティ障害(paranoid personality disorder)

他者は必ず悪意を示す、他人は必ず自分を陥れようとしていると思うので、他者と親しい人間関係を築くことが困難です。

「どう?仕事の具合は?」と尋ねると仕事の進捗状況が遅いと責められていると感じます。

パートナーは必ず浮気をしていると思い込みます。

全ての他者の言動や行動を悪意のあるものととらえがちです。

2.シゾイド(スキゾイド)パーソナリティ障害(schizoid personality disorder)

他者との交流を持ちたがらず孤立するという点が特徴です。対人不信感が根底にあります。

さまざまな活動をしていても全く楽しいとは思えず、褒められてもそれが嬉しいとは思えません。

性的関係を持つことについての興味もありません。

孤立的なパーソナリティ障害です。

3.統合失調症型パーソナリティ障害(schizotypal personality disorder)

スキゾタイパルとも言われます。親密な関係となると不快になり風変わりな行動を取ります。

知覚的歪曲。関係念慮。疑い深い。

魔術的な思考様式があり、テレパシーや超能力の存在を信じます。

※ 上記3つのパーソナリティ障害は統合失調症スペクトラムとの鑑別診断が難しく、A群パーソナリティ障害から統合失調症スペクトラムに移行することもあります。

統合失調症スペクトラムの記述でも書けば良かったのですが、文化的、社会的に容認された、例えばシャーマンやエクソシストのような術者が受け入れられているのならばそれは疾患ではありません。

B群

1.反社会性パーソナリティ障害(antisocial personality disorder)

いわゆる犯罪者です。PSYCHO-PASSも含みます。他人の権利を侵害、社会規範を破ることに抵抗を感じない18歳以上の人がこれに当てはまりますが、素行症(非行)歴が15歳以前から起こっています。

非合法なことをする、道徳観念が欠如、攻撃的性格によって位置づけられます。

2.境界性パーソナリティ障害(borderline personality disorder=BPD)

これについて書き綴るとこのブログ記事10本ぐらいになってしまうぐらいの研究書や論文が書かれています。

ので概要だけ書きます。

このパーソナリティ障害の人は常に人生に空虚感を持っています。希死念慮を持つ人が多く、実施してリスカやODをする人もかなりの割合でいるのです。

自分が何者なのか常に同一性を探しているので、男性なのか女性なのか、どの仕事なのか、さすらえる漂泊の人と呼ばれています。

感情統制は難しく、この人たちは常に爆発、あるいは0か100かの思考を自らに課します。  

つまりこの上なく愛していて神格化していたパートナー、カウンセラーを崇めていたかと思うと一瞬で激しい陰性感情を示す憎しみに変わるのです。

いわゆる尊敬とこき下ろしです。  

そして強力なしがみつきを行います。

また、一過的な妄想状態に陥ることもあります。

かんしゃくを起こしても通常2〜3時間で治まることが多いですが絶対的ではありません。

従来精神病と神経症の中間概念として提唱されて疾患単位となったのですが
治療者と患者との間の境界の維持も難しいものとなります。

複数の教科書にありますが、こういった調節困難な感情ゆえに医療スタッフから敬遠されることも多いですが、比較的予後がいい患者さんも多いということを付け加えておきます。

3.演技性パーソナリティ障害(histrionic personality disorder、HPD)

過度に性的に誘惑的、そのような行動、態度、言動によって特徴づけられます。

それは自分が関心を抱いているわけではない相手に対しても誘惑的です。

つまり自分が話題の中心でないと気が済まない。そのためにはほんの少しだけ知り合った相手でもそれが著名人なら「親友だ」と吹聴します。

境界性パーソナリティ障害と違って特徴的なのは、この人の心理は境界性パーソナリティ障害のように苦痛に満ちているわけではなく、むしろ注目されていることに喜びを感じているということです。

4.自己愛性パーソナリティ障害(Narcissistic personality disorder ; NPD)

とてつもなく自分が賞賛に値すると思い、周囲から褒められることを期待します。それほど業績を上げていないにもかかわらず誇張してそれを表現します。

期待した称賛を得られないと過度に傷つく、つまりプライドの高さに比して実力がないので、自分を批判する人々は能力がないという認知をします。

他者への共感性が乏しく傲慢で尊大な態度で接するのです。

C群

1.回避性パーソナリティ障害(Avoidant personality disorder)

教科書の症例からは、おそらく小児期から始まる対人回避行動で、他者からきちんと認められていると確信できていはければ対人関係の輪の中に入っていくのを避けます。

これが統合失調症的な心性だと人と接しなくても気にならないのですが、このパーソナリティの人は心の中では人と接したいという欲求があるにもかかわらず、自分はうまくできない、きっと失敗するだろうという予期不安から固まってしまいます。

もし一度そういった失敗体験をするとますます自分の殻に閉じこもってしまいます。内向的。

2.依存性パーソナリティ障害(Dependent personality disorder)

このタイプの人はしがみつきが特徴です。いわゆる「共依存」のDV被害者もこれに当たります。

相手の世話をしているようで、実際にはその相手を必要としているのです。

通常人相手でもこのしがみつきは行われ、これが故に相手に敬遠されることがあります。

依存対象な相手は複数ではなく限られた人に限るのが特徴で、その人の指示や同調が得られないと次に何をすればいいのか決められません。

3.強迫性パーソナリティ障害(
Anankastic personality disorder
Obsessive-compulsive personality disorder)

強迫観念に際限なくとらわれて強迫行為を行う強迫症とは異なります、強迫症の強迫観念は、自分でもこれは強迫観念だと思っていて、実際に手洗いをずっとしているなどの強迫行為を行います。

強迫性パーソナリティ障害は、自他に対して強迫的で、あまりに細かすぎて自分でも目的を達成することができない。パートナーにもそれを要求しますのでうまくいかなくなります。

これがゆえに本人も苦しむことが多いのですが、強迫症のような不合理でも行わなければならないという観念は強くありません。

だからといって本人は相当に苦しい思いをしているはずです。

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