36680DF3-CD39-4ED9-B12D-83DFE59B42E3

○ 第4回公認心理師試験分析〜合格点6割138点神話の崩壊

1.はじめに

さて、合格発表から一夜が過ぎました。まだ忙しさにかまけて、あるいは結果は郵送で届くものだからと不安でも腹をくくって結果が送られて来るのを待っている人たちも多いのではないでしょうか。

さて、そこで昨日のフィーバー状態から少し目が覚めた(僕が)ところで、まずは公認心理師試験全体の様子を見てみます。

2021.9月末公認心理師登録者数42,678人に加えて昨日発表された合格者数が12,329人、推定合計5万7千人ほどの公認心理師が誕生していくわけです。

今後この人たちがどの程度の割合で心理職を行っていくかどうかはGルート他職種の登録者の動向にかかっています。僕の知っている人で精神保健福祉士に加えて心理職としても働き始めた人もいますが、ごく少数派でしょう。

※ 以下図はウサねずみ@usanezume さん作成
D7945CAB-C4B8-429D-9E43-42097ECBD3DF

724637E8-A58F-44BF-A9EA-E0D4EC6A6D5D

公認心理師カリキュラム検討会委員会で概算されている実働心理職数は5〜6万人、同程度の公認心理師数はすでに確保されているわけですが、実際に心理職専業として稼働していくかどうかは上記他職種の方々の動向を見てみないとわかりません。

よく聞く発言ですが「公認心理師受験勉強をすることによって心理学の知識が深まり、仕事に深みと幅が出てきた」ということで他職種のフィールドをそのまま行っていく人も多いのではないかと思われます。

したがって必要公認心理師数がどの程度なのかは試験当局にも大元の厚生労働省にも正確にはわからず「多分この程度だろう」という概算で補正をしたのではないでしょうか。最終的には実働公認心理師登録者数≒必要公認心理師数≒現在活動心理職数が望ましいと当局は考えていることが予想されます。この「必要公認心理師数」が試験難易度にも得点調整にも影響を与えたことは想像に難くありません。

2.得点調整の意味

心理職試験ではもとより臨床心理士試験の採点や合格点はブラックボックスなのでわからないのですが、国家資格試験は「6割程度」の難易度で補正されることはよくある話で、実際、介護福祉士では68.3パーセントが「6割程度」になったこともありました。

この国家資格試験は「落とすための試験ではなく、6割138点取れれば必ず合格できた試験」ではなくなりました。「問題の難易度で調整」というのは実際には異なっており、問題の難易度ならば問題ができた時点で難易度は決まっているわけで、実際には合格率や合格者数を見ながら得点調整を行ったわけです。

この得点調整の意味合いは、確かに問題の難易度にも得点率は依存するのですが、受験者の得点分散(散らばり具合、どの国家試験でも非公表)からも影響を受けていると推察されます。

多分今回得点調整が入ったのは、第3回試験の受験者数が(多分)コロナ等の影響で減少していたのが7,426人増加したのである程度合格者数を抑制しなければならなかったからだとも考えられます。

これには第5回、最終現任者講習会受講者数推定2万6千人から逆算して全体の合格者数を調整していたということも大きな要因として働いていたのではないでしょうか。

そして試験問題作成は受験生の出願が全て終わって資格審査が終わり、受験者数が確定する前に行われています(常識的に考えてもそうでないと間に合わない)。

3.今後の動向

得点調整、補正は今後もあると思わなければならないでしょう。得点調整は問題があまりにも困難な際にも合格基準点を6割未満にすることも考えられるのですが、6割超という今回のような補正も十分にあり得るわけです。

今回の問題について、これまで評価を明らかにしていませんでしたが、難問、捨て問題もあったものの、僕は比較的オーソドックスな心理学、臨床心理学に基づいた良問も多かったのではないかと感じます。

しかしそういった良問というのは得てして解きやすいもので、良問が多い試験は今回のように上方得点調整もかかりやすくなってくるでしょう。

4.終わりに

今回の得点補正はこれまでの公認心理師試験にとっては「激震」でした。今後この試験に挑戦しようとする受験者の方々は7割以上の得点率を目指した方が良いものと思われます。

といっても「どうすれば7割を目指して勉強できるか」というと、一回一回の試験ごとに出題傾向が異なっていてブレ幅も大きく見えるこの試験ですが、ひとつの仮説としては、だんだん回数を重ねるごとに出題傾向も安定してきたと思えるので、今回の試験をゴールドスタンダードの基準として考えてみることにも意味があるでしょう。

どんなに試験問題の難易度を調整しようとしても出題範囲は決まっている「心理学の試験」なのですから出題傾向もだんだん固まって来つつあります。過去問と同じ出題も多く、データが集積されつつあります。

したがってこれからチャレンジする受験生の方々に勧められる方針としては、基本に忠実に過去問をやりながらテキスト、模試、人によっては予備校も活用しながら勉強していくという、従来の学習方法と大きく異なっていくわけではありません。

今回の補正に戦々恐々とせず、落ち着いて目の前の課題にコツコツと取り組んでいくことが合格を手中に収める確実な手段なのではないでしょうか。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_