
◯ オンラインカウンセリングってどう?無料or and有料カウンセリングはどっちがいいの?その可能性と利用法
コロナウイルス電話相談を厚生労働省や各保健所で行っていると書いたばかりですが、その人が今一番心配なことを聞くことがカウンセリングの本旨だと思います。心理カウンセリングだけでなく広く「相談」は多くの人に必要とされています。
さて、オンラインでカウンセリングをしますよ、とLINE、Skype、ZOOMなどさまざまなツールを利用してカウンセリングをしていますよ、というサイトが公認心理師、臨床心理士、なかなかの経歴がある旧帝大院卒者等も参入しているのを散見します。
という話を知人の精神科医に話したら「そんな時代になったんですねえ、ひなたさんはどうです、やりますか?」僕:「うーん」という会話を最近しました。
以前書いた元乃木坂の中元日芽香さんも予約制のSkypeカウンセリングを行っています。こういったオンラインカウンセリングで満足度が高ければそれはそれでクライエントさんは構わないのですが、オンラインカウンセリングは臨床心理士、公認心理師以外のいわゆる無資格カウンセラーも多い。
さて、これをどう解釈するべきでしょうか?対面カウンセリングでも同じですが、僕はカウンセリングのクオリティを
1.いいカウンセリング、2.毒にも薬にもならないカウンセリング、3.クライエントさんが不満を抱いてドロップアウトしていくカウンセリング4.有害でクライエントが除反応を起こしてもケアできないカウンセリング。5.自分を神格化して信奉させるカウンセリング
の序列なのではないかと思っています。「2.毒にも薬にもならないカウンセリング」はクライエントさんが「こんなものかあ」と思いながら通い続けていて、「3.」に移行してドロップアウトするかもしれません。それはそれでいいのです。クライエントさんには自己治癒能力があります。
さて、対面でも起こりうる「4.」「5.」の激しい抵抗や神社を作り上げるような、いわば有害事象をオンラインカウンセリングでは防ぐことはできるでしょうか?どんなクライエントさんでもトラウマを負ったPTSDの人はどんな精神療法でも除反応を起こすことがあります。僕はPTSD、あるいは適応障害の患者さんでも目の前で激しい除反応を起こすのを見たことが何度かあります。
元々そういうクライエントさんが多く来る機関で勤務していたからでしょう。泣きながら土下座したり床を叩いて転げ回ったりと壮絶なものですが、僕のカウンセリングを知っている他職種勤務員は慣れっこで「またか」と思っているのですが、除反応が起きると途中で慌ててセルシンを静注してもらうのは下策と僕は考えます。
除反応が起こったら徹底して除反応を出し切らないとトラウマ体験が不全感を持ったまま残ります(現代催眠原論)。除反応は出し切った方がいいのです。オンラインカウンセリングでEMDRをおこなう心理職はさすがにいないでしょう。催眠はどうやって解催眠をすればいいのでしょうか。
自我状態療法は?ブレインスポッティングは?ブレインジムは?ソマティックエクスペリエンスは?どの心理療法もトラウマ処理にはかなりの高い専門性があり、除反応が起こってもおかしくないです。
それならばトラウマ処理には認知行動療法を暴露療法として刺激の洪水、フラッディングを使おう、とか、トラウマが隠されている主訴の人にフォーカシングを行ってみようとすると実はとんでもない侵襲性があって、それをオンラインだと処理し切れないことが十分に考えられますし除反応も起こりえます。
オンラインカウンセリングで可能なのは「1.よいカウンセリング」は、クライエントさんが話ができてよかったなあという満足感を得られるもの。誰かに聞いて欲しかったから聞いてもらった。これはスッキリしたという意味ではいいカウンセリングです。
実際多くの有資格者や無資格者でもこういった電話カウンセリングは頼りにされていますが、クライエントさんからのクレームも多く「勝手に決めつけられた」「入院しろと言われた」など腹を立ててドロップアウトするのならばまだマシなカウンセリングと言えます。
怖いのは侵襲性があってもそのケアができないカウンセリングです。また、カウンセラーを信奉したクライエントさんが「私が全てあなたを助けてあげましょう」と困窮して藁にでもすがりたいところにそう言われると頭の奥が麻痺したようになり、カウンセラーを絶対視するようになります。
こういったことはトレーニングをきちんと受けた有資格者はやりません。しかしながらオンラインカウンセリングでも悪意を持ったカウンセラーがやろうと思えばできるでしょう。電話カウンセリングでもできるかもしれません。
とここまでオンラインや非対面カウンセリングについてネガティブな意見を書いてきてしまいました。しかし遠隔地、僻地居住でなんとかカウンセリングを受けたいと希望しているクライエントさんはいます。そういった方になんのチャンスも与えられないというのは酷だと思うのです。
無資格者を含んだオンラインカウンセリングには何のガイドラインもありません。有資格者についてもオンラインカウンセリングをしてはいけないというルールもないのです。せめて有資格者についてはプライバシーポリシーやガイドライン、コンプライアンスやインフォームドコンセントをしっかりと整備した上で掲載し、カウンセリングを行なって欲しいとも思います。
カウンセリングを受けられる環境にいない、または心身の不調で外に出ることができない方々の潜在的なカウンセリングのニーズは高いものと思います。
日本臨床心理士会では実は無料カウンセリングを行っています。
http://www.jsccp.jp/about/tel.php
また、各地方公認心理師協会でも無料で電話カウンセリングを行うことがあります。
官公庁や企業では従業員支援プログラム、EAPの一環として24時間体制で産業カウンセラーも含めた電話カウンセリングを行っている事業所も多いです。
今後SNSカウンセリングやオンラインカウンセリングはかなりの地歩を占めていく可能性があります。
メールカウンセリング、電話カウンセリングなど対面でないカウンセリングも多いので、望む人が専門的なサービスをできれば安価、もしくは生活困窮者の方には無料で受けられるようなシステムを作り上げて欲しいと思います。
ご存知でしょうか。東京都には年間7万2千円までカウンセリングを無理で受けられる制度があります。他自治体でも多く行っているようです。
警察庁では性的虐待へのカウンセリングを含めた性被害への全般的な支援を行っています。
https://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/shien_soudan.pdf
ワンストップ支援センターも全国展開しています。
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/seibouryoku/consult.html
全国市区町村役場や社会福祉協議会(社協)、無料相談窓口の案内は都道府県精神保健福祉センターでも行っています。無料カウンセリングはSNSでの青少年相談は今も行われています。
無料カウンセリングを僕が力技で押しているわけではなく、例えばこうしたカウンセリングの公的支援サービス機関として私的カウンセリングオフィスはその任を行っていることも多いです。ボランティアでこういった方々への無料カウンセリングを医師や心理職が行っているカウンセリングオフィスもクリニックもあります。医療者や心理職の責務は社会貢献なので、利用したい方々はどんどん問い合わせて欲しいと思います。
医療機関における、本来保険診療外カウンセリングも地域貢献、社会貢献が母体となる団体が無料化して行っている場合があります。(済生会はほぼ満員状態だそうです。by知人。ですが問い合わせてみる価値はあるでしょう。)
支援を必要としている人がカウンセリング受けたいという要望が多ければ、それは僕らのような心理職にとってもそれだけの社会的ニーズがあるという追い風になります。
元々カウンセラーとクライエントさんは対等で、二人三脚でカウンセリングという構造を作り上げていくものだと思っています。
さまざまなカウンセリングの形態や価格を現代社会は選択肢を提供しています。臨床心理経済学的にクライエントさんがコスパの良いものを選ぼうとすることは心理職にとってもより洗練される機会を与えられることになるのです。
カウンセリングする側は経験を積み、技を磨き、クライエントさんはどんどん自分の思うままに快い選択をして欲しいと思うのです。