○ 臨床心理士・公認心理師のやりがい
1.はじめに
心理職の仕事はお金はたくさんもらえない、職場もなかなかいいところはない、とないない尽くしなのですが、この年の瀬にあまりないないばかり言っていると僕の少ない運気も枯渇してなくなってしまいそうなのでこの仕事のやりがいについて書いてみます。
2.やりがいかある仕事に違いないという信念
を学部生、大学院生の人たちは持っているのかもしれませんが、昨今は公認心理師課程で実習が充実してケースを持つ機会が増えていて「自分は優しいからどんどんクライエントを治せるんだ!」という気持ちを抱いていた気持ちは見事に打ち砕かれます。
ケースをやっても、例えば緘黙に近い子だとなかなか喋らない、喋ってもひとことふたこと、何を話したらいいのかわからない、その面接記録を高いお金を払ってスーパーバイザーのところに持っていくと「おま、何をやっとるんじゃ」と言われて泣きながら帰宅、なかなかやりがいのある仕事です。
そしてクライエントは良くなっていないのにどんどんドロップアウトしてやって来なくなる(のはプロでも経験済み)、一体自分はこの仕事に向いているのだろうかと悩みます。
心理テストをやってみれば解釈のあまりの難しさにうんうん唸り、心理テスト担当のスーパーバイザーのところに持っていったらどやされる。
投影法テストなんぞはきちんとその時に聞いておかないと2度と取り返しがつかない。「どうしてあなたはコレについてもっときちんと聞かなかったの?」などと言われたり、そうするとそもそもテストを取った意義さえdisられてしまうことがあります。
人間相手の仕事です。人間は複雑です。どうです?なかなかやりがいがあって心鍛えられる仕事ではありませんか。
3.人助けになる
これは本当のことです。相手の言うことをきちんと聞いていれば本当にそれだけで「ああ、この人は生まれて初めて自分の話を聞いてくれた」というだけで感涙する人も(中には)います。
ただし昨今は臨床心理士やら公認心理師の知名度もその貧しさと将来性のなさと同時に知れ渡りつつあります。
クライエントさんはドクターショッピングならぬカウンセラーショッピングをいつの間にかして来ていることもあります(これはクライエントさんが、自分のことを最も良くしてくれるカウンセラーは誰かと思ってあちこちを回った挙げ句あなたのところにたどり着いたのです。クライエントさんの行為を否定してはいけません。)。
というわけであなたは高名なカウンセラーのところからやむを得ず引っ越してやって来た目の前のクライエントさんにいつも心の中で(あるいは明言して)ダメ出しをされているかもしれません。
全く違った流派のカウンセリングをあなたがしていたら「これは違う」と思い、またクライエントさんは去っていくかもしれません。
好かれ過ぎることもあります。好き好き大好き一緒に食事どうですか?飲みにでも、その先の○○も、などとイケメン君や美女に言われまくるというパラダイス状態です。
上記の数々の試練くぐり抜けてあなたは人助けをしなければなりません。教科書に書いてあったこと、教授から教わったこと以外のことが毎日起こります。それはそうです。人間ですから。人間は誰かの思ったように動くわけではなく、1万人いれば1万人違った動き方をするのです。
4.人間心理を鋭く洞察できるようになる
どうでしょうか?高校から大学に進学する時、少しナーバスで傷つきやすい繊細な心を持っていて、そして「人の心を理解したい」という動機から心理カウンセラーを目指した人はいませんか?
心理学をやって人の心がわかれば自分がわかる、人のこともよくわかるようになって生き辛さが解消される。
さあ、私立文系のあなたが入学した先ではノンパラメトリック検定とかt検定とか分散分析とか構造方程式モデリングなどを学ぶことになりす。大学は親切なので物の奥行き知覚なども教えてくれます。
基礎心理や統計はハマってしまうと奥深く、臨床の世界に戻れないかもしれませんが、心理学徒としては臨床心理士試験、公認心理師試験にまでこの統計はついて回ります。
そしてひょっとしたらあなたがのめり込もうとしている臨床心理学を学ぶということはいろいろな学説を知り、実践に役立つことはあっても自分の心理状態や恋人の心理状態を知るのにはちっとも役に立たないかもしれません。
認知行動療法を学んだ陰キャのあなたは自分のネガティブな認知をポジティブな認知に変えて情動を明るくして行動を陽キャにできるでしょうか?
ついでなので長椅子に寝そべって自由連想法を行ってそれを自分で分析できたらそれは素晴らしいことです。
5.おわりに
ということで臨床心理士、公認心理師に憧れているあなたに対して言いたいのは、平均年収300万円の生活苦なのにのしかかる勉強代に加え、時として自分のメンタルを痛めながらでも行うこの仕事、ここまで飽きずに嫌がらずに読み切ったあなたは心理職になれる可能性が十分にあります。
やりがいは人が決めるものではなく、自分で探すものです。僕の砂漠のような文章の行間からたくさんのダイヤの粒のようなやりがいを探し出してみましょう。
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_
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