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臨床心理士資格 only の心理職

1.はじめに

公認心理師をなんらかの理由で登録せず(できず)に臨床心理士資格のみで心理職をやっている人たちは相当数います。なぜそういった事態となっているのか、そしてそういった実情について本人たちがどう考えているのかを書いてみます。

2.さまざまな理由

(1) スキマ世代

公認心理師カリキュラム委員会が公認心理師資格予定者から外してしまった臨床心理系大学院卒業者です。大学院、学部時代に必要単位を取らなかったこと、取れなかったこと、また、他学部から心理系の大学院へ進んで来た人たちです。この人たちは大学院で専門教育を受けたにもかかわらず公認心理師の受験資格を与えられませんでした。

この人たちから見るとナニ士(師)でも受験資格が与えられる経過措置 G ルートには納得の行かないところがあるかもしれませんが、これもカリキュラム委員会が決めたことです。一定数の人たちが公認心理師を受験できないというこの「スキマ世代」「スキマ問題」に取り組んでいるものの、成果は出ていません。引き続きこの「スキマ問題」については取り組みがなされるのではないかと思います。

(2) 引退

公認心理師カリキュラム検討委員会でも話題に上っていたところではありますが、ある程度心理職としての経験を積んで、もう引退寸前というところまでくると「もう資格は取らなくてもいい」という人もいるでしょう。実際僕も受験資格があっても「歳だからもういいわ」と公認心理師を受験しなかったベテランカウンセラーを知っています。

また、定年退官近く、臨床心理士資格を持つ大学の先生でノー勉で公認心理師試験に臨んでみたところ、不合格、「この試験は臨床心理学を問うものとは何か違うな」と思って再受験はしないと学生たちに言い切ったのもある意味潔いと言えるでしょう。

(3) 信念

若い人でも信念を持って、臨床心理士資格のみでやっていこうという人たちもいます。どんな信念かというと、まず公認心理師試験を受験してみて「こんなもん受かるわけねえじゃねえか、臨床に役立たねえよ」という開き直りに近い信念です。

先般記事にしたように、公認心理師のハローワークでの募集数よりも臨床心理士の方が多いです。中にはダブルライセンスでないと採用しないという職場もあるようですが、30 余年の歴史を経た臨床心理士のネームバリューはまだまだ健在のようです。

思えば公認心理師受験可能D、Eルート臨床心理士資格取得者はその気になれば一生のうちいつでも公認心理師にチャレンジできますので思い直すのも自由です。

また、臨床心理士として心理職を採用したきちんとした職場なら、新資格を取らなかったからといって簡単にクビにすることもできないはずです。公認心理師を取るように圧力がかったり、同じ病院の精神保健福祉司や作業療法士が公認心理師資格を取得していると結構肩身が狭い思いをするかもしれませんが「取らない。あの資格は自分には向かない」という信念を持つというのもひとつの生き方ですし、僕が否定することもありません。

保険点数請求の関係で本格的に資格を取得するように経営者から言われたらその時に心の狭い経営者だと思うか、思い直して努力するべきか考えればいいのだと思います。

3.おわりに

僕はずるいカウンセラーなので「どちらを選ぶかは○さんの自由ですよ」という言い方をよくします。「自分では決められないので決めてください」といわれると「A と決めるとこういうメリットとデメリットがあり、B という選択肢を選ぶと○○というメリットとデメリットがあります」(自己決定力がある程度ある人限定)と僕が選んだ決定事項を口にすることはありません。

どんなに悩んだとしても自分で選んだ選択肢がその時は正解で、公認心理師制度や試験の悪口や愚痴を言うのもその人の自由です。残念ながら個人の力でシステムや内容を変えることはできません。臨床心理士 only でやっていこうと決めている人、あなた方はもう立派な大人で自己決定力があるのですから、自分で好きな方を選べばいいでしょう。そしてどうも困ることになるだろうと思ったらその時点でまた考え直せばいいのです。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_