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臨床心理士・公認心理士師・心理職あるある

1.序

どの職業にもあるように、心理職には心理職の「あるある」があります。この仕事ならではの「あるある」を例示してみたいと思いますので、これから心理職になりたい方、すでに心理職の方も「あ、またひなたのたわごとだ」ぐらいに受け止めて読んでいただければと思いますが、心理職が肩身の狭い思いをしているなあと思っている「あるある」を書いてみます。

2. 叱られる・怒られる

まず誰から叱られるかというと患者さんから叱られます。患者さんは必死なので叱るだけでなく、感情も入っているので「怒る」感情も入っていて「怒られる」こともあるでしょう。

例えば予約がいっぱいでなかなかカウンセリングが入らない時、クライエントさんは1週間に1回予約を入れたいのに2週間に1回しか予定が入らない。そうすると患者さんは「泣き怒り」をすることがあり、こちらも胸が痛みます。

インテーク面接のオーダーが入るとある程度基本的な情報を集めなければならないのですが、話したくないことは拒否されます。

そうすると心理職は「わけわからん」と医師に叱られる(医師によっては「怒られる」こともあるわけです。

心理テストをやろうとしても患者さんのマシンガントークに負けてその日は心理テストができないこともあります。こちらも必死です。短時間で終わる心理検査にも侵襲性があるものもあるので患者さんは「なんでこんなものやらせるんだ」と言うこともあります。

そして心理テストのオーダーの結果を出せないと医師から叱られます。心理職の力不足だと思われます。

心理職は必ずしも心理 1 人職場でだけ働いているわけではないので、心理の上司(先輩)からも叱られます。ケース会議では異様に厳しく」あ、お局様だから近づかないでおこう」とか「敬遠しちゃうな」と思って近づかないでいるとそのままその人間関係がケースカンファレンスの場に反映されます。

「多職種連携」と言われて、公認心理師試験では「専門用語をなるべく多く使って話すのがいい」だと×になるのですが、医療の現場では略語が多く飛び交います。「BP=120/60(血圧)、P(プルス、脈拍)=98、KT (体温) 38.0、Sp(血中酸素濃度)とか言われて「BPって何の略ですかあ?」などと聞いたら○されそうな勢いです。

3.やっかまれる

白衣を着ているのは別に心理職だけではないですし、医療機関では白衣がデフォ、というかユニフォームになっているところが多いのですが、患者さんからすると医師は少ししか話を聞いてくれない、看護師は注射しかしない、薬剤師は薬しか出さない、だけど心理職は親身になって話を聞いてくれる、まあまあ専門知識もある、となるとほかの職種の人たちの方がよっぽど給料をもらっているのに患者さんから去り際に「先生、先生」と呼ばれているところを他職種の人から見られると大変です。

院内文化によっては「先生」は医師だけ、とい
うところもあるからです。

僕は意識して「ひなたさんでいいです」と言っているのですが、他職種は忙しくて飛び回っているのに一人の患者さんと時間を取って話をしているのはゆっくりしているように見えるかもしれません。「心理は大学院まで出てる。大した大学院でもないのに威張ってるし、きっと高い給料をもらっているに違いない」とやっかまれることがあります。

そんな時にはすかさず給与明細をさっと見せましょう。心理職はどんなに頑張っても手取り 30万円行くことは珍しいです。きっと高卒の事務員からも憐れんだ顔で見られることでしょう。

4 .とにかく心理職同士仲が悪い

心理1人職場のようにのんびりとしたところならまだいいです。2人職場は辛いです。後から入って来た方が年長でもその職場の先輩が「○クリニックのことは何でも私が教えてあげる」的な態度を取るとそこで宣戦布告です。

医療に勤める2人のバックボーンが 1 人は教育、1人は福祉とかよって立つ学派が違うとか、果ては趣味が違うとか、ありとあらゆることが紛争の種になります。入職の後先にかかわらず、力の強い者が弱い者を追い出すので、退職に追い込まれることも多いです。

また、心理職複数職場、サテライト職場(病院とクリニックが同じ系列)の研究会や大学院のしがらみで入っておかなければならない研究会はなかなか大変です。ムダにやる気のある、それでいて大した成果が見込めないグループ活動や研究、学会発表をやろう、と言い出すリーダーシップを取りたい人が稀によくいます。

病院や学校の紀要に載せたいので上層部からのウケはいいです。ただし、つまらない研究やグループ活動を集まって、あるいはZoom 延々とやり続けることになり、特に残業手当も出ないのにプライベートな時間を犠牲にしなければなりません。

ここで反対意見を言うとそのまま上の人たちに話が流れていくので大変恐ろしいことです。

5.多職種連携

公認心理師試験で割と無茶ぶりな設問が出ているなと思うのは教育領域の事例問題です。現場感覚で考えてはいけないのが公認心理師試験とはいえ、教育一筋数十年のベテラン教師に若い女性公認心理師が偉そうに「支援チームを作らないとダメですよ」と言ったら即冷や飯を食わされるわけですが、特に若いスクールカウンセラーだと組織に溶け込むよりも焦ってそんなことをしたら大変なことになるわけです。

経験というのは長年培った宝のようなもので、特別支援学校、特別支援学級で発達障害、知的障害に接して何十年という先生に効果的な接し方をアドバイスすることもできないでしょう。

僕がスクールカウンセラーとして働いていた時はじっと黙って先生の話を聞いていたことに終始していました。ただ、経験何十年の先生でも扱いに困る児童生徒はいるわけで、別の切り口を常に探している。そんな時に意見を求められたらぽつぽつと話していただけです。公認心理師試験の出しゃばりあるあるを現場で実践したらとても危険です。

4.結語

心理職の仕事にはいろいろな落とし穴があるわけですが、完全に避けて通ることは難しいです。むしろどこにも絶対性がない矛盾した存在こそ心理職と言えるのかもしれません。心理の仕事は人間という、曖昧な対象を扱っています。人間という相手は決して自分の思い通りにはなりません。心理職ももちろん人間です。したがって心理職の職域や職務内容も理想とはかけ離れたものとなるのではないでしょうか。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_