ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:第4回公認心理師試験

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○ 第4回公認心理師試験分析〜合格点6割138点神話の崩壊

1.はじめに

さて、合格発表から一夜が過ぎました。まだ忙しさにかまけて、あるいは結果は郵送で届くものだからと不安でも腹をくくって結果が送られて来るのを待っている人たちも多いのではないでしょうか。

さて、そこで昨日のフィーバー状態から少し目が覚めた(僕が)ところで、まずは公認心理師試験全体の様子を見てみます。

2021.9月末公認心理師登録者数42,678人に加えて昨日発表された合格者数が12,329人、推定合計5万7千人ほどの公認心理師が誕生していくわけです。

今後この人たちがどの程度の割合で心理職を行っていくかどうかはGルート他職種の登録者の動向にかかっています。僕の知っている人で精神保健福祉士に加えて心理職としても働き始めた人もいますが、ごく少数派でしょう。

※ 以下図はウサねずみ@usanezume さん作成
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公認心理師カリキュラム検討会委員会で概算されている実働心理職数は5〜6万人、同程度の公認心理師数はすでに確保されているわけですが、実際に心理職専業として稼働していくかどうかは上記他職種の方々の動向を見てみないとわかりません。

よく聞く発言ですが「公認心理師受験勉強をすることによって心理学の知識が深まり、仕事に深みと幅が出てきた」ということで他職種のフィールドをそのまま行っていく人も多いのではないかと思われます。

したがって必要公認心理師数がどの程度なのかは試験当局にも大元の厚生労働省にも正確にはわからず「多分この程度だろう」という概算で補正をしたのではないでしょうか。最終的には実働公認心理師登録者数≒必要公認心理師数≒現在活動心理職数が望ましいと当局は考えていることが予想されます。この「必要公認心理師数」が試験難易度にも得点調整にも影響を与えたことは想像に難くありません。

2.得点調整の意味

心理職試験ではもとより臨床心理士試験の採点や合格点はブラックボックスなのでわからないのですが、国家資格試験は「6割程度」の難易度で補正されることはよくある話で、実際、介護福祉士では68.3パーセントが「6割程度」になったこともありました。

この国家資格試験は「落とすための試験ではなく、6割138点取れれば必ず合格できた試験」ではなくなりました。「問題の難易度で調整」というのは実際には異なっており、問題の難易度ならば問題ができた時点で難易度は決まっているわけで、実際には合格率や合格者数を見ながら得点調整を行ったわけです。

この得点調整の意味合いは、確かに問題の難易度にも得点率は依存するのですが、受験者の得点分散(散らばり具合、どの国家試験でも非公表)からも影響を受けていると推察されます。

多分今回得点調整が入ったのは、第3回試験の受験者数が(多分)コロナ等の影響で減少していたのが7,426人増加したのである程度合格者数を抑制しなければならなかったからだとも考えられます。

これには第5回、最終現任者講習会受講者数推定2万6千人から逆算して全体の合格者数を調整していたということも大きな要因として働いていたのではないでしょうか。

そして試験問題作成は受験生の出願が全て終わって資格審査が終わり、受験者数が確定する前に行われています(常識的に考えてもそうでないと間に合わない)。

3.今後の動向

得点調整、補正は今後もあると思わなければならないでしょう。得点調整は問題があまりにも困難な際にも合格基準点を6割未満にすることも考えられるのですが、6割超という今回のような補正も十分にあり得るわけです。

今回の問題について、これまで評価を明らかにしていませんでしたが、難問、捨て問題もあったものの、僕は比較的オーソドックスな心理学、臨床心理学に基づいた良問も多かったのではないかと感じます。

しかしそういった良問というのは得てして解きやすいもので、良問が多い試験は今回のように上方得点調整もかかりやすくなってくるでしょう。

4.終わりに

今回の得点補正はこれまでの公認心理師試験にとっては「激震」でした。今後この試験に挑戦しようとする受験者の方々は7割以上の得点率を目指した方が良いものと思われます。

といっても「どうすれば7割を目指して勉強できるか」というと、一回一回の試験ごとに出題傾向が異なっていてブレ幅も大きく見えるこの試験ですが、ひとつの仮説としては、だんだん回数を重ねるごとに出題傾向も安定してきたと思えるので、今回の試験をゴールドスタンダードの基準として考えてみることにも意味があるでしょう。

どんなに試験問題の難易度を調整しようとしても出題範囲は決まっている「心理学の試験」なのですから出題傾向もだんだん固まって来つつあります。過去問と同じ出題も多く、データが集積されつつあります。

したがってこれからチャレンジする受験生の方々に勧められる方針としては、基本に忠実に過去問をやりながらテキスト、模試、人によっては予備校も活用しながら勉強していくという、従来の学習方法と大きく異なっていくわけではありません。

今回の補正に戦々恐々とせず、落ち着いて目の前の課題にコツコツと取り組んでいくことが合格を手中に収める確実な手段なのではないでしょうか。

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第4回公認心理師試験結果の講評(日本心理研修センター発表後)

1.得点補正

なんと言っても今回初めて行われた「得点補正」が特徴的です。前回までは138点が鉄板の合格点だったのですが、今回は初めて得点を143点と、62.17パーセントに補正しました。今回は問題難易度が易しかったと判断されたのでしょう。また、得点分散が138〜143ほどの点数にかなり集中していたのではないでしょうか。

得点補正は絶対に行われないという前例を破る衝撃的な結果でした。

第4回公認心理師試験(令和3年9月 19 日実施)合格発表について

2.受験者総数

今回の受験者総数は21,055人でした。今回の現任者講習定員が約1万人と思われたのですが(訂正があれば教えてください)これまでの試験のうち、Gルートリベンジ組が相当数リチャレンジしたことが受験者総数を押し上げたことが推察されます。

コロナが多少落ち着いたことで受験をした人が多かったのか、詳細な事情は一人一人異なるのでわかりませんが、前回第3回試験受験者総数が13,639人だったことを考えると相当数受験者は増加しました。

2.各ルートごとの考察

⑴ Dルート

この人たちはなんらかの事情で受験を見送っていた、あるいは再受験者です。既卒D1ルート67.3パーセント、既卒(中心)D2ルート68.6パーセントはかなりの高数値に思えます。

⑵ Eルート

Eルートは、昨年度不合格だった新卒再受験者と新卒者です。ここで見ておかなければならないのはまず受験人数です。1,335人と、推定臨床心理専攻院卒者数よりもかなり少ないようです。

ということはスキマ世代で受験資格が与えられなかった新卒者がいかに多かったかを示しています。合格率85.5パーセントの8割超えは前回の81.0パーセントに続く快挙です。

かなり急いで公認心理師養成課程を作り上げた大学院と、歯を食いしばって耐えた受験生たちに敬意を評したいものです。

⑶ Fルート

まだ公認心理師法7条2号施設のうち病院などが入っていないと思われるので、法務省矯正局と家庭裁判所調査官と思われます。国家総合職だけあって19人中18人が合格しています。数は少ないものの、今後の国家総合職の受験者の合格率を示す基準となっていると言えるのではないでしょうか。

※ 訂正 平成30年に認定を受けている医療機関もあります。

⑷ Gルート

受験者全体の81.7パーセントを占めることから、合格率を大きく左右する受験者層です。何らかの理由で受験を見送っていた科目読み替えが効かなかった臨床心理士などの心理職や再受験者組、実務経験者です。この中には心理学専攻者でない現任者が相当数含まれていたことを考えると55.7パーセントというのは相当な快挙と言えると思います。

3.全体講評

今回初めて行われた得点補正から「6割程度」はある程度幅がある点数ということがわかりました。次回受験からの人はある程度高い点数を取れるように幅を広げて学習する必要があると痛感した試験でした。

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第4回公認心理師試験割れ問解答について

今回の試験について最も話題になったのは問146.いじめで登校しづらくなっている児童について、教員にスクールカウンセラーである公認心理師が確認することとして
② 合計欠席日数
⑤ 学級における児童全体の様子

でした。

これについては②が正解

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拙記事の「いじめの重大事態の調査に関するガイドライン」が根拠となっているようです。

また、問154の18歳の母親が0歳児を養育する気がない場合、考えられる措置先として解答が割れたのは
② 里親委託
⑤ 母子生活支援施設

でした。
これについては僕が根拠を示したのですが、根拠が完全に正しいかどうかはともかく正答は日本心理研修センターと同じでした。

公認心理師試験割れ問・里親委託・母子生活支援施設

※拙ブログ記事

今回不適切問題はありませんでした。

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日本心理研修センターから10月27日付けで合格発表通知方法についてのお知らせが出ています。

第4回公認心理師試験(令和3年9月19日実施)に係る合格発表について

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第4回公認心理師試験合格率に影響する要因(試験後分析)

1.はじめに

さて、もう試験は終わってしまったので、結果は発表を待つしかないのですが、さまざまな要因で合格率はこの試験に影響しているのだと思います。それについて書いてみたいと思います。

2.G ルート合格率

第3回試験では Gルート受験者数は10,406/13,629 人と実に76.4 パーセント弱を占めていました。というわけで G ルート受験者の人たちが全体合格率の鍵ということは間違いないと思われまず。ちなみに前回のGルート合格率は 50.0 パーセントでした。

何度か書いていますが、G ルートの人たちが 5割の合格率を出すというのは素晴らしいヒットで、さまざまな背景の現任者がこの試験に合格するということは実に大したものだと思います。

どうやら現任者講習会を受けた人の割合、そしてこれまで不合格だった人の割合から考えると推計約3分の1程度が受験 or 再受験を諦めている(見送っている)ようなので、この5割の人たちは選ばれた人たちと言えるでしょう。

そしてこれも何度か書いているのですが、1度不合格になった人はまた不合格になりやすいということも事実で、医師国家試験は現役9割→既卒 5割弱になっています。なんらかの不合格要因があってもそれを克服しきれなかったということでしょう。

これはあらゆる試験についてまわっている現象です。時間を作れない、不得意分野がどうしても克服できない(決して頭が悪いというわけではなく)この試験ならではの独特のクセのようなものに慣れることができない、等さまざまな理由があるでしょう。これは G ルートに限ったわけではないのですが。

3.D、E、Fルート

これらをひとくくりにしてしまったわけですが、Gルート受験者数の層の厚さから、むしろ心理学の大学院を卒業した受験者層が「他ルート」と呼べるかもしれません。Dルート、Eルートは心理職としてこれから活動していくとすれば「どうしても資格を取らなければならない」層です。

しかしながらそうは言っても必ず合格できるわけではなく、僕の乱暴な持論ですが、こと私大に限って、臨床心理士試験で合格率の発表をしている院はだいたいその学部の偏差値≒合格率となっているようです。

ただしBF(ボーダーフリー、偏差値が出ない倍率の大学)は合格率もそれ以下になってしまうということを知っています。これまでも数年かけて臨床心理士試験を通ればいいというおっとりとした院もあったので、再受験者が多い心理院卒が必ず合格率を押し上げるというわけではなく、またその逆も言えないということです。

4.受験者層

したがって、この試験を受けた受験者層のレベルに合格率は依存するということが言えるでしょう。第 4 回になって滞留していた不合格者が一気に受験することになっていたら、上記の理由から必然的に合格率は落ちることになると思います。

ただし、滞留していた層がどれだけいるのか、再受験者はどのぐらいの数がいるのか、何パーセントなのかは決して日本心理研修センターから発表されることはないので「わからない」ところが実情です。そして医師国家試験の難易度と公認心理師試験の難易度を一概に比べるわけにももちろん行かないわけですし、他の試験とも比べるわけには行きません。

5.問題の難易度

これに関しては諸説あると思います。第2回、3回試験よりもこの試験は易しかったという意見もあれば、逆の意見もあるでしょう。ただ、今回の試験に関しては過去問から多くの設問が出たということは言われていますし、僕もそうだと思いました。国家試験ですので、あまりにも難問奇問ばかりを出すわけには行かないでしょう。

ただし、かなりの難問はあったと思います。医学問題でも医師すら正答を出しにくかった問題もありました。ただし、この試験の出題範囲はある程度決まっている試験です。限られたスペース(といってもかなり苦戦した人も多かったと思いますが)の中で限られた文字数しか問題作成はできません。ということは、毎回出題していれば、全く的外れの問題ばかりを作るわけにも行きませんし、よく傾向分析をしていたら、今回初回受験組でも前回不合格組でも高得点を取れたのではないでしょうか。

したがって、この問題が易しかったか難しかったかという評価は予備校のようには評価し切れないのですが、ごく当然のことを言うと「よく復習して学んでいた人にとっては有利な試験だった」ということは言えるでしょう。

あとはいわゆる、予備校によって解答が異なっているという「割れ問題」が多かったということは難易度に関係してくるでしょう。各予備校等が出している模範解答を見ると各社で解答が割れている問題がいくつかあります。自己採点をして合否のボーダーライン上にいる人はかなりひやひやしていると聞きます。

6.結語

そういった意味では不安定要素が多々あり、合格発表があるまでは「わからない」というこ
としか言えないのは毎回のこの試験と同様です。ただ、予備校の解答というのは「割れ問題」による変動が多少あったとしてもプロが作成したものであり、ボーダーライン上にいる人以外にはある程度の上下があったとしてもかなり大きな変動はないものと予想されます。

その人たちを完全なサンプリングで調査していかないと本当のところは見えてこないわけですが、それは大変困難なことで、予備校で行っている調査も「調査に答えた」という意味でのサンプリングの偏りがあるわけです。

それは毎回の試験でも指摘されていることです。Gルートにとってはこの後1回のチャンスを残すばかりとなったという意味でも今回の第
4回試験の合格率の行方に注目したいところです。

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