ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:神経発達障害

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photo&lyric by sora (@Skylit_Blue)
掴めそうで掴めない
永遠のような
刹那の煌めき


◯ 神経発達症群/神経発達障害・強度行動障害から見る福祉心理学

公認心理師試験における発達障害は、発達、障害、福祉、DSM-5、心理検査、法律と、ブループリントにおけるさまざまな項目に絡んでおり、どこから弾が飛んでくるかわからない状態です。

ですからDSM-診断体系から法律、心理検査、その実態と抱える問題点について総合的に試験対策を考えみることは必要です。

1.DSM診断体系から

DSM-5では発達障害は大きなくくりとして神経発達症群/神経発達障害の中に入れられることになりました。

⑴ 知的能力障害群

従来DSM-Ⅳ-TRまでは知能指数70未満というラインが知的障害かどうかの分岐点で、50、30未満も障害の程度を見る基準となっていましたがDSM-5となってその重症度を測る基準が、何ができるのか?という概念的、社会的、実用的領域によって軽度、中等度、重度、最重度に分けられることになりました。

知的能力症候群はASD自閉症スペクトラム障害の合併率は、知能水準の低さとともにかなり高いものとなっています。(IQ30未満で80%;臨床家のためのDSM-5虎の巻、日本評論社)

知的障害は以前書評的に書いた 発達障害がわかる・金子書房「発達障害児者支援とアセスメントのガイドライン」 では評価のための基準のテストとして、ウェクスラー式、田中ビネーⅤ、新版K式があげられています。

発達障害全般については社会適応度合いを測定するVineland-Ⅱ適応尺度が使われることが多いです。

DSM-5ではPDD-NOS(どこにも分類されない広範性発達障害)というゴミ箱診断名が無くなり、そのかわりに多分PDD-NOSに取って代わられたかのようなコミュニケーション症群、コミュニケーション障害群の中にかなり多く包含されることになったのではないでしょうか。

社会的(語用論的)コミュニケーション症は適切な状況で適切な語用ができないというものです。

もちろんASDの中にも多くPDD-NOSは包含されているでしょう。

福祉心理学の中であまりこれまで俎上に乗せられていなかった話題ですが、福祉にも福祉職、心理職はいて、それぞれが輻輳しながら、また業務分担をしながら仕事をしています。

2.強度行動障害

今回の記事で特に取り上げたいのは強度行動障害です。障害の中でも最も重度な領域であり、それだけに職員のやりがいもある仕事で、心理の知識と深く関連していると思えるからです。

前掲書、金子書房「発達障害児者支援とアセスメントのガイドライン」事例10、p374に「強度行動障害が絡んだケース」が掲載されていました。知的障害者入所更生施設でショートステイ中の事例について紹介されていました。

「強度行動障害」は知的障害の中でも心理職があまり知らない領域ですが、本事例では

診断:
①重度知的障害(20歳8か月時の田中ビネー知能検査にてIQ12)
②自閉症
③強度行動障害判定値36(強度行動障害と認められ、特別処遇相当となる。)
(以上前掲書から引用)

です。強度行動障害判定値はカットオフ値20のため、この事例は重度と認められます。

なお発達障害情報・支援センター の定義によれば
「強度行動障害とは、自分の体を叩いたり食べられないものを口に入れる、危険につながる飛び出しなど本人の健康を損ねる行動、他人を叩いたり物を壊す、大泣きが何時間も続くなど周囲の人のくらしに影響を及ぼす行動が、著しく高い頻度で起こるため、特別に配慮された支援が必要になっている状態のことを言います。」

とあり、自傷、他傷、排泄物を壁になすりつけるなど知的能力に制限がある対象者といかに接するかが問題となります。

強度行動障害を家庭で見ていくことは困難であり、その多くが施設に知的障害者対象の施設やグループホームに入所しています。

この強度行動障害については僕の知己のN女史が詳しく修士論文で書いていますので引用、要約をします。

こうした強度行動障害者は知的障害者の中でも最も職員がる対処困難で職員のバーンアウトも危惧されます。

こういった施設の職員は福祉、心理職の専門家であることも多いですが、必ずしもそうでないことも多いでしょう。

N女史によるとこういった職員は

◇ ◇職場での困りごと
 利用者の突然の不穏や,急な問題行動が一番に挙げられた。また,職場での人手不足や,退職する職員が多く,悲しいと語られた。人間関係での困りごとはないとのことであった。
職員の退職については,給与が見合っていないことや,やりがいをもてないという理由があるとのことであり,給与については,今は足りているが,将来家族ができた時にどうなるのかがAさん自身も不安であると語った。


とのこと。また、

◇ ◇ 利用者との関わりでの困りごと
 利用者の突発的な不穏の際,急に対応しなくてはならない時に困る,利用者の他傷行為(つねる,髪を引っ張る),壁を叩く等の破壊行為や自身を傷つけるような自傷行為も多いため対応に困るとのことであった。また,利用者の移動拒否も挙げられた。言葉を理解する利用者も多いが,「お風呂行きましょうか」と声をかけると「いや!」と断られると,“この人はこの時間帯に入る”という流れができてしまうため困るとのことであり,利用者との関わりでの困りごとは,主に利用者の問題行動であることが分かった。


ということも述べられていました。福祉施設でもそうですが、職員のバーンアウトを防ぐためには職員同士の協働が大切であり、

◇◇利用者との関わりでの困難に対してどう対処しているか
 まず,他の職員に相談することが挙げられた。その時,利用者の職員の好みによって困った時に相談する職員を選んでいる。職員全体に対して他傷行為があるケースであれば,職員同士でどうしていくかというのを話し合うとのことであり,状況に合わせて相談方法を変えていることが伺えた。また,施設全体で“統一支援”というのを基本にしており,自分一人で抱え込まないようにグループ内で相談し,全員が同じ支援体制をしていくシステムを作っているという。
 利用者との関わりについては,統一支援から外れないように自分と利用者とのオリジナルのやりとり,マニュアルを探りながら関わっている。具体的には日中の支援などで,手遊びや言葉のやりとりを通して自分自身のやりとりの方法を探していると語った。その中で,この職員(Aさん)はこういうことをする職員なんだというように利用者に覚えてもらうため,利用者の言葉や行動を真似をすることで意識を向けさせるなどの工夫を行っていることが分かった。ここで重要なのが,利用者の他傷行為をわざと受けたりはしないことであった。
 また,“ケースグループ”という体制があり,利用者の支援の方法を考えたり備品(服,靴,日用品)の管理を行っているという。利用者4名に対し職員3名で対応しているとのことである。何か困ったことがあったらケースグループで話し合い,最終的には職員全体で共有し,意見をもらってから“こういう支援をやっていきましょう”との方針がケースグループで決まった後に全体に周知し固まってから実践に移すというのを基本的な流れとして作っているということであった。このことから,職員が一人で困難や悩みを抱え込まないように全体で職員のフォローや利用者支援に取り組んでいることが推察される。


とも述べられていました。相当深く強度行動障害について述べられている論文なので全文引用したいところではありますが、紙面都合上残念ですがごく一部の転載です。N女史が強度行動障害施設で働く職員が協働してやっていかないとならないという趣旨を述べていることは十分に伺えます。

さて、知的障害、発達障害もそうですが、よく言われているように彼らは些少な環境の変化に弱いです。例えば食事→お風呂が、お風呂→食事に変わることは大変化であり、パニックに陥りかねません。

こうした福祉領域は支援員の負担はかなり大きく、例えば公認心理師法施行規則に規定されている独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園でも強度行動障害者が入所していますし、そのための支援員向けの特別な研修プログラム が用意されています。

また、厚生労働省資料 強度行動障害支援者養成研修に関する資料 も相当詳しくこの障害について書かれています。

3.結語

発達障害、知的障害はじゃあ応用行動分析(ABA)治療を行えばいいや、とかペアレントトレーニングをすればいい、もちろんその理念は大切なのですが、まず診断の段階で統合失調症、双極性障害との鑑別が難しい場合もあります。また、強迫的なこだわりを暴露反応妨害法で治療するともれなく悪化するだろうということも示されています。(「大人の発達障害ってそういうことだったのか」宮尾等、内山登紀夫 医学書院 .2013)

こういった処遇施設は慢性的な人手不足から職員を募集していることが多いです。心理・福祉有資格者よりも無資格でも夜勤ができる経験者を優遇して支援員として採用しています。

福祉領域は心理職の持っている知識経験がそのまま生かされるわけではなく、月手取り17〜18万円ぐらいで厳しい状況で働かなければなりません。しかし調べるに従ってやりがいのある仕事だとも感じた事も事実です。

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◯ DSM-5毎回徹底復習・神経発達障害、統合失調症、双極性障害

まず、DSMの多軸診断システムが廃止されたことは神経発達症診断においても大きな変化をもたらしました。
ASDは何パーセントぐらい、ADHDは何パーセントぐらいとディメンション(多元的診断)可能になったということです。

特に神経発達障害において診断基準が変わりました。

・精神遅滞→知的障害と変更されています。
従来のIQのみによる診断でなく、生活能力を診断の中に取り入れています。

DSM-ⅣTRでは広範性発達障害という大きなくくりの中に
・自閉性障害
・アスペルガー障害
・レット障害
・小児期崩壊性障害
・特定不能の広汎性発達障害

という5つの下位分類がありましたが、DSM-5では神経発達障害はレット障害(遺伝因子がレット障害では特定されたため)ASDに全て包括的されることになりました。

診断基準にも変更がありました。DSM-Ⅳ-TRは、社会性、対人関係の交渉、コミュニケーション障害、想像力の障害に基づく興味・関心の限定というWingの3点が基準でした。

DSM-5では、
1.コミュニケーション障害と2.反復的な行動と興味という2つの分類に変更になりました。

この2つを満たさなければASDとは診断されません。

2.のみの場合は、社会的コミュニケーション障害と分類されます。PDDNOS(特定不能の広範性発達障害は社会的コミュニケーション障害の中に包含されていきました。)

DSM-Ⅳ-TRではPDD(広汎性発達障害)なのかASP(アスペルガー障害)なのかPDD-NOS(特定の不能の広汎性発達障害という診断のごみ箱のような概念)なのかという独立した疾患単位として 見ていたのが、支援を要する必要性、社会的なコミュニケーション能力、限定反覆された行動の社会適応度で、グラデーション様のスペクトラム概念を採用することになったのです。

ADHDは実はDSM-Ⅳ-TRでは発達障害の枠組みの中には入っていませんでした。

ADHD=行動障害→神経発達障害に分類し直されたこと、7歳→12歳以前に引き上げられ、17歳以上ならば下位項目基準が6→5に基準緩和され、さらに重症度判定も導入されるようになりました。学習障害が限局性学習障害になりました。

さて、ADHDの診断治療ですが、ストラテラにしてもコンサータにしても中枢神経を刺激するので興奮を与えるわけです。したがってその鑑別診断には双極性障害との峻別がとても難しいでしょう。

双極性障害でも躁がある程度抑えられている人ならば投薬は大丈夫でしょうけれども、中枢神経刺激薬の場合には躁転の可能性も捨てきれない。

ADHDの人が2次障害でうつを併発している場合にはSSRIやSNRIが有効だけれども双極性障害を併発している場合には使えないこともあり得るわけです。

小児期に神経発達障害が発見されていて、それが可能な場合は話し方教室のような通所で言語療法士や心理職による療育が行われることで成長してからの社会適応度がかなり高まる場合もあります。

特別支援学級、特別支援学校で子どもにSSTを行うのは、応用行動分析的手法を援用、困難さも伴いますが必要かつ有効な仕事です。

◯ 統合失調症スペクトラム障害
Scizophrenia Spectrum
統合失調症もDSM-5だと連続体のスペクトラムとして扱われています。

DSM-Ⅳだと統合失調症が独立していて、他の妄想性障害、統合失調症様障害、短期精神病障害のカテゴリーが重なることもあればまったく独立していることもあったという仮定で診断基準を構築していました。

DSM-5の診断基準ではA群パーソナリティ障害の
失調型人格障害、妄想性障害、短期精神病障害、統合失調症様障害、統合失調症とだんだん色濃くなるスペクトラムとなっています。

・有病率は0.8パーセント、10代後半から発症すると言われている遺伝的負荷の高い疾患です。

2014年の患者調査によれば入院患者266,000人のうち16,6000人、外来患者258,000人のうち70,000人です。

陽性症状としての被害的幻聴(「死ね」とか)妄想(見られている、盗撮されている注察妄想)幻視は統合失調症にはあり得ないと従来言われていましたし長い間論文にも書かれていましたが、虫が見えるなどの臨床例は僕も扱ったことがあります。

自我障害
させられ体験、作為体験、自我と世界との間が不分明になると思考もその境界が曖昧になり自生思考となり、自分の思考は漏れ出て、他人の思考が流入してくるように感じられます。

まとまりのない会話、行動、不統合

精神運動貧困、鈍麻、自発性低下
これらは統合失調症の陰性症状でよく出てきます。

病識障害

対人関係、身辺処理、ひきこもりなど(他の疾患でもお風呂に長く入れないことは多いですが)

DSM-Ⅳ- TRでは統合失調症の中の各状態を並べていたのが、DSM-5になって一気に整理されたようです。

統合失調症の中核症状は妄想、幻覚、解体した思考と会話、ひどくまとまりのない言動または緊張病性の行動です。

DSM-5では統合失調症スペクトラムの最初に統合失調症型人格障害
Scizotypal Personality Disorder
を持ってきていますが、DSM-5スタディガイドの症例を見ると超能力的、UFO、世界の終わりを信じ続けている女性の例が掲載されています。

スキゾタイパルパーソナリティ障害も遺伝因子が高く、すでにICDでは統合失調症の中に分類されています。

統合失調症スペクトラムの薬物療法はあらゆる定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬が使われてきました。

ヒルナミン、レボトミン、コントミン、ハロペリドール、セネストパチー(身体異常感覚)にはオーラップ

PZC

クエチアピン、エビリファイ、リスパダール(持続型注射が患者さんにはコンプライアンスの点でかなり楽なんだようです)、ジプレキサ、インヴェガ、

薬物反応耐性がある難治性の統合失調症にはクロザピンが奏功を呈するのですが、無顆粒血症の危険から週一回の血液検査が欠かせないのがネックです。

統合失調症スペクトラムにも精神療法は有効です。

エビデンス重視の認知行動療法が有効性を常に喧伝していますが、あらゆる精神療法に反応する可能性があります。

認知行動療法は妄想を持つ患者さんを説得するしようと論争になってしまうと逆効果となって脱落することもあるので、一学派の治療法にこだわらなくてもいいのではないかと思います。

双極性障害及び関連障害群

このブログでは双極性障害は何回か取り上げています。日本の有病率は0.7パーセントです。

入院を必要とするような高いテンションが特徴、時として大騒ぎをして暴れることもある双極Ⅰ型、うつが前面に出て来て、時に躁状態になるⅡ型、II型はラピッドサイクラーやウルトララピッドサイクラーとなることもあります。薬物性の双極性障害をⅢ型と呼ぶことがあります。

DSM-5ではクレッチマー以来、循環気質としてうつ病、躁うつ病として認められていた気分障害が、双極性障害は遺伝的疾患で、うつ病とはかなり違う発生機序として扱われることになりました。特に一卵性双生児研究では双極Ⅰ型は89パーセントの一致率です。

双極性障害はうつ病と同じ気分障害というくくりで扱われていたのが、気分障害という概念そのものがなくなったのです。

DSM-5でも統合失調症の次に双極性障害が記載されています。実際、遺伝子研究、家族研究を行うと一家族の中に双極性障害の父、統合失調症の娘など、非常にお互いの有病性が近似していることが判明しています。

双極性障害は精神療法としては認知行動療法がエビデンスがある精神療法として書かれています。躁やうつの時をどうやって乗り切るか、過ごすかは入院、通院とも本人の自覚や家族の協力が不可欠です。バイポラーワークブックが有名な翻訳書です。

ただし、双極性障害に他の精神療法が無効だというわけではありません。

特に躁の時には心理職と言えども管理的Administrativeなかかわりをしなければならない時があり、主治の医師がいない場合には家族に協力してもらい、医療保護入院にまでこぎつけないと病識のない患者さんが安定しないでしょう。

そういった意味ではかなり指示的diretiveな心理療法、というよりはケースワークを心理職がすることがあります。双極性障害は生活、社会リズム障害です。

社会的リズム療法だけでなく、双極性障害は寛解に近づくほどあらゆる種類の精神療法に反応して好転するというイメージが僕にはあります。

治療同盟が出来てしまえば、カウンセラーがリラックスを目的として病識ある患者さんの緊張を心理療法で緩めることは有意義なことです。ストレス、睡眠不足、激務を避けると落ち着いていくことが多いです。

双極性障害は、統合失調症と同じでまずはバシッと抗精神病薬を服用してもらってから、ムードスタビライザーで再発防止のための維持療法を行い、社会的寛解を促すことが多いです。

薬物療法としてはオランザピン(ジプレキサ)、アリピフラゾール(エビリファイ)、クエチアピン(セロクエル)、ゾテピン(ロドピン)クロルプロマジン(コントミン)、ハロペリドール(ケセラン)などの抗精神病薬、

ムードスタビライザーとしては第1選択肢としてラミクタール(ラモトリギンのジェネリックがやっと出ました)、カルバマゼピン(テグレトール)、バルプロ酸ナトリウム(デパケン)などの抗てんかん薬に加えて、炭酸リチウムが抗躁剤として使用されています。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬としてジアゼパム、ロラゼパム(ワイパックス)、クロナゼパム(リボトリール)が使用されることもあります。

ムードスタビライザーは臨床上、一剤使用か2剤使用が多いですが、3剤併用することもあります。相当症状を抑えるために苦労しているのだと僕は見ます。

photo by sora

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