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◯ 公認心理師法 試験・登録・信用失墜・守秘義務・連携

第四条(資格)
公認心理師試験(以下、「試験」という。)に合格した者は公認心理師となる資格を有する。

※ 「有する」だけで、自動的に公認心理師となるわけではありません。

(試験)
第五条 試験は、公認心理師として必要な知識及び技能について行う。

(試験の実施)

第六条 試験は、毎年一回以上、文部科学大臣及び厚生労働大臣が行う。

第七条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。

 一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学(短期大学を除く。以下同じ。)において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業し、かつ、同法に基づく大学院において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めてその課程を修了した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者

 二 学校教育法に基づく大学において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において文部科学省令・厚生労働省令で定める期間以上第二条第一号から第三号までに掲げる行為の業務に従事したもの

 三 文部科学大臣及び厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定した者

(試験の無効等)

第八条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、試験に関して不正の行為があった場合には、その不正行為に関係のある者に対しては、その受験を停止させ、又はその試験を無効とすることができる。

2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、前項の規定による処分を受けた者に対し、期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる。

(受験手数料)

第九条 試験を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の受験手数料を国に納付しなければならない。

2 前項の受験手数料は、これを納付した者が試験を受けない場合においても、返還しない。

第三章 登録

(登録)

第二十八条 公認心理師となる資格を有する者が公認心理師となるには、公認心理師登録簿に、氏名、生年月日その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。

※ 公認心理師試験合格者は届出を行って登録を受けないと公認心理師、心理師の名称を名乗ってその業務を行うことはできません。

(公認心理師登録簿)

第二十九条 公認心理師登録簿は、文部科学省及び厚生労働省に、それぞれ備える。

(公認心理師登録証)

第三十条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師の登録をしたときは、申請者に第二十八条に規定する事項を記載した公認心理師登録証(以下この章において「登録証」という。)を交付する。

(登録事項の変更の届出等)

第三十一条 公認心理師は、登録を受けた事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨を文部科学大臣及び厚生労働大臣に届け出なければならない。

2 公認心理師は、前項の規定による届出をするときは、当該届出に登録証を添えて提出し、その訂正を受けなければならない。

(登録の取消し等)

第三十二条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を取り消さなければならない。

一 第三条各号(第四号を除

く。)のいずれかに該当するに至った場合

二 虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合

2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が第四十条、第四十一条又は第四十二条第二項の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。

※ 取消処分には「任意的取消処分」で、監督者が任意的に裁量で取り消したり取り消さなかったりするのですが、必要的取消処分と言って、必ず取消しを行わなければならないので、かなり厳しい処分と言えるでしょう。

※ なお、法律の条文を読むときの条、項、号の復習にこの第三十二条を使ってみます。「取り消さなければならない。」の後には「第1項」が隠されています。透明文字で「第1項」と書いてあるとでも理解しておきましょう。
第1項の後の漢数字「一」「二」が「号」です。「2」の登録取消し、名称使用禁止はアラビア数字なので第2項ということになります。

(登録の消除)

第三十三条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師の登録がその効力を失ったときは、その登録を消除しなければならない。

第三十九条 この章に規定するもののほか、公認心理師の登録、指定登録機関その他この章の規定の施行に関し必要な事項は、文部科学省令・厚生労働省令で定める。

第四章 義務等

(信用失墜行為の禁止)

第四十条 公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

※ 信用失墜行為は、公務員、国家資格所持者についてそれぞれ法で定められています。
信用失墜行為とは何か?

1 交通事故、飲酒運転などの道路
交通法違反
2 万引き、、暴行、喧嘩
3 わいせつ行為(業務内外を問わず)強姦、強制わいせつ、痴漢、盗撮等
4 インターネット上での個人の誹
謗中傷
6 不正経理、公金横領、リベート
収受、贈収賄
7 地位を利用した不法行為
8 ハラスメント行為

※ どこまでが信用失墜行為となるのかは線引きが難しいですが、児童ポルノ法違反があります。
単純所持でも法違反になりますし、サイバーパトロールはこういった犯罪には手厳しいです。怪しいサイトに入って、ついうっかりクリックした経歴であってもIPアドレスから警察が常に捜査しているということを忘れない方がいいでしょう。

(秘密保持義務)

第四十一条 公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

※ 「正当な理由」があれば、の正当性についてですが、タチアナ・タラソフさんがあやめられた際にクライエントが「銃でやる」と言っていたのにもかかわらず主治医が守秘義務のために何もしなかったというものです。

この後主治医はアメリカ最高裁で敗訴し、タラソフ論争も巻き起こるわけですが、明白な危機が迫っている場合にはカウンセラー側には「第三者保護義務」が発生します。

・犠牲者となり得る相手への警告義務

・犠牲者に危険を知らせてくれる可能性のある人に知らせる義務

・警察への通告

・他の合理的方法

ちなみにこの後アメリカではタラソフ型判決が多数出て、判例として確立しています。自死についてもこの保護義務は発生します。

心理職なら経験したことのある人は多いと思いますが、クライエントが強い希死念慮、具体的企画、意図を明言し、入院ともならなかった場合には医師や心理職から家族にその危険性を知らせ、クライエントが単独で帰宅することがないように家族に送らせるということがあるでしょう。

クライエントが家族に心配をかけたくないから希死念慮について話さないでくれと言っても守秘義務履行よりも患者の生命を優先するわけです。

また、虐待の通告義務も公認心理師の秘密保持義務に優先します。犯罪者がクライエントの場合、警察から捜査関係事項照会書が来た場合も守秘義務は外されます。(薬物事案については信頼関係のため、絶対に秘密にするという約束が治療上は好ましいです。)

医療現場では患者のケースカンファレンスが多く行われるでしょう。「医者には言わないでくれ」と言われていてもそのクライエントの秘密を守ることはかなり困難です。また、医療保険会社は患者のカルテ開示請求を行う権利がありますので、ここで守秘義務は外れます。

また、安全に配慮すると特に産業場面のカウンセラーは守秘義務より多くの人々の安全を守らなければならない場合もあるでしょう。

パイロットのクライエントが幻覚幻聴に悩まされている、死ねという声が操縦中に聴こえてきて衝動的に航空機を墜落させたくなる。秘密にしておいてくださいと言われてもそれは安全への配慮から無理でしょう。

教育・産業場面のカウンセラーは「もっと自分を取り巻く環境をこうして欲しい」と言うことも多く、それを周囲に伝えて欲しい、そういう要望があれば守秘義務は外されます。

その場合、誰に、どんな風に何を伝えるべきかはきちんとクライエントの了解を取らないといけません。それから、これは注意が必要なのですが、学会や学会誌で事例発表をしたいという時です。

その場合にはクライエントには十分に口頭及び書面による説明、書面による同意書が必要ですし、発表原稿をクライエントに見てもらうことも必要でしょう。

医療、心理の倫理は厳しいものです。
病院なら倫理審査委員を経ないと、同意書があったとしても手続き面に不備があればその発表は不可能になります。

何をクライエントの秘密として守るべきかは難しい問題です。例えば死者の情報は個人情報保護の対象とはならないのですが、その情報の中に生存している家族などの情報が入っていればそれは個人情報です。

個人情報はその他にも個人の生年月日、メールアドレスや電話番号、健康診断結果の数値、経済状況など多岐にわたります。

また、辰巳法律研究所のドリルによれば、団藤(法律学者)説では秘密とはあくまでその個人のものなので、クライエントがとある企業が経営不振で倒産しそうだ、というクライエントが知り得た秘密についてその漏示が禁止されるわけではないとなっています。

※ ここは大事な部分ですので、罰則規定条文も掲載します。

第四十六条 第四十一条の規定(秘密保持義務)に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

※ 下記の条文も必出と思います。

(連携等)

第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。

2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

 (資質向上の責務)

第四十三条 公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

 (名称の使用制限)

第四十四条 公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。

2 前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。

世の中のこの騒ぎの中、コロナのために本務でなくとも健康保健管理業務に追われている心理職の方々も多いと思います。

本ブログを試験対策で読んでくださっている方も、知的好奇心から読んでくださっている方々もいらっしゃると思います。

時節柄くれぐれもご自愛ください。