◯ 依存症・公認心理師事例問題対策
事例問題対策は知識ではなくてセンスが問われることがままあります。
依存症、嗜癖は何もかも、仕事や家庭も打ち壊す恐ろしい病です。
大きく分けて物質依存、行動嗜癖、関係嗜癖があります。
1.物質依存
⑴ アルコール依存症
まず物質依存ですが、ま、よくなったから外出もいいでしょ、ということで開放病棟に入院しているアルコール依存症の男性が外出して紙パック入りの牛乳を買ってきた。
あ、牛乳かあと思って見ていて冷蔵庫から取り出しストローで飲んでいたのは日本酒だった、こんな話は枚挙にいとまがないです。
アルコール依存はきわめて遺伝率が高い疾患です。二日酔いになるアセルアルデヒト酵素を分解する力が強いのです。
統語失調症や双極性障害よりも遺伝率が高く、0.50半分の人が依存するという研究もあります。
なお、血液検査をすると肝機能値GTP、GOT、γ-GTPが異様に高い、男性50以下、女性32以下は 正常値ですが、これγ-GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)は、100を超えたら病院に行く必要があります。尿酸値UAの値も悪くなります。大量の水分欠乏症になるからです。
一番の治療法は断酒しかありません。
γ-GTPが1000超えても飲み続ける人がいます。これを放置して飲み続けるといくら再生力が強い肝臓でも肝硬変から肝臓がんになり死に至ります。
食道に静脈瘤が出来てそれでも飲み続けて大量吐血して亡くなる方もいます。
そうなるとこれは生き方死に方を自分で選んでいるその人の死生観なのかもしれません。
DM(糖尿)の人が断酒できないと致死的です。
新久里浜式アルコール症スクリーニングテストKASTが厚生労働省で紹介されています。目を通しておきましょう。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-026.html
数値が正常でも酔って家族や会社で暴力を加えてぶん殴ったらそれは立派なアルコール依存症です。
⑵ 薬物依存
なかなか手強い依存症です。
田代まさしことマーシーは何度も逮捕されて自助団体DARCに入りましたがその後また逮捕されました。
2.行動嗜癖
⑴ 買い物依存
「買い物依存症の彼女をどうやって見抜くか」最近僕は記事にしました。
http://hinata.website/archives/23282506.html
「浪費ばかりしていて。」と当人を責めてもあまり解決にならないどころか逆効果です。
「奥さんの買い物・浮気依存を止めるにはスマホを水没させてください」「クレジットカードをハサミで切っても何の解決にもなりません。
スマホがなくてもクレジットカード番号はメモしておけば済むことですし、再発行もできます。
物質依存と同じであらゆる手段を使って試みることができるのです。
⑵ ゲーム依存
ICD-11(疾病及び関連保健問題の国際統計分類)初めてゲーム依存が疾患として認められました。
ゲーム依存は深刻で、課金しないと面白味は出ないようになっています。勝負に他のゲーマーよりもより優位性を保とうとすれば課金を多くすればするほど有利になります。
アクションゲームだろうが育成系だろうが同じです。
最初は「微課金ぐらいいか」と思って次第にエスカレートして10日で200万円使う、こういう患者さんを見てきた人は多いでしょう。
⑶ ギャンブル依存
ギャンブルは正社員や公務員の若い子でも数百万円を借りることが可能なので悲惨です。
いくらギャンブル等依存症対策基本法が成立したといっても依存症患者は増えるでしょう。
⑷ 犯罪
ア 小児性愛(ペドフィリア)
小児性愛は行き着くところは宮崎勤(死刑執行)が行ったように発覚を恐れて子どもの命を次々と奪い続けるところまで行き着きます。
命を奪わなくても1人の性犯罪者の平均犠牲者の数は約300人、受刑者によると「その数は少な過ぎると思う」とのことでした。
嗜癖については多くがDSM-5 (精神障害の診断・統計マニュアル第5版)では疾患として扱われています。
(6カ月以上という期間、13歳以下の子どもと関係を持ちたがる、実行したこととがある、ペドフィリアは16歳以上で、相手の子どもとは5歳の年齢差がある。)
※ ただし青年期後期の人がが12歳〜13歳の子どもと性的関係を持っている場合は含めない
となっています。
果たして何人の犠牲者が出ているのか?実態はわかりません。
イ クレプトマニア(窃盗癖)
受験生の方は必須学習です。少なくともDSM-5の定義は覚えましょう。
クレプトマニアの人が摂食障害と併発している場合もあります。食べては吐く、排泄型過食、非排泄型過食は膨大な量の食物を必要とします。経済的に過食を成り立たせることは非常に困難です。
純粋なクレプトマニアの人はクレプトマニアであることに非常な快楽を覚えます。男女ともにです。空き巣や万引きが成功した時には性的エクスタシー、絶頂感よりもはるかに激しい快楽を覚えます。
女の子で頭から靴下に至るまで「どうやって盗んだのだろうか?」と思わせるようなコートまでも万引きして、総額1000万円以上の万引きをしていたことが判明する。居室を捜索したら盗品の数々が出てくるという例は珍しくありません。
3.対人依存嗜癖
⑴ 共依存
これは多くの心理職の方々、福祉職の方々が介入したケースがあるでしょう。
共依存者はアルコール依存症やギャンブル依存のパートナーにに酒を買って来たり、際限なくお金を渡し、サハラ砂漠にホースで水やりをしています。
ゲーム依存症の妻、買い物依存の妻に自分のクレジットカードを渡す夫がいます。
「あの人は酒を飲んで私を殴らなければとても優しくていい人なんだけど」
というのは十分に悪い人です。
こういう妻を周囲の福祉関係者が必死で別れさせても(ついでにDV防止法やストーカー防止法も受験生の方々は見ておくといいと思います。)また同じような男を見つけて結婚します。
「私がいなくちゃこの人はダメ」という生き方が共依存を生み出します。
夫は許しを乞うて泣きながら謝り妻を抱きしめて心まで抱きしめて離さないのです。
⑵ コントロール依存
これはなかなか厄介です。僕ら心理職や医療関係者には多い病です。相手をコントロールすることによって快楽を得る、クライエントさんをコントロールしなければというメサイアコンプレックス(救済者願望にとらわれています。
⭐︎ ⭐︎ ⭐︎治療・処遇法⭐︎⭐︎⭐︎
1.自助グループ
ひとつには自助グループがあります。
アルコホーリクス・アノニマス(AA)や断酒会DARCは全国各地にあります。
断酒や薬物依存ができない人もこのグループに参加できますが、自助グループの良い点と悪い点があります。
一番いい治療者は公臨療法士や福祉司ではなく、やめられた人が暖かく見守りながら励ましていくことです。
時としてやめられた人がまだやめられない人を説教する場合があります。これは一番まずい事態です。
2.薬物治療
アルコールに関してはシアナマイドやノックビントいう抗酒剤があります。
デイケアや入院施設で看護師が患者さんが飲むのを見ているのですが、飲んだふりをして後でペッと吐き出すという器用な人もいれは顔を真っ赤にしながら飲む人もいます。
3.行動嗜癖への治療
根本的治療薬がないだけに厄介です。
これも自助グループが助けになります。
ただ、社会防衛的な観点から犯罪依存症者を施設入所させても入所させている間だけ犯罪をしないと言われています。また、捕まったので今度はもっとうまく犯罪行為をしようという思考回路を持つ嗜癖者がいます。
4.カウンセリング
心理職の出番がやっと来ました。
止める気がない人には動機付け面接MIが有効と言われています。
共感することも傾聴も大事です。人間のクズと言われて自分でもそうだと思い込んでいる患者さんが初めて自分の苦しみを受け入れてくれるわけです。
止めている間の時間を徹底して褒めましょう。
依存行動をしている人でも「もっともっと最悪の事態も考えられたけどここでとどまっている」ことを賞賛します。
悪化していればそれでもカウンセリングに来られたことを賞賛します。
なんとかカウンセリングに来られた人の治療法はなんでもいいのです。
この苦しんでいる人々を大切にすることが一番の治療なのです。