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◯ それでも公認心理師は即戦力とみなされるのか?

現在公認心理師資格ホルダーで「大丈夫、どの分野にも精通しているよ」という人はどの領域のプロでもいないでしょう。

あり得ない過程ですが、

月曜は家裁調査官家事部で別表2婚姻費用分担の調査をして、

火曜日は総合病院で腎移植患者さん、移植を受けるレシピエントの方、臓器提供をするドナーの方のカウンセリング

水曜日は企業でストレスチェックテストを午前中した後に午後は休職してもう後がない人の復職訓練計画を人事部長と患者さんと策定する

木曜日はスクールカウンセラーとして不登校学級の支援をして子どもや保護者の相談に乗り、児童虐待の有無について教員のコンサルテーション、相談をして

金曜日は老人福祉施設で認知機能のアセスメント査定心理テスト、回想法でクライエントさんの話を聞く、午後は市役所で乳幼児発達相談、発達検査をする

ような事がすぐできる能力がある心理職は全国どこにもいないと思います。

「公認心理師が医学・精神腫瘍学に期待される役割」記事では読者のねずみ様にコメントをしていただきました。

「公認心理師に出来る限りの医療知識を得てもらい、コメディカルのような扱いをしたい、と考える医師団体があるのは事実かと思います。」(ねずみ様)

確かに公認心理師カリキュラム委員会では相当にレベルの高い心理職について医学的理解を求める発言がありましたが、そうなるともう「医学心理士」でも作らないとならないなあと思うわけです。

医療以外の4領域でも、司法分野では法的教育を受けないと使い物にならない上、教育、福祉、産業や関連行政領域でも、その勤務先の風土を理解して、求められている役割が入職してすぐに覚えられるわけではありません。

医療現場の心理職はあらゆる科で働いています。

総合病院で働く心理職でも全ての科の医学知識に精通することは無理です。

公認心理師はあくまで入り口の汎用資格、仕事を始めてから体で知識を覚えて一人前となっていくわけですが、「資格がある=心理のことも関連領域のこともなんでもわかるプロ」とみなされて過剰な役割を期待されると困るわけですが、

1.新しい資格なので国家資格=超人

と教育体系が変わらないのに思われても対応できませんし給与も待遇も変わりません。

2.よし、自分は国家資格ホルダーだから心理の事はなんでも任せろ!

という人がいたらもっとまずいでしょう。

資格を取得したというだけで即戦力になるわけではないと言ってもいいでしょう。

公認心理師養成のためのシラバス、教育課程は50を超える心理学学会が加入している日本心理学諸学会連合が意見を出し合って作っているわけですが、

心理学全てにわたる学会が参加していて基礎、応用、実験、社会心理、交通等臨床心理学とは関連が直接ない分野の学会も多く公認心理師養成への発言力は絶大です。

諸心理学を学ぶのは心理職としての知見を広げることから悪いとは思いません。

それに加えて医師団体側からのかなり専門性が高い医療知識習得を迫られて来るようになるとこの資格はあちこちからの要請で、首尾一貫しない迷走資格になってしまうのではないかという危惧を感じます。