○ 公認心理師試験割れ問・里親委託・母子生活支援施設
(問題の概要)
18歳の母親が父親知らずの0歳児を出産したばかり。母親は経済的に困窮、0歳児を育てる意志は母親にはない。この時点で主な措置先は?
① 乳児院
② 里親委託
③ 一時保護所
④ 児童自立支援施設
⑤ 母子生活支援施設
この中で論議を呼んでいるのは「② 里親委託」と「⑤ 母子生活支援施設」です。
それぞれに根拠があり、(平成19年児童相談所運営指針)かなり迷うところです。母子生活支援施設は「措置」では入所できないという指摘がTLではありましたが、添付された資料が平成11年8月、こういった制度はくるくる改正されるのですが、平成19年1.23発出「児童相談所運営指針」では児童福祉法第二十三条の尊重が謳われています。現在も適用されている児童福祉法二十三条では
「配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子であつて、その者の監護すべき児童の福祉に欠けるところがある場合において、その保護者から申込みがあつたときは、その保護者及び児童を母子生活支援施設において保護しなければならない。」とあるのでこれだけで十分根拠になりそうな気がします。
なぜならば母親に育てたいという意志がなく、申し出はないだろうと思われるからです。
また、道理で言えば「⑤ 母子生活支援施設」を選んだ場合においては、育てる意志がない母親についても母性をはぐくむ意味でまず母子生活支援施設に措置をして母性を涵養するという意味合いなのでしょうけれども、子の福祉という観点からはそれが適切かどうかということに疑問が残ります。
そもそも児童福祉法第一条は
「第一条 全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのつとり、適切に養育されること、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その心身の健やかな成長及び発達並びにその自立が図られることその他の福祉を等しく保障される権利を有する。」
とあり、子の福祉の観点から「実親主義」のようなものがあり、実の親、特に母親が育てた方が良いという考え方もあります。
母子生活支援施設なので子の虐待などの心配は薄いと思われますが、何より養育意志がない母親です。
しかし近年この考え方はかなり崩れて来ており、例えば特別養子縁組制度が広く適用されています。
これは実親との親子関係を完全に断絶してしまうという制度であり、子のない夫婦の里親にとってはかなり子どもを大切に育てたいという気持ちから子の福祉に適合する形で里親委託も行われています。
里親委託は0歳児から可能、そう考えると子の福祉について十分研修も受けて来ている里親委託が相当ではないかと思います。
里親に出されたとしても実親が引き取りを希望すれば引き取りも可能ですが設問はあくまでも「現時点」であり、諸外国では社会的養護よりも優先順位が高い「里親委託」が望ましいのではないかと思います。
かなり解答が予備校発表や個々人でも割れている問題なので、不適切問題になるという可能性も指摘しておきます。
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_
Tweet