公認心理師試験は徹底して現場感覚を捨てよ・正答選択のコツ
1. はじめに
公認心理師試験で心理職・また、他職種からの参戦組に話を聞いてみるとどうにも現場感覚が捨てられない、邪魔をする。そういったことが正答選択を行うのに邪魔になるようです。つまり、公認心理師試験には、「公認心理師試験感覚」が必要になるということです。
2.現場感覚との相違
僕自身よく間違えているのは心理検査に関する問題です。たとえば投影法であれば「わかりません」という答えに対して、何らかのデータが欲しいので「もうちょっと頑張ってやってみませんか?」とか、比較的時間がかかるテストについては休憩時間を取ると休憩効果が出てしまい、休憩なしで検査を受ける人との差異が出てしまうので「あと少しで終わるからもうちょっとお付き合いください」と言って別日程にもう一度心理検査をやることをなるべく避けるようにします。
これはあくまで現場感覚であり、患者さんに対して少しでも侵襲的な働きかけは誤答となります。
心理職もケースワーク的な、あるいは現実的な介入をすることがあります。「〜を勧める」という介入も、どうも誤答になってしまうようです。例えばぐったり疲れ切ってやってきたクライエントさんが職場の上司に連れられてやってきたとします。そうすると上司と話しながら「少し休んでもらった方がいいかもしれませんね」というのは現実から少し形を変えた「命令」です。
公認心理師は傾聴をしたり、どういった状態で今いるのかというアセスメントをすることがあってもあまり現実介入はしないという選択肢が正答となります。
これは他職種の人にとってもかなり難しいことです。というのも社会福祉士、精神保健福祉士等の人々は制度を知り、その制度を生かしてどのように当事者の人の問題に介入していくかというトレーニングを受け、また、日々そういった仕事をしているからです。
他職種Gルートの人の中で、事例問題を見ていてもどうしても誤答選択肢を選びたくなってしまうのはこのためで、過去問の解説を見ていてもしっくりと来ないところがあるかもしれません。「これはこういう試験だ」ということを割り切って回答する必要があるのだと思います。
今回、第4回試験でかなり割れ問となって話題を呼んだ問 154番、18歳女性が産んだ0歳児をどこに措置するか、ということについて「母子生活支援センター」が誤答で、「里親委託」が正答だったというのは、正に現場感覚を捨てよ、という問題だったと思います。
現場感覚では、たとえ育てる気がない母親であっても、赤ちゃんと一緒に生活を共にしていれば母性も生まれてきて子育てをしたいと思うようになるかもしれない。これはそのとおりだと思います。
しかしながら、この問題で問われているのは「0歳児であっても里親委託ができるのか?」「子どもを育てる気がない母親を母子生活支援センターに子どもとともに措置することができるのか?」という法律上の根拠もあるのですが、「子の福祉を第一に考えたらどのようにしたらいいか?」という考えを要求されるのです。
育てる気がない母親の下で育てられるよりは子どもが欲しくて何度も研修を受け、0歳児でも育てられるようなトレーニングを受けている里親のところに行った方が子の福祉に寄与するということです。
「現場感覚」についてですが、当ブログブレーンの S 女史に聞いてみたところこんな答えが返ってきました。
僕:受験生にいろいろ教えているとものすごく現実的な対応をしようとして誤答になってしまうという例が結構多い。
S:あー、それはあるあるだよね。職種ごとに役割が違うから、公認心理師には何が求められているのか知らないとならない。
僕:公認心理師に求められているものがわかれば教えやすい。解きやすい。
S:医師法第1条「医療及び保健指導を掌ることによって公衆衛生の向上及び増進に寄与し、もって国民の健康な生活を確保するものとする」とあるので、医療保健に関わる仕事は医師との連携は基本になるので、多分どの職種も原則として自己判断はさせないんじゃないの?法制度の基本として抑えておけと。
僕:(なるほど、医師の出題委員も多いからそこらへんも関係しているのかも)
裁判員問題もそうだったよね、半端な知識で現実介入するよりは裁判所に相談するように勧める、とか、あと過去問で任意入院を勝手にやめて帰宅しようとした例への対応、主治医に相談する、という回答もあったよね。
S:制度上、管轄する者や責任者があれば、それを尊重しろということなんじゃないの?資格試験である以上、基本原則の理解が求められると。
僕:なるほど。
3.終わりに
まあこんな感じで、僕も相当「正答選択のコツ」 シリーズで事例問題の解き方を書いて来たのですが、1回 1回試験が行われてデータが集積するごとにコツはよく見えてくるようになりました。
以前も書いたのですが公認心理師が多職種連携の中で一人だけイニシアティブを取ってスターダムに上がろうとしたら、それは基本原則から外れてしまう、ということがこの資格試験で注意しておきたい点かもしれません。