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公認心理師試験に新卒者が有利な理由

1.はじめに

前々回、難しいと言われた第3回公認心理士試験の合格率は全体合格率 53.4 パーセント、その中でも新卒E ルートの合格率は 81.0 パーセントという高い数値でした。一方、第4回試験を受験していた今回の新卒者に聞いてもそこそこラインに乗れていたような気がします。

僕も第3回試験や第4回試験を受験生と同じ条件で解いてみて、苦労した覚えがありますが、これだけの高い数値をあげられたことには大きな理由があったのだと思います。その理由について考察を加えてみました。これらについて考えてみることは、他職種Gルートの受験生の方々にとって、やらなければならない事柄や転換すべき発想が何かということについてのヒントにもなるのではないかとも思い記述しています。

2. 新卒者にとって有利な理由その1

新卒者は心理学の基礎の学び方を知っています。第3回試験で新卒者合格率 81.4 パーセントと、全体合格率 53.4 パーセントに比べてかなり有利でした。これまで G ルートの受験生の人たちと第1回 2018 年試験からずっと対話を続けて思って思ったのは他職種 G ルートの受験生たちは「心理学的な思考法に慣れていない」ということです。国立名門大学を出ていて、高校時代まで数学の素養があったとしても、心理統計や実験法の考え方になると途端に崩れてしまう。

また、心理学史、知覚心理学は心理学の基礎の基礎ですが、知識問題頻出のそれらの知識を知らないということは不利になります。

心理学史は基礎心理学に密接につながっています。精神物理学とは何か、どうしてゲシュタルト心理学が生まれたのか、その発想の原点は、学習心理学とは?トールマンが心理学の中で果たして来た役割とは?どれも大切な心理学的な知識です。

また事例問題では「現場感覚は捨てよ」ということはこれまで多くの予備校講師等が言っているのですが、どうしても心理職として心理の現場にいた人以外の職種の人は「具体的かつ効率的な解決法」の選択肢を選んでしまう。

これに引き換え、新卒者は6年間心理学の心理学史を含む基礎を叩き込まれていて、学部1年次から「そもそも心理学とは何か?」心理学における統計とは?」「心理学における実験法とは?」などを習っているわけです。

学部・院でも臨床心理学を習う際に徹底して心理学に基づく考え方をする、事例問題で迷ったら、まず最初に具体的な解決方法を考えるよりも、まず相談活動を行う、その際に相手のニーズを知るために徹底してアセスメント(査定、評価)を行うという考え方を叩き込まれています。

受験する院生の多くは公認心理師とは関係のない、あるいは薄い分野を学び、課題を提出し、しかも修士論文を書いてきています。それでも受験に際しては有利になります。なぜかというと、例えばロールシャッハを勉強していても精神分析を習っていても、その根底にあるのは「心理学的な思考・発想法」です。教える大学教員も、公認心理師とは関係ない分野で教えていたとしても根底は「心理学の基礎」から派生した、心理学的な考え方に基づくものなのです。

3.新卒者にとって有利な理由その2

したがって心理学専攻者というのは 6 年間分、聞いていないようでもぼんやりとは覚えていた「基礎的な知識・考え方」を身に付けていたという意味で有利なのだと思います。そして心理テストはかなり高いアドバンテージになります。

心理テストは実際に見て、やった場合しか体感してわからないです。例えば第4回試験で難問とされた IES-R(出来事インパクト尺度)についても授業でPTSD やサイコロジカルファーストエイドのことについて習っていればわかった問題かもしれません。

実際、それは例えば裁判員裁判やハーグ条約、関係法規にしても同じです。知識問題や事例問題に関しても心理学専攻者は「正答を選択する」のではなく、心理学的知識やセンスによって「誤答を取り除く」センスには長けていると思います。

4.それでは他職種 G ルートの人はどのように第5回試験を乗り切るべきか

第4回試験は現場感覚について問う問題が多かったような気がしています。(私見)これを何とか乗り切るためには「慣れ」が必要でしょう。「この問題は心理学的にはAという選択肢が正解かも知れないが、自分は今まで現場に立っていた信念からBという考え方で通す」と問題に対して戦いを挑んだとしても誤答選択肢を選んでしまうだけでしょう。

他職種 Gルートの人たちにとっては今から勉強を始めても決して早すぎるということはありません。まずは過去問をもうどんどん解き始めましょう。過去問に近い問題が多く出ていたという第4回試験ですが、こういった選択式マークシート国家試験というものは、限られた文字数で限られた文の問題を出すしかないわけです。ということは必然的にだんだん過去問と重なる出題が多くなると思います。

5.今後の予測

第5回試験は新卒院生が3月卒業し、6月に試験ということで、臨床心理士も重なるので新卒者にとってかなりの苦戦を強いられることになるのではないかと思います。しかしながら他職種Gルートの人たちは駆け込み受験も多く、この最後のチャンスを逃さないためにも頑張って公認心理師資格を取得するためにはなお一層の努力をしてし過ぎるということはないと思う次第です。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_