ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:成年後見人

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sᴡɪᴍ ɪɴ ᴛʜᴇ ᴡɪɴᴅ.
特別な何かを求めている限りは特別なものには出逢えない気がして。

○ 第4回公認心理師受験生&現役心理職への挑戦状「成年後見制度」

1.序

重箱の隅ををつつくような問題が第3回で出たので僕も重箱の隅を叩いて壊すような記事を試しに書いてみることにしました。知らない知識はあるでしょうか?評判が悪ければまたやります。

成年後見制度については
「公認心理師が成年後見人制度に期待される役割の増大」で記事にしましたが、公認心理師試験は「濡れ落ち葉一枚を見て森は見ない」ことを前提とした「史上最強のクイズ王決定選」です。臨床能力とはほとんど関係ありません。

今回は成年後見人制度についてありとあらゆることをくどくどと書きます。よく読んで試験対策をしておきましょう。裁判所・法務省・厚生労働省のホームページ(記載事項及び僕の知識を総動員してみます。これで第4回試験で成年後見制度が出題されてここにない知識が出たら僕の負けです。

2.公認心理師制度との関係

公認心理師法は第三条第一号によって、従来成年被後見人、被保佐人が欠格事由となっていて、該当すると公認心理師になれない、そして該当するに至った場合には必要的欠格事由として公認心理師はその資格を喪失するという定めがありました。

ところが内閣府から提出されていた成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化に関する法律」が令和元年6月14日に成立しました。これまで数多くの国家資格で成年被後見人になった場合、欠格事由として定められていた 187 資格が被後見人となっても資格剥奪をされないことになったのです。

公認心理師も同様で、被後見人となっても欠格事由とはならなくなったのです。

現在の第三条第一号は「心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うものとして文部科学省省令・厚生労働省省令で定めるもの」となっています。

3.成年後見人制度

そもそも成年後見人というのは、被後見人、被保佐人、被補助人の権利、身上監護、財産保護のために作られたものです。従来は「禁治産宣告」(寝たきり、認知症、高次脳機能障害、知的障害、統合失調症など意志能力の欠缺(「けんけつ」欠けていること)や心神喪失者や意志能力の減弱や浪費等の心神耗弱者に対する準禁治産者のための「準禁治産宣告」と呼ばれていたのが、平成12年(2000年)に法改正されたものです。

4.任意後見

成年後見人制度に入る前に任意後見人制度について説明します。(法務省ホームページ Q&A 参照)

任意後見人制度とは、本人が十分な判断能力があるうちに、将来、判断能力がなくなった時のために公証人役場に行き、公正証書を作成し、将来的に誰が後見人として財産管理をすることになるか定めることになります。後見人の指定は家族でも可能です。これを「任意後見契約」と言います。

財産管理といっても、例えば本人が意志能力が欠缺した後に特別養護老人ホームに入るにしても多額のお金がかかることがあります。そういったときのために任意後見制度があるのです。任意後見制度を利用した場合、財産管理が適正に行われるのです。借地を本人が持っている場合も同様に後見人が財産管理を行えるのです。メリットは、被後見人が意志能力があるうちに信頼できる後見人を指定することができるということです。

任意後見は家庭裁判所が必ず後見監督人を指定します。後見監督人は後見人が依頼した公正中立な、本人の財産管理が適正に後見人によって行われていることを確認するためにあります。(以上法務省ホームページ参照)

5.家族信託制度

最近つとに注目されているのが家族信託制度です。家族信託というのは老後の生活に必要な介護、資産管理等を信頼できる家族に管理・処分を任せる制度です。成年後見制度に比べて、制約が少ないです。家裁への報告義務もありろん。元気なうちに本人の指示を得ておけば、本人の意向に沿った財産管理ができて、しかも本人が判断能力を喪失した後も財産の処分をすることができます。家族信託は多分出題されないだろうと思うの参考まで、ここまでにしておきます。

6. 成年後見制度

成年後見人制度は、民法第7条「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にある者」に対して行われます。

後見人選任事件では、(家裁では「事件」という。)調停(話し合って合意に達すること)ではなく、裁判官の審判で行われます。なお、後見人選任事件についてはいったん申し立てたら申立人の意向で勝手に取り下げることはできません。

これも本人保護のためです。ほとんどの後見人選任事件については家庭裁判所調査官の調査が入ります。

さて、後見制度には3つの類型があります。

⑴ 後見

ひとつめは「後見」です。本人が寝たきりや幻覚妄想状態に常にあり、見当識(自分の名前、今どこにいるか、年月日がわからない)状態で回復の見込みがない、こういった場合には後見を開始する審判決定がほぼ出ます。

後見を行う目安としては長谷川式知能検査(HDS-R) 12 点~16 点程度です(通常、20 点以下は認知症と診断されます。(諸説あり)なお、被後見人となるのは HDS-R11 点以下、知能指数 40以下というのもひとつの判断基準です)。MMSE で言えば14点以下と言えるでしょう。(WAIS が行われる場合もあります。)

財産管理が十分にできない、土地取引や大きな金銭を動かすことができない(ただし、預金引き下ろしもできない)、契約行為は意志が欠缺した無能力者として扱われますので、後から被後見人や被保佐人(後述)が行った行為は取り消すことが可能です。

民法13条1項では、借金、訴訟、相続承認、放棄、新築、改築、増築行為が定められていて、これらの行為を被後見人が行った場合取り消すことができますが、それ以外の行為についても同意権がなかったものとして取り消すことがで
きます。日用品を買う権利は被後見人にもあります。

(ただ、被後見人や被保佐人 HDS-R (16点以下が目安)これら被後見人らの行った契約は必ず取り消さなければならないというわけではないので、異議申立てをしないと契約は有効です。)。HDS-R は財産の処分に関する検査ではありませんので、一つの「基準」と考えた方がよく、点数が高い、低いからといって後見や保佐のカテゴリーが厳密に区別されるというわけではありません。(MMSE や WAISは必ず行われるわけではないです。)

⑵ 保佐

「保佐」は後見よりも本人の自由度は高いけれどもやはり意志能力が減弱している状態です。保佐であれば、民法13条第1項の貸金の利息を受け取る権利があります。また、日用品を買うことができる権利もあります。遺言状を書く権利もあります。

ただし、大きな金銭が動く行為、遺産分割は保佐人の同意を得なければなりません。

⑶ 補助

「補助」はさらに軽い状態で、日常の生活がほとんどできるものの、意思能力が弱まっている場合を差します。以下は裁判所の類型判断の目安ですが、

ア 後見=「支援を受けても、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断をすることができない。」

イ 保佐=「支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断をすることができない。」

ウ 補助=「支援を受けなければ、契約等の意味・内容を自ら理解し、判断をすることが難しい場合がある。」

ということです。

判断が難しい場合には、医師が「鑑定」を行い、後見等が必要か、どのレベルにあるのか詳細な鑑定を行うこともあります。(家裁からの指示による)。また、この鑑定は必ず精神科医が行わなければならないわけではありません。
後見人制度は被後見人、被保佐人の保護のためにあるので、推定相続人(の配偶者や子など)や利害関係者のためにあるのではないということに注意を払う必要性があります。

なお被後見人、被保佐人も一身上の身分事項、結婚や選挙権の行使はできます。 

後見人の申立権者は配偶者、四親等以内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人、検察官(市町村長・身寄りがない場合)です。

後見人、保佐人、補助人は家族がなることもありますが、そういった場合、推定相続人(本人が亡くなった後相続権が発生する場合)、利害関係のない後見監督人、保佐監督人が選任される場合もあります。後見人等は家族が希望した弁護士、司法書士がなることもありますが、裁判所が独自に選任することもあります。弁護士司法書士が後見人等になったからといって後見監督人が必ず選任されないというわけでもありません。なお、このブログで何度も出てくるマチパーさんのような社会福祉士も後見人になることができます。

実務上、本人に大きな財産がある場合には家族や社会福祉士が後見人になることは少ないです。また、後見人等は1人とは限らず、例えば妻がと弁護士が共同で後見人になる場合もありえます。

申立人は裁判所が選任した後見人を希望することもできますし、家庭裁判所(家事審判官=裁判官)が独自に後見人を先任することもあります。ただし、家裁が意向と違う後見人等を選任したからといってそれを理由に解任の申立てをすることはできません。

裁判官が職権で申立てとは異なった後見人を選任することができる根拠は民法843 条第4項にあります。

「成年後見人を選任するには、成年被後見人の心身の状態並びに生活及び財産の状況、成年後見人となる者の職業及び経歴並びに成年被後見人との利害関係の有無(成年後見人となる者が法人であるときは、その事業の種類及び内容並びに成年被後見人との利害関係の有無)、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮しなければならない。」とあります。

なお第1項は家庭裁判所(家事審判官)が職権で選任すること、第2項は成年後見人が欠けた場合には親族等の請求や職権で成年後見人を選任できること、第3項は親族等の請求や職権で後見人をさらに選任できることが記されています。

後見人が不正を働いている場合には後見人解任の申立てをすることもできます。よく誤解されやすいのが、裁判であれば弁護士は交渉権や代理権を持つことができて司法書士は書類作成のみしか行えないのですが、後見人、保佐人、補助人になると司法書士、社会福祉士、あるいは親族は代理権を持つことができます。

成年後見人等は、本人の身上監護の一環として生活、医療、介護、福祉の支援を行います。必要な福祉サービスを受けられるよう、介護契約締結、医療費支払いも行います。ただし、実際の介護や食事の世話などはその職務に含まれません。

成年後見人等は裁判所の監督を受けることになります。被後見人等の財産が適正に管理されているかどうかを定期的に家庭裁判所に報告しなければなりません。

さて、成年被後見人等になるとその事実が法務局に登記が行われます。事務取扱は東京法務局で一元化して行っており、後見人等選任申立ての際には被後見人等にすでになっているかどうか、確認の書類を取り寄せることになります。
後見事務は煩瑣です。したがって有償で行うことができます。根拠は民法862条、「各裁判官は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる」です。

以上

公認心理師試験対策

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◯ 公認心理師が精神疾患で登録剥奪となる時

昨日の記事「10.30公認心理師法施行規則改正への危惧-精神疾患は資格取消しになるのか?」の続きです。

読者のねずみ様からコメントをいただき、成年後見人制度の変更にともなって公認心理師以外の資格職も精神疾患患者の権利が制限されるだろうとのことでしたが、今明らかになっている公認心理師制度についてのみ言及します。

他資格については今後注視していきたいと思います。

昨日のインターネット官報

https://kanpou.npb.go.jp/20191030/20191030h00121/20191030h001210001f.html

のp2ですが、第十八条では公認心理師が「精神の機能の障害により、公認心理師の業務を適正に遂行するに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切にできない者とする」について、届出義務者(戸籍法によれば本人または同居していてもいなくても親族、またはその他の同居人)となります。

そして第十八条は「(必ず)届け出なければならない」と規定しています。

医師法第4条では心身の障害により医業を行うことが不可能な場合には医師免許を与えないことがあると定められています。

医師法第7条には心身の故障による免許取消しの審査規定がありますが、医道審議会の審査を経てのことです。

(歯科医師、理学療法士・作業療法士なども同様)

以下は元々僕が指摘してきていることですが

医道審議会で処分される医師・歯科医師は違法薬物使用、危険運転致死傷、窃盗や診療報酬不正請求でも免許停止処分となっていることが多く、医師にも秘密保持義務がありますが、それを理由とした免許取消処分は見たことがなく、ところが公認心理師がこの処罰を受けると一発で登録剥奪されます。(だから守秘義務を軽く見ていいという趣旨ではありません。)

さて、実際のところ医療や福祉、教育等あらゆる医療職、教育職、福祉職が働く現場では心身障害や故障を抱えるスタッフが必ずいます。

統合失調症、双極性障害の医師も福祉職も心理職もいます。

臨床心理士倫理綱領では心理士は心身の健康を保つ努力義務を謳っていますが罰則規定はありません。

医療、福祉、心理職なら知っていることですが、精神疾患には原因がなく、あたかも時限爆弾が爆発するかのように突然発症することがあります。

精神疾患は必要的届出事項だろうと迫られた公認心理師はどのようにしたらいいのだろうかと思います。

リワーク、復職プログラムを担当している心理職は、メンタルダウンして、その時は働けなくともいずれ復職して元気になった患者さんを多く見ています。

何ら審査なしに心身の故障で働けない=資格剥奪というのは、心理職だからこその違和感を感じるでしょう。

公認心理師制度が発足後5年で見直しがなされる際、良い方向に改善されたらいいと思っていたのですが、今回の法令変更で暗澹たる気持ちになったのはきっと僕だけではないと思うのです。

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