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◯ 俳優新井浩文女性暴行5年実刑判決・性犯罪厳罰化は再犯率を助長のジレンマ/公認心理師更生プログラム関与へ期待

出張マッサージの女性に暴行を働いたとして俳優新井浩文被告に一審で懲役5年の実刑判決が出ました。

こういった「卑劣で悪質」(裁判官)な性犯罪について、報道される度にその量刑の厳罰化が叫ばれています。

PTSDの教科書で読んだのですが、性被害に遭った女性が、犯人特定ができていない性犯罪の犯人を探し出して逮捕させるというNPOに所属して活動する事にやりがいを感じ、症状を軽快化させる事が出来ていたという事例が紹介されていました。

社会的に認められた代理的報復が彼女を癒していると言えるでしょう。

重大犯罪に対して世間からの刑罰強化の要求は当然の事で、被害者感情、社会的防衛、社会的感情からは当然の事です。

ところが性犯罪には量刑を厳罰化しても全く効果がないという研究結果が多く出ています。

英文: Does being tough on crime actually deter crime?「犯罪厳罰化は抑止力になるのか?」

https://arstechnica.com/science/2019/05/does-being-tough-on-crime-actually-deter-crime/

この英文記事によると犯罪者が社会的に犯罪をしなくなる抑止力が見受けられるのは「刑務所に入っている期間だけ」という事です。

犯罪への心理学的更生プログラムとしては北海道追試でも出題された、Andrewsが提唱したRNRモデルは、

RISK(再犯リスク)原則、リスクに応じた処遇密度を行う。(低再犯リスク者に高密度処遇をすると再犯率が高まる。精緻なアセスメント必要。)

NEED原則、処遇は仕事状態、交友関係、反社会的パターン、態度等の犯罪誘発要因にターゲットを絞る。(精神疾患に焦点を当てても意味がないとされています。)

RESPONSIVITY原則=応答性原則は教育学における適正処遇交互作用同様に受刑者の個性に応じた処遇が必要ということです。

RNR原則は以上です。

また法務省矯正局もRNRモデルを取り入れた処遇をしています。

http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/n62_2_6_3_1_1.html

犯罪=病的行為としてとらえていた医療モデルは古いと言われていますが、重い疾患=重犯罪は重い処遇で、という世論を現在も立法府は無視できません。

RNRモデルによればは重犯罪は高濃度処遇となるのですが、それでも死刑、去勢という厳罰が重大性犯罪者に処遇として適用されることはありません。

本来ならRNRモデルを敷衍していけば相当な厳罰も可能でしょうけれども、憲法36条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と規定しています。

一方、認知行動療法を主軸としたRNRの効果については疑念も出ています。

そこでGLMモデルGOOD LIFE MODELという、更生に向かう犯罪者が人生に喜びを見出せるようになれば再犯率は低下するという研究が各国で行われています。

(確かに幸せな生活をしていて充実していればそちらの生活を大切にするでしょう)

今回新井被告は即日控訴をしました。

新井被告が有罪か無罪なのか現時点では断定できません。

三審制で被告人が控訴、上告をするのは国民固有の権利だからで、それまでは推定無罪だからです。

傷ついた被害者への心理的ケアを行う必要性がある事には間違いがありません。

そして心理職も人間なので被害者臨床を担当したり、報道があれば性犯罪者=「許せない悪」と思うのも自然でしょう。

性犯罪者の社会適応と再犯防止には十分な配慮ときめ細やかな対応を受刑者に対して行っていくという、司法矯正公認心理師にとっては難しい課題が常に存在しています。