
経験者優遇の臨床心理士・公認心理師の求人
1.はじめに
心理の求人は資格取得したばかり、あるいは院生や院を卒業したばかりの無資格者でも雇ってくれるところもあります。放課後デイサービス (発達の問題を抱える子たちの療育を行う)や社会的養護施設(親が育児ができない子のための施設)、福祉施設は割と無資格者でも、あるいは資格取り立ての人でも入りやすい職場です。
ところがこれが例えば「総合病院心理検査経験者」や「緩和ケアカウンセリング経験者」になるとぐっとハードルが上がり、「経験者に限る」というものになります。
じゃあこの「経験者」というものが何をもって経験かというと「300床以上の病院での勤務経験3年以上」というピンポイント求人が多く、「放課後デイや社会的養護で5年働いていました。だから就職させてください。」というものではありません。
2.実態
どんなに狭い門で無茶苦茶に見えるような求人でも、それが独立行政法人の安定した医療機関などは求人倍率が 40倍ぐらいになってもそういった「経験者」が必ず応募してきます。しかも場所によっては「年齢 35歳までに限る」というものもあります。採用側の言いたいこともわかります。経験があって即戦力になって、しかもある程度年齢が若いので柔軟性も持ち合わせていて、その医療機関のカラーにも染まりやすいということです。
言いたいことはよくわかります。ところが実際、そういった応募者がいるのかというと、これがいるのです。どこから沸いて出たのかいつも不思議になります。
3. キャリア形成
心理は主要 5 領域と言われていますが、たとえば最初に医療領域に勤めたから、ずっと一生医療領域で働くかというとそんなわけでもなく、非常勤で医療機関に勤務しながらバイト代稼ぎにスクールカウンセラーをやっている、そういう人は多いはずです。
そうすると医療&教育のキャリアが積めるわけで、司法関係の相談業務も非常勤であると言えばあります。数は少ないと思いきや結構司法、構福祉や教育から→医療、産業領域にキャリアチェンジをする人もいます。
僕は若い院生さんには「自分がこれからなりたい仕事を考えて、その上でキャリア形成のために最初の仕事を考えて」と言うのですが、これは確かに真実で、医療一筋何十年という人の方が信頼されます。しかしながらこう言っている僕が実は全くこの法則に従わず、なんと短期間で職を転々として結局 5 領域をあちこちぶらついて就職しています。
たとえば医療→司法の場合には「うちの医療機関は医療観察法指定の病院なので」そういった方々の面談をかなりの数やりましたし心理テストも取りまして…」と言うとウケは良さそうな気がします。
教育と医療は掛け持ちが多いのは先ほど書いた通りですし、あまり内容を問わないのであれば○○→福祉は結構簡単です。福祉でも福祉→○○分野は十分あり得るでしょう。
だからキャリア形成のためには純粋に大病院で研究をするというわけでもなければそんなに気にすることもないと思うのです。
4. そうは言ってもどうにもならないことはある。
昔のことを思い出すのですが、男女雇用機会均等法を推進するという公的機関で「女性の方、子育てをしながら働いていた、これからそうするという方のカウンセリング、女性の経験者募集」ということで分野には興味があったので、実にわけのわからない思いをしながらまあとりあえず面接試験を受けたことがあるのですが「うちは男性は募集してないんだよねえ。
女性じゃないと。ただ(公的機関なので)応募してきた人の面接はやらないとねえ」とジェンダー差別を受けた覚えがあります。
「経験者募集」のところにも実はどんどんいろんな人たちが応募しているのを御存じでしょうか。臨床心理士・公認心理師の資格持ちならまだいいのですが、「大学で心理学を勉強してそれから心理学を自分で勉強して気に入りました」というレベルの人がたくさん受験に来るよと採用担当人事の人が教えてくれました。
あまり給与が高くなくても、経験を積みたいからという理由で僕も A クリニックに勤務したことがありました。次の B 事業所 (今)を受験するのにあまりにも間が空いてしまうと就職をするときにいろいろ突っ込まれて不便だろうと思ったからです。
案の定、スクールカウンセラーを退職した後 A クリニックに移るには条件が少しでもいいところを探して四苦八苦していたのですが「ま、何もないより履歴書埋めとかないとなあ」と思って、本命のB事業所が求人(ほぼ毎年)をしたので応募したのを覚えています。そうするとあまり突っ込まれないもので、「なぜAクリニックに就職するまで5ヵ月も間が空いたんでか?」という質問に対しても「慎重な性格なので、じっくりと探しました。少し慎重すぎたかも知れませんね」と言って、ほとんど聞かれなかったのを覚えています。
5. 終わりに
あまり待遇がよくない、と言ってもとにかくその分野の経験を積みたいから、ということでオーナーの人柄や給料なんぞを度外視して先を見据えてまずはその分野に就職する、という方法もアリだと思います。希望の就職ができるよう、みなさんの健闘をお祈りしています。
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_
Tweet