ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:得点補正

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第5回公認心理師試験の見通し

1.概説

まず、得点補正についてです。第4回公認心理師試験の「合格基準及び正答について」には「1. 合格基準は次の条件を満たした者を合格者とする。総得点230点に対し、得点143点以上の者(総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で補正※した。配点は一般問題が1問1点、事例問題が1問3点である)。合格基準は、総得点の60%程度以上を基準とし、問題の難易度で補正するという考え方を基に決定する
こととしている。」

という記述があり、これまでは138点が合格点だったものが143点が合格点と今回変わりました。これは国家試験としては十分あり得ることです。ほかの国家試験も合格点がその度に変わるということがこれまでも多々あったあったので、第3回試験まで 138 点と同一基準で統制されていたのは、実は根拠はないことが明らかになりました。

僕は「これは資格試験だから138点取れれば必ず合格できる、落とすための試験ではない」という持論を持っていたのですがそれは崩れました。多分ですがこの試験は資格試験ではなくて競争試験なのではないでしょうか。

つまり、これも仮説ですが「公認心理師数がある一定程度以上増えたら困る、したがって合格させる人数は絞ろう」という発想になっている(なってきた)と個人的には考えています。だから得点調整を行ったのではないか、試験の難易度で調整するならば、元々試験を出題する段階で合格点を138点ちょうどになるよう、これまでの試験で行っていた基準点にしていたのではないかと思います。

第4回公認心理師試験の合格者が 12,329 人、2021年9月末日で資格登録者数42,678人(2021年9月19日実施試験なので第4回合格者は含まないと思われる)きっと資格登録者数は 55,000人強に達するでしょう。

2021 年現任者講習の受講者が 26,000人、これまでの不合格者が再度試験を受験するとすれば受験者は4万人程度(全くいい加減な数字で申し訳ないのですが、予測不可能でなんとも正確な数字が出せない)と思うわけです。

公認心理師カリキュラム検討委員会では専属の心理職として働いている人数を5~6万人と仮定しています。なんといっても受験者数がいつも多い割合を占めるGルートの中の、合格したとしても心理職として働くわけではない人たちの推定数が試験合格者を左右しているのではないかという仮説も考えられます。

Twitter に教員の方の書き込みがあったのですが、特別支援コーディネーターをしていたり、生徒の相談をしているとこの試験のための勉強をしていたことが役立った、満足したという書き込みがあり、それはそれでこの資格取得をした人のあり方です。

何より「経過措置」ということで公認心理師法施行規則第5条に定められている施設内で相談業務を行っていたということが認められれば特に問題なく受験ができるのですから、これまで心理業務を専属で行っていた、あるいは行おうとしている人と、他職種Gルートの人たちの確執が根深いのは知っていますが、何より法が定めているので法のとおりにこれまで試験は運用されてきたというだけの話です。

この公認心理師資格を所持した人たちの中で官側が求めていたのは心理専門業務を行っている人たちの数字ということは容易に推察できます。上記教員の方のような人たちがどの程度の数を占めるのかという、日本心理研修センターも見えない数字を仮定することによって「問題の難易度で補正するという考え方を基に決定することとしている。」の補正程度も変わって来るのではないでしょうか。

(1) 仮定1→今回の試験と同様の難易度であり(これも諸説ありますが、今回の試験は第2回、第3回試験に比べて解きやすかったと言われてもいます。) 得点の「補正」を行い上方修正をして合格者数を調整する。

(2) 仮定 2→第2回、第3回試験の水準の試験として 138 点として合格者を試験難易度で絞る。

(3) 仮定3→総合的に合格率、合格者数が低くなり、下方修正をして138点よりも合格点を低くする。

とまあ、いろんな場合を考えたわけですが、こればかりはフタを開けてみないとわからないわけです。第5回試験受験者の方々は「6割程度確実に取れるように勉強しよう」と考えているわけではなく、7割でも8割でも高い得点率を目指して勉強していることは確かなので何%取ろう」という勉強方法はあり得ません。

2.結論

どう考えていても今度の試験の難易度がどうなったとしても、受験生のみなさんは勉強に真剣に取り組むしか合格への道筋はないわけです。ですから僕があーだこーだと戯言を言っていても、それについて考えるのは詮無いことです。

ただし、これだけは言えるのは、毎回の試験が過去問の繰り返しにだんだんなってきているので、過去問重視の勉強法が役立つということ。これは確かだと思います。ブループリントを無視してあまりにも難問奇問ばかり出していたら試験としての統一性が取れません。

したがって試験問題が重複してくると思います。そして、国家試験で選択式なので、浅井伸彦先生が述べていたように、限られたスペースの中で限られた文字数を出題するのがこの試験の特徴です。だから絶対に解けない問題ばかりというわけではないとも考えられるでしょう。

再受験組の合格率は低くなると僕は過去に書きました。他職種の人の合格率も低くなるとかいろいろ書いてありますが、それは個人個人にかかっています。実際、純粋に新卒の院卒者が不合格になっていたことも、再受験組で全く心理の門外漢だった人が合格している例もあります。

そこは学習の仕方やその量の個別性に依存しているのではないでしょうか。

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○ 第4回公認心理師試験分析〜合格点6割138点神話の崩壊

1.はじめに

さて、合格発表から一夜が過ぎました。まだ忙しさにかまけて、あるいは結果は郵送で届くものだからと不安でも腹をくくって結果が送られて来るのを待っている人たちも多いのではないでしょうか。

さて、そこで昨日のフィーバー状態から少し目が覚めた(僕が)ところで、まずは公認心理師試験全体の様子を見てみます。

2021.9月末公認心理師登録者数42,678人に加えて昨日発表された合格者数が12,329人、推定合計5万7千人ほどの公認心理師が誕生していくわけです。

今後この人たちがどの程度の割合で心理職を行っていくかどうかはGルート他職種の登録者の動向にかかっています。僕の知っている人で精神保健福祉士に加えて心理職としても働き始めた人もいますが、ごく少数派でしょう。

※ 以下図はウサねずみ@usanezume さん作成
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公認心理師カリキュラム検討会委員会で概算されている実働心理職数は5〜6万人、同程度の公認心理師数はすでに確保されているわけですが、実際に心理職専業として稼働していくかどうかは上記他職種の方々の動向を見てみないとわかりません。

よく聞く発言ですが「公認心理師受験勉強をすることによって心理学の知識が深まり、仕事に深みと幅が出てきた」ということで他職種のフィールドをそのまま行っていく人も多いのではないかと思われます。

したがって必要公認心理師数がどの程度なのかは試験当局にも大元の厚生労働省にも正確にはわからず「多分この程度だろう」という概算で補正をしたのではないでしょうか。最終的には実働公認心理師登録者数≒必要公認心理師数≒現在活動心理職数が望ましいと当局は考えていることが予想されます。この「必要公認心理師数」が試験難易度にも得点調整にも影響を与えたことは想像に難くありません。

2.得点調整の意味

心理職試験ではもとより臨床心理士試験の採点や合格点はブラックボックスなのでわからないのですが、国家資格試験は「6割程度」の難易度で補正されることはよくある話で、実際、介護福祉士では68.3パーセントが「6割程度」になったこともありました。

この国家資格試験は「落とすための試験ではなく、6割138点取れれば必ず合格できた試験」ではなくなりました。「問題の難易度で調整」というのは実際には異なっており、問題の難易度ならば問題ができた時点で難易度は決まっているわけで、実際には合格率や合格者数を見ながら得点調整を行ったわけです。

この得点調整の意味合いは、確かに問題の難易度にも得点率は依存するのですが、受験者の得点分散(散らばり具合、どの国家試験でも非公表)からも影響を受けていると推察されます。

多分今回得点調整が入ったのは、第3回試験の受験者数が(多分)コロナ等の影響で減少していたのが7,426人増加したのである程度合格者数を抑制しなければならなかったからだとも考えられます。

これには第5回、最終現任者講習会受講者数推定2万6千人から逆算して全体の合格者数を調整していたということも大きな要因として働いていたのではないでしょうか。

そして試験問題作成は受験生の出願が全て終わって資格審査が終わり、受験者数が確定する前に行われています(常識的に考えてもそうでないと間に合わない)。

3.今後の動向

得点調整、補正は今後もあると思わなければならないでしょう。得点調整は問題があまりにも困難な際にも合格基準点を6割未満にすることも考えられるのですが、6割超という今回のような補正も十分にあり得るわけです。

今回の問題について、これまで評価を明らかにしていませんでしたが、難問、捨て問題もあったものの、僕は比較的オーソドックスな心理学、臨床心理学に基づいた良問も多かったのではないかと感じます。

しかしそういった良問というのは得てして解きやすいもので、良問が多い試験は今回のように上方得点調整もかかりやすくなってくるでしょう。

4.終わりに

今回の得点補正はこれまでの公認心理師試験にとっては「激震」でした。今後この試験に挑戦しようとする受験者の方々は7割以上の得点率を目指した方が良いものと思われます。

といっても「どうすれば7割を目指して勉強できるか」というと、一回一回の試験ごとに出題傾向が異なっていてブレ幅も大きく見えるこの試験ですが、ひとつの仮説としては、だんだん回数を重ねるごとに出題傾向も安定してきたと思えるので、今回の試験をゴールドスタンダードの基準として考えてみることにも意味があるでしょう。

どんなに試験問題の難易度を調整しようとしても出題範囲は決まっている「心理学の試験」なのですから出題傾向もだんだん固まって来つつあります。過去問と同じ出題も多く、データが集積されつつあります。

したがってこれからチャレンジする受験生の方々に勧められる方針としては、基本に忠実に過去問をやりながらテキスト、模試、人によっては予備校も活用しながら勉強していくという、従来の学習方法と大きく異なっていくわけではありません。

今回の補正に戦々恐々とせず、落ち着いて目の前の課題にコツコツと取り組んでいくことが合格を手中に収める確実な手段なのではないでしょうか。

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