32FA58D5-7730-45BB-898D-1311C4B10976

◯ 抑うつ障害群(ICDではうつ病エピソード、反復性うつ病が含まれています)

小児の気分障害として、DSM-5では重篤気分調節症(かんしゃく)もこの抑うつ障害群の中に入っています。

うつは、ほとんど一日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。心理テストBDI-Ⅱでは2週間以内の気分を測定します。活動、喜びの減退、体重変化、増減双方、不眠やあるいは過眠、精神運動焦燥、制止、無価値観、罪業感(自分は怠け者だ、甘えてる、死んだ方がいい、というのはカウンセリングの現場ではよく聞いている言葉だど思います。)、思考障害、妄想のために自殺志向は一般人の5倍になると言われています。

うつによる妄想の代表的なものは罪業妄想や貧困妄想です。とんでもない罪悪を犯してしまった、もうすぐ破産するだろうと根拠なく思い込みます。既出、心気妄想は体のどこかに変異があるのではないかという根拠に基づかない妄想です。

※ 自殺について触れておくと、統計によると希死念慮を口にするだけでも自殺可能性10倍、リストカットのように致死性がなさそうな自殺類似の自傷行為でも自殺率は70倍の危険性があると言われています。

がんや認知症、身体疾患の存在、ステロイド剤による薬剤性うつにも注意が必要です。休養、薬物療法、心理支援が治療法です。

薬物療法はSSRI、SNRIが主流ですが三環系抗うつ剤などが使われることもあります。再燃性が高いので半年以上の経過観察が必要なのと、症状が2年以上にわたる場合には持続性うつ障害と言われる気分変調症もあります。

抑うつ感情の背景には怒りや不機嫌があります。自他に向かうものです。
臨床上、神経内科、内科、脳神経外科、整形外科、産婦人科を巡った後に精神科を受診する患者さんが多いです。なお、PMS月経前症候群が重篤なPMDD月経前不快症候群もDSM-5では抑うつ群障害に分類されています。症状は気分不安定性、いらただしさ、怒り、対人関係摩擦、抑うつ、絶望、自己批判的思考、不安、緊張、興味減退、集中困難、倦怠感、過食過眠または不眠などです。

産婦人科でもPMDDの治療は行いますが、精神科ではSSRIなどによる抑うつ気分の軽快化が行われることがあります。

◯ 不安症群

DSM-Ⅳ-TRでは

不安障害の分類の中に、全般性不安障害、パニック障害、恐怖症、強迫性障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)急性ストレス障害(ASD)が含まれていました。

DSM-5では

⑴強迫性障害

⑵心的外傷後ストレス障害・急性ストレス障害は独立疾患として扱われています。

⑶ 不安症
分離不安、場面緘黙が不安障害に取り込まれています。

不安症の中に分類されているPD panic disorderパニック障害は、反復性のあるパニック発作、広場恐怖症、そのための回避行動を示しています。

従来不安症は純粋に心因から発生すると思われていたのですが、身体医学的要因が強く、大脳辺縁系のうち扁桃体の影響が大きいとされています。(PTSDも)

PD治療はSSRI、抗不安薬、認知行動療法が標準セットとされています。

全般性不安障害、社交不安症は一卵性双生児研究で一致率30〜40パーセントの遺伝的要素が高い疾患です。社交不安尺度LALS心理テスト評価もあります。

強迫性障害の精神療法のスタンダードもSSRIと認知行動療法ですが、暴露反応妨害法は不潔恐怖の人に対して床を着衣のまま転がらせたりかなり過激なもので、脱落例も多いです。

前頭眼窩面、皮質化(線状体・視床)回路の機能以上が想定されています。
強迫観念には様々な類型があり、ほぼ妄想に近いと言えます。

不潔恐怖で家を出られない、感染恐怖、加害恐怖で人に大きな伝染性の病気を伝染させたという恐怖は抑えがたいものです。OCD研究会のホームページが参考になります。

http://ocd-net.jp/column/c_157.html

※ 本人の苦しさが自殺念慮の原因になるという点では、強迫性障害OCDやOCDや強迫スペクトラム障害OCSDの苦しさは相当なもので、自殺未遂、既遂者もいます。

不安症とは異なりますが、自己臭妄想、むずむず足症候群レストレッグスでも自殺者はいます。

精神療法では認知行動療法の1人舞台というわけではなく、不安を低減させる、その状態を持続させるという精神療法が有効ではないかと思います。

◯ PTSD

PTSDは何回かこのブログで取り上げました。しつこいけれど何度も取り上げるのは必出と思っているからです。

DSM-5では反応性愛着障害や脱抑制型対人障害がこのカテゴリーに分類され、大人との安心した情緒的交流を結べない子どもについて記述されています。

さて、PTSDは自他の死に直面した外傷体験(直面とは限らず想像上や二次受傷でも)、性的被害、虐待によって起こる疾患です。

ただ、「部長から酷いこと言われてトラウマになっちゃってさあ」というのは日常用語での「トラウマ」の用法は間違っていないのですが、本来の死に瀕したトラウマの用語とは語法が違います。

それでもパワハラやセクハラが軽視されるべきではなく、適応障害の原因にもなります。

PTSDは

・再体験(フラッシュバック、目の前をさーっと外傷時の体験が流れていく白日夢や、恐怖を引き起こすキーワードや似た出来事に反応して思い起こす、悪夢、幻覚妄想様体験)などの侵入

子どもの場合には3.11の後に「地震ごっこ」と家が壊れて人が死ぬという、ごっこ遊び、トラウマティックプレイをすることがありますが、これは症状の1つで治療にはなっていないということを小児治療者、特に遊戯療法を行う治療者には知っておいて欲しいです。

・回避(同様の状況を避ける)

・陰性の気分変化 (認知と感情の否定的変化)

・解離(記憶が抜けている・外傷の記憶欠如・気づくと遠方にいる。クレジットカードを使ってしまっている。財布からお金がなくなっている。)

自己を過剰に責める、世界への不信感→対人恐怖や引きこもりになることも

自他への過剰な非難/トラウマの原因の誤った帰属(私が夜黒い服を着て外出してきたのが悪い)

持続的感情障害(恐怖・怒り・罪悪感・恥、自己肯定感の著しい低さ)社会活動への関心の減退、孤立感情

・覚醒亢進状態(過覚醒)

トリガーなしでの激しい怒り、アドレナリン過剰放出による不眠、自己破壊的観念、過度の警戒、驚愕、集中困難

これらが特徴的です。

PTSDやC-PTSDは多彩な心身症状を示すので、ほかの疾患との誤診が多いです。実際に多くのストレスに晒されてレジリエンスが弱っていて心身の他の疾患を併発している場合も多いです。

DSM-5は多軸診断ではなく多元的(ディメンション的)診断を行います。とは言えどの疾患がどの疾患や障害と複合していてもおかしくありません。

統合失調症、双極性障害、うつ、神経発達障害、PD、PTSD、境界性パーソナリティ障害、アルコール依存症との併発もあり得ますし、誤診される可能性も十分にあります。

PTSDにはそのためPTSD臨床尺度CAPSという半構造化面接で確認が行われます。工夫して除去しているのですが、それでもこの面接そのものがかなり侵襲性があります。

IES- R(出来事インパクト尺度)やK-10は質問紙ですが侵襲性はあります。

災害派遣後の保安関係者、D-PATスクリーニングツールとしてPDIもあります。

◯ 適応障害

産業場面で働く心理職は比較的多く接するでしょう。

ストレスから苦痛を感じ、それが6カ月以上となると慢性となり、うつと診断されます。職業上の不適応ならば、ストレス因子となっている配置や労働環境の改善で好転することは多いでしょう。

photo by sora

※ 受験生のみなさんとあらゆる人々に美しい花のような明るさが手に入りますように。