ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:家庭裁判所調査官

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ʀᴇғʟᴇᴄᴛ.
写真のよさのひとつ。どんな天気や心模様の日も、それを「美しさ」として映すことができる。
#雨


総合職心理キャリアの悲哀

先般
家庭裁判所調査官補・国家公務員総合職人間科学区分・矯正心理専門職
の記事を書きましたが、読者のふみさんからコメントがありました。

返信を書いていたらあまりにも長くなったので独立記事として取り扱わさせていただきます。

以下ふみさんのコメント

私が言いたくて書きたくて仕方がなかったことを、敢えて文字にしてくださったことに感謝です。法務省(少年鑑別所、保護観察所)は検事、厚労省は医系技官、裁判所は裁判官。鉄板資格たる法曹資格又は医師資格を持っている者がどんなに若くて仕事がダメパーでも強いです。法曹資格又は医師資格のないキャリアの職員がどんなに自分を犠牲にして出世しても出先機関の所長や事務次官止まりです。ただ、法曹資格又は医師資格があるトップより強いのは政治家。国会議員のセンセが最後は何でも決めちゃうから、私達はここに一番翻弄されます😥

以下ふみ様への返信

コメントどうもありがとうございます。
ふみさんの言うとおり、法務省では事務局長は行政・法律キャリア総合職のトップ事務次官は13番目ぐらいのいわば名誉ポスト。上層部は全て法曹がその地位を占めています。

矯正心理職として採用された鑑別技官は判定会議で鑑別所長の決裁が必要な鑑別結果通知書を出しても若い判事補にひっくり返されてしまいます。鑑別所入所中の4週間の間に鑑別技官はとても忙しい思いをして義務官舎に入り、帰宅しても落ち着かない気持ちで鍵を片手に鑑別所の重い鉄のドアを開け閉めして、およそ心理職として考えられないような仕事をしているのです。

心理キャリアは総合職としては技術職のようなもので、昔は国家I種のキャリア組、大卒一般職の国家Ⅱ種、実際には「国家1.5種」ぐらいの扱いを受けているのだと考えています。

ただし、やらされている仕事は本省ではデスマーチ、野党からの国会質問【例えば少年犯罪の凶悪化に対する対策(このような事実は統計上も実際にもない)】があれば徹夜残業で、夕方6時から仕事を始めて翌6時に終わって、9時には国会質問はないよと言われて作った書類はそのままシュレッダーという仕事が毎日の日課です。

裁判所総合職としての家庭裁判所調査官もほぼ同じ待遇です。調査官としての上がりポストである首席調査官になるには全国10カ所以上の転勤をしなければならず、20年以上単身赴任というのはザラですし、ヒラ調査官のまま職業人生を送ろうとすると物凄い圧力で異動を強要されます。

家裁調査官が出世する(聞き分けのいい人は出世を無理にでもさせられてしまう)のは調査能力よりも全国異動能力が重視されます。

また、定年寸前の首席調査官は各種連絡協議会があっても中央上席に座るのは若い判事補、その隣に首席が座るのが当たり前です。

調査官が現場の調査仕事だけをしたいというのは年々困難になっています。書記官が書記官、事務官とジグザグ昇進をしていくのと同様に調査官が家裁事務局長や事務局次長を好きでもないのにやらされて事務官書記官のポストを奪っているわけですから物凄い妬みの目で見られます。

最高裁や高裁にも家裁調査官出身者はいますが、家庭局第1課長、第2課長は30第半ばの将来高裁長官等のトップエリートを目指す飛び石ポストなのに比して家裁調査官出身の第3課長は定年寸前の50代です。

裁判官は定年まで勤め上げれば大手弁護士事務所に高待遇で迎えられるか、年収3000万も可能なハンコを押すだけ仕事の公証人のポストもあります。

それに比して家裁調査官の定年後のポストは指定職東京家裁調査官でも非法曹で法曹よりもずっと取り扱える裁判事務の権限の低い簡易裁判所判事(揶揄を込めて「カンパン」と呼ばれる。)や調停委員、または名誉職としての給与が安い大学教官です。

かように厳しい扱いを受けている家裁調査官は年々人文科学専門家というより、臨床心理学専攻出身者でも裁判所司法行政事務取扱人としての能力が要求されています。

昔は独立していた家裁調査官研修所は裁判所総合研修所として書記官養成のための機関と統合されました。

はるかその昔ですが家裁調査官は内地留学として大学に研修に行くことができましたがそうすると大学にそのまま就職してしまう人が多かったのでその制度は廃止されました。

医療や産業、福祉現場でも心理職の宿命ですが裁判所で家裁調査官が「先生」と呼ばれるとものすごい勢いで睨まれることが多いです。というか確実に

部内で「先生」と公式に呼ばれるのは「何も話をわかってもらえなかった」と悪評を当事者から買う調停委員だけです。(ちゃんとしたいい調停委員会委員もいますし、当事者が思うようにならなかった恨みもあるだろうと付け加えておきます)。

矯正心理専門職にしても裁判所総合職、国家公務員総合職人間科学区分でも恐ろしいほど難しい試験を通過しないとなりません。

特に知能テストのハイパーレベル版、判断推理や数的処理はIQ170ないと解けません。
人事院発表の総合職過去問
が、まずこれに全問正解するぐらいの実力がないと次のステップには進めません。

臨床心理士公認心理師総合職の三つ巴合格はもはや人間技ではないと思います。

責任は一切取りませんが志があり、公認心理師スピリットを国家公務の中で生かしていける人には心理官僚としてぜひ三冠王を目指してこの制度を良くしていって欲しいと思います。

厚生労働省医系技官については心理職の世界とは全く関係ありませんがかなりの愚痴を聞かされることもありますのでまた機会があれば興味本位で別記事として紹介したいと思います。

(Special thanks to my brain Ms.A)

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ʙʟᴜᴇ.
photo & lyric are by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_
心という海を抱き、想いという空を望む。

◯ 家庭裁判所調査官補・国家公務員総合職人間科学区分・矯正心理専門職

1.家庭裁判所調査官補

家庭裁判所調査官補採用試験が令和3年度も行われます。

採用試験日程 (令和3年度はまだ日程しか発表されていないようです。)

出願期間はurlに書いてあるとおり4月初旬です。

家庭裁判所調査官補の受験資格は30歳未満、院卒者か大卒者、その中にはさまざまなルー・ト、D1、D2、あるいは Gルートですでにて公認心理師資格を所持している人もいるかも知れません。

以前は公認心理師資格の有無は採用に関係しないというスタンスを取っていたのですが「公認心理師を取得するだけの勉強熱心さがあるなら採用してもいい」という姿勢に変化してきているようです。

総合職なのである程度の倍率をくぐり抜けた優秀な受験者が数多く欲しいわけですが、昨今の少子化で最近倍率が10倍未満です。特に地方の家庭裁判所では公認心理師に対するニーズが語られているとも聞きます。

また、公認心理師法第七条第1項第ニ号では指定実習施設となっていることから、心理学部で所定の単位を取得していれば、2年間の実務経験を積む事で公認心理師受験資格が得られます。

以前
家庭裁判所調査官から公認心理師を目指す。

記事にかなり書いてあるのですが、そこには書かれていないことについて触れます。

家裁でも法務省でもインターンシップ制度として家裁調査官の実際の仕事の様子を知る事ができたのですが、今はコロナの影響で時としてオンラインによる説明会が行われることがありますがこちらも不定期・中止もあります。

よくネットの情報を確認しておきましょう。

裁判所は法律が人間科学よりも優先されます。調査官は人間科学的手法を駆使して調査を行い、それを元にして少年審判、家事調停や家事審判が行われます。

ですので心理学専攻者が口頭試問で志望動機を聞かれた時に「はい、公認心理師になりたいからです」と絶対に答えてはいけません。

家裁調査官は人間関係諸科学の専門家である以前に裁判所職員であるという自覚を持たなければなりません。

つまり法律ありき、司法行政事務ありきです。だからといって自らを卑下する必要は全くないのですが、キャリアとして登用されたので調査官としての調査以外の事務局勤務をすることもあります。

最高裁、高裁、また家裁事務局長など出世コースに乗る人はそういったセクションに回されます。それはイヤだ、自分は司法臨床だけでやっていしたいんたというのであればそういう道もあるでしょうけれども面接で聞かれてそう答えてはいけません。

合格すれば名簿に搭載されますが、名簿搭載者だから必ず採用されるとは限らない事に注意が必要です。

2.国家公務員総合職人間科学区分:矯正心理専門職

国家公務員総合職人間科学区分については2021年度については2月1日に発表予定です。人事院国家公務員採用NAVI に掲載される予定です。

国家公務員総合職人間科学区分に合格すればさまざまな省庁への採用への途が拓けます。

省庁訪問をしてお互いのニーズを確認し、そこで官僚として厚生労働省(行政官)として働くもよし、文部科学省で働いてもいいでしょう。もし公認心理師資格所持者がさまざまな領域で働けば「公認心理師資格保持者はこんなに臨床的センスを活かした仕事ができる」と思われるかもしれません。

公認心理師法第七条第二号に規定される認定施設は少年鑑別所及び刑事施設です。  

微妙なところではありますが、法務省では矯正心理専門職のパンフレット
出していて心理技官を専門家として育成するための充実した研修・指導体制は国家資格『公認心理師』の受験資格が得られる「実務経験プログラム』として認定されています」

と明記されています。裁判所は教育学、社会学、社会福祉、法学ルートでも調査官補を採用しているのに比して矯正心理心理専門職は学部卒以上の心理専門職しかいないので公認心理師取得していること、あるいは取得したいことを積極的にアピールしてもいいかもしれません。

3.総合職としての働き方

裁判所総合職としての家庭裁判所調査官補、矯正心理専門職はキャリアと準キャリアの間ぐらいの位置で中央行政部(最高裁家庭局は隼町、法務省矯正局は霞ヶ関)で働く事もあります。

行政官なので9時4時(朝9時から朝4時)までノー残業手当で働く事も多いのですがやり切れば出世、しかし両方ともどんなに出世しても法曹有資格者にはかないません。それでも大卒一般職員よりは破格の待遇で海外留学も可能、困難な試験を乗り切った先には心理専門職キャリアとしての道が待っているのです。

中央で働く人たちは法曹を追い抜かそうと思うのではなく、現場で働く仲間を支援するのだという気持ちを持って欲しいと思います。

家裁調査官も矯正心理専門職も司法臨床のエリートとして大学教員になる人も多いです。

だんだんと総合職試験日程が迫ってきつつありますが、新卒者、既卒者でもチャレンジする価値は十分にあるでしょう。


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photo&lyric by sora (@Skylit_Blue)

おつかれTwitter

弱さを見せることは
時として強さでもあるんだよね ☪︎⋆


◯ 裁判所に期待されている公認心理師・臨床心理師制度

1.序

公認心理師5領域には司法が入っています。司法というと家庭裁判所調査官、法務省矯正局での心理職の役割を想像しがちです。裁判所のホームページには◯◯家庭裁判所委員会議事録というものが掲載されていて、それらを読むと公認心理師・臨床心理士に期待される役割は、最高裁家庭局は公認心理師制度、臨床心理士制度について、割と中立的でしれっとしているように見受けられたのですが、現場レベルでは実は心理職への期待は大きいということを指摘しておきます。

2.採用

裁判所において能力が高い人材の採用は常に大きな課題です。例えば法律職の裁判所総合職、裁判所事務官について見てみます。院卒者10.4倍、大卒者53.7倍です。

家庭裁判所調査官補については院卒者6.9倍、大卒者8.2倍です。

この倍率をどう見るかということですが、裁判所は神の地位を持つ裁判官、それから書記官、そして事務官に至るまで法律職の専門家集団です。そこに異分子として人間関係諸科学の専門家として入職する家庭裁判所調査官なので、疎外感半端ないです。総合職の事務官はほんの一握りですので、給料が安く事務官から試験を受けてもなかなか書記官になれない一般職事務官は猛勉強して苦労し、書記官になってやっと調整手当がつくのですが、調査官は最初から調整手当がついています。

それにもかかわらずあまりにも調査官補採用試験の倍率が低いと「本当に総合職として採用する価値があるの?」という疑問になりかねません。というかもうなっています。

だから裁判所では優秀な調査官補受験者を多く求めています。各地の家庭裁判所委員会でもこの話題は上っていて、大卒者が家裁勤務2年の経験で公認心理師資格が取得できることを売り物にして志望者増を狙っています。

実際には家裁調査官を目指すという時点で相当難しい試験に怖気ついて受験しない人も多かろうと思うのですが、そういった事情は「倍率」という数の正義の前には通用しません。

3.心理職への期待

家裁は「少年の健全育成」「子の福祉」を謳っているだけあって心理面での当事者に対する手当てがかなり重視されています。特に家事事件について心理職の働きは重要とされています。

⑴ 調停委員への登用

調停は心理的なかかわりが必要になります。夫婦関係の調整にしても、お金がからむ遺産分割にしても、人の心を抜きにしては考えられません。したがって調停委員に臨床心理士を活用しようというアイディアは昔から出ています。

⑵ 面会交流への活用

面会交流事件においては、離婚した夫婦が子どもに会うので葛藤含みです。元夫婦同席の面会交流でいさかいが起こったら子の福祉に反することになります。ですから心理職が同席してのこの場面での心理職の活用は大切な観点と思います。

⑶ 家事調停での付添い

家事調停では特に女性が不安になって調停に臨むことがあります。その際に臨床心理士が付き添うということは実際にあるようです。

⑷ 裁判員制度への裁判員へのカウンセリング

裁判員は外国で言えば陪審員制度のようなものです。被告人の有罪、無罪の心証を形成するのですからかなり重味がある職務です。したがって裁判員が精神的不安定になった際のカウンセリング体制も準備されています。パンフレットも用意されています。

こういった心理学的なかかわりは、元々専門職として採用されている家庭裁判所調査官がやればいいのでは?という意見もあるかもしれませんが、調停委員と家裁調査官を兼ねることは不可能です。また、スクールカウンセラーと同様、心理職の外部性が大切になってくると思います。

刑事裁判でも心理職が精神鑑定の際に心理テストを行うことは昔から行われています。公認心理師試験では医療領域の人から見たら、なんで司法問題が出るのだろう?と思うかもしれませんが、成年後見人制度しかり医療と司法は大きく交差することもありまさ。司法への心理職のかかわりはかなり重要性があるのです。

ざっと裁判所における心理職のかかわりを記載してみたのですが、臨床心理学者や精神科医が裁判所総合研修所に教育に来ることもあります。

国家が心理職を求めていることは確かです。医師団体の思惑とはあまり関係のない分野で心理職がその活躍を期待されているのは心強いものです。

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◯ 家庭裁判所調査官から公認心理師を目指す。

裁判所職員総合研修所及び家庭裁判所は、公認心理師法第7条第2号に定められる、少年鑑別所及び刑事施設と並ぶ、司法機関としては大卒後実務経験ルートが認められているたった2つの認定機関のうちのひとつです。

昔から学部心理学専攻者は大学院進学や民間就職を睨みながら、公務員である裁判所職員採用総合職試験(家庭裁判所調査官補)も受験するという、人気の進路でした。

この試験も少子化の影響を受けて昔は数十倍の倍率だったのに現在では院卒者区分6.9倍、大卒者区分8.2倍となっています。(2019年度)ちなみに最終合格者は63人でした。合格者=名簿搭載者なので採用されるとは限らず、実際の採用者は45人でした。

大卒者区分の中で心理学専修者がどれだけいたかはわかりませんが、家裁調査官は総合職として講義、実践等2年間にわたって大学院レベルの教育を受けて家庭裁判所調査官補から家裁調査官に任官します。

その教育のために招聘している講師は全国から呼び寄せた、精神科医を含む錚々たる著名な大学教授です。このための調査官養成教育にかかる費用は1000万円以上とも言われています。

さて、家庭裁判所は公認心理師法施行令第二項第2号の規定による実務経験施設26の中に含まれる施設なので第1回試験の際にはGルート実務経験者のうち、公認心理師になりたいという志望者がものすごい勢いで受験し、ほぼ全員合格者したと聞いています(読者様からの情報)。

家裁調査官補試験は心理だけでなく、社会学、教育学、社会福祉学、法学専攻者でもチャレンジできる問題内容となっています。

家裁調査官の仕事は少年部では非行少年及び保護者の調査を行い、鑑別技官とのカンファレンスを行う、在宅事件でも心理テストを行うなど正に心理職としての仕事です。

家事部は家事手続法による調停、審判の調査を家事審判官(裁判官)の命によって行います。家事事件は扱っている職務領域が実に幅広いです。離婚調停は全部調査官の調査があるのかな?と思うとかなりカウンセリング的要素が絡む事件以外には調査官の調査はありません。ただし、紛争性や子の福祉がかかわる場合には調停に調査官が立ち会うこともあります。

調査官は人文科学職としての調査能力を期待されていて、家事事件は相続、紛争性が高い成年後見、保佐の被後見、被保佐人や後見人候補者、関係者親族の調査を専門的見地から行うことがあります。HDS-Rのカットオフ値が何点かで認知症と医学的にはされるのか、後見相当、保佐相当の点数の目安は受験生のみなさまには知っておいて欲しいところです。認知症、高次脳機能障害の方の権利を擁護するという大変意義深い職務にかかわることになります。

http://www.courts.go.jp/asahikawa/vcms_lf/22kannteikyouryokuirai.pdf

当事者の意向をよく聞いてもつれた糸を解きほぐすように調査しながら調整していくのは調査官の大事な仕事です。一見人間科学とは無縁に思えるような「名の変更」も申立人が名前を変更したいという、虐待経験によるPTSD、性別違和が原因の場合もありますので調査を受命することがあります。

調査官が家裁でその能力の発揮を期待されているのは子の福祉に関する領域で、特別養子縁組は実親との関係を断ち切って本当の子どもとして養親と養子縁組させる制度です。

子の一生を決める手続きを8歳までの子どもについて決めなければならないので非常に慎重な調査が必要になります。子の福祉を考える上で親権者変更、指定、面接交渉権の調査も大事な仕事です。

さて、働く人のための実際の情報をイヤな所を含めて書いておきます。

まず採用時に希望任地がかなうことはほとんどありません。47都道府県どこの本庁に配属されるかはわかりません。転勤も激しいです。転勤は全国、転勤はイヤだと居座るのは年々厳しく難しくなっています。例えば調査官同士で結婚すると「じゃ、アツイ2人は寒いところで」と釧◯に異動させられたりします。

産休育休は取りやすいですが、復帰したら一人前の働きが期待されます。

裁判所職員は男性ならば当直の泊まり勤務、女性でも土日祝の日直勤務があります。逮捕状や捜索差押え令状は休日だろうが24時間いつ出てくるかわかりません。

小さな支部だと回りが早く月2回程度ぐらいでさが、若い採用されたての事務官の男性職員が宿直手当て目的に交代してくれることがよくあります。

少年院や刑務所と違って家裁は本庁支部は中心部にあるので車なしでもほぼやっていけます。運転しないで済む調査官は多いです。

総合職なので出世、昇給昇任は早く、裁判所内キャリア組なので最高裁家庭局や高裁、家裁事務局長勤務も少数ですがあります。

いいところとしては学閥がないというころです。東大だろうがFランだろうがなんの差別もありません。

裁判所は法律職の裁判官がスターです。そして裁判官の判決書の下書き(ほとんど全部を書かされることもあり)や法廷に出る書記官が幅を利かせています。

裁判官は医師と同等の特権階級なのでその命に従うのは当たり前ですが、人格者も多いので?一緒に仕事をするのにやりやすい裁判官もいます。調査官は事務官を含む他職種からつまらない嫌がらせを受けることもありますが。

そこはそこと割り切って自分の仕事をきちんと熱心にやっていて研究や著作は割と自由に行えますので、業績次第で大学教員に引っ張られてなる人もいます。

偉くなるとどんどん転勤スパンも早くなりますが相当に偉いことは確かです。在職時年収1000万、退職金2000万円台後半ぐらいでしょうか。

内地留学、アメリカやフランス留学制度や研究休職も1年できます。臨床心理士も相当にいて、国家総合少数人間科学区分と同様心理職のエリートテクノクラートです。

これから心理学部、学科を目指す高校生の方は公認心理師養成課程がある大学から家裁調査官を目指して公認心理師になる方法もあります。在学中の方々も同様です。現任者受験の方々でも受験する人々もいるでしょう。

司法機関中核を担う心理職です。これから公認心理師を目指す方々は家裁調査官になることも選択肢のひとつとして考えてみてはいかがでしょうか?

家裁調査官もインターンシップ制度があります。全国で開催されていますので気になる方は参加してみるといいでしょう。

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◯ 家裁における公認心理師への悲痛な期待

結論:最高裁家庭局からの公認心理師制度への期待は増すと思われます。

少々古い資料になりますが長野家庭裁判所で、平成29年6月13日午後3時から午後5時まで開催された第33回長野家庭裁判所委員会議事概要議事録が公表されています。

この家庭裁判所委員会は毎回テーマを決め、裁判官を含む裁判所職員と外部から弁護士を呼んで行われ、議事録もこのようにインターネットに公表される正式なものです。

http://www.courts.go.jp/nagano/vcms_lf/20170613.pdf

テーマは「家裁調査官について」でした。

下級裁判所(という言い方をします)長野家裁が家庭裁判所職員採用制度について話題にしたところで、上級裁判所部局(最高裁判所家庭局)の耳に入りはするものの、だからといって制度がすぐ変わるわけではありません。

議題は家裁調査官の数が足りない、それはどうしてか、どのようにアピールしていけば家裁調査官数が増やせるかといった事が中心です。

出席委員のうち家裁調査官が主となって議論をしています。

昔は家裁調査官は女性より男性の割合が多く、7割程度が男性だったのが今は逆転しています。

旧国家I種、上級職は全国移動が当たり前、女性よりも異動能力が高そうな男性を以前は「下駄を履かせて」採用していた言われていましたが、男女雇用機会均等法が施行されて厳格に運用されている現在、このような差別採用は決して許されるものではありません。

また、少子社会が全国異動職種志望を阻む影響についても話題となっていて、手元に子どもを置いておきたい親の立場からは自治体に就職させたがっているのではないかとも言われていました。

現在裁判所総合職家庭裁判所調査官補倍率は毎年10倍前後、裁判所総合職事務官は合格率3.6パーセントと大きな開きがあります。

調査官試験のこの倍率はだいたいバブル期の公務員倍率と同等で「公務員よりも民間の方がお給料もらえるから」「ハイパーメディアクリエイターみたいなカタカナ職業カッコいい」という時代とあまり変わらない競争率です。

あまりにも倍率が低いままだと総合職という位置づけが難しくなり、家庭裁判所調査官制度の崩壊に繋がりかねないので確かに申込者数の減少は家裁にとっては死活問題です。

受験母数となる学生が少ないことに加え、心理学系院卒者は臨床心理士や公認心理師という、司法臨床よりも別の心理専門性を追求していくのではないかという話も出ていました。

家庭裁判所でも法務省でもインターンシップ制度や説明会を開いて受験生の興味関心をひきつける工夫をしています。

この議事録でも触れられていますが、家裁調査官の仕事の醍醐味は子の福祉にかかわる心理的専門的調整、成年後見人先任における被後見人の権利擁護、家事紛争におけるお互いの心理調整などやる事は山ほどあります。

少年事件では調査官が少年保護、中間処分における試験観察等少年の健全育成のために出来る事は多くあり、調査官が少年事件処理の中心と言っても過言ではありません。

公認心理師法第7条2項では心理学大学院卒後に調査官経験2年以上で公認心理師試験を受験することも可能となっています。

家裁は優秀な心理系学生を求めています。

確かに臨床心理士、公認心理師を持っているからといって採用に有利になるわけではないですし、採用後に特別扱いするというわけでもありません。

公式発表ではそうなっているのですが、家裁は公認心理師制度施行で受験者増も期待していますし、公認心理師取得レベルのある優秀な司法心理職が家裁内で働いてくれる事も願っているのではないかと思っています。

参考:きっと受験に役立たない?拙記事

「家裁調査官公認心理師さらみちゃん」
http://hinata.website/archives/17730351.html

「公認心理師家裁調査官さらみちゃん再び」
http://hinata.website/archives/18254099.html

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