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◯ キャリアポートフォリオ、職業的成長プロセス、多職種連携、チーム医療、倫理、個人情報

キャリアポートフォリオについては、就職の際の履歴書、大学生がこれまで自分が学んで来た内容、専門分野などについて細かく書く図表形式となっています。

フリーター、就職希望学生や転職者は要心理支援者ともなり得るのですが、専門家である学術研究者や心理職にとってもキャリアポートフォリオの作成は大切です。

キャリアポートフォリオを記述することによってそれまでのコンピテンシーの達成度合いを知ることができます。

◯ 職業的成長プロセス

Michael H. RønnestadとThomas M. Skovholtによって研究された心理職の発達について、100人の被験者に対し、テーマとなっている発達課題をそれぞれの成員から抽出した研究結果です。

ブループリント「心理職の成長モデル」から、外せない学習項目でしょう。

当初は14のフェイズに分けられていたのですが、6フェイズ(期)の発達段階に分けました。

https://experts.umn.edu/en/publications/the-journey-of-the-counselor-and-therapist-research-findings-and-

1.素人援助期
心理職の教育を受ける前の段階で、近親者や友人、同僚等の相談に乗り、心理職を目指すようになります。

2.初学者期
専門家となることへの熱意は強いが不安も強い。情報量の多さに圧倒される。

3.上級者期(博士後期課程)
完璧主義、ひとつの流派のモデルに固執、臨床家としての自己に注意を向ける。

4.初心者専門家期
(博士課程修了から臨床経験5年)
訓練で会得したことを何度も見直す。理論のみでなく、自己(のパーソナリティ)が臨床に影響していることを認めて、統合しようとする、理論モデルよりもクライエント一人一人との最適な治療関係を目指す。

5.経験を積んだ専門家期 (経験15年程度)
様々な現場で数多くのクライエントとの臨床経験を積む。自分の価値観、世界観、パーソナリティを反映させていく。
臨床家としての自分と一個人としての自分に境界を引ける。
技法、理論を柔軟に使いこなし、困難な状況にも対応できる。

6.熟練した専門家期(臨床経験20年から25年)
職業人生を振り返る。臨床家としての自己の力量を認識、限界についても謙虚に受け入れる。多くの理論を見てきたので冷めた目でそれらを見ることもある。デメリットとしては喪失を予期して意欲が低下することもある。

・クライエント同様に心理職も生涯発達をします。生涯学習をすること、クライエントとの関係を通じて臨床家が苦しんだ経験は他者理解、臨床家自らのオープンネス、ウェルビーイングにつながります。

※ よりよい遂行能力、コンピテンシーは医療関係者や教育者などの学習者特有のものですが、ウェルビーイングやエンパワーメントは心理職にもクライエントにも共通することがテキスト等からは読み取れます。

◯ 多職種連携

この試験で重要な視点として幾度も強調されているのは、生物bio心理psyco社会socialモデルです。

これらの職種の中で公認心理師資格を取得する方々も多いと思いますが、それぞれの領域の代表的な専門家をあげておきます。

・生物
医師
看護師 精神保健福祉士
言語聴覚士 理学療法士
作業療法士

・ 心理
公認心理師
臨床心理士
臨床発達心理士
認定心理士

・ 社会
児童福祉司
社会福祉士
教員
スクールカウンセラー
産業カウンセラー

◯ チーム医療

○チーム医療とは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提 に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的 確に対応した医療を提供すること」と一般的に理解されている。

○ 質が高く、安心・安全な医療を求める患者・家族の声が高まる一方で、医療の高度化・ 複雑化に伴う業務の増大により医療現場の疲弊が指摘されるなど、医療の在り方が根本的に問われる今日、「チーム医療」は、我が国の医療の在り方を変え得るキーワードとして注目を集めている。

○ また、各医療スタッフの知識・技術の高度化への取組や、ガイドライン・プロトコール 等を活用した治療の標準化の浸透などが、チーム医療を進める上での基盤となり、様々な 医療現場でチーム医療の実践が始まっている。

○ 患者・家族とともにより質の高い医療を実現するためには、1人1人の医療スタッフの専門性を高め、その専門性に委ねつつも、これをチーム医療を通して再統合していく、といった発想の転換が必要である。

○ チーム医療がもたらす具体的な効果としては、1疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医療・生活の質の向上、2医療の効率性の向上による医療従事者の負担の軽減、3 医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上、等が期待される。

○ 今後、チーム医療を推進するためには、1各医療スタッフの専門性の向上、2各医療スタッフの役割の拡大、3医療スタッフ間の連携・補完の推進、といった方向を基本として、 関係者がそれぞれの立場で様々な取組を進め、これを全国に普及させていく必要がある。

○ なお、チーム医療を進めた結果、一部の医療スタッフに負担が集中したり、安全性が損 なわれたりすることのないよう注意が必要である。また、我が国の医療の在り方を変えて いくためには、医療現場におけるチーム医療の推進のほか、医療機関間の役割分担・連携の推進、必要な医療スタッフの確保、いわゆる総合医を含む専門医制度の確立、さらには 医療と介護の連携等といった方向での努力をあわせて重ねていくことが不可欠である。

チーム医療の推進について (チーム医療の推進に関する検討会 報告書)
厚生労働省 平成22年3月19日
(原文のまま)

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf

※ この厚生労働省のガイドラインにはいくつかのポイントがあります。

チームメンバーとして仕事をする際には、それぞれのメンバーが日ごろから高い専門性を身につけ、その技術をチーム内で再統合すること

チームの中で仕事をするには所与の専門性についてのガイドラインやプロトコールを遵守することは、他専門職と連携するために必要(ある専門職が期待されているのと全く違った働きをしているのではチーム医療は成り立ちません)

それから、確かに現代医療は先進化、高度、複雑化していますが、心理職は旧態依然とした学習によるアセスメント機能やカウンセリング技法だけに固着しているのでは十分に機能していくとは期待されないでしょう(この辺りはコンピテンシーや生涯学習、心理職の成長とも関係してくるでしょう。)

心理職がチームの中で特に期待されるのはアセスメントの部分でしょう。

ある患者さんがいて、認知機能、知能発達段階、知能下位検査のディスクラパンシー(重大な差異があれば発達障害が疑われます)、性格検査です。

正に公認心理士法第四十二条第2項の主治の医師の指示にかかわる事柄なのですが、エビデンスベイスドなアセスメントを行うのか、当該心理職が熟達していて正確度が高くなっているナラティブなアセスメントなのかは主治の医師からの指示によるでしょう。

もちろんカウンセリングによる要心理支援者の心情把握やクライエントとの信頼関係の醸成は心理職にとって必要不可欠です。

現任者テキストではクライエントとの信頼関係を常に強調しています。心理職はチームの一員として活動しながら、クライエントだけとの信頼関係という、ともすれば矛盾しかねない目的に立たされる場面があるでしょう。

守秘義務がどこまでの範囲であり、チームメンバーには伝えるべきだという事態があればクライエントに対する十分な説明を常に求められます。

◯ 公認心理師の倫理

・命令倫理
命令倫理とは、法に定められている、あるいは必ずしなければならない、してはならない最低限の職業倫理を指しています。

・ 職業倫理の7原則(命令倫理と言っていいでしょう)

1.相手を傷つけない、見捨てない。

2.エビデンスのある技法を使う、マニュアルからの逸脱をした心理的行為(アセスメントを含む)をしない。

3.相手を利己的に利用せず、多重関係を持たない。

4.クライエントを人間として尊重、公認心理師の感情をある程度伝える、欺かない。

5.守秘義務

6.インフォームド・コンセント

7.援助を拒否しない、差別しない。社会的問題にも介入する。

これらの命令倫理とは別に公認心理師には理想追求倫理という、相手に対して専門性ある最高の行動基準を目指すレベルの倫理があります。

秘密保持義務の秘密1)2)については何度か書きました。

※ 「秘密」は当事者にとってもっぱら限定された人的領域でのみ知られ、その当事者が、彼の立場上、秘匿されることにつき実質的利益を有することかつ本人のみが知っている事柄」という定義があります。(辰巳ドリル)本人が隠しておきたいと考えるだけでは足りず、それを隠しておくことに客観的・実質的な利益のある事柄が法的な保護の対象になります。

刑法上の秘密漏示罪第134条では秘密というのは一般的には知られていない事項で、

A(客観説)一般人であれば他人に知られたくないだろうと推察される

B(主観説)本人が秘密にしておきたいと考える事項

C AかつBを備えている

という3説あります。
(刑法上及び個人情報保護保護法上の「人」は生存者のみ)
ただし、死者であるから何でも公表してもよいというわけではなく、厚生労働省には死者の情報についての厳格なガイドラインがあります。
医療介護関係者の個人情報保護の取り扱いについて記載されている資料なので一度ざっと目を通しておくことをおすすめします。

同ガイドラインは死者の秘密も生前と同じように慎重に取り扱うこと、本人の生前の意思や遺族の意向を尊重するべきとしています。

本人が意識不分明な場合は家族の同意を得る、合目的的で、例えば他医療機関と治療のための連携を取る場合には本人の秘密は限定的に(その目的に沿った内容のみ)明かされます。

身元不明で意識不明、災害時などの場合には公開しなければ本人の特定ができないので例外となるでしょう。

「医療・介護関係事業者における 個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/170805-11a.pdf

また、クライエントの秘密を漏らすことは、うっかり電車の中にノートやカルテを置き忘れてしまうなどでも過失による、秘密を守るという事項の債務不履行または不法行為に民事上は当たり、損害賠償義務が発生します。

ただし、どんな場合であっても公認心理師法第四十一条の秘密保持義務に反してないと断言はできず、罰則対象とならなくても行政処分の対象となり得ます。