ひなたあきらの公認心理師でポン!

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:医療観察法

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※ 図は厚生労働省ホームページ掲載のものです。

◯ 医療観察法・社会復帰調整官

1.承前

医療観察法(正式名称:心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律)は、2003年に制定、2005年に施行されました。

2.条文

(目的等)
第一条 この法律は、心神喪失等の状態で重大な他害行為(他人に害を及ぼす行為をいう。以下同じ。)を行った者に対し、その適切な処遇を決定するための手続等を定めることにより、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善及びこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、もってその社会復帰を促進することを目的とする。
2 この法律による処遇に携わる者は、前項に規定する目的を踏まえ、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者が円滑に社会復帰をすることができるように努めなければならない。

この法律ができた立法経緯としては、刑法39条には

(心神喪失及び心神耗弱)

第39条
心神喪失者の行為は、罰しない。
心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

という規定があり、殺人、重大な傷害、強盗、強姦、放火、強制わいせつの他害行為を行った者は精神保健法によって指定医2名以上の診察の結果が

「精神障害者であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認める」ことで一致すること(29条2項)

で措置入院、あるいは72時間以内の緊急措置入院となったのですが、措置入院でも入院先で症状消退した場合にはすみやかに退院させなければいけません。これは患者の人権を守るべき規定です。

これに対する従来からの批判点は、重罪を犯した患者でもすぐに社会に解き放たれてしまうではないかというものです。

3.立法経緯

2001年、宅間守元死刑囚(執行済)が大阪教育大学附属池田小学校で死者8人、負傷者15人を出した痛ましい事件で世論、立法府が転換点を迎えてこの法律が成立したものです。宅間守が過去に措置入院歴があったこともこの法制定に関係があったでしょう。

4.制度

さて、この医療観察制度ですが、申立権者は検察官です。

こういった重大犯罪を行った者が不起訴や無罪判決を受けた場合には検察官は医療及び観察処分を受けさせるかどうかを鑑定を行う医療機関に入院させ、裁判官と精神保健審判員(精神科医師)で処遇の要否とその内容を決定します。

医療観察法による入院は、どこの病院でも良いというわけではなく医療観察法指定入院医療機関がその受け皿になります。そしてここで法務省保護局に所属する「社会復帰調整官」が入院中から、退院後の円滑な社会復帰のための調整を行います。

また、医療観察処分によって入院ではなく通院となった対象者についても3年間の経過観察が行われます。これも指定通院医療機関によって治療が行われます。犯罪者に対する保護観察とは異なり「精神保健観察」が行われます。

ちなみに厚生労働省統計によると平成31.4月現在入院者723人です。

5.社会復帰調整官

さて、社会復帰調整官ですが、保護観察処を勤務先とします。採用されると同時に専門家としての幹部職員の俸給が支給されます。

社会復帰調整官は法務省では「精神保健福祉士等」となっていますが、精神保健福祉士の資格を有することは最初のアドバンテージ(利点)になります(関東地方更生保護委員会)。

また、精神障害者の保健及び福祉に関する高い専門的知識を有し,かつ,社会福祉士、保健師、看護師、作業療法士、公認心理師若しくは臨床心理士の資格を有すること。

精神保健福祉に関する業務において8年以上の実務経験を有すること。

大学卒業以上の学歴を有すること、又は大学を卒業した者と同等と認められる資格を有すること。この場合において、「大学を卒業した者と同等と認められる資格を有する」者は、平成23年人事院公示第18号の3に該当する者とする。

ただし、どういった人に受験資格があるのかはきちんと受験先に問い合わせた方がいいでしょう。

「公認心理師若しくは臨床心理士」ということで、純粋に心理職としての業務を行ってきた人だけでなく、公認心理師及び他資格所有者、精神保健福祉現場で長く働いてきた公認心理師にも門戸は開かれています。こういった人文科学系公務員採用職場はどこでもそういう傾向がありますが、何の資格を持っていたか、や学閥はなくどんなキャリアを積んできて、これから何ができるかが大切です。

実際地方公務員社会人経験者もそういった人材を募集しています。別に院卒でなくてもキャリアを積んできたという事実があればいいわけです。

さて、法務省の社会復帰調整官の採用パンフレットです。

http://www.moj.go.jp/content/001261334.pdf

まあ宣伝のためのパンフレットだから、と言えばそのとおりなのですが、法務省の心理職採用は矯正局だけでなく、こういった道もあるということです。キャリア採用なので保護観察官とジグザグで転属したり、全国異動があり、行く末は管理職の道も用意されています。

精神疾患患者の犯罪率は一般人と有意に低いという統計が出ています。しかしながら精神疾患を持っている人がひとたび犯罪を起こして入院が長期化してしまうと受け皿がとても難しいでしょう。

精神障害者で犯罪を起こした人の円滑な社会復帰を行うケースワーカーとしての社会復帰調整官はやりがいのある心理職の職場だと思います。

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◯ 精神科医療の暗部と医療観察法

「子どもの死を祈る親たち」を読みました。

筆者押川剛氏は精神障害者移送サービスという事業と精神障害者のための私設支援施設を経営しています。

家族が医療保護入院といって、本人の任意入院が不可能な場合には家族の同意で入院がさせられるのです。

ただその家族がどうやって医療機関に本人を連れて行ったらいいのかわからない場合、押川氏のようなごくパーソナルな移送サービスを使うことがあるわけです。

こういったサービスについて聞くと双極性障害者の躁状態や激しい幻覚妄想状態にある統合失調症患者さんのことを思い付く人もいるかもしれません。

こうした人たちは確かに病識には欠けているところはあっても、何か自分と世界との価値観がずれてしまっているという病感のようなものがあり、家族が丁寧に説得するとそれなりの自己決定もできるわけです。

僕が某地域の措置入院を担当している基幹病院で働いていた時も、社会保安上の理由で精神障害者は危険、暴れるからという社会からの要請で措置入院のための精神保健指定医がつねに待機させられていたわけです。

僕も詰めていましたけどヒマでヒマで仕方なくて読書ばかりしていました。

実際に世間が想像しているような「コンビニで半裸になって包丁を持って暴れている」ような精神障害者といった対象者はほぼほぼいないでしょうり

そういったニュースがあると「精神障害者の犯罪が凶悪化している」とマスコミは誤ったイメージを擦り込もうとするのですが、実際にはそういった人のほとんどは薬物使用者が禁断症状で暴れているだけです。

精神疾患患者の犯罪率は一般人よりもきわめて低いという有名な統計があります。

一般人の犯罪率2パーセント、精神疾患患者0.6パーセントです。

当たり前のことですが、自分の症状に苦しんでいる患者さんが他人を傷つけるようなエネルギーはありません。

患者さんたちは日々理性とどこからともなくやってくる症状との葛藤の最中に置かれ続けています。

むしろ自傷のおそれが強い、希死念慮が高い患者さんが措置入院の対象になっていたことが多かったのではないかなあと思います。

精神障害者とその周囲をめぐる事情にはまだまだ世の中の暗部が投影されています。

押川氏が行っているような精神障害者移送サービスは数十万円の金額がかかりますし、本人の同意なしに病院まで連れて行くというのはかなり法的にはダークな領域です。

無理矢理だと監禁、略取誘拐?と取られるかもしれませんし、押川氏は「行くぞ!」という掛け声ひとつで患者さんを押送したことがあると書いています。

どんな精神障害にせよ、家族がきちんと本人に向き合わずにそこまでこじらせてしまった場合が多いのでしょう。

利益主義で患者を食い物にしているとルポルタージュですっぱ抜かれた某病院はその後も措置入院をさせた後に拘束、個室病棟で1ヶ月100万円を請求したと聞いています。

押川氏の行っている事業は確かに精神科医療の裏側の部分です。

親も精神疾患患者を抱えて、どうしたらいいのかわからずにとりあえず引きこもるままにしておく、近所の手前何もしないでおくという放置行為が本人を悪化させているのだと思います。

結果として家族が被害者となって死に至る場合もあります。

現在精神医療保健行政の問題点を抜きにして少数事件が大々的に報道されるわけですが、暴力団同士の抗争で死者が出てもあまりニュースにはなりません。

もっと早期に対処していれば入院に至らなくてもよかっただろう患者さんは多いでしょう。

しかし家族はあまりに精神保健について知らないですし、保健所や役場が相談対応をしてくれることも知らないわけです。

あまりにも放置しておくと凶悪犯罪を起こした場合、刑法上の除伐でなく、検察官の申立てで2ヶ月の鑑定入院を経て心神喪失者等医療観察法の対象となる場合があります。

実際のところ、この医療観察法の対象となるのは治療可能とされる障害者のみ、認知症のように回復がない疾患の場合にはどうするか?

現行法では発達障害、人格障害も対象となっているのが、心神喪失者と鑑定してしてもいいのか?

と課題は山積です。

医療観察法で入院となって、完治したから社会復帰させると再犯者が野に解き放たれる場合もあるわけでしょう。

行政、医療、司法のはざまにあって結局一番割りを食うのは患者さんやその家族だと思うのです。

家族や本人のニーズに対応しない、救急対応受入れが難しい地域基幹病院もあり、ケースワーカーが地域連携室の中でその振り落としをしている場合も多いのということを実感しています。

結局そうすると結果的には押川氏のような民間サービスを利用せざるを得ないように追い込まれてしまうのではないか。

無理に移送、入院した患者さんは必ず退院します。

患者さんと家族との間に生まれてしまったであろう軋轢をどうやって解決してたらいいのでしょうか。

加えて、予見不可能な大量の犠牲者を出す宅間守のようなごく少数者だけが彼らへのスティグマ(烙印)を先行して与えているという事実はきちんと知られておかなければならないでしょう。

もっとも宅間守事件がきっかけで医療観察法ができたのは皮肉ですが、治療
、更生、社会適応のため、患者さんにとっては大きな前進でした。

今回の診療報酬改定について措置入院患者さんの復帰から通院まで公認心理師が関与するという文言は確かに公認心理師の権能拡大です。

ただし、世論を細かく読み取る政策というものは児童虐待、ギャンブル依存防止にも公認心理師を駆り出しているわけです。

さて臨戦状態になっても待機だけ、という事がよくある話なので実業務と政策の乖離はよくあることです。

法と今の精神医療体制の矛盾や限界を本書によって知りました。

子供の死を祈る親たち

新潮文庫/押川学

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