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ʙʟᴀᴄᴋ'
個性の正体は真似ごとの集合体であり、その組み合わせ方に依って色合いが決まる。時にそれは相まって真似ごとの域を超え、眩い光を放つ。そんな、まことしやかに頭の中で木霊する言葉もまた、真似ごとの寄せ集めだから、と。
#coregraphy
○ 公認心理師は医行為ができる医学専門家になったの?
1. 序
さて、医師は医行為の一環として「特定疾患医療管理指導」ができるのですが、公認心理師試験、特に第3回試験の中ではめちゃくちゃ多くの身体疾患が出ていて、それに関する知識が問われています。厚生労働省運用基準では「服薬指導はしてはならない」とありますが、運用基準はあくまでも運用基準、法の下にあるものです。
何が医師しかできない専権の「医行為」か、そうでない業務なのかは線引きが難しいです。医師法第17条(医行為の定義)にも健康指導のことは書かれていません。元々保健師も健康管理指導を行うことができなければ業務になりませんから健康指導は医行為ではないはずです。
生物一心理―社会的な相談は全て医行為に当たるというのであれば、誰も相談業務を行うことができなくなってしまいます。
さて、これまでの試験を振り返ってみます(一部抜粋)。
第1回試験
問24 パーキンソン症状
問33 せん妄
問55 向精神薬とその副作用
問104 アカシジア
問133 Ⅱ型糖尿病
北海道追試
問36特定妊婦
問57 SSRI 副作用
問77 非定型精神業薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、SSRI からの選択
問103 抗精神病薬の錐体外路症状
第2回試験
問31 オピオイド副作用
問56 女性更年期
(選択肢エストロゲン分泌、ゴナトドロン等)
問70
※ なかなか医学用語満載
炎症マーカー亢進及びクレアチンキナーゼ(CK)亢進、尿暗赤褐色
選択肢 熱中症、悪性症候群、急性ジストニア、セロトニン症候群、単純ヘルペス脳炎
問115
糖尿病リスク
うつ病、認知症、勃起不全症、肥満とI型、II型
問116
ベンゾジアゼピン系受容体作動薬副作用
第3回試験
問13みなさんから評判が悪かった摂食行動制御、亢進分子グレリン、レプチン
問19 IBS(過敏性腸症候群)
問29 糖尿病
問30 甲状腺機能低下症
問31 抗精神病薬の副作用
問41 睡眠薬副作用
問51 インシデントレポートの作成者
問94 遺伝カウンセリング
(なかなか選択肢が難しい。「経験的再発危険率」が最も重要な疾患としてあげられているのが統合失調症、ダウン症候群、Huntington 病、家族性Alzheimer、筋緊張性ジストロフィー症。)
問106 薬物動態学
問120慢性疲労症候群
問131 むずむず脚症候群(レストレッグ症候群)
問133 高齢者に副作用が少ない睡眠薬(2選択)
(選択肢、バルツビール系薬剤、フェノチアジン系薬剤、オレキシン受容体拮抗薬、メラトニン受容体作動薬)、ベンゾジアゼピン受容体作動薬
さて、ここまで読んできて、特に第3回試験では「とてもマニアックな」(某看護師談) 医学系問題が出ていたわけですけれども、果たしてこれらの知識がカウンセリングを行う公認心理師に逆に「身についちゃっていいワケ?つけちゃっていいワケ?」と僕は思うのです。
例えば「ああ、ハロペリドール飲んでるんですね、それでアカシジアが出た。アカシジアはレストレッグス症候群でもありますから、足がつっぱって眠れなかったり、さぞ苦しいことでしょう。アカシジアは定型精神病薬でも非定型精神病薬にも出ますからね。抗パーキンソン剤でアキネトンが出る場合もありますけれども、うーん、使わないべきだっていう教科書もありますけど、どうしたらいいんでしょうね」とか、
「いやいや、バルツビール系は昔は使われていましたけれども、どちらかっていうと麻酔効果が強いからなか今い使わないんですよ。CP換算値でも強めに出ることがあるフェノチアジン系のクエチアピンはどうなんだろう?ベンゾジアゼピン系は依存性や耐性が心配だし、そうそう、最近はオレキシン拮抗体作動薬スポレキサントとかメラトニン受容体作動薬のロゼレムなんかは侵襲性が低いんですよね」
とか、そんなことを面接中に話しちゃっていいんでしょうか?まあ僕なんかは話すこともある人なのですが「ラツーダのアカシジアが辛くて抗パ剤が効かないんですね?」等患者さんに言っても別に「服薬指導」ではありません。
ま、むしろそういう情報をカウンセリングの中で拾って医師に伝えて欲しいのかもしれませんがこれまでのカウンセリング理論にはそういうやり取りは含まれていませんでした。
服薬指導はダメなら運動指導や生活習慣改善指導ならいいわけならいいのでしょうか?レストレッグス症候群に運動を勧めるのも水分補給を勧めてもいいわけなのでしょうか?
もっと言うなら、生活習慣病や心身症についての医学知識を話してもいいわけだと思います。
そういった行為は「医行為」や業務独占行為とばかり思っていたのですが、疾病の原因は何にあるか、人口の何パーセントがこの病気を持っているか、男女比は、診断基準は(診断はしない。)、治療法は、などと患者さんに話してもいいわけなんでしょうか。
とある薬を飲んで副作用が出た、薬物動態学的にだいたいいつぐらいに薬が抜けるだろうかということを、別に医療関係の公認心理師でなくともほか 4 領域、意図的に隠された領域の私設開業領域の公認心理師だってこれらの知識があれば積極的に話題にしてもいいことになるでしょう。
さて、上記僕の主張した内容の選択肢を試験で選んだら誤答(すなわち逆の選択肢を選んだら正答)となるわけです。
心理の方が医療のイニシアティブを取るという点で医療領域に勤務している心理職は、患者さんがかかっている医療機関が「向いてない」と思うと変えさせたことはありませんか?僕はあります。
たとえば PTSD や発達障害、この疾患、障害を正確に見立てて(せめて患者さんの妄想だろうと決めつけないで現在の状態を見て的確に投薬ができる)共感してくれる医師や心理職がいる医療機関は地方に行くとなんと少ないことか。
結局患者さんが7~8カ所ドクターショッピングをする、ということが何例かありました。
ドクターショッピング大いに結構、クライエントさんにはカウンセラーショッピングをする権利もあります。「これは医療の領域だから口に出さないでおこう」と躊躇をすることはないと思います。
僕の勤務している産業医療領域の小さな診療所で精神科医が常駐していない、次の受診期間まで時間が離れているとか、幻覚妄想状態に陥っていて暴れて周囲が困り果てていて拒薬している患者さんに薬を飲んでもらって沈静化させるという行為は間違っているとは思っていません。
せっかく公認心理師試験が心理職に診断知識を覚えなければならない機会まで与えてくれているのですから、どんどんその知識を使って「プレ診断」的行為を行ってもいいと思うのですがいかがでしょうか。
このまま医学問題が公認心理師試験の中で増えていけば、医師の権限を一部行うことができる「サイコロジカルプラクティショナー制度」創設も可能になるかと期待していいかもしれません。
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