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◯ 公認心理師試験のカウンセリング能力検出精度は?

よく僕のブログにコメントをしてくださる中西美穂様から、拙記事「臨床心理士・公認心理師は若い方がいい?年配の方がいい?」で講演上手な心理職のカウンセリングに不満が生じたというエピソードを記載したところ

「アウトカム評価=患者の満足度 大事ですね。優秀なプレゼンが優秀な研究者とは限らないってやつですね。」との鋭い指摘をいただきました。

これは臨床系大学教員についてもよく言われていることで、教育能力、研究能力、カウンセリング能力、大学内外での政治・行政能力、これらは全て別物です。

中西様の言説はいつも学ばされるものが多く、僕よりもはるかに優秀な知見で書いていただいているのですが、中西様のコメントに触発され、ふと「公認心理師試験は優秀なカウンセラーを産出するというアウトカム、結果を出す事ができるのだろうか?」という疑問を持ちました。

また、それに付け加えてカウンセリングという行為における顧客満足度はどうなるのだろうか?

とも思いました。

厚生労働省「医療情報の提供のあり方等 検討会」でもこの結果=アウトカムとそして、過程=プロセスの大切さは医療のありようとして論議がなされています。

クライエントさん、患者さんが治っていく、生活水準が向上していく、精神的に平穏さを取り戻していくという結果は、よいカウンセリング、満足度が高いカウンセリングというプロセスなしにはあり得ません。

そこで公認心理師試験が測定している内容を考えてみます。

つまり、この試験がよいカウンセラーを生み出すという妥当性があるかどうかということです。

公認心理師試験の特徴として一般的に言われているのは臨床心理士試験と異なり

1.医学・医療問題(医療制度・法・身体医学を含む)領域からの出題が多い。

2.統計・研究・実験法を含む、文系には苦手な分野を含む基礎心理学領域の占める割合が多い。

3.心理諸分野5領域からの万遍のない出題がされる。

という事です。

1.医療領域については、医療周辺で働く心理職には有用、かつ医療領域外の心理職にとっても役立つことは十分にあるだろう知識です。

ただし、この分野の出題割合が多い事に対する批判があることも事実です。

曰く「看護師試験と変わらないのではないか?」

「『医師の指示』を強調する意図があるのではないか?」

そして「2.」については「基礎分野の学習はカウンセリング対応能力を測定しているのか?

「3.」も「様々な領域で働く心理職にとって、一生使わないような知識を試されることもあるけれどもどうなのか?」

というものです。

どの試験でも同じ事ですが、知識を得るために勉強を熱心にすること=「学習」という行為は、どれだけの熱意と労力を傾けられるかという、目に見えない「努力」や「真面目さ」という要素を測定しています。

だから一流企業では一流大学卒業者を優先して採用しているわけですし、本来必要がないかもしれない日本文学、日本史専攻学部でも英語で得点を取る事が要求されています。

熱意がある受験者はいいカウンセラーになれるかもしれませんが、絶対とはもちろん言い切れないわけです。

果たして公認心理師試験は臨床能力を測定できているか?

という何度も僕の頭の中でリフレインされる命題の結果は多分数十年経たないとわからない、もしくは数十年経っても不明なままかもしれません。