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photo&lyric by sora (@Skylit_Blue)
冬めく風に
想いをのせて


公認心理師・全てはここから始まった

現在の公認心理師制度、そして試験制度がどのように始まったのかをそもそも論で振り返ってみます。

公認心理師法は 2015 年(平成 27 年)9月16日に公布されたものですが、この制度をどのように運用していくか、2016年(平成28年) 9月20日第1回公認心理師カリキュラム等検討委員会がまず開催されました。

この検討委員会のメンバーです。
(敬称略・厚生労働省カリキュラム検討委員会議事録から引用しました。資格は判明しているものについて筆者が付記・転記については厚
生労働省著作権担当部署から了承済)

※資格は判明している限りで僕がカッコ内に記述してあります。

スクールカウンセラー推進協議会副理事長
石隈利紀(臨床心理士)

臨床心理士資格認定協会常務理事
大野博之(臨床心理士)

日本医師会常任理事
釜萢敏(医師)

東京大学大学院医学系研究科附属国立医学
教育国際研究センター教授
北村 聖(座長・医師)

日産自動車株式会社人事本部人材開発・HR プロセスマネジメント部安全健康管理室
栗林正巳

一般社団法人日本心理学諸学会連合理事長
子安増生

社会福祉法人桜ヶ丘社会事業協会桜ヶ丘記念
病院理事長
佐藤忠彦(医師)

東京保護觀察所,民間活動支援専門官
角田亮

東京少年鑑別所首席專門官
鉄島清穀 

公益財団法人日本精神科病院協会常務理事
林道彦(医師)

大田区立御園中学校校長
笛木啓介

一般社団法人日本臨床心理士会会長
村瀬嘉代子(臨床心理士)

東京都調布市立飛田給小学校校長
山中ともえ

一般社団法人全国児童発達支援協議会副会長 米山明(医師)

千葉県市川児童相談所所長

※ この15人の委員のうち5人が医師、3人が臨床心理士です。

これについては思うところもあります。例えば第3回公認心理師試験委員47人中11人が医師であること、やはり公認心理師は準医療資格を作ろうとしていたのではあるけれども権限は別にものすごく大きくなるわけではない、というところです。

検討委員会で述べられたことがぼほぼそのまま公認心理師試験の施行方法、受験資格について決まったことを考えると、これはカリキュラム検討委員会ではなく「出来レース」で決定事項を、討議する委員会として形だけ?と邪推してしまうのは僕だけでしょうか。

だいたいにおいて「会議」というものは事前に下打合せや調整が済んでいて、会議は確認事項を行うのみという場合は官製の会議の場合は多いです。

それまでは行政の方で動いておき、本カリキュラム検討会・そして後から始まるカリキュラム検討委員会も役人が各団体に意向を尋ねて、その力関係を見ながら際限なく下打合せをしていたのではないかと思っています。そして、公認心理師法成立過程でも心理団体と医師団体側との話し合いが際限なく行われた結果、公認心理師法案が揉まれに揉まれて今の形になったと言えます。心理関係三団体が医師団体側と折衝を重ねた結果でしょう。原点はここから始まったと言えます。

公認心理師については秘密保持義務が1年以下の懲役または30万円以下の罰金と、医師の秘密漏示罪(6カ月以下の懲役または 10 万円以下の罰金)、精神保健福祉士が「主治の医師の指導」なのですが、公認心理師が主治の医師の指導」となったのも医師団体の強力な働きかけがあったからだと思います。公認心理師は不当に処罰規定が重いと感じています。

非違行為や犯罪を行った医師は医道審議会分科会で処分が決められますが、一般事件で懲役刑となっても、また、医療に関するなんらかの刑罰を受けたとしても医業停止で済みます。しかし公認心理師は禁固以上の刑(禁固の上は懲役刑・つまり道路交通法で執行猶予付き懲役刑となっても資格取消をしなければならないことになっています。) 公認心理師法第3条(欠格事由)、第32条 必要的取消事由(登録の取消し等)に記されています。

(受験生の方は任意的取消事項の「取り消すことができる」と必要的取消事項の違い、第 42 条秘密保持義務は第46 条第2項によって親告罪と規定されていることは覚えておいてください。)

公認心理師法制定から1年間、満を持して行われたこのカリキュラム委員会はそういう意味でどうしても出来レースに思えてしまうのです。

公認心理師法が制定された時から条文に明記されていたとおり、臨床心理士にせよ他の何の資格にせよ無試験でスライディングすることはないわけです。北村座長の問いかけに対して森公認心理師制度推進室長(当時)からもその点について敢えて明言していました。

「カリキュラム検討会」だけあって、試験対象となる学習必須事項、出題形式についても決める。これが公認心理師にとって必要な知識、識能ということでしょう。

やはり臨床心理士資格認定協会は、臨床心理士資格保有者に対して有利な措置を、ということを主張するのですが、これについてはあえなく却下されました。

途中、松本主査から「臨床心理技術者の職域と主な職務内容」資料がさくっと配られました。どんどん配られていく官製資料に、この「カリキュラム検討委員会」は「シナリオがある会議だった」と思わざるを得ないのです。

第1回検討委員会ではその話は出ていなかったのですが「現任者の定義をどうするか」=ボランティアでもいいので週に1時間以上心理業務を行っていた者。

「合格者の得点割合は6割以上」とここで協議されたことがほぼほぼ間違いなく決定事項となりました。

この第1回検討委員会で興味深かったのは、北村座長が「公認心理師とは何かということになるかもしれないですが。」「それでは村瀬(嘉代子)先生お願いします。」と言った直後佐藤医師が「公認心理師とは何のためか」「独り言で我々に問いかけたのでしょうか。」→北村座長「独り言です」佐藤医師→採用する方としては医学専門家と同じような二階建て資格を持っていないと採用側に不安が出る(要約)という茶番流れがあり、北村座長は公認心理師は「公認心理師というのは、心理を扱う人はみんな持っていてほしい資格の「ように思いますが、実はこれは持たないで、過渡期で年の上の人は別として、新しい人ではやはり公認心理師を持った上で、産業だ、やれ学校だ、いろいろな所へ流れていって、専門を極めてもらうという流れがしっかりできる方がいいのかな、と思ってつぶやいた次第です。」と言った後で村瀬嘉代子先生ではなく、北村座長が米山構成員を指名する。というような流れがありました。

北村座長も医師、佐藤構成員も医師、村瀬嘉代子先生に話を振ろうとして突然また医師の米山構成員に話を振ったり、この第1回検討会議からして、医師が主導権を持って検討を重ねて行き、心理が置き去りにされて来た感がありました。

検討会が2回、カリキュラム検討委員会が8回行われたので、全てを見渡して検証結果を記して行くことはとても難しいです。ただし、僕の印象としては公認心理師カリキュラムや受験資格、試験内容の粗々についてはほとんど医師側が決めて、医師が主導権を握ったのではないかと感じています。「すきま問題」と言われる、科目読み替え不可能、現任者になるためにも経験年数が足りなくて公認心理師受験資格を得られなかった心理職が発生しました。

このカリキュラム検討委員会はそこまで深く考えておらず、あるいはわかっていたとしてもきちきちに取り決めをしたので受験者資格は与えられないことになりました。

医師団体主導でさまざまな物事が決められたとしても公認心理師制度推進室では医師主導の動きに現在従っていないわけですし(と信じたい)、国家資格をどのように運用するかも心理職集団次第という自治的な権限も付与されていると考えています。

制度発足5年目の見直しで医師団体に公認心理師制度について一方的なマウントを取られないためにも「公認心理師の活動状況等に関する調査」にはぜひ回答して欲しいと思っています。私たち心理職は戦わずに負けるわけにはいかないと思っています。心理職には銃はなくても言論という最大の武器があるわけですから。