○ 臨床心理士・公認心理師有資格カウンセラーは安全なのか?
先日無資格カウンセラーによる準強制わいせつ事件に関する記事を書いたばかりですが、有資格者(臨床心理士・公認心理師)ならば絶対安全、大丈夫か、というと「人による」という答えしかない、というところが本当だと思います。
しかしその倫理面での整備や倫理の運用について厳格化することで国民の信用を高めることはできると考えます。
臨床心理士会報にも毎回資格剥奪を含む処分が掲載されていますし、公認心理師も医療、教育、福祉に関する非違行為で罰金刑、または一般刑法典でも禁錮以上の刑に処せられたら資格を自動的に喪失することになっています。
公認心理師は公認心理師法、信用失墜行為に関する処分に規定されているとおり、任意的取消事項として信用失墜行為があった場合には厚生労働大臣と文部科学大臣が公認心理師の登録を取り消すことができるのです。
刑法典にも違反するような、クライエントさんや患者さんを傷つけるような性加害は厳しく処せられるべきであるというのは実際にそのとおりで、当たり前のことだと思います。
アメリカ心理学会APAや諸外国でも有資格心理カウンセラーの性加害は重い処分となるのは当たり前となっています。ところがこういった事案は後を断ちません。
以前言及したのですがアメリカにおける調査研究で女性クライエントと性的な関係を持ったことがある精神科医・カウンセラーは約10パーセント、日本でも有名な臨床心理士が当事者と性的関係を持ち、臨床資格停止となって、その間臨床業務はやらずに研究業務だけを行って停止ン期間をやり過ごしたという例も聞いたことがあります。
また、複数の女性と関係を持ったことと資格認定協会から不適切さを指摘されて臨床心理士資格停止後に公認心理師を取得したH氏の事案は有名ですが、過去に遡って掘り起こすといくらでもこういった事件は出て来るでしょう。
もう亡くなられた有名な精神科医がいます。その方の書いたものでも「A子から交際を申し込まれたが私には婚約者がいて、あまりA子に魅力を感じなかったので」断った、という「え、その理由?」という記載もあり、昔は治療者側の倫理はかなり緩かったのかもしれません。
さて、こういった事案が起こることやを防止する、そして倫理面での意識を高めるためにはどうするか、ということですが、臨床心理士の場合には独自の査問委員会があり、登録抹消処分も出しています。
臨床心理士は不適切な行為を行った場合には資格認定協会からの義務的なスーパーヴィジョンを受けなければならない場合もあり、厳しい運用が行われているのですが、処罰、再発防止に向けたシステムは整備されていても「予防」はこうした厳しい倫理綱領、倫理規定があるという以外には各臨床心理士の自覚に委ねられているわけです。
参考:
臨床心理士倫理綱領
臨床心理士倫理規定
こうした「防止・予防」は人間と人間相手の仕事である以上、どんなに倫理面に関する教育を学部から大学院までしっかりと行ったとしてもやはり人間は人間、「絶対」はあり得ないでしょう。
それでもこうした倫理教育はやらないよりはやった方がいいわけで「知らなかった」では済まされないものがあると思います。
そして公認心理師については法律により、法に違反して刑罰を受けた際の必要的取消事項についても定めがあるわけですが、一体どの機関がどうやって審査をして処分をするのかということについても定まっているわけでもありません。
「信用失墜行為」のような行為認定についての基準が曖昧ならばなおさらです。
医師・歯科医師、保健師・看護師、理学療法士・作業療法士らの免許取消・停止などの行政処分とその手続を行う医道審議会はあるのですが、公認心理師の場合にははっきりとした処分機関はありません。
そこで、せめて組織率が高い職能団体による自浄作用があってもよいかと思うのですが、日本公認心理師協会も公認心理師の会も一向に統一される気配がない。
このままだと医師団体が職能団体に対して強力な介入をしていくのかなと思いきや、多分医師団体側も呆れ果てて何もできないのが実情なのかな?と下世話ながら推測してしまいます。
無資格カウンセラーによる非違行為はルールがないところで行われたものなので、処分機関はありませんが違法ならば法により罰せられます。これまで臨床心理士が起こした非違行為はそれが十分とは言えなくともなんとか処分を受けてきました。
しかしながら国家資格となった公認心理師については処分機関が曖昧模糊としています。前述「元臨床心理士」H氏についても過去に行った悪事が世間的に露呈して臨床心理士会から処分を受けても公認心理師を取得してしまったというのは、確かに資格取得前に起こした出来事だとしても、これでいいのかと思うわけです。
公認心理師についてはお互いに上位資格を独自に定めようと争っているばかりでなく、もっと先にやることはあると思うのです。
せっかく国家資格ができたのですから、職能団体が統一されて、多忙で人員も少ない官側に提唱、提案をしていくためには職能団体の統一が必要と考えます。
そこで公認心理師倫理についてしっかりと論議した意見を持っていかないと公認心理師の倫理ははっきりとしていない、世間から見て不信感を抱かれる資格になってはいけないと思うのです。
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_
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