ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:倫理

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○ 臨床心理士・公認心理師有資格カウンセラーは安全なのか?

先日無資格カウンセラーによる準強制わいせつ事件に関する記事を書いたばかりですが、有資格者(臨床心理士・公認心理師)ならば絶対安全、大丈夫か、というと「人による」という答えしかない、というところが本当だと思います。

しかしその倫理面での整備や倫理の運用について厳格化することで国民の信用を高めることはできると考えます。

臨床心理士会報にも毎回資格剥奪を含む処分が掲載されていますし、公認心理師も医療、教育、福祉に関する非違行為で罰金刑、または一般刑法典でも禁錮以上の刑に処せられたら資格を自動的に喪失することになっています。

公認心理師は公認心理師法、信用失墜行為に関する処分に規定されているとおり、任意的取消事項として信用失墜行為があった場合には厚生労働大臣と文部科学大臣が公認心理師の登録を取り消すことができるのです。

刑法典にも違反するような、クライエントさんや患者さんを傷つけるような性加害は厳しく処せられるべきであるというのは実際にそのとおりで、当たり前のことだと思います。

アメリカ心理学会APAや諸外国でも有資格心理カウンセラーの性加害は重い処分となるのは当たり前となっています。ところがこういった事案は後を断ちません。

以前言及したのですがアメリカにおける調査研究で女性クライエントと性的な関係を持ったことがある精神科医・カウンセラーは約10パーセント、日本でも有名な臨床心理士が当事者と性的関係を持ち、臨床資格停止となって、その間臨床業務はやらずに研究業務だけを行って停止ン期間をやり過ごしたという例も聞いたことがあります。

また、複数の女性と関係を持ったことと資格認定協会から不適切さを指摘されて臨床心理士資格停止後に公認心理師を取得したH氏の事案は有名ですが、過去に遡って掘り起こすといくらでもこういった事件は出て来るでしょう。

もう亡くなられた有名な精神科医がいます。その方の書いたものでも「A子から交際を申し込まれたが私には婚約者がいて、あまりA子に魅力を感じなかったので」断った、という「え、その理由?」という記載もあり、昔は治療者側の倫理はかなり緩かったのかもしれません。

さて、こういった事案が起こることやを防止する、そして倫理面での意識を高めるためにはどうするか、ということですが、臨床心理士の場合には独自の査問委員会があり、登録抹消処分も出しています。

臨床心理士は不適切な行為を行った場合には資格認定協会からの義務的なスーパーヴィジョンを受けなければならない場合もあり、厳しい運用が行われているのですが、処罰、再発防止に向けたシステムは整備されていても「予防」はこうした厳しい倫理綱領、倫理規定があるという以外には各臨床心理士の自覚に委ねられているわけです。

参考:

臨床心理士倫理綱領

臨床心理士倫理規定

こうした「防止・予防」は人間と人間相手の仕事である以上、どんなに倫理面に関する教育を学部から大学院までしっかりと行ったとしてもやはり人間は人間、「絶対」はあり得ないでしょう。

それでもこうした倫理教育はやらないよりはやった方がいいわけで「知らなかった」では済まされないものがあると思います。

そして公認心理師については法律により、法に違反して刑罰を受けた際の必要的取消事項についても定めがあるわけですが、一体どの機関がどうやって審査をして処分をするのかということについても定まっているわけでもありません。

「信用失墜行為」のような行為認定についての基準が曖昧ならばなおさらです。

医師・歯科医師、保健師・看護師、理学療法士・作業療法士らの免許取消・停止などの行政処分とその手続を行う医道審議会はあるのですが、公認心理師の場合にははっきりとした処分機関はありません。

そこで、せめて組織率が高い職能団体による自浄作用があってもよいかと思うのですが、日本公認心理師協会も公認心理師の会も一向に統一される気配がない。

このままだと医師団体が職能団体に対して強力な介入をしていくのかなと思いきや、多分医師団体側も呆れ果てて何もできないのが実情なのかな?と下世話ながら推測してしまいます。

無資格カウンセラーによる非違行為はルールがないところで行われたものなので、処分機関はありませんが違法ならば法により罰せられます。これまで臨床心理士が起こした非違行為はそれが十分とは言えなくともなんとか処分を受けてきました。

しかしながら国家資格となった公認心理師については処分機関が曖昧模糊としています。前述「元臨床心理士」H氏についても過去に行った悪事が世間的に露呈して臨床心理士会から処分を受けても公認心理師を取得してしまったというのは、確かに資格取得前に起こした出来事だとしても、これでいいのかと思うわけです。

公認心理師についてはお互いに上位資格を独自に定めようと争っているばかりでなく、もっと先にやることはあると思うのです。

せっかく国家資格ができたのですから、職能団体が統一されて、多忙で人員も少ない官側に提唱、提案をしていくためには職能団体の統一が必要と考えます。

そこで公認心理師倫理についてしっかりと論議した意見を持っていかないと公認心理師の倫理ははっきりとしていない、世間から見て不信感を抱かれる資格になってはいけないと思うのです。

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◯ 臨床心理士・公認心理師の法・倫理違反と資格抹消

この辺りも公認心理師試験に出るかもしれないと思って書いています。まず大切なのは、公認心理師法によれば

(信用失墜行為の禁止)が第40条に定められていて「公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。」とあります。

この信用失墜行為については罰則規定はなく(罰則規定とは懲役刑や罰金刑のことを言います。)、行政処分として厚生労働大臣及び文部科学大臣が「登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。」(任意的取消事項。虚偽のや不正の申告に基づいて登録を受け、必ず取消しを行わなければならない「必要的取消事項」とは異なる。)とあります。

なお、臨床心理士にも厳しい倫理綱領があり、これに違反すると資格取消になります。日本
臨床心理士資格認定協会の「臨床心理士報」を見ると毎回2~3人が資格抹消や資格停止の処分が出ているのを見ています。

何が倫理違反になるかというと、アメリカ心理学会 APA ではかなり厳しい倫理規定 (ethic code) があり、研究を行うに際してデータを捏造したり、その結果をして効果が認められない心理療法を行うことが効果がある、と大々的に虚偽の宣伝をしたりするとやはり資格剥奪になります。

アメリカでは臨床心理士が APA に入ることは必須の条件になっているので、APA 会員の資格抹消をされることはそのまま心理職としての職業人生も終わることになります。

それでは何が倫理違反かというと、臨床心理士の場合には処分理由までは書いていないので不分明ですが、手元にある現任者講習テキストを広げてみると公認心理師についてもかなり広い解釈が想定されていることがわかります。

公立学校における飲酒運転などの私的信用失墜行為もそれに当たります。

試しに裁判所の判例を紐解いてみたのですが、やはりここでも信用失墜に当たるような行為で臨床心理士が敗訴した事例が掲載されていていました。臨床心理士のハラスメント行為の結果損害賠償の義務を負った事例がありました(臨床心理士の資格処分については掲載されていないので不明)。こういった、類犯罪行為については論外ですが、どこまで広く信用失墜行為なのかを見て、どの機関がどのように審査をするかは職種によっても異なるようです。

この辺りを当ブログの監修をしている S女史にも聞いてみたのですが、例えば法律違反としての守秘義務違反は司法書士・通信を業としている者については相当に厳しい処分が待っているようです。公認心理師法が施行された際には「え、なんで公認心理師だけこんなに罰則が厳しいの?」と思ったのですが、そういうわけではないとのことでした。

また、医師・歯科医師は刑法犯罪を起こすと医道審議会にかけられてやはり資格剥奪や医業停止処分等を受けるのですが、法務省から「お医者さんや歯医者さんがこんなことやってるよ」という通告があって初めて処分があるとのことです。医師に適用される秘密漏示罪は公認心理師より軽いのですが、法の制定が古かったからかもしれません。

さて、信用失墜行為よりも広く解釈される職業倫理の7原則について現任者講習テキストに記載されているので引用します。元は金沢吉展先生による文献を現任者講習テキストに向けて改定したようです。

第1原則
相手を傷つけない、傷つけるようなおそれのあることをしない

第2原則
十分な教育・訓練によって身につけた専門的な行動の範囲内で、相手の健康と福祉に寄与する

第3原則
相手を利己的に利用しない

第4原則
一人ひとりを人間として尊重する

第5原則秘密を守る

第6原則
インフォームド・コンセントを得、相手の自己決定権を尊重する

第7原則
すべての人々を公平に扱い、社会的な正義と公正・平等の精神を具現する

以前公認心理師制度推進室に電話照会したところ、この倫理違反処分の処分機関は決まっていないとのこと。「うーん、うちがなるのかもしれませんけどねえ」とのことでした。

というわけで公認心理師の場合は臨床心理士と違って法律上の定めはあっても倫理についてははっきりしないところもあるようです。

だからといってもちろん何をしていいというわけではなく、懲役刑(執行猶予を含む)、医療、教育、福祉の刑罰で罰金刑を受けると即資格喪失と決まっているわけですから厳しいということは確かです(必要的取消事項で必ず取り消さなければならない)。

まだ公認心理師資格の取り消し例は聞いたことがないのですが、法施行後5年目の見直しで審査機関が決まるかもしれません。

倫理がはっきりとしていない資格というのは社会的信頼性も薄くなるだろうことから、この辺りはしっかりと定まって欲しいと思っています。

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三つの大好きが出逢った瞬間。


◯ 臨床心理士資格存続構想−資格認定協会窮余の一策

1.序

今回も例によってTwitterの盟友うさネズミさんのtweetからインスパイアされての記事です。



日本臨床心理士試験認定協会のホームページはさっぱり見ないのですが、久しぶりに見てみたら、2020.5.28付で臨床心理士倫理規程の新制定、倫理綱領、倫理委員会規定の一部改正が行われていました。

臨床心理士資格詐称で逮捕された容疑者が逮捕されたのが8月4日なので、この事件を端緒としての改正ではありません。

思えば臨床心理士資格は多くの大学院で取得することができましたが、公認心理師資格が施行されるとともに、それまで臨床心理士養成を行ってきた大学院がばたばたと臨床心理士養成課程を廃止してきました。

公認心理師は出題範囲が幅広く実習も義務付けられていて、とてもではないですがEルートを中心とした今の院生が双方の資格には対応できないと思います。

今コロナの関係で臨床心理士養成課程大学院生が院から通信課題として、公認心理師試験には出題されないロールシャッハの問題をガンガンと出されて単位取得のために
受験勉強もできずに四苦八苦しているということをよく聞いています。(ロールシャッハは少なくともこれ専門で対面講義を少なくとも1年間受けないと使えないと思うのですがそれはまた別の話です。)

一方で臨床心理士資格を持っている人のメリット、アドバンテージは何かということが臨床心理士資格認定協会のための存続に大きくかかわってきていると思いました。

2.倫理的問題

⑴ 倫理を厳格にする資格認定協会側のメリット

公認心理師は第42条第2項として「主治の医師の指示」があります。臨床心理士倫理綱領第6条には専門職との「相互の連携」が謳われているのみですが、倫理的問題をよりクリアにすることで「主治の医師の指示にも従うし高い倫理観も持っている」心理職が公認心理師・臨床心理士ダブルホルダーにあるとすれば、雇用する側にとっては正に「共存共栄」の双方win winの資格になるでしょう。

この新しい倫理綱領10条では、臨床心理士が倫理に関する申立てを行われて処分(「厳重注意」「一定期間の登録停止」「登録抹消」「不問」が確定した場合には、

A. 教官である場合臨床心理士指定大学院

B.所属する臨床心理士会
 
に通知しなければならず、申立てが行われた段階でも倫理委員会の行う面接調査にも協力しなければならないとされています。

これまで日本臨床心理士資格認定協会と日本臨床心理士会及び各地方臨床心理士会との協働が見られたことはなかったのですが、これは画期的なことと言えるのではないでしょうか。

むしろ資格認定協会が士会の方に寄っていき、倫理に対する提言をしたとも思います。

臨床心理士倫理については過去何人もが処分を受けていて、資格認定協会が出している雑誌で、資格抹消や資格停止の処分を見たことがある方も多いでしょう。

一時期有名になった元臨床心理士H氏、複数形の女性クライエントと関係を持ったとして停止処分になったものの、自分で事務所を持つに至っています。数々の処分者の多きを見ているとき何があったのだろうかと思いますが、倫理綱領による資格停止や抹消が両団体の橋渡しをしているのかもしれません。

2.心理テスト

さきほど述べたようにロールシャッハテストは人格や情報処理能力、病理性などを見ていく上で大変有用な検査です。ここは公認心理師には出題されないところです。ロールシャッハは医科診療保険点数でも4500円が認められるわけですが、公認心理師試験出たことはなく今後も出題はされないものと思えます。

倫理問題もさることながら臨床心理士のみが持つ独自性を打ち出していかなければならないものと思います。

3.結言

臨床心理士はその独自性を示すためには倫理綱領を厳格にする、または臨床心理士ならではのアドバンテージを示していかなければなりません。臨床心理士と公認心理師資格は共存共栄だけでなく、激しい葛藤のやり取りの末に和解していくことが資格認定協会としては得策と思ったのではないでしょうか。

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◯ 公認心理師がもし猫を轢いたら

医学部入試に「昨夜猫を轢き殺したるわれにして人の規則に許され働く」の短歌についての感想を述べよ。

という出題されたことがネットのニュースで話題になっています。

この短歌を詠んだのはタクシードライバー歌人、高山邦夫さんです。

タクシードライバーは多くの距離を運転していますが、小さくて交通ルールの守れない猫を完全に避けることは難しいです。

運転を生業とするドライバーでも轢いたら、子ども相手なら重罪、猫ならばそれは「モノ」相手として「人の規則に許され働く」ことができます。

公認心理師第40条には信用失墜行為の禁止義務があり「公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。」とあります。

猫を轢いたとしても、どの資格職もそれは信用失墜行為にはなりません。

しかしながらずっしりと重い罪の意識に苛まされる人も多いでしょう。

医師はその扱う患者さんの数とリスクから、人命が失われることが通常でも多く予想される職務です。

心理職もまた人の命を預かる仕事なのは間違いなく、一日中希死念慮が高い患者さんの話を次から次へと聞くことがあります。

以下のような発言を精神科医からも心理職からも聞いたことがあります。

「結局あの人は◯◯だから誰も死ぬことを食い止められなかったんだよ。だから仕方なかったんだよ。」

(カッコ内には病名やその人が置かれた環境、トラウマなどが入ります。)

もし上記医学部試験でそういう解答をしていたら×で、きっと合格点はもらえなかったでしょう。

「あの黒猫は夜道を一目散に渡って行ったから避けようがなかった。」

それは真実です。

クライエントさんが自死、不審死を遂げた時に心理職は毎週濃密に1時間を過ごしていたクライエントさんをどうすれば食い止められたかという理由を事後であっても探し続けます。

自分が眠れない思いをしても探し続けます。

医療事故はあらかじめ患者さんの死が予想されていなかったものについて事故とみなします。

※ ちなみに医療事故とは医療法では下記のように記されています。

第6回医療事故調査制度の施行に係る検討会 資料2-3

平成27年2月25日

医療事故の定義について

厚生労働省医政局総務課
医療安全推進室


医療事故の定義について

1医療に起因し、又は起因すると疑われるもの

2当該死亡又は死産を予期しなかったもの

3死産について

法律

通知事項

第6条の10

病院、診療所又は助産所(以下この章において「病院等」という。)の管理者は、医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起 因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるものを いう。

(以下この章において同じ。)

が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、当該医療事故の日時、場所及び状況その他厚 生労働省令で定める事項を第6条の15第1項の医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。

(以上引用)


医療の世界では次々と患者さんが亡くなっていく、リスクが予測できる科も多いです。

心理職の世界は希死念慮が高い患者さんが次々とやって来ることが多く、ただそれを漫然と毎日のようにこなして1時間面接時間をこなしていると患者さんはそのままで帰ります。

1週間192時間、面接時の1時間以外の191時間、患者さんがまた次に生きて面接にやって来る来週に繋げていくか多くの心理職は必死だろうと思います。

「あの患者さんは元々死にかねない、そういう人だったから」

「自分にはどうしたらいいかわからないし、報告しても医師もどうすればいいのか教えてくれなかったから」

「そもそも自分にはあんなに重い人の生き死にをどうにかするような実力はなかったから」

どれも理論的には正しいことです。

医療においては先読みリスク管理をした上で危険性の発現を少しでも減らすことが大切です。

「この薬には◯◯という強い副作用があります。それでショックを起こす可能性がxパーセント、退院できるようになる確率がyパーセントです。」

というのが通常のインフォームドコンセントICです。

ICなしに死ななければならない、言葉が通じない、しかも避けようがない猫の飛び出しについての刑罰はありません。

この問題の正答は、医療過誤にならないし、避けようがない患者さんの死でもきちんと真摯にそれを受け止める、原因を究明してそして次の治療に生かすということではないかと思います。

そして医療者の内心の良心としては、医療過誤にならなくても患者さんの死から学べるものがなかったのか考えること、これが多分正答に近かったのではないかと思います。

心理職の世界では患者さんのバイタル(心拍、血圧、呼吸などの生命徴候)から一刻を争って救命をすることはありません。

ふと待合室で見た、あるいはカウンセリングルームに入ってきたクライエントさんの顔、声色、服装を見た時に感じる「直感」があり、それはたいてい当たっているものです。

証明力があるエビデンスでなくとも、患者さんの雰囲気全体から何かを感じたいと自分自身でも自戒したいと思っています。

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◯ 公認心理師・臨床心理士の研究活動はプライバシー配慮や倫理的問題はクリアできているのか?

公認心理師・臨床心理士に限らない事ですが、研究活動におけるプライバシー保護、守秘義務の遵守は大きな問題です。

臨床家は研究者であるというアメリカの科学者-実践家モデルは正しい事です。

確かに日常業務に追われて自分の目の前の仕事に取り組むのに手一杯で研究どころではない、そういう臨床家は多いと思います。

それでも実践家であるからには様々な研究書や論文は読んでいるわけです。

実際、公認心理師試験も基礎知識を問うような問題でありながらも法律やきちんとした公的機関(厚生労働省・文部科学省・法務省・裁判所)などの通達、ガイドラインを読んでいないと答えられない問題は多いです。

研究を日々絶やさない、少なくとも知識を日夜ブラッシュアップしていこうという姿勢がないと合格しにくい試験ではないかとも思っています。

公認心理師試験に無勉で高得点で合格した人の話を聞くと、いつもその辺りの心理職やカウンセリングについての周辺知識や法規に絶えず目配りをしていたそうです。

さて、心理職や精神科医の学会専門誌、学会発表では事例(クライエントさんや患者さんへのかかわり)の発表が行われることがあります。

この研究活動におけるクライエントさん、患者さんの守秘義務倫理への配慮は、大抵の場合、様々な形式で慎重に行われています。

必ず論文や学会大会抄録に、どういった倫理的配慮を行ったのかは記載しなければいけません。

「プライバシー保護のために個人が特定されないように事例の改変を行い、本人に了解を取った」

というような記載を見る事がありますがこれは最低限のことですし、問題があると思います。

精神医学、心理学領域には限らないのですが、対象者がいる研究をする際には厳しいルールがあります。

患者さんやクライエントさんに対してプライバシーに配慮して心身に害を与えない(侵襲的でない)事、著作、研究論文や発表抄録、発表原稿が国立国会図書館に記録として収納(収納義務があります。)されるまで、いついかなる時点でも研究結果データを使うことをクライエントさんやその家族が拒否、撤回できる事が明示された説明書を渡します。

治療中の患者さんに対する研究ならば、(治療後も同じですが)研究参加を拒否したり参加後に撤回したことで何ら不利益がないという一文も入れます。

(でも患者さんは断りにくいだろうなとは思いますので、それに対する工夫も必要と思いますが)

そしてクライエントさんに同意書に書面でサインをしてもらいます。

全て書面にして双方が保管します。

さらに原稿ができたらもう一度ご本人や家族に見てもらい、修正点があれば修正します。

そしてその研究者が所属している組織の倫理委員会に諮って倫理的問題がないかどうかの審査を受けます。

委員会で患者さんの人権保護に問題があるとされ、リジェクト(却下)されたらそれまでです。

大病院ならしっかりとした倫理委員会がありますし、大病院でない研究機関が大病院の倫理委員会を通して発表をすることもあります。

何の審査も受けていない発表は問題があると感じています。

医療関係者だけでなく弁護士が人権擁護の目的で、また他領域人文科学者の専門家が倫理委員会に入ることもあります。

病院の院長を始めとして医療従事者たち、医療安全評価者、看護師を始めとしたコメディカルなど医療従事者も倫理委員会に入ります。

逆に倫理審査の公正さが保てないということで同じ病院職員の発表については院長等管理職は外れるということもあります。

ただ、事例論文を読んでいると精神科医でも心理職でもずいぶん大事な部分をすっとばして発表している場合があります。

(小さな学会、研究会、団体ではそんな事が散見されます)

「今度さ、内輪の小さな勉強会があるんだけどAちゃんのことカウンセラーとかお医者さんの研究会で話してみてもいい?匿名希望でいいからさ」

と小さな子どもに言いっぱなしで「同意」とするのは×でしょう。

きちんと保護者に説明書を渡し、同意書をもらい受ける必要性があります。

読者のネズミさんが公認心理師倫理について触れていましたが、今後の事を考えていくと倫理を自重していくことはとても大切なことです。

昔々はかなり有名な御大たちが結構適当にクライエントさんの同意を得たかどうかわからないような論文や著作で事例発表しているものがありました。

(今現在販売中のものもあります。)

公認心理師は今後社会的認知が広がるにつれ、各研究団体や一般人からの目がどんどん厳しくなるでしょう。

個人情報保護については公認心理師試験にも出題されます。

何が個人情報に当たり、とういう手続きを経たら個人情報取扱いに問題がなくなるのかは試験対策だけでなく心理職にも医療者の方々にも知っておいて欲しいなと思います。

だからこそ研究における事例のプライバシー保護にはかなり神経質になってもなり過ぎではないと自戒の念を込めて思うのです。

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