ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:主治の医師の指示

主治の医師の指示を仰ぐ方法、ひな形文例とは?公認心理師法42条2号・公認心理師法上の義務

(以下例文)

「公認心理師法第42条2項にかかわる医師の指示依頼書」

◯◯大学病院精神科肥山乙男 先生御侍史

拝啓 肥山先生におかれましては日ごろから御高診いただきまして誠にありがとうございます。

さて、甲山先生御担当患者 荊原トゲ美さん(平成14年7月12日生 17歳)について下記のように心理面接情報を提供しますので、公認心理師法第42条2項による、主治の医師の指示を仰ぎたく本依頼書を御送付させていただきます。            敬具

私設開業心理カウンセリングオフィス
ひなたま

      公認心理師 火股阿木羅

          〒123-4567
          住所(略)
          電話番号(略)

        記

1.治療アドヒアランスの欠如

荊原さんは肥山先生の診察に2カ月
行っておりません。

当方から受診を促したところ、拒絶する態度を取っています。

2.服薬コンプライアンスの欠如

肥山先生処方の薬について荊原さんは初診以来一度も服薬しておりません。

心理師からは服薬指導は行えないため(公認心理師法第 42 条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について・文科省、厚労省通達)

再度肥山先生受診を心理師から促しましたが、いまだ荊原さんは拒絶しています。

以上の経過を踏まえて肥山先生からのご指示をいただきたく本文書をしたためている次第です。

ご指示あればどうぞよろしくお願いします。

(返信用封筒、切手同封せず。)

※ 再送・修正依頼書

「公認心理師法第42条2項にかかわる医師の指示依頼書」

◯◯大学病院精神科肥山乙男 先生御侍史

拝啓 肥山先生におかれましては日ごろから御高診いただきまして誠にありがとうございます。

さて、肥山先生御担当患者 荊原トゲ美さん(平成14年7月12日生 17歳)についてさきほどの心理面接情報を昨日投函しました。

患者さんから一旦了承を得た文書ですが、荊腹トゲ美様がその後大変ご立腹してヒートアップされましたので、患者様のお伝えしたい内容をそのまま記載した文書を再度ご送付いたします。

私設開業心理カウンセリングオフィス
ひなたま

      公認心理師 火股阿木羅

          〒123-4567
          住所(略)
          電話番号(略)

        記

1.治療アドヒアランスの欠如

「はぁ?コエヤマぁ?あいつ人の目見ないでパソコンにかちゃかちゃ向かって初診3秒で人格に障害があるとか学校行けとかそうじゃなきゃ働けとかチョー上から目線でムカつくからもう行かない。チビデブハゲキライ」

2.服薬コンプライアンスの欠如

このクスリ飲んで少し落ち着けとかロクに診察もしてないのに信じられない。医者の言う事なんか聞けねえっつーの。だいたいワタシ担任がひどいから高校行かなくて親に病院連れて来られただけで病気でもなんでもないのになんでテキトーにクスリ出されなきゃいけないの?

(以上、患者さん荊原さんの了解を経た後に見ていただいて修正、本人の納得の行く情報提供書を作成したものです。

ちなみにこの情報提供書作成に当たっては私、公認心理師火股に対しても

「なんでコエヤマにチクるの?あんた医者みたいに権力ある人間だったらなんでもチクればいいっていうチクリ魔?医者のイヌ?」

と公認心理師からの再三の親身な説得にもかかわらず、不満を述べ、患者さんと公認心理師の治療同盟も危うい状態です。

以上の経過を踏まえて肥山先生からのご指示をいただきたく本文書をしたためている次第です。

ご指示あればどうぞよろしくお願いします。

(返信用封筒、切手同封せず。)

※ 公認心理師から「主治の医師に指示を求める依頼書」についてはちょこちょことあちこちでトラブっているようです。

主治の医師の指示について機関を超えて公認心理師が指示を仰ぐべきというガイドラインがありますが、書式も内容も趣旨もなによりも法文上、医師に何の義務も課せられていない事からこのような問題は大きくなっていくでしょう。

公認心理師制度導入の際、この「主治の医師の指示」はパブリックコメント(厚生労働省の一般からの意見聴取)でも「主治の医師の指示を仰ぐ義務」について

「それでは医師は何の義務があるんだすか?」という趣旨の質問に対して

「公認心理師法はあくまで公認心理師の義務について定めたものであり医師の義務はありません」という回答がなされていました。

勉強をした方々は百も承知のことですが、医師法にせよ公認心理師法にせよ、上位法となるのは憲法、民法、刑法です。

何か医療事故、医療過誤があった際、各下位法同士が拮抗すると実は法的にはどんな判断が出るのかわからないのが裁判の世界です。

公認心理師法が制定された際には医師団体からのかなり厳しい要求があって主治の医師の指示、そして従わなかった際には資格取消しもありうるという条文になりました。

医師が「公認心理師法なんか知らないよ、なんか文書が来てたけど忙しいから読まなかった、読めなかった」

ということで患者さんに不利益が生じた際には「なんで公認心理師法を読まなかったの?指示を適切に出さなかったの?」

という判断になることもありえます。

民事上の債務不履行責任が医療者側には問われるわけですが、医療者にとっての債務不履行は通常の一般人とは異なります。

極端な話になりますが「あいついつも元気ないから遺書書いたとか準備したとかぶつぶつ言ってたけど本当に死ぬとは思わなかった」

と言っているのが一般人なら責任は問われなさそうですが、これが医療者ならば債務不履行と言われても仕方ないのではないかと思うのです。

「高い専門性を持ち、教育を受けた通常の職業人として当然知っておくべきこと」について債務履行責任が問われます。

精神科医が忙しかったから、あるいはどの科の医師にしても「公認心理師ってナニ?指示って何のこと?」と指示をしなかった場合に責任が生じることはあり得るという可能性を指摘しておきます。

指示を仰ぐ文書を送付すること自体が公認心理師が失礼な事をしていると医師からとらえられる場合も多そうな気がします。

なぜ公認心理師がそういった指示受け文書を出しているのか、精神科医だけでなく医師全体に広めてもらわないとならないと思います。

医師にもさまざまキャラクターの先生がいますが、精神科だけでなく他科に患者さんの了解を得て情報提供した結果、治療もカウンセリングもうまくいく場合も多いでしょう。

医師一人一人を見ていると人格的にも優れている先生は多いのです。

きちんと医師が公認心理師の義務について熟知しておいてもらわないと物事が円滑に進まないだけでなく、患者さんが不利益を被り、公認心理師も資格剥奪されるという誤ったハラスメントになりかねない事を危惧します。622ECC35-AA82-444C-BF0E-CB8E933AC71E

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公認心理師協会副会長から主治医師の指示に対する挑戦状

日本大学文理学部心理学科教授津川律子先生は、同大学臨床心理センター長、臨床心理学専攻主任である他、日本臨床心理士協会会長、日本公認心理師協会副会長の要職を務める方です。

その津川先生の「面接技術としての心理アセスメント 金剛出版 2018」は、公認心理師制度導入正式決定、試験直前に上梓されたものです。

「臨床家のあり方とは」という臨床哲学がちりばめられた書籍となっています。

別に津川先生が心理職に表立って「挑戦状」を突き付けているわけではありません。

ただし、公認心理師法第42条第2項の「主治の医師」の指示とクライエントさんの利益や守秘義務が相反した際の心理職の働き方について見ていると津川先生の対応から、公認心理師の動きというものを見ることができます。

以下、津川先生のあげたものの中から今回取り上げたい事例です。

この著作中p171、【事例から学ぶ➃】「うつ病」内、事例3.「ひげボーボー状態の男性」のケースです。

医療機関の知人から紹介されたこのクライエントさんは、津川先生先生が勤務する地域の相談室にやって来ました。

津川先生はカウンセリングをするに当たって主治医の了解を得ることについてクライエントさんから了解を取ります。

そこで津川先生は自分の名刺を添え、カウンセリング開始許可申請書などをしたためてクライエントさんの男性に渡します。

次回セッションの際、クライエントさんは封筒ごと津川先生が書いた書類を返納しました。

クライエントさん曰く「カウンセリングは受けていいけどその手紙も名刺も持って帰ってくれ」と医師に言われて受け取ってもらえなかった。

理由は医師が外部機関と連携したことがないから、というものでした。

ひきこもりがち、内気なこの青年は主治医について「その先生、僕に似てるんです」と述べます。

津川先生はその行為を「主治医をかばう」傷つけないようにするという意味で、青年クライエントさんと主治医の間に素晴らしい人間関係が構築されていると判断しました。

さて、この文献を元に心理職仲間と議論したのですが、この場合、どのように対応するのが正解だっただろうか?

という話をしました。

津川先生の見立てではこの青年はコミュニケーションに課題を持っている。

僕が思ったのは、そうであればこの青年は主治医に津川先生からの提供書を渡さなかった、渡せなかったのではないだろうかということです。

津川先生が書いているとおり、この青年は主治医と津川先生との板挟みになっていました。

主治医に連絡をしなければ、医師に無断でカウンセリングをすることになる。

カウンセリングはクライエントさんにとって有益なものか、場合によっては有害なものになるかもしれない危険性を常に持っています。

他機関で勤務する治療者2人の間にいるクライエントは違った指示を受けて忠誠葛藤の問題に直面するかもしれません。

だとするとなんとかして医療機関と連携を取りたいものですが、内気な青年は主治医に気を遣い、そして津川先生に気を遣っています。

産業領域心理職の友人は「こういう時にはどうしたらいいんだろうねえ」

と言いました。

僕は「公認心理師法だけじゃなくて医療安全の視点から見たらどうなんだろうね」と答えました。

クライエントさんが主治医とカウンセラーの双方を傷つけたくないと思ってこのような対応をしたと考えるなら、クライエントさんに「ごめんね、悪いけどきちんと直接主治医の先生と連絡を取ってあなたのことを話しておきたいの。主治医の先生と私の方針がが違ったら、あなたが困るでしょ?」

これが優等生的回答です。

そうしたがる心理職も多いでしょう。

ただし、そう言った途端にもうカウンセリングに来なくなってしまう、その発言そのものが十分にこの青年にとっては侵襲的です。

さて、津川先生はどうしたかというと、この青年の気持ちを慮りながら、青年を追及せず、最終的には主治医とも連携を取っていきました。

主治医の判断が仰げなかった=公認心理師の悪、としてしまうと公認心理師はどんどんクライエントや患者さんを追い詰めて「言うことを聞けなかったらカウンセリングはしません」という冷たい対応になってしまいます。

それは国民が望まない公認心理師増だと思うのです。

公認心理師の自由度は文字通りクライエントさんの運命の生殺与奪を握っていると思うのですが、いかがでしょうか。

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