
公認心理師試験 令和3年度ブループリント新用語
1. 序
ブループリント令和3年度版が4月16日付けで出ましたが、これらについて見てみたいと思います。ブループリントに記載された小項目はあくまで「例」であり、「出題は、この出題基準に記載された事項に限定された事項に限定されたものではない。例えば、法律、政省令等に記載される事項、厚生労働白書などの公刊物に記載されている事項などからも出題される。」と記述されていますので、今回小項目に新たに加わった用語は「この中から出題される可能性もある」ということで必ず出題されるわけではありません。
他方、小項目から意図的に削られた項目については出題される可能性はない(類縁の分野から出題される可能性は十分にありますが)と言っていいのだと思います。新しい用語のうちいくつかを簡単に書いておきます。
2. 各小項目
(1) 「心理職のコンピテンシー」が加わりましたが、コンピテンシーという概念は、ただ単に授業を受けたとか、実習に参加したということを示すのではなくて、その結果としてどのような能力を獲得し、成果を出すことができるのかを説明する概念です。
現任者講習会テキストではコンピテンシーCompetencyを「基盤コンピテンシー」という、いわば心理職としての基礎的・必須の能力、反省的実践を中核とする領域について記述されていて、機能コンピテンシーは、いかによく心理職として機能できるかの心理職としての成長を示しています。コンピテンシーは基盤コンピテンシーと機能コンピテンシーだけに分かれるのではなく、立方体モデルになっています。
すなわち、心理職としての発達段階が示されており、2つのコンピテンシーを心理職の専門性の発達という観点から見ています。
現任者講習テキストに比較すると僕の説明は舌足らずなところがありますが、要するにコンピテンシーというのは「個人特性」によって能力を獲得できるかどうかにかかわってくるものだと言えるでしょう。
心理職にとっては大切なこのコンピテンシー概念がなぜこれまで公認心理師試験に出なかったのかは不思議に思っていました。
(2) アドバンス・ケア・プランニング
「人生会議」とも呼ばれている終末期の医療をどのようにして欲しいかという患者さん本人を含めたケアプランです。医療との話し合いが不可欠になります。例えば、人工呼吸器をつけて ADL が大幅に下がってもまだ延命措置をして欲しいか、それとも延命措置を停止して欲しいか事前指示書を書いておきます。
多くの人が亡くなる前にこういった事前指示書は作っておかず、患者さんが意識不明、回復の余地がない場合に「心停止したら気管切開して酸素を入れますか?肋骨が折れるかもしれませんが心臓マッサージをしますか?」と医師に聞かれますが、家族には答えることは難しいでしょう。
(3) 乳児に対する実験・選好注視法、馴化・脱馴化・期待違反法
選好注視法は、乳児が何に興味を持つか、例えば左右に図形を交互に呈示し、より好ましいものを選ばせるというものです。
馴化・脱馴化法は、乳児に対して同じ刺激をずっと呈示しているとやがて注視しなくなるのに対し、例えば赤い丸の図形が動いていると乳児が飽きて見なくなるのに対し(馴化)今度は青い四角の図形が動いているのを見ると注視して見るようになります(脱馴化)。
選好注視法は、乳児の前にさまざまな刺激を呈示し、どれが好ましいものとして注視時間が長いか確かめるというものです。
期待違反法は、例えば青い三角の図形3つにシャッターを下ろす。シャッターが開いた時には青い三角の図形3つが目前にあるはずですが実際にはその中に黄色い丸が一番左側にひとつだけあると注視する時間がながくなるというものです。
高齢者に対して蔑視、偏見を伴うような言葉がエイジズム、「どうせじいちゃんなんだから」という言葉以外に老人福祉施設で職員が高齢者に「◯ちゃん」と呼んだり、赤ちゃん言葉を使うのもこれに入ります。
認知症の周辺症状BPSD Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia(認知症の行動と心理的症状=周辺症状)は主として知覚、感情障害で幻覚妄想、焦燥感、攻撃性、怒り出して暴力を振るう、抑うつ状態、睡眠障害、徘徊などです。
軽度認知障害(MCI)は65歳以上の約4分の1に見受けられる記憶の障害、見当識の軽度な障害でアルツハイマー型だとそのまま進行します。
学習方略は(既出用語ですが強調されているので)学習のための戦略とも言うべきもので、認知的方略としては数学や物理の公式を丸暗記するのではなくきちんと理解すること。
メタ認知方略は学習方法全般が自分の学力を向上させるのに役立っているのかどうかを俯瞰する、外部リソース方略(リソース管理方略)は外部の道具や他者を利用するというものです。
アクティブラーニングは生徒が座学でじっと聞いているのではなくより主体的に実習などにかかわりなから覚えていくことで、学習指導要領にも記載されています。
成年後見制度の利用の促進に関する法律は、解説が
行政書士栗原誠オフィス
のものがわかりやすいです。
厚生労働省の解説
も一読しておきましょう。
働き方改革は相当な数のパンフレットやリーフレットが出ています。(ブループリント用語には出ていませんが、傾向を見ると出題可能性は高いと思います。)
厚生労働省パンフレットの一例
残業時間制限、ワーク・ライフ・バランス、有給年5日以上取得の促進、働き方による差別撤廃などです。
「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」
は最近の法改正でパワハラ防止と中途採用率公表が義務付けられました。
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_
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