ひなたあきらの公認心理師でポン!

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

タグ:ファーストラヴ

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◯ 公認心理師登場ドラマ「ファーストラヴ」放映(ネタバレ少し・辛口)

真木よう子が公認心理師役主演ドラマ、ファーストラヴがNHKBSで放映されました。

心理職の僕からの感想を一言で述べると「ありがち」な話で、こういう事件があり、心理職がカウンセリングをしていたらもっとおどろおどろしい話しを聞くこともあります。

そしてこれは無理もないのですが、公認心理師真壁由紀、そして父親を自らの手で葬り去った聖山環菜の演技が少し食い足りない、実際のカウンセラーやクライエント関係とは異なっているな、という、とても厳しい感想を持ってしまいました。

人をあやめた人、虐待経験を持つ人は全ての感情を自分から切り離して無感情、無感覚になってしまい、解離症状を起こして犯行時の記憶が飛んでしまうこともあります。(今回の環菜もそうでしたので、作家島本理央氏はよくトラウマ体験を持つ人のことを描き出していると思いました。)

感情が整理できていないと過剰覚醒状態に陥って混乱の極みになって爆発的な怒りをぶつけるかの2通りかなと思いました。またはその揺れ動きが激しい、それを演じるのはとても難しいことです。

もっともこれは無理もないことで、聖山環菜を演じる上白石萌歌さんは被虐待経験があるわけでもなく、人の命を絶ったこともないわけです。

そして真木よう子が演じる公認心理師は平和な家庭を持ち、一見何の問題もないように思えるのが、実際には真壁由紀もトラウマティックな体験をしていて聖山環菜に引きずられるように自分の感情を揺さぶられる。

作家島本理生さんの原作を貶めるつもりはなく、これはこういう筋書きのドラマなので、そこに対して不満はありません。

しかし、心理職は内奥で揺さぶられながらもそれを必死に表出するのを隠していこうとする。(この仕事の悪い側面ですが、何を聞いても「驚かない」ことは必要な資質でもあります。虐待にあった子どもの話を聞いて「えっ!」と驚いてしまったらその子は「しまった、大人を驚かせるようなことを言ってしまった」と思って何も喋らなくなってしまいます。)

そういう点では内心揺さぶられる感情があってもいいのですが、それを抑える努力をする演技があってもいいと思ったのです。確かに自分と似たような

もっともこれは限られた時間の中で一般的には想像もつかない出来事に出遭った際の人の心の動きを描き出すドラマ制作は難しかったのだと思います。

そういった意味では、演技指導者として精神科医、臨床心理士、公認心理師がいても良かったのかな?と思うのです。また、本来は人権上なかなか難しいことですけれども被虐待経験者が持つ、演技のイメージ指導があればもっと迫真にせまるものができたでしょう。想像がつかない世界のシナリオにこの2人の女優は振り回されていたのかな?と思うのです。

もっとも、真木よう子、上白石萌歌さんの演技はネットの世界で見るとなかなか好評のようで、カラッとした乾いた淡々とした演技がかえってこのおどろおどろしい島本ワールドのストーリーにマッチしていたとなかなかの評価を得ています。

で、思ったのは心理職をしているとエンターテインメントにしても自分の体験してきた世界観が邪魔をして素直に楽しんで見られないのでダメですね。

せっかく公認心理師をクローズアップしてドラマにしてくれたのですから、このドラマを機に公認心理師になりたい、と思う中高生の方も出てくるかもしれません。

ドラマの世界に思春期の人たちが感情移入をしてさまざまな価値を獲得するのはいいことです。実際の公認心理師の仕事はどんなものか、ネットの世界でも紹介されています(いろいろ探してみたのですがこころJOBさんのサイトが一番体験談が掲載されていて良いようです。ほかのサイトがあれば教えてください)。

由紀と昔付き合いかけた、環菜の国選弁護人が出てきたり、幸せな家庭を支える由紀の夫もなかなかの配役です。さまざまな伏線が入り混じりラストまで畳み掛けるようなストーリーは圧巻です。

実際の心理職の仕事はこれほどまでのドラマチックさはなく、どんなにきわどい話でも面接室の中で完結してしまうことも多く、淡々としています。たとえ心理職が同じような体験をしてあたとしても流されることなく「それはそれ」と自分の存在をカッコで括って心理面接をしていくのはある意味本当の心理職の方が乾いた超越的な存在かもしれません。

環菜が行ったリストカットは父親の絵のモデルをやりたくないからという理由でした(実際のリストカットや過服薬は自分の現実感を取り戻す、現実から逃げるという意味合いが大きいのですが)。

結局由紀はルポルタージュ作品を描くのを断念しました。ここに人間心理の奥深さが象徴されたストーリーだと思うのですが、誰の心も一本化した完璧なシナリオやストーリーで展開されるものではなく、小説という虚構の世界ですら、それが真実として扱われているということです。

ショッキングなシーンあり、ストーリーも扇情的なものなので、見る人を選ぶドラマでした。誰もが見て耐えられるものではなかったと思います。以前心理職を志す大学生に「人が絶対に死ぬことがない現場で働きたい」と言われ、この仕事の厳しさを伝えるつもりで「ないよ」とすげなく答えたら、もうちょっと夢のある言い方はないのかと大層怒られたのを思い出します。僕ももうちょっと彼女の気持ちを受け止めながら丁寧に説明すればよかったのかなと。

さて、ドラマはこれからオンデマンドで見ることができるでしょう。北川景子主演の映画も製作されるに当たって、どんな風にこの重厚なストーリーが肉付けされていくのか楽しみにしています。

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◯ 真木よう子公認心理師役でドラマ化主演・キャスティングの意図は?

先日この作品で公認心理師役で女優北川景子さんが映画出演するという話を記事にしました。

http://hinata.website/archives/21979205.html

この作品を女優真木よう子さんが今度はテレビドラマにで主役を演じます。この作品に出演することについて

「この作品をお引き受けしたのは、とても漠然としたもので、 何か、この主人公、由紀になってみたい思いが強かったからです。
それが何なのかは、撮影が始まってから答えが出ると思います。」

と、ザテレビジョンのインタビューに答えています。

真木よう子さんは数々の受賞歴があり、演技派女優として知られているのです。

元々女優になったのも親の反対を押し切って、高倍率の名門俳優養成学校入学、塾長と大喧嘩して退塾、その後に女優として大活躍しています。

本人は男まさりの性格と自分を評していて、写真を見ると確かにそんな雰囲気があるかもと思うのですが、心理職が番宣用の写真だけでその人の性格を判断しようとするのはイケナイことです。

でも「勝気」「強気」「意志が強い」そんな印象の配役にこの役柄がぴったり来そうです。

知人の心理職、というかカウンセリング関連の仕事をしている人は70パーセント程度女性です。

現実の女性心理職も「気が強い」「性格がさっぱりとしている」「理知的」などと評される女性カウンセラーも多く、このドラマ脚本に似ているように思えます。

(実際のところ、もちろんそれだけではなく、まず受容的で優しく物柔らかで傾聴を大切にする態度は男女問わずカウンセリングをする上では重要な資質ですが)

ドラマのあらすじで、公認心理師が父親を自らの手で葬り去った女子大生の取材をしながらルポルタージュを書いていくという役柄は、むしろプロファイラー?捜査官?に近い役割のような気もします。

小説だとこの女子大生の取材にかかわっていくうちに公認心理師(原作だと臨床心理士)が心情的に巻き込まれていくといういわば極限状態を描いたストーリーです。

こういった心理士モノのドラマはいくつもあり、井上真央がスクールカウンセラー役の「明日の約束」

坂口良子主演、病院心理士が明快に事件解決をしていくドラマ、タイトルもずばりそのものの「臨床心理士」

などですが、ドラマや映画の世界ではスリリングさとサスペンス的要素が重視されるのでダイナミックなシナリオ構成になっています。

心理職の女性というのは頭が良く、しかも事件解決力に優れていて絡んだ糸を解きほぐすように事件の真実を心理学的手法を使って行うという資質がドラマの世界の価値観のようです。

こうした、心理学的プロファイラーの小説などを読むと心理職が狙われたり、命がいくつあっても足りないような気がするのですが作り物は読んでいて面白くないといけません。

公認心理師の職責とか、公認心理師活躍の5領域の紹介、公認心理師法第二条による公認心理師の定義、一要因分散分析などはどのエンターテインメントにも出て来ないでしょう。

それはなぜならば面白くないからです。

もれなく心理カウンセラー役で主演をする女性は眼光鋭く、受容的でありながらも真実を見通す、行動力にあふれるパワフルなタイプということです。

このイメージは心理職に対する世間からの期待です。

カウンセラーは世間から見ると憧れの対象で、万能なのかもしれません。

これはカウンセラーに対するある種の投影Projectionとも言えます。

心理カウンセラーは優しくそして逞しく、カッコよくクールかつ人助けをして危機を乗り越えていく存在です。

現代人は社会、学校、仕事、家庭などさまざまなストレスに晒されています。

それらを淡々と、そして的確に解決してくれるカウンセラーがいたとしたらそれはフィクションとして見ていても爽快です。

というかそんなカウンセラーがいたら僕がカウンセリングをお願いしたいぐらいの気持ちです。

(千美梨「私も」)

ズバッと真実を当てて、洞察させたり変化を引き起こすという事は現実のカウンセリングでは行われません。

なぜならば危険だからです。

「あなたがそうやって私に対して口ごもって一瞬沈黙をするのは私に対する敵意の現れで、それはあなたの父親に対するネガティブな気持ちをそのまま私に向けているんですね」

というような切れ味がいい大太刀は、うまく急所に入ればズバッと切れて爽快に問題解決ができますが、外れた所を切りつけたらこっちも相手も大怪我をしかねないからです。

ドラマや映画もなぜか、というか業界の人たちはニュースに敏感なので「臨床心理士」だったドラマや映画の配役も公認心理師シフトとなっています。

臨床心理士にせよ公認心理師モノにせよ、心理カウンセラーが出てくるエンターテインメントは人々の幻想も入り混じった期待が具現化されているものです。

メンタリストDaiGoさんが流行っていますが、若いスタッフの子から「同じことできるのぉ?」と聞かれて「えっと、できません」と何回か答えています。

催眠術を創始したメスメルの時代から人の心を扱って魔法のような効果をもたらすというスキルはそれ自体が魅惑的です。

できるできないにかかわらず、初めてやってくるクライエントさんや、知人はそんな目で心理職をカッコいいものとして見ることもあるでしょう。

誰しも万能ではないのですが、今後国家資格となった公認心理師認知度が世間で広まっていくにつれてそんな目で見られる事が多くなるかもしれません。

期待に無理に応えることは不可能ですが、公認心理師の仕事が何なのか、情報発信したり丁寧に説明していくことも責務、また社会的に正確な認知を広めていくことに役立つのだと思います。

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◯ 北川景子が映画「ファーストラヴ」で公認心理師役を演ずることについて心理職が考えてみた

作家、島本理生の作品「ファーストラヴ」が映画化されます。

本作品は幸せな家庭生活を送っている主人公、テレビで子育てについて語る心理学の識者、女性公認心理師真壁由紀(原作は臨床心理士)が犯罪心理のドキュメンタリー本を書くというテーマで語られていて、その作品が映画化されるわけです。

公認心理師の由紀は実父を自ら手にかけて葬り去り逮捕された女子大生、聖山環菜(ひじりやまかんな)の取材をしていきます。

その過程の中で環菜の深い心の奥底を見ながら、公認心理師自らも彼女の感情に巻き込まれ、平和だったはずの生活にも大きな影響が出てくるというもので、公認心理師役由紀の心象風景が精緻に描かれています。

実際には心理職がテレビに出て一般論として子育て心理学のような番組を持つことは稀です。

また、ドキュメンタリー本を書くこともほぼありません。

心理職はカウンセリングやテストをしても個人のプライバシーを守り、個人が特定されないようにデータ化されたものを研究していくという地道な仕事をするのが本分です。

大きな心理的葛藤を抱えている対象者でも、その心理的内奥を世に出す文章として描き出すのはむしろルポライターの仕事でしょう。

「子どもの死を祈る親たち」「鬼畜の家」等精神疾患や児童虐待に関するノンフィクション書籍は数多いのですが、そのほとんどは心理職ではない人々が著しています。

本作品は大学在学中から人間ドラマを次々に描き出してきた直木賞作家、島本理生の力作である事は間違いありません。

この主演公認心理師を演ずるために抜擢された有名女優北川景子は、作品と同様のキャラクター設定のために髪型をベリーショートにして役作りしています。

映画クランクインのニュース記事を見ると北川景子が迫力がある鋭い顔つきで写っています。

北川景子は黒のスーツ、クールな顔つきで、理知的な公認心理師像が描き出されるているような印象を受けます。

学問としての心理学、また現場の心理職の日常は淡々としています。

小説のようなドラマティックな展開はなく、「科捜研の女」のようなダイナミックな展開もありません。

さて、こういう映画やドラマが出てくると現場の心理職からは「心理の仕事はこんなものじゃない」という批判的な見方が出てきます。

また、高校生くらいのティーンエイジャーには「カッコいい、将来公認心理師になりたい!」いう憧れが生まれます。

いずれにせよ初めて「公認心理師」という単語が世間で著名になるのは悪い事ばかりとは言えません。

興味を持った若い人たちがいろいろと現実の心理職の仕事を調べてくれるのもいい事ではないかと思います。

どういった意味合いであっても公認心理師が世間に浸透していくことについて、ネガティブな側面だけでとらえなくてもいいのかなと思います。

(本記事は本小説を読了、島本作品の数々を読破した千美梨様の校閲、監修を受けています。)

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