◯ 公認心理師試験委員が期待する生活習慣病への心理職の関与と今後の保険点数化
公認心理師試験では難病ALSが第1回で出題、糖尿病の生活習慣病への治療アドヒアランス(意欲)への公認心理師のあるべき関与の姿が出題されていました。
数万人以上の職員を抱えている某大手では心理職が医療機関等と連携して生活習慣病への積極的関与を行うようにトップダウンで命令が出ていると聞きます。
さて、診療報酬のためには医科で医師ほかコメディカル、医療従事者等が関与して多くの保険指導料を請求しています。
糖尿病指導料、外来栄養食事指導料等ですが、心理職がもし今後何らかのかかわりがあるとすれば生活習慣への関与があり得ます。
クライエントさんが生活習慣を変化させていくためにはどのような心理的かかわりが必要なのかということについての出題はいずれその可能性を考慮しての事だと受け止めています。
厚労省では社会・援護局 障害保健福祉部 精神・障害保健課 公認心理師制度推進室が公認心理師制度の所掌ですが、厚生労働省の諮問機関である中央社会保険医療協議会との繋がりは確実に存在していることから、健康管理指導ができる公認心理師の指導=保険点数算定対象となる可能性は十分にあると思います。
例えば、熊野宏昭氏(試験委員)の訳書では、ACT(focused acceptance and commitment therapy )と呼ばれる認知行動療法、あるいは行動療法による生活習慣病へのアプローチが紹介されていますが、従来の認知行動療法と違い、ACTはより「気づき」や自己感情の受容、「いま、ここ」を大切にします。
(受験生の方々はACTのコアプロセスFEARや関係フレーム理論についても再学習するといいのではないかと思料します。)
糖尿病治療において、あるいは他の生活習慣病や健康を取り戻すためのダイエットでも、患者さんは自分の生活習慣を大幅に変える事を受け入れなければなりません。
否認、怒り、悲哀、罪悪感、恥、これらの複雑な感情は全て心理療法の対象と思われます。
精神疾患もそうですが、生活習慣病の心理教育のためには心理職も疾患の知識を持っていないといけません。
ここでは主に糖尿病DMについて触れますが、特に血糖値HbA1cやその自己測定についての知識を得ること(もちろん医師の診断を経てですが)、血糖値上下について心理職がコメントをして励ますことや自己測定穿刺の辛さに共感を示す事は治療に有効かもしれません。
治療アドヒアランス、治療への意欲は患者さんによって様々です。
医療の介入に積極的な人もいれば、健康食品だけを摂取して運動や体重コントロールをしない人もいます。
生活習慣病に心理職が介入し、結果として患者さんが自分の生活に自信を持てるようになるということは、患者さんが自分を健康に保つ権利を行使するということにも繋がります。
今後中医協(中央社会保険医療協議会)がどのように診療保険点数を考えていくのか、まだ明確ではありませんが心理職の活躍の舞台はますます増えていく事も予測されます。
参考文献:ジェニファー,A,グレッグ他 熊野宏昭(監訳)糖尿病を素晴らしく生きるマインドフルネス・ガイドブック ACTによるセルフヘルプ・プログラム
※ 熊野宏昭氏は第2回公認心理師試験出題者です。