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スクールカウンセラーは不登校を減らせるか?S女史と対談

1.はじめに

スクールカウンセラー制度導入後不登校数が減っていないというニュースを受け、当ブログのブレーンでもある切れ者S女史と話してみました。

2.会話

S女史:週1、場合によってはそれ以下の間隔という構造だとSC一人でなにかするというのは全く現実的でないような気がするわね。

それこそ、SCはコンサルテーションという形で動いた方が機能しやすいと思う。けどその場合、コンサルティーとなる教諭側の理解や能力、対応活動時間が…

というわけで、チーム学校は最初から破綻している絵に描いた餅な気も…それぞれの現場では各々精一杯頑張っているだろうけど、無理して精一杯やらないとどうにかできないなら、制度や体制に瑕疵があるんじゃ?

例えばね、医療の話をするとさ、英国NICEでは破綻しているけどさ、段階的ケアモデル、stepped cere modelに基づいてうつ病等メンタルヘルスの支援体制を築いている。

日本でも緩和ケアの方にも基本的緩和ケア、つまり主治医や看護師によるプライマリーな緩和ケアと専門的緩和ケア、緩和ケア医や麻酔医、サイコオンコロジスト等の専門家と専門支援チーム、緩和ケア病棟と分けて、基本的緩和ケアについての普及を狙っている。

学校においても、児童生徒の心理的問題について、全ての教諭がもう少し知識な対応能力を身に着けて、基本的支援をできるようになると、コンサルタントとしてのSCも機能するのではないかと。

僕:例えば常勤のスチューデントカウンセラー、そしてスクールカウンセラーは博士号を持つような専門家が地区を統括するという考え方もあるよね。

日常的な児童生徒のケアはスチューデントカウンセラーがやる。そして学校全体の体制作りは上位のSCがやってそれぞれの役割を分担する。スチューデントカウンセラーは健康な生徒の一次予防に努める。student mental counselerのような。アメリカのスクールカウンセラーは大抵校長、副校長と同格の管理職。

そういった外部性を明確にした上位のスクールカウンセラーがいじめや虐待など児童生徒の生命にかかわる問題について主導的にかかわっていく。

もっと話を広げれば、児童生徒の健康に直接関わっている養護教諭やスクールソーシャルワーカー、SSWにももっと権限を持たせないとどうにもならない。日本でも養護教諭が校長に登用されることはあるけれどもごく少ない。

心身の健康管理責任者としての養護教諭の役割は大きい。大家族で上の子が下の子を育てるヤングケアラーの問題なんかは子どもに直接接することができる養護教諭、SSW、SCが独立機関として、校内にいても外部性や第三者性をもっと持たせないとダメだね。

そうやってチーム学校の概念を変えていかないと不登校は減らない。僕はチーム学校概念を大幅に変革していかないと、Sが言うように医療モデルを取り入れていってもいい。

S女史:そうできるのが一番良いのかもね。何でもかんでも教諭に任せすぎ。だから例えばスチューデントカウンセラーが基本的支援から担っていき、スクールカウンセラーはマネジメントやコンサルテーションを行う。ティーチャーはメンタルヘルス知識を持ちつつもティーチャーとしての役割をまっとうすることも大事。

そうでないと専門性がケンカして争いあって結局は不登校は減らないということになるのでは?

僕:日本でのスクールカウンセラーは行政職一5級で、地方部局によっては黒塗りの車で送り迎え待遇。それは形式上だけでチーム学校概念の中では教員と同格に位置づけられている。待遇と実情と制度が交錯しているのは混乱と言ってもいい。

3.おわりに

僕は以前からチーム学校制度には反対しています。チーム学校では外部性を持つSCやSSWは管理職ではない教員と同格に位置づけられていて、管理職の指揮下にあることになっています。

どうせチームを編成するのならば、管理職への報告はするとしても、養護教諭health teacherにもっと権限を持たせ、SCや SSWとの連携をまず行い、不登校児童生徒の心身の状態、環境を把握して担任教員とも十分に情報交換を行い、方針を決めることができないとならないのではないでしょうか。

A君が学校に来なくなった。管理職はそれを把握している、それに対して何の有効な介入も専門家に対してさせていない。

これが日本の不登校の現状です。いくら専門家を投入したとしても専門家には権限がなく、介入の力もひどく弱いということでは不登校が減らないというのは当たり前という気がします。

実際、僕も小中学校約30校のSCをやりましたが、学校による温度差はものすごいもので、管理職がカウンセリングアレルギーのような学校も実際にありました。

ただし、ほとんどの学校は養護教諭、SSW、担任との連携はよく取れたので、もっと情報交換をしながら実際に介入するべきチーム編成は現在のチーム学校とは違ったチーム形態になると思うのです。

かなり僕の考え方も偏っていることはわかるのですが、ひとつの話題提供としてこの記事を書いてみました。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_