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○ 他職種 Gルート公認心理師&心理職のスキルアップ

1.はじめに

臨床心理士資格を所持して心理職のみをしている人々、また、これから臨床心理士・公認心理師 W 受験を考えている学生さんにとっては「現任者ということで心理の勉強もしてこなかったのに資格をなぜ取る。勲章やバッジのつもりなのか」という気持ちがあります(もちろん全員ではありませんが)。

また、そういった感情を抱かれていることは G ルート他職種の人たちもわかっていることです。

ただし、この試験は臨床心理学専攻大学院卒レベルの試験、他職種 G ルート合格者は血のにじむような思いをしてなんとか 138 点スレスレで合格した人が多数です。1回は落ちてその後自分の持てる時間のほとんどを勉強に費やした。僕は G ルートの人たちは受講者+今までの不合格滞留者がほとんど受けるものと思っていたのですが、計算すると 3 分の1は受験をしていないようです。

昨今のコロナ情勢でその対応に追われていたり、長距離移動ができなかったりという事情もあるのかもしれませんが、相当に困難なハードルと思い、戦わずに敗退している人たちも多いのかと推測してしまいます。

基礎心理学知識・医学知識・各種法律知識や制度論をよく知っているからといっていいカウンセリングができるという証明にはなりません。どの資格でも言われていることですが、資格というのは取得したらすぐに使いものになるというわけではなく、それをどのように役立てていくかはその人次第です。

2. 産業公認心理師 Y先生

以前から懇意にさせてもらっている、株式会社 A 社を経営し、カウンセリング・メンタルヘルス教育のパッケージを各企業に提供している、産業カウンセラー・キャリアコンサルタントです。第2回試験で公認心理師を取得した Y 先生は経験10年のベテランですが、朝4時起きで勉強、通勤の電車、バスの中でも勉強、土日祝日は空き時間を全て公認心理師に向けて勉強し、それでも結果的に 138点+数点というきわどい合格点だったということでした。

Y先生とついさきほどまで話していたのですが「公認心理師を取得して変わったことは?」と聞いたところ「何もないわねえ」ということでした。

それではなぜ公認心理師を取得したかというと、彼女はかなり勉強熱心な人で、同じ産業カウンセラー、ほかの臨床心理士も入っているカウンセラー仲間との勉強会にもよく参加していて、それまで解決思考アプローチ、家族療法、動機付け面接の勉強会に出ていて僕が彼女の勉強の邪魔をしに行った時には ABA(応用行動分析)の本を手にしていました。

要するに彼女は臨床心理士こそ持っていなかったものの、心理の仕事をしているという立派な矜持があり、新入社員向け、中堅・管理職向けメンタルヘルス講義を行ったり、最近ではハラスメント対策講義を行ったりと八面六臂の活躍で、常に EAP、従業員支援プログラムのカウンセラーとして活躍してきたという誇りを裏付けたかったのだろうと思ったのです。

「先生、それだけいろんなことができるんだったら経営コンサルタントもできるんじゃないですか?」と何回か問いかけたことがあるのですが「いえ、私はあくまでカウンセラーですから」と答えられたことがあり、この仕事に高いプライドを持っている彼女に結構失礼なことを何度も言っていたのだなあと反省することしきりです。

Y先生は元々臨床心理士を持っていなかったというだけで、やっている仕事は個別のカウンセリングもしながら集団を対象に立派に心理の仕事をしてメンタルヘルスの知識・技能を磨くべく外部での勉強会にも積極的行くという志の高いものです。他職種 G ルートの人も「心理の研修会に出る」というだけでなく(WAIS-IVや Vineland- II の講座に出る人もいますが)自分のフィールドで公認心理師としての技能を磨くこともできるのではないかと思います。

3.他職種ホルダー公認心理師のスキルアップと連携

他職種といってもどれも対人援助職であることから、例えば福祉職も守秘義務があり、他人を傷つけてはならない、多職種連携をする、自己研鑽を積むなどの倫理があり、経験を経るごとに職能の成長を遂げていく、コンピテンシーのあり方も心理職も他職種でも同じです。

むしろ他職種公認心理師ホルダーがいて心理学に理解を示してくれることで、また、心理職も公認心理師ホルダーと共通言語を持ちうることによって協働協業をしてお互いに高め合っていくという、自分で書いていて大変きれい事だと思うのですが、そういった世界は不可能なのかなあと思ってしまいます。

4.心理職が信頼を得るために

最近下山晴彦さんが自分の「note」に心理職は仲間割れしている場合ではないと書いていました。

17-1.Stop the“仲間割れ”!

これは実に的を得た言です。心理職同士で争っていてどうして多職種連携なんぞができるのかというもので

「おまゆう」

という批判の矢が雨あられだとは思うのですが、正鵠を射たものです。

「スキルアップとキャリアアップ」は内輪もめをしている間には外部から信頼されにくいでしょう。多職種連携ができるのだろうかという信頼も主治の医師の指示の遵守にしても、心理職同士で争っていたら自分たちの不利益になるばかりだと思うのですがいかがでしょうか。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_