◯ COVID-19について公認心理師・臨床心理士が知っておくべきこと・私見(2020.4.6)
本記事はCOVID-19新型コロナウイルスについて書かれたものです。この情報によって精神的ダメージを受けそうだと思った方はそのままページを閉じることをお勧めします。
※ タイトルにかかわらず、「全ての対人援助者に対して」とした方が良かったかもしれませんね。
1.承前
憶測、数字による推測や恐怖が先走るとパニックの元にしかなりませんので今日現在については語りません。COVID-19については厚生労働省専門家会議の分析結果は今日現在の数値とは違うと思う方もいるでしょうけれども、今日や昨日の数字を元に予測や分析を行うのは専門家の仕事です。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00093.html
2.情報洪水とその取捨選択
さて、手元にAERA2020.3.30日号があります。3月10日から16日までにつぶやかれたCOVID-19関連、日本のツイート数2000万、アメリカでは4900万、イタリアは120万です。日本ではどこよりもSNSがいち早く生の、そして現場の情報を掴み取って流しているような気がします。ただし、その中には信頼性が薄い誤情報もあり、恐怖を煽るだけの情報もあります。
多摩のクリニック院長が変異株ができると再感染者はかなり死亡率が高まるだろうという、根拠がないものもそうです。
僕が以前から参照にしているのはトラウマティックストレス研究センターCSTS(Center for the Study of Traumatic Stress)の資料は日本語版だけでもしっかりした翻訳で、かなり参考になるので再掲しておきます。
https://istss.org/public-resources/covid-19-resources
不確かな情報が多すぎる世界では人々は容易にパニックを起こすようにもうすでになっています。
3.社会的差別(スティグマ)
⑴ 患者及びその家族への差別
患者さんが重症で入院した、濃厚接
触があっても期間が徒過すれば平気なはずなのですがそれでも差別されます。そして軽症患者さんを家庭内で隔離さておくには接触を少なくすることが推奨されていますが、明確なガイドラインはありません。隔離場所が不足することは間違いないと思われる患者さんやその家族はは治っても「元患者」はウイルスをまだ持っていると思われかねません。遺族もまた同様の扱いを受けかねません。
⑵ 医療従事者への差別
COVID-19を扱っている病院の医療従事者が商店や学校の保護者から差別される、来ないでくれと言われたという話もあります。リスクは通常人に比べれば確かに高いかもしれませんが、今心身共に疲れ果てた医療従事者へのさらなる攻撃は医療崩壊を招くだけです。医療従事者を差別対象としたあなたは感染したらどうするのか?あなたを決して差別しない、その人たちが働いている病院に行ってください。
⑶ マイノリティへの差別
外国人差別があることは以前書きましたが、国家が経済的援助をしないと明言した風営法管轄店、女性は幼子を抱えて途方に暮れている社会的弱者が多いです。心理職は彼女たちが今まで被虐待の経験者が相当に多いことを知っています。生活保護受給者に対する差別的発言も多くなっています。
⑷ 教員への差別
これは差別というよりも怒りかもしれません。保護者は子どもを登校させたくない、でも登校しない児童生徒は評価点が悪くなるから登校せざるを得ない。厚生労働省の専門家会議は閉校も検討すべきという見解を述べています。文部科学省と足並みが揃っていません。もし子どもを出席させたがために子どもが感染したならばまず怒りは現場の教員に向かうのです。
4.マスコミは常に煽情的であるということ。
多くの文献やガイドラインが、こういった事態に際して情報に晒され過ぎないように警告しています。僕の場合であれば、客観的な全体数と厚生労働省専門家会議しか信じていません。
5.見えない恐怖が不安を増幅させる
これが自然災害ならば崩れた山を見て近づかないようにしようとすることもできるわけですが、どこに危機が潜んでいるのかわからないわけです。支援者は心理的初期介入、サイコロジカルファーストエイドがD-PAT(D-PAT: 災害派遣精神医療チームがDisaster Psychiatric Assistance Team)入ってたとしても支援の内容が可視化されにくく、助かったという実感も湧きにくいわけです。そうすると回復過程のハネムーン期、この世は支援を受けて協力してよくなるだろうというプロセスすら経験できないわけです。つまり不安は先に進まないで不安なままです。
6.公衆衛生的拘束
外出禁止が長引けば長引くほど「コロナ飽き」が起きてクラスター間の推奨されない移動は多くなります。組織によっては厳しく移動を禁じていますが、そのために自分がいた場所を隠し、どこにいたのかわからない、感染経路不明者が増えて感染の起源がわからなくなります。要するに対策が取らなくなります。自粛は必須ですが厳罰をもって臨むと公衆衛生的には悪影響をもたらします。もうこのCOVID-19「騒動」に飽きて自由きままに動きたいという欲求不満が爆発寸前なのはわかっています。しかしウイルスは人々の心理状態など構ったことではありません。ウイルスは「飽きる」ことなどないのです。引き続き外出抑制は続きます。それができなければ、あるいはできたとしてもいつロックダウンして都市閉鎖が起こってもおかしくない状況です。
7.遺族へのグリーフケア(悲嘆へのケア)の困難さ
感染症の持っている宿命は遺族にとって残酷です。死に立ち合うこともできなければ、大抵はご遺体を見ることもできずにそのまま火葬されていきます。通常の緩和ケアの常識はできないわけです。
8.基礎疾患保有者、ハイリスク者への手当て
基礎疾患保有者はその軽重はあれ、不安から心身も弱ってしまう可能性があります。そして精神疾患患者さんは大きな不安がひとつ追加されたわけです。この人たちへのケアは心理職が必須としてやらなければならないでしょう。
9.医療従事者のメンタルケア
前述、自然災害ならば最大の支援者として扱われてきた医療従事者は差別される対象となっています。よく休んで睡眠と食事をとって、というストレスケアの常識はクラスター内で患者さんが増えている地域ではすでに医療崩壊という現場の声もあります。国境なき医師団ではオランダへと心理療法士を医療従事者へのメンタルケアに差し向けています。果たして医療従事者にはケアを受ける時間が保証されるのでしょうか?それよりも家族の顔が見たい、眠りたいという基本的な欲求は満たされるのでしょうか。
10.対策
⑴ SNS活用
誤情報は多いもののTwitterは今や政府や行政がその存在を無視できないほどの発言力があります。情報統制は絶対にあってはならないです。ただし、諸外国に比べると国家のSNS活用は日本は立ち遅れていると言われています。最新の信頼できるSNS活用をして欲しいものです。
⑵ 経済的損失への対応
COVID-19は長引くほど日本経済への打撃を強めます。それは3.11を凌駕するかもしれません。官民ともに大幅な給与や人員削減が容易に想像されます。初期ら早めの手当てがなされること、その可視化がされることが不安を低減して結局は早期経済救済にもなると思います。これまでのように「請求したら出してやってもいいけど、知らない人には教えてやらない」という行政の態度は大転換を迫られているのです。