photo&lyric by 𝚜 𝚘 𝚛 𝚊 ໒꒱⋆゚ (@Skyblue_sky_)
未来を夢見ることは楽しいことだよね。まっさらなキャンバスは、それだけで心躍るもの。でも、いま目の前にあるものを大切にできない心に、明日のまだ見ぬ景色に想いを馳せる資格はないと思うんだ。まずは今この手に掴めるものを抱きしめるべき…とは言っても、やっぱり新たなものはわくわくするよね。
◯ 公認心理師・臨床心理士のキャリア形成は一般就職と同じ
1.序
以前ハローワークでカウンセラーとして働いていたことがありました。2週間に一度、9時5時で働いていました。就職相談の人がたくさん並んでいる窓口ではなく、二階の小さなカウンセラー室で働いていて、1日0人から8人までその日その日によってカウンセリングをする数が違い、気楽に働いていました。
所長にカウンセリング状況について報告しようとしたら「あ、別にいいから」と報告なしの実に気楽な仕事でした。片道3時間半の通勤時間ということを除けば。
またしても長過ぎた前置きでしたが(以下改変済)「教授とケンカして博士課程辞めてきた。大学院ではフエダイの生殖の研究をしていた。どこか就職先ないですかねえ」僕は言葉に詰まり「水族館?いや、教授に頭を下げて土下座してでも大学に戻ってください」とニッチな人生を送ってきた人に言いました。
なんらかの資格やキャリアを持っている人ならいいのですが、何もない、これからスタートだという新卒の人については話し合ってその人の長所を見つけて履歴書や職務経歴書の書き方を指導するという、キャリコンなのか産業カウンセラーなのかよくわからない事をしていました。
2.心理職のキャリア形成
さて、本題です。心理職はそのキャリア形成の中で他学部、院生の大卒新卒よりも高いハンディを背負うことになります。常勤就職先に新卒で潜り込むのは狭き門です。
理系院卒は即研究所や工場の生産現場管理を行うこともありますが、同じ院卒でも心理職だと働ける現場は限られています。
クリニックでいつも(常に)職員を募集しているところもあります。僕もそういったクリニックに勤務していたことがありますが、雇用保険なし、週7日労働、1日14時間勤務という大変ハードなものでした。
さて、僕が感じたのは個人経営のクリニック、病院はオーナーである院長の考え方や気分ひとつで働き方が全く変わってしまうということでした。
そこそこ勤務がきつくないクリニックや非常勤で働ける病院もあります。教育相談所やクリニックで働きながらスクールカウンセラーをやって経験を積んで、次は大きな病院に転職するという手段もあります。
ただし、大手になればなるほど中途キャリア採用は難しくなるということも事実です。
ストレートで院卒だと24歳、しかし心理職を目指す人たちの中には途中社会人から学部に入り直す人たちもいるのでそこから新卒で就職しようとする人もいます。
さて、一般就職の常識としては新卒就職は35歳が未経験者としては限界年齢と言われています。
ただし、心理職の就職は資格職なので必ずしもこの年齢が当てはまるとは言えません。
公務員だと国家ならだいたい新卒30歳制限です。地方公務員も同様です。ただひ社会人経験枠があり、5以上の経験者採用もある自治体もあり、ハードルの高さは地方公務員の場合は様々です。
「児童相談所勤務3年以上」というピンポイント求人もあります。これは民間や独立行政法人の国公立病院でも同じことで、ずばり「産婦人科相談業務3年以上経験者」もありますし、例えば大学病院の薄給の研修生を2年以上インターンとして行ってからその後就職試験を受験させてダメだったら容赦なく落とすという大学病院もあります。
3.キャリア形成の方法
全ての心理職が恵まれたキャリアを持っているわけではありません。ところが採用したい側のニーズは高い、このギャップをどのように埋めるかが課題です。
ひとつは修論から学会発表、原著論文(ハードルはやや低いものの専門家から認められたお墨付きの論文)から査読論文(正式な業績として大学教官に就職するだけの実力を積み重ねられるハードルが高い論文)、また可能であれば就職したい分野での医学博士号や教育学博士を取得するという方法もあります。
大学院博士課程に進学しなくともかなり困難ではありますか論文博士を取得するという方法があります。
お金と時間に余裕がある人は医科学修士(医師でなくても医学全般について学べる修士課程)を卒業する、外国で学位を取るという方法もあります。
これらはかなりハイレベルな手段です。
もう少し手軽?な方法としては、認知行動療法のセミナーに通いつめてその団体資格(信頼できるもの)を取る、例えばEMDRのウィークエンドⅡまで通って技能を身につけて足しげく勉強をする、ポスター発表(ポスターを学会に貼る口頭によらない発表形式)でも良いのでガンガン発表をしていくと専門性があると認められます。
4.上記のキャリア形成方法を全否定
実はいかに立派な学歴や論文、所属学会があったとしてもそれは専門家がいる団体で、応募者の熱意がそこに関係しているかどうかを見るための補足する資料でしかありません。
一般就職と同じで就職、転職に大切なのは志望動機と自己PRです。
5.ダメダメな例
以下に書くのはその人の本音だと思います。しかし採用側にとってどうでもいい本音を書くと必ず落ちます。
「給料が高くなるから」「常勤から非常勤になれるから」「子育てがひと段落して手が空いたから」
これらの理由は採用側には何の意味もありません。「自分のことしか考えていない」と思われるだけです。「ここに採用されないと生活が苦しくてなんとかお願いします」というのはなんだかもっとダメそうな泣き落としのような気がします。実際、こういう履歴を履歴書に書いてぶち落ちる心理職も多いのです。
6.キャリアチェンジ・キャリアビジョン
これまで学校教員として働いてきました。公認心理師試験を取りました。同じ教育現場だし、まあその続きのつもりでスクールカウンセラーでもやろうかなあ、というのはなんだか落とされても仕方がない気がします。
求められている専門性が教員とスクールカウンセラーでは全く違うからです。
全く違う領域から別領域にシフトして転職するのもなかなか難しいです。これまで児童領域で働いていた。そして今度は成人領域でやっていきたい。この人の志望動機は何にすればいいでしょうか?
例えば「これまで児童を面接対象としていましたが、子どもの情緒を安定させるのは親です。したがって親面接こそが子どものためになるということを痛感しました」
「教育領域で働いていましたが特別支援学級で医療的な措置を明らかに必要としている子どもたちのためには小児科における心理職が心理検査をしたり、心理面接を行って生物学的知見を持つドクターと協働していくことが大切だと思いましたら」など、納得がでにる理由が必要になります(例)。
医療領域は細分化されているので、精神科クリニックの心理職が精神腫瘍科やメンタルが関係している整形外科もある総合病院で働くことも難しいでしょう。自分が働いてきたクリニックにはこういう特徴があって、今から働きたい病院とはこんな連続性があります。
と言えることが大切です。2、3領域を掛け持ちしたり転々としてきた心理職は多いと思います。「今度はこの領域でとりあえず3年ぐらいは頑張ってやってみたいです。」という受け答えは「え?3年経ったら辞めちゃうの?」と聞こえますので採用されません。
「新しい経験を積みたいです」ではなく、これまで自分がしてきた経験がどの程度転職先で役に立つかをアピールしないとならないわけです。
これは如何にスカウト会社が教え込んだとしてもダメです。自分の口から自分の考えではっきりと志望動機を言えないといけません。
そしてさまざまな領域で働いてきた人であってもそれぞれの職務の連続性を強調し、職務経歴書は応募先に合わせて志望動機を変え、いかにその組織に採用されたら役立つかを書いていくのです。
実は心理職を採用したくて若くても年収400万〜500万円最初から年俸で出したい職場はあるのですが、採用に躊躇されてしまい欠員になってしまっていることも多いのです。