臨床心理士・公認心理師(心理職)になりたい方へ
1.はじめに
大学心理学部新入生、中高生の方々「心理カウンセラーになりたい」「公認心理師・臨床心理士の資格を取りたい」と思って頑張って勉強している方々も多いでしょう。他の仕事からも心理職になりたいと思って心理学部に入り直したいという人々も多くいます。
心理職は心に悩みを抱えた人たちのカウンセリングをする、そういった人々の心理的支援のために心理査定としてカウンセリングをする、そういった意味ではとてもやりがいのある仕事です。
さて、その選択は正解なのか、メリットとデメリットについて書いてみたいと思います。
まず最初にデメリットについて書いてみます。なぜかというと心理職になるためには厳しい生活が待っていて、それでも心理職になりたいのか?ということについてそれなりの情報を知っておいてもらって「それでもなりたい」という気持ちが本当にあるのかどうか、自分の気持ちを確認して欲しいからです。
2.デメリット
⑴ 給料が安くて身分が不安定
Twitterなどの心理クラスタ(心理職のみなさん)の中でもよく言われているようにこの仕事はとにかく給料が安いです。
だいたい年収で考えると300万円が中央値、非常勤かけ持ちの仕事をしている人たちが多いです。
運良く新卒時、病院やクリニックの仕事をすることができたとしましょう。額面給与16万〜18万円のところが多いでしょう。
額面給与20万円でも保険料など各種控除を含めると手取りが16万円ぐらい、もし一人暮らしを始めたとするとなかなか厳しい経済状態になります。ボーナスはあるところもあればないところもあります。
ボーナスが出ても年間2カ月分のところが多いかなあと思います。
臨床心理士・公認心理師は大学院程度の知識を求められることが多いにもかかわらず給料は安いのです。
なかなか常勤の仕事に就けず、非常勤生活を強いられることもあります。求職サイトやハローワークインターネットサービスで調べるとだいたい時給は1300円前後です。時給2000円ならば高い部類に入るでしょう。
これはなかなか厳しい条件です。僕の学部時代も多くの心理学科の学生がいたのですが(40〜50人)、やはり人気があるので臨床心理ゼミに入ったのは20人前後、学部生のみなさんが公認心理師になりたいのであれば高いGPA(成績評価値)を取らなければなりません。
経験的に言うと院に進んだり公務員になって心理職になったのは4〜5人と記憶しています。他の人たちは一般就職をしていました。それだけ心理職になっていくのは大変な道だと学部時代から思っていたのでしょう。
僕が勝手に呼んでいるのですが大抵心理職には「30万円の壁」があって、手取り30万円もらうのには相当安定していい就職場所を探さなければならず、たとえ有名大学病院でもそれが難しいというところが実情です。
⑵ 勉強が大変・続けていくにもお金がかかる
心理学部・学科は文系です。私大だと数学は入試にないのですが、入学した後は統計法をみっちりとやらなければなりません。
臨床心理をやるからと言って心理学の基礎知識をおろそかにしていいわけではありません。人間の知覚、物の見え方はどうか、皮膚感覚はどうなっているのか等心理学の歴史からはじまって知覚心理学もみっちりとやることが求められます。(資格試験にも出題されます。)
公認心理師課程は実習が450時間あり、その他にも学ばなければならない科目が増えました。臨床心理士と公認心理師のダブルライセンスを取得しようとするとなかなか険しい道です。
院卒まで行ったら勉強が終わりではありません。⑴にも通じるのですが、こと臨床心理士に限ると更新性資格、日本臨床心理士会、地方公認心理師会、臨床心理士会、日本心理臨床学会に大抵の人は所属します。これが年間数万円かかります。
また、いい心理職として活動するにはスーパーヴィジョン(SV)を受けなければなりません。これを大学研究室のボランティア的な補助を受けずに完全な自費で受けると一回1万円、週に一度なら4万円です。
やりたい勉強をするためには各種研修会や学会にも所属、ワークショップに出たり高い専門書を購入しなければなりません。
3.メリット
なんと言ってもこの仕事はあなたが憧れていたようにやりがいがあります。「治してくれてありがとうございます。すっかり良くなりました」というクライエント、患者さんは全体の数パーセントいるかどうかですが、そう言わなくてもクライエントさん、患者さんたちは心理職を頼りにしています。
デメリットを裏返せばメリットになります。一生勉強を続けられるのは心理学徒にとっては喜びでもあります。
学会、ワークショップ、SV、専門書購読、どれも知識と経験を深め、心理職としてやっていく血となり肉となります。ですから真面目に要心理支援者のためになりたいと思うのであればこれほど充実した仕事はありません。
面倒と思うかもしれませんが各種学会、地域の心理職の集まりの世話役を引き受けるとそれだけ顔も広くなり、さまざまな分野の心理職の人たちと知り合うことができて顔が広くなり、交流も深められます。
4.おわりに
なんだかデメリットばかり書いてしまったようですが、それだけの覚悟をして心理職になれれば、メリットに書いたような見返りは必ずあります。
時として人の命にかかわる仕事ということも本当です。
心理職になる、ならないを決めるのはあなた自身です。厳しい世界ですがやりがいはあります。
人口数万人の小さな村のような世界です。悪いことをしてしまったら燎原のように噂は広まってしまいますがコツコツとでも仕事をしていけば真面目な人だという評価につながります。当初あなたが思い描いていたようなやりがいを手に入れることができるわけです。
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_ Tweet