ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: 第42条第2項主治の医師の指示

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◯ 速報・患者さん5千円主治医指示依頼書に支払い。公認心理師が自腹穴埋め

速報です。いわば。僕は怒り心頭です。

とある医療機関外勤務公認心理師が、文書で公認心理師への指示依頼書を患者さんに持たせ、患者さんが病院に提出したところ、診断書に準ずる文書ということで数千円取られたとのことです。

確かに厚生局はこの文書は保険点数外と述べています。

患者さんは呆然として病院にも公認心理師にも不信感を抱き、怒っている。

「どうしてくれるんですか?もうこんなことイヤですよ。」と患者さんが泣きながら大層ご立腹だったとのこと。

病院への不信感、そして七面倒な事態に巻き込んだ公認心理師にも激怒していて通院もカウンセリングも中断したいと言っていたということでした。

そりゃそうでしょう。

治療契約上の信頼関係は患者さんからすれば金銭的関係も含んでいます。信頼関係には公認心理師がクライエントさんに余分な金銭を不意打ちで取らないという当たり前のルールを常に伴っていることは当然です。

公認心理師が主治の指示依頼を行った。それは公認心理師の義務です。

その文書を患者さんが持っていき、医師が診断書と同じ感覚で書いて「はい5千円」というのは公認心理師法上、いかがなものか?

公認心理師は法律の要請に従って指示を受けようとしていることについて患者さんがその金員を支払うことはおかしいのではないでしょうか?

主治の医師の指示についてのこの取り決めは関係省庁と、医師団体全体で考える必要性があると思います。

仮に「本文書記載に金銭的負担が発生するようならば事前に患者様の御意向を確認してください。」

と書いたら患者さんは公認心理師から渡されたわけのわからない余計な文書を書かなくて済む。

多忙な医師も手間が省ける。

しかし公認心理師はその責務を果たしていない。

「お金さえ払えば指示したかったのにお金出さずに指示受けないで勝手な事した心理師ってどうなの?」

と医師が言えばひょっとしたら当の公認心理師のクビが飛ぶかもしれません。

「公認心理師法に基づいたものなのでご協力をお願いしますよ」とムリに無料にしてくれることをお願いしたらその医療機関と患者さんとの関係が悪化してしまうでしょう。

で、結局どうしたかというと、その公認心理師所属機関(心理師1人職場)は弱小公的機関だったのでこの年度末に不明朗予算は最初からあるわけでもないです。

心理師は他の心理師とあちこち相談して電話したあげく、公認心理師が自己負担、患者さんに領収書、依頼文書と引き換えに自腹でにっこり笑いながら
支払ったということです。

「こちらの機関の都合で作成していただいたものなので◯◯さんにご迷惑はかけられないので。ありがとうございます。お怒りもごもっとも。不安な思いをさせて大変申し訳ありませんでした。」

と受領証(様式随意で当該心理師がもっともらしく、公印なしに発行機関名なしにして作成したもの)を患者さんに渡すのと引き換えに印をもらって封書に入れたお金を払ったとのことです。

さて、制度は今手探りで全力疾走して走り出しています。

知名度は高まるばかり。と言いたいところですが精神科医師でも知らない人たくさんいるじゃん?

という状態。(特に若手)過日書いたように良心的な重鎮精神科医師もいて、きっとこういった事態には心を痛めると思います。(精神療法に造詣が深い大変立派な先生です)。

その先生はこの指示条項について精神科医師の義務といった点から、そして公認心理師制度も理解して発展して欲しいという立場からも大変苦慮して考えていました。

指示書は保険適用外なので指示ひとつにつき5千円取っていたらさて、公認心理師は医師に私費でおいくら何十万円1カ月で払わなければならないのでしょうか?

さて、ここで電凸ブロガーの僕は早速厚生労働省公認心理師制度推進室に電話してみま した。

安易に電話した、というわけではなく「これはさすがにまずいだろう」と思ったからです。

僕「かくかくしかじかで大変な事が起きていてこれからも公認心理師がこういうことになるのではないかと心配で」

担当者「それはとても大変だったし、お困りだったのでしょうねえ」(ひょっとしてこの人心理職?と思えるような受容・共感的な態度)この情報は推進室内で共有して検討します。」

とのことで、きちんと伝達はできました。

風間公認心理師室長(もちろん面識はないのですが)はこの公認心理師制度をかなり前向きにとらえている、温和な印象ですが情熱を感じさせる人です。

(と、心理臨床学会での発言とこころJOBのインタビューを見て思いました。)

この辺りの問題がクリアにならないとやがて制度が行き詰まるという危機感を抱いています。

(おまけ・職場の男性看護師Hさん)

Hさん:この前診察に来た患者さんなんやけどな
(Hさんは関西圏出身・僕は関西弁わからないので誤訳あり。)
僕:うん
Hさん:咳が止まらん止まらん苦しいいうて来る患者さんおるやろ。
僕:いますねえ。
Hさん:診察室に入ってきて咳が止まらんっていう患者さんずっと長く喋っているけどその間咳してる患者さんおらへんねん。
僕:へえ
Hさん:よう来る顔見知りの患者さんやとうちと話し込んだり冗談言うたりしてるけどその間1回も咳してたの見たことあらへんねん。
僕:ほう
Hさん:待合室でも咳1回もしとらんのや、そんな患者さんばっかやで。ひなたさん何でやと思う?あるあるやで。
僕:先生(医師)が変わってもそうなの?
Hさん:せやな
僕:わかった。患者さんHさんのファンだからいつも来るんですよ。
Hさん:さよか。ならええわ。

※ 誰からも慕われてそれを奢らないで受け止められる医療スタッフでいたいものですね。

ちなみに激怒のあまりこの記事はこのあと厚生労働省にメールで送信しておきます。

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◯ 主治の医師の指示で医師が混乱しています

主治の医師がいる場合には、精神科ばかりでなく、関連していると思われる主治医にも指示を求めなければなりません。

さて、先日小研究会で精神科医師から「病院に勤務している公認心理師に指示を求められたら簡単に答えられる。でもあとの4分野から指示を求められたら医師としてはどうすればいいのか?」

という質問を受けました。

考えてみればこれは当然の疑問です。

特に開業公認心理師から指示を求められた場合、職印を乗せた指示依頼文書を主治医に出したとします。

その文書を公認心理師が作成したものかどうか主治医は多忙な診療業務、1日100人の患者を診察、病棟を見て回っています。

会議もありかなり多忙です。医師はどうやってその指示依頼書の真偽を確認したらいいのでしょうか?

電話すれば「はい、オフィスなんちゃらです」と答えるでしょうが、当の心理師はカウンセリング中です。

もちろん医師にも守秘義務があり罰則規定があります。

公認心理師にも守秘義務についての罰則規定があります。

どこまで守秘義務をお互いに外して医師は情報提供をしたらいいのでしょうか?

患者さんの了解を得れば大丈夫というものでもないと思うのです。

公認心理師から服薬コンプライアンスが全くできていないという情報提供があったとします。

医師はどうやってその情報を誰から得たものとしてその事実を患者さんに確認して服薬指導をすればいいのでしょう。

司法、警察については捜査関係事項照会書があります。(刑事訴訟法第197条第2項)

「捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。」

さて、この捜査関係事項照会書には医師は答えなければならないというのが一般的な医師会の見解です。

さて、それでは公認心理師法第42条第2項について、司法機関、公認心理師がいる警察、裁判所、矯正機関、入国管理局は依頼書を出せますが、パブリックコメントにもありますが医師の義務はありません。

教育、福祉、産業領域からの照会があったとしても同様です。

せいぜい公認心理師はカルテにいつ指示受け文書を書いて患者さんに持たせる、または郵送する。電話したという履歴を残す、返事がなければ再度指示依頼を間を開けてから行う。

それらの経緯をまたカルテや文書に記載しておく、今のところ公認心理師が身を守るためには「指示の依頼を行った」という履歴を残しておくことでしょうか。

たいていの医師は公認心理師法などは知らないのでこの条項について話すと「え?」ということになります。

さて、医師の指示依頼書について医師に失礼にならないように記載した例を以下に試案として書いてみます。


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公認心理師法第42条第2項による医師の指示依頼書

公認心理師法第42条第2項:

2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

拝啓 丸投先生につきましては日ごろから御高診いただきまして誠にありがとうございます。さて、この度丸投先生ご担当患者、△△様において上記の条文に基づき主治の医師の指示を求めるものです。

下記において指示事項を記載してくださるようお願いいたします。なお指示事項がない場合には□にレ点でチェックをした上、御返送お願い致します。

しばらくの期間が渡過した際には特に指示事項ないものと解釈させていただきます。

また丸投先生からのご連絡は電話でも構いません。

大変お手数をおかけしますがどうぞよろしくお願い致します。

□ 1.指示事項あり

 内容

□ 2.指示事項なし

※ 備考:△△様におかれましては早く治りたいとのことで丸投先生初診受診の際から、いつも診察後にまとめて1週間分の薬をまとめて服薬しているとの事です。

連絡先
〒123-4567
東京都千代田区1-2-3
座津虚ビル24階586号室
電話090-1234-5678
カウンセリングオフィス費無堕(ひなた)代表 費無堕飽奇羅(ひなたあきら)
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と、まあこんな感じで作成してみました。

いかがでしょうか?

もし忌憚のないご意見がございましたらご見解を伺いたいと存じます。(読者は僕を除く10人ではございますが)
これをしておかないと患者さんが不審死でもした場合には刑法上は第211条業務上過失致死、不真正不作為犯としては傷害罪やもっと重い責任を問われたりする可能性があるね。民法709条の不法行為による損害賠償請求や民法415条債務不履行に当たるおそれがあるからり、医療過誤と同じ法理です。

危険性を知りながら指示をしなかった医師もその可能性があるかな。医師団体の強い要望でこの項が入れられたけど逆に首を絞めるおそれもあるね。

◯ 「医師資格剥奪」公認心理師法「主治の医師の指示条項」の与える影響

1. 経緯・パブリックコメント

「主治の医師の指示」公認心理師法42条2項は激論の末に医師団体の圧力で成立したものです。

「公認心理師法における医師の指示に関する運用基準(案)に関する御意見募集(パブリックコメント)について」に対して寄せられた御意見についての記載があります。

厚生労働省のパブコメpdf

「医師にも指示を出す義務を 明確化し、義務違反の場合に公認心理師が取るべき対応を記 載してほしい。」

という意見に対し、厚生労働省は

「医師の義務については、公認心理師法上の定めがないため、 本運用基準で記載することは困難です。」

と回答しています。

※ パブリックコメント(パブコメ)とは行政機関が規則等制定する時に法人、個人からの意見を聴取するという制度です。

2.法と制度との関係

⑴ 法理論

さて、こういった規則、公認心理師法、医師法、医療法等よりも日本国家制度は上位法として憲法、民法、刑法があり、下位法が上位法を逸脱した行為や概念を認容することはありません。

⑵ 制度

厚生労働省には「医道審議会」という組織があります。

医道審議会は医師、歯科医師等の資格剥奪や資格停止処分を行う事ができる大変強力な権限が付与されているのです。

医師法は医師等が犯罪を含む違法行為で罰金刑以上の処分に処せられた者、あるいは医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者の医師免許取消、停止を行うことができます。

⑶ 法律理論の実態

さて、ここで刑法における医師の責任を考えてみます。

医師には国家、国民から高い医学的専門家としての知識や技能が求められています。

おばあちゃんが「やけどには味噌を塗るといいよ」と孫に処置をしてお嫁様が激怒しても犯罪性は問われない可能性がありますが、医師については全く違う解釈がされるのです。

医師は一般的な医師としての知識があり、その標準的な専門性に照らし合わせて常識的な治療を行う事が求められていて、過失があった場合には有罪判決が出ている判例はいくらでもあります。

そして危険性があることを知りながらその義務を懈怠し、何もしなかったことについて患者さんに心身の障害を与えた、あるいは死亡させた場合には殺人罪や傷害罪として告発される可能性があります。

刑法は事実の錯誤を罰しません。

例としては山に登った猟師が黒い大きな物体を熊と誤解して発砲、それが人であってもそれは事実を誤って解釈したからです。

(刑法38条1項「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。)

ところが「法の不知」は罰せられます。

「自分で人を刺したら罪になる、だから人に頼んで刺してもらった。人に頼んでも罪になるとは知らなかった」は通りません。

3.思考実験

3万5千人の公認心理師が誕生しています。

その中には開業心理師もいれば、スクールカウンセラー、医師がいない通所福祉施設で働く心理師もいます。

職場に医師がいない、クライエントさんが強い希死念慮を訴えていて具体的な準備をしていると話しました。

心理師が働く職場に入院施設がありませんし、もちろん何の強制力もありません。

クライエントさんが帰宅すると言えばそのまま帰宅します。

家族に話したくともクライエントさんが拒否すれば守秘義務規定があり、あるいは不在、家族がいない天涯孤独な人もいます。

慌てて心理師が医師に電話をかけて主治医の指示を仰ぎたいから折り返して電話して欲しいと心理師が伝えました。

糖尿病のクライエントさんが病気に苦しんでいて◯月△日は自分の誕生日だからその日に死のうと思うと語りました。

1カ月後です。

来週診察なので渋々でもなんとかクライエントさんの了解を取り付けて電話じゃダメだけど書面だったら送ってもいいと話し、医師に指示依頼書を作成して送付しました。

糖尿病専門医は

「ナニこれ、公認心理師法42条2項による情報提供書って封筒の表書きに書いてあるなあ、差出人はえっと、カウンセリングオフィス日股?公認心理師?全然わからないよ、営業かなあ、いらないから捨てちゃお」

患者さんが死んでしまったとします。

上記の思考実験例はそれほど練れたものではないのであちこちに穴がありそうですが刑事も民事もどこから突っ込まれるかわかりません。

医師は司法の世界では裁判官の格下扱いをされ、職務権限を剥奪され、出世ルートを絶たれたのを今まで見てきました。

どんなに高額の費用を払っても司法の正当な、あるいは恣意的なルールに対して医師は無力です。

責任を問いたい遺族が警察に捜査を依頼をする可能性は高いです。

公認心理師は記録をしておけば依頼書を出したことを伝え、依頼書の写しを遺族に渡すことができます。

(この方法について何の方法や通達もありませんので個人情報保護法上、やり方はわかりませんがデータ保管は音声、画像などいろいろありそうです。)

さて、こういった場合、あるいはもっと別の場合に何が起きるでしょうか?

医道審議会は注意義務違反による刑事責任を問われた場合に厳しい処分をする権限があります。

通報先は都道府県の医療政策室です。

真面目な話として匿名相談も受け付けていますので困惑した心理職も患者さん、家族も相談できます。医師は権限を剥奪されることになりかねません。

3.民事について

医師の善管注意義務(善良な管理者の注意を持ってその業務にあたること)
も素人の注意義務とは異なる高度なものです。

医師は治療をするという準委任契約を患者さんと結んでいると見なされています。

治療するという債務があり怠って患者さんが死傷したら債務不履行です。

民法709条、不法行為による損害賠償請求権は故意だけでなく過失も含みます。

条文

「第709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

4.私論

クライエントさんが心理職と会う時、どんな疾患を持った人なのかはわかりません。

病院心理職があらゆる科で働いているのは現在では当たり前、自然な事です。

歯科、産婦人科、小児科、キリがありません。

「薬、合わないし効き目ないから全然飲んでないんですよねえ」

「それ、◯病院の主治医に伝えてもいいですか?」

「僕面倒だから連絡するならそっちからしてよ」

公認心理師には服薬指導権限はありません。

(公認心理師法第 42 条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について)文部科学省・厚生労働省)

指示依頼書には服薬指導を心理師にさせてくださいとは書けないものの、生活習慣の改善にかかわるメンタルの状態を報告して、カウンセリングにおけるその疾患特有の対象方法を教えて欲しいと書くことができます。

「主治の医師の指示」は全ての公認心理師が知っていますが、29万人近い日本の医師全員に知らしめる、医学教育をする、法整備をする、どれも必要なことだと思うのです。

法を知り証拠を収集して記録に取ることは心理職の身を守ります。30187940-601E-4458-94DF-3484AD28F2AA

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◯ 公認心理師法第42条2項「主治の医師の指示」再考

公認心理師法では公認心理師は全て「主治の医師の指示」を受けなければならないとありますが、この条文自体が他法律と照らし合わせ、適切性が疑われるのではないかという可能性について指摘します。

法律は憲法=最高法規、そして民法、刑法が上位法としてあり、あくまで公認心理師法はその下位法です。

憲法上で考えると

〔国民たる要件〕
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
〔基本的人権〕
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

カウンセリングを受けたクライエントさんが公認心理師によって勝手に守秘義務違反に当たりそうな秘密を医師に話さなければならないということは、クライエントさんにとって基本的人権の侵害に当たらないか?

第十三条の「幸福追求権」個人としての権利は尊重されるものであるという視点からも問題はありそうです。

第十三条はクライエントさんや患者さんの自己決定権とインフォームドコンセントを定めているものと理解できます。

〔個人の尊重と公共の福祉〕
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

クライエントさんが主治の医師への報告を拒否した場合、無理に報告すればそれはインフォームドコンセント違反になるでしょう。

そして民法第一条の「信義誠実の原則」に公認心理師が従って秘密を守れるかという点にも疑念があります。

(判例)

東京地方裁判所「カウンセラーが面接により知り得 た相談者の私的事柄等を無断で書籍に記載したことについて、守秘義務違反として債務不履行責任が認めら れた事例」
平成7年 6 月 22 日判決

もあります。

また、民法709条、不法行為「故意または過失によって他人の権利を侵害」は公認心理師にとってどこまでクライエントさんの権利と主治の医師の指示遵守規定と拮抗するわけです。

精神的な損害や病状の悪化が発生した場合、刑法典での傷害罪、民事上の損害賠償義務も当然に発生します。

「主治医に報告したらこのクライエントさんは死んでしまうかもしれない」のに報告して死んでしまったらそれは未必の故意となり違法性阻却事由にはなりません。

公認心理師に求められる注意義務は、一般人が「ま、なんとなく大丈夫だろう」という軽いものではなく、高い専門性を持つ専門家が当然に予見可能だったことについて適用されます。

ここで主治の医師の指示が公認心理師法で定められているので報告、指示をそのまま100パーセント行い、しかも患者さんの不利益にならないようなインフォームドコンセントが必要になるわけです。

主治の医師に報告する前に診断名や心理的・身体的特質がわからない患者さんの全てを把握して質問をしなければならない義務も生じるでしょう。

もし医療過誤事件、カウンセリング事故による患者の死が発生した際、「それは主治医の了解を取ったから」という言い訳は「なんで勝手に秘密を漏らしたの?」という訴訟が起きたら公認心理師が敗訴する確率は濃厚にあります。

原告の患者、その家族が記録開示を求めても事実が明らかになりにくいので
そうすると医療者側が「一応推定」で原告側に有利な裁定や判決が下ります。

平成12年にはエホバの証人判決で輸血を同宗教の教義に反して十分にインフォームドコンセントを行なっていなかったことについて最高裁で医療側が敗訴しました。

厚生労働省のガイドラインでは主治の医師の指示を仰ぐことは、それを行うことについて十分にクライエントさんに説明、ただし患者さんが納得していない場合には懇切丁寧に説明をするとありますが、そこでも患者さんが納得をしていない場合、どうすればいいのかという指針はありません。

こういった矛盾を孕む42条2項の規定が今後どのように運用されていくか、どこからどういった指針が示されるかについては注視しなければならない課題です。

参照、参考文献「精神科医療事故の法律知識」(星和書店 深谷翼著)

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公認心理師の主治の医師の指示ジレンマ対応のためのガイドライン

公認心理師法や暗黙のルール、制度の中でジレンマに陥った際の回答は誰も書いていません。

マニュアルもありませんし誰も作りません。

厚生労働省の基準は曖昧です。

ならば自分たちで考えていくしかないのが現状です。

「どうすればいいの?」という事例はもう現場でどんどん起きているでしょう。


1.医療領域

やっぱり気になっているのは主治の医師の指示です。

医師には伝えたいけれど伝えて欲しくないと患者さんが言う。

任意入院したばかりの患者さんが「もうイヤ、退院する」と言い出したらどうするか?

という設問が試験にあり、「主治医に報告」が正答扱いでした。

それでも退院したい退院したいと患者さんが言うのならば即日歩いて帰れるはずです。

それが任意入院という制度です。

それでも主治医が退院させないと言う。

主治医が判断に迷ってそう言うのかもしれませんが、それ自体の違法性が高いです。

退院させてもらえない、とか閉鎖病棟はイヤだという要望があれば患者さんは都道府県知事に対して「退院・処遇改善の請求書」を出して精神医療審査会での審査を求めることができます。(日本精神福祉士協会資料)

主治医に報告することも正答のひとつかもしれませんが、そんなに入院が必要なら措置入院にすればいいでしょ?

と思うのです。

患者さんは都道府県精神医療審査会に相談して申し立てをする権利がありますし、病院の地域連携室のケースワーカーは患者さんの申し立てを円滑に進めさせるよう援助しなければなりません。

公認心理師が主治医の指導で「新患の◯◯さん、退院したいってわがまま言ってるんだよね、心理師さんから説得しといてよ、ヨロシク!」という指示に従うと人権侵害になりかねないです。

医師も法律には詳しいのでそんな無茶ぶりは通常はしないのですが、心理師の側で「何でもかんでも医師の指示に従えばいいんだ」と思って、一回出された指示をそのまま有効だと思ってずっと従い続けているととんでもないことになりかねません。

時々刻々と変わる患者さん、その心情や家族、社会などの環境も含めた変化をきちんと把握しておかないといけません。

「なんで状況変わったのに報告しなかったの?」と心理師が詰め腹を切らされかねません。

公認心理師試験ブループリントには掲載されていない患者さんの人権、権利についても知っておかないと思わぬ落とし穴が待っています。

2.主治の医師の指示再考

何度か記事にして主治の医師の指示については書いています。

以前「薬飲んでない。これからも飲まない。でもあのヤブハゲの医者にチクったらシヌ。黙っててくれたら死なない」という例を提示したことがありましたが、どうすればいいでしょう?

行動化がこれまでも激しく、確かに陰性感情を抱いている医師に通告すると致命的な自傷をしかねない。

しかも公認心理師が働いているのが当該病院でなく、教育機関や相談所など、どんな主治医かもわからないでどうコミュニケーションを取ればいいのかわからないのにどうすればいいのか。

こういった場合にはまず要支援者の説得をしましょうという厚生労働省のガイドラインは出ています。

説得で話が進めば楽ですがそうでないことも多々あるでしょう。

自分で作った命題ですが、明快な答えはないと思います。

行動化、アクティングアウトが心配なら服薬コンプライアンス、遵守を犠牲にしてでも、可能ならば家族に協力を求めたりしながら徐々に時間をかけてでも説得する方がいいでしょう。

そしてこれは僕の私見ですが、患者さんが飲んでいる薬の内容を把握しておく必要はあると思います。

抗精神病薬で、それを飲んでいないと妄想幻覚状態が抑えられない。

続けて飲んでいないと希死念慮が出ることが予測される抗うつ剤。

躁転するかもしれない(もうしている)双極性障害の患者さんへのメジャートランキライザーやムードスタビライザー、気分安定剤。

以上のような症状に対して大きな影響を与える薬と、ただ不安を抑えるという目的でベンゾジアゼピン系の抗不安剤だけが処方されているのでは、服薬コンプライアンスの重み付けが違うでしょう。

そして投薬をしている医師が患者さんに対して持っている意図をよく理解するのには投薬カクテルが何を示唆しているのかを知る必要があります。

鎮静化させる目的で投薬している抗精神病薬の力価が過鎮静となっていないか、短時間診療しかできない医師に副作用を言えていないかということも気になります。

だから服薬できないということは大いにありえます。

厚生労働省ガイドラインでは服薬指導はできないと明記されています。

しかし状態は把握して報告せよということなのでしょう。

服薬しているけれども副作用が言えないのはもっと大きな問題です。

患者さんが医師との信頼関係を短時間診療で構築できていないために重大な副作用があって(たとえば「ラモトリギンを飲んだら湿疹が出てかゆくなるからイヤ」)も言えないで薬だけ飲み続けようとしている。

放置しておくと難病スティーブンスジョンソン症候群に罹患して皮膚が壊死、失明の危険性すらあります。

服薬内容を知り、作用、副作用と症状との関係を素早く吟味した上で服薬に関して患者さんに話をしなければならない場面も出てくるかもしれないと思います。

心理職がしている仕事は生死がかかっている危機介入が必要な場合も多いです。

主治医に指示を仰ごうとしても捕まらない、いつ返事が来るかわからない、そもそも非医療機関から医療機関へと指示を仰いでも守秘義務があるから医療機関はその患者さんが通院しているかどうかについても言及できないはずです。

以前にも主治医の指示については書きましたが、かなりジレンマが生じかねない問題を内包しています。

患者さんの生死、公認心理師資格を賭して何人犠牲者が出るか見るための制度ではないはずです。

患者さんも公認心理師もモルモットではありませんからきちんと権利は守られないとならないでしょう。

それなのに公認心理師法上、主治の医師の指示について、医師には何の義務もないということは医師会が望んだ心理職への重い義務です。

今後も公認心理師のガイドラインについては考えていきたいと思います。

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