ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: 第42条第2項主治の医師の指示

DE03B526-1DC6-4F72-9994-B1403C9610D3

photo & lyric are by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_
sᴋʏʟɪɴᴇ.
数多の正義や価値観が風のように大空を流れてゆく。僕らはそれを他人事のように眺めながらも、その三秒後には同じ空に向けて想いを放つ。自分のそれだけは誰かに届くと信じて。


「主治の医師の指示」は公認心理師に必要か?

1. はじめに

公認心理師試験も3回を重ねて合格者は 43,022 人となりましたが、この 3 年間「主治の医師の指示」に関するトラブルは一度も耳にしたことはありません。心理職、公認心理師は一般的に無茶なことをやっているかと言えば、そこまで常識ない心理職は元々いないでしょう。

まず、元々この条文を知らない医師の数は限りなく多いと思われます。

2. 法律

最近話題になっているのは、この条文の解釈です。

(連携等)

第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保険医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者との連携を保たなければならない。

2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。


についてですが、たとえば民法を見てみます。

第一条 私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

とあります。

つまり第一条、私権を公共の福祉に適合させて行うのであれば、信義誠実の原則は守られていることになるわけですし、権利の濫用も行っていないわけです。

ひるがって考えてみれば、「連携等」も関係者との連携をきちんと行っていればそれは違法でもなんでもないわけです。

したがって「主治の医師の指示」はあくまで「連携」の一種であり、当該公認心理師が「連携」の必要性があるかどうかを判断し、必要性があれば主治の医師の指示を仰ぐことができると解釈できるわけです。

この主治の医師の指示については文部科学省及び厚生労働省からも運用基準が出ているわけで、そこには「従前より行われている心理に関する支援の在り方を大きく変えることを想定したものではない。」とされています。

試しに臨床心理士間例例規集(日本臨床心理士資格認定協会) 倫理綱領を見てみると「他の臨床心理士及び関連する専門職の権利と技術を尊重し、相互の連携に配慮するとともに、その業務遂行に支障を及ぼさないように心掛けなければならない」とあり、上記運用基準の文言と相違はありません。

もとより「運用基準」は法律や規則のようにはっきりとした法律よりも下位の「基準」に過ぎません。

運用基準上でも医師の指示に関して記述はありますが、「運用基準違反」で処分が行われるということは聞いたことがありません。

3. 実情

医師らも何も知らないわけですし、この42条2項に限らず、パブリックコメントでは公認心理師法は医師になんの義務を負わせるものでもないと回答しています。

日本医師会でも日本精神科病院協会でもこの主治の医師の指示に関して広めるつもりはなく、特にホームページ上でも見たことはありません。

ということはそこは医師団体側が広めるつもりがないということで、公認心理師側が「指示」を求めても「ナニソレ」的な対応をされます。

また、医師は刑法 134条で秘密漏示罪が定められています。「…正当な理由がないのに、その業務上おり厚かった時に知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役または10万円以下の罰金に処する。」とあることから、公認心理師が指示を受ける時も患者の秘密を外部公認に明かすことが「正当な理由」なのか今度は医師が判断しなければなりません。

私設開業領域で働く公認心理師が運用基準どおり文書で医師に回答を求めると患者は保険外適用文書ということで数千円を支払うことになります。患者負担が大きくなる上にそもそも医師は回答していいかどうかもわかりません。

電話や文書で「○○カウンセリング事務所」です。と名乗られてもその患者がそこでカウンセリングを受けているかどうかはわからないわけですし、たとえ患者が文書を持って行ったとしてもそれはあくまで患者の「話」に過ぎないわけです。

このように公認心理師法施行後、公認心理師が誕生してからも医師側が知らず、またそれに対して医師側から1件も異議申立てが出ていないこの条文の存在については甚だ疑問を感じますし、条文上の解釈でも「連携」の下にあるわけですから、この条文だけを読むと「主治の医師の指示に従わなければならない」ことが頭の中に浮かぶわけですが、実情としてはそこは詮無きことに思えます。

つまり、公認心理師側が医師と連携をしたい、連携が必要だと認める時に初めて主治の医師の指示を受ける必要性が発生するわけです。

4.結語

法律というものは時代によって解釈が変わり、または法律の条文そのものが変わったり、大きく変化すれば例えば家事審判法が家事手続法に改廃されたように法律そのものが変わることもあり得ます。

また、公認心理師法はあくまで憲法、民法、刑法の下位法であり、さきほど述べた民法の信義誠実の原則を超え、医師団体が主張するように要心理支援者の同意を無理やり得ようとしたらそこには患者との信頼関係が壊れる可能性もあり、準委任契約であるカウンセリング関係がうまく行かなければそれは不法行為ともみなされかねません。公認心理師は「秘密を守る」という義務は広く医師に対しても及ぶ債務です。

さて、公認心理士カリキュラム等検討会ワーキングチームの議事録を読むと「多職種連携」という文言は医師の構成員から多く出て来ています。医師にとっては医療ヒエラルキーの頂点である医師が「連携」と言えばそれは「指示」と主張したいように思えますが、それは机上の空論とも言えます。

実際、医療現場では心理は医師に意見を求められれば医師と見解が違っていてもきちんと言う。見解の相違=指示に従わない、とはなり得ないわけです。

事件を担当する家庭裁判所調査官がどんな事案でも身体医を含む主治医に必ず意見を聞くか、少年・当事者全てについて全部照会するのは非現実的です。「微妙な問題だから聞かないで欲しい」と言われ、はいそうですかと中核に触れる部分を聞かないと調査は進みません。

2023 年、公認心理師制度の大幅な見直しがあるはずですが実情に沿った、国家資格公認心理師の自主的、独立した判断をより重視した改正にして欲しいと思っています。

9E11C74E-1763-443C-88BC-D44376B80D66

◯ 「主治の医師の指示」について心理職研修で議論

このテーマが議題となりました。というか問題提起をしたのは僕です。いろんな領域から集まった十数人の研修会、医療領域に現在勤務している人は除いて各領域の10人ほどに、精神科に通っている患者さんについて「主治の医師の指示」を受けていますか?

と挙手をお願いしたところ、公認心理師で指示を仰いでいる人は皆無でした。そこで僕が以前聞いた「主治の医師の指示依頼書」を書面交付を医師にお願いしたところ、5千円患者さんが取られたという話をしました。

これについて公認心理師の人々からいろんな意見が出ました。病院勤務のC君によれば、病院で保険外で文書を書けばそこは自費負担になる、だから病院がお金を取るのは当たり前というものでした。

僕が「それでは『もし患者様に費用負担が発生するようであれば当職に御連絡ください。』と朱書したらどうかと提案したところ、C君によれば「そういうことを書いたとしてもお金を取るのか取らないのかはあくまで病院が決めること」ということでした。

また別の意見としては患者さんに持たせるのではなくて別途郵送で指示依頼文書を郵送したらどうか、じゃあ切手代は誰が負担するのか(金額の問題ではなく、そういった少額のお金でもきちんと仕事である以上職場で負担するわけで私費で出すことで私書とみなされる、記録も残らないので官公庁では問題がある)指示依頼文書が医療機関外から来たらそれは真性なものなのかどうか病院は判断しようがあるのか、そもそも医師の守秘義務に抵触しないか等疑問が多く出ました。

特に私設カウンセリング事務所ではクライエントさんに書面を持たせても、失礼ながら医師は「本当なの?」と私設機関について思うでしょう。その度に公認心理師資格証明書の写しを添付して出さなければならないのでしょうか?

電話をかけて「公認心理師ですけど指示があればください。」というのはいかにも怪電話です。それに厚生労働省及び文部科学省「公認心理師法第 42 条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について」では

「具体的に想定される主治の医師からの指示の内容の例は、以下のとおりである。・要支援者の病態、治療内容及び治療方針について・支援行為に当たっての留意点について・直ちに主治の医師への連絡が必要となる状況について等」、さて、これらの指示をどのように受けたらいいでしょうか。運用基準では「その際、公認心理師は、要支援者に対し、当該主治の医師による診療の情報や必要な支援の内容についての指示を文書で提供してもらうよう依頼することが望ましい。

とあるので文書での指示を受けた方がいいという運用基準を鵜呑みにして公認心理師が文書を書いてもらうと患者さんの自費負担が発生して「こんな目に遭わされるんだったらカウンセリングも病院も行かない」となるわけです。

それだけの多くの情報を電話で得るということも多忙な精神科医がどれだけ協力してくれるかも疑問です。

パブリックコメントで医師の指示を出すことを医師に対して義務化して欲しいという要望について厚生労働省は「医師の義務については、公認心理師法上の定めがないため、 本運用基準で記載することは困難です。」と回答しています。日本精神科診療所協会は厳格に必ず医師の指示を受ける必要性について説いており「臨床精神科医療の現場では、心理士が独断でカウンセリング等を行うことによって、適切な医療が阻害することがしばしば認められる」という非常に強い口調で運用基準に対する批判が述べられています。日本精神神経学会も主治医のいる機関とは別の心理師も必ず医師の指示を受けるべきであると述べています。

よしわかりました。それでは医師の指示を受けましょう、となっても上記はのとおりの現象が起こるわけです。心理療法について理解のある精神科医は医師の守秘義務とこの公認心理師法との間で困惑しています。精神科医でもナニソレ?の先生もいます。ましてや他科の医師が知っている可能性は大変少ないです。

心理職の働く組織のヒエラルキー内での地位はそう高いものではありません。ですので病院内で医療安全委員会、議題が目白押しの中で公認心理師が十分に発言できる時間はなさそうです。「医師にカウンセリング受けてもいいですか?」と聞いてもらうことで十分だという意見もありました。しかしそれでは上記の細かい事項についての指示を受けたことにはなりません。

臨床心理士会だと「そういった臨床心理士はいますか?」と言えば答えてくれるでしょう。厚生労働省の場合には確認していません。そもそも多忙な医師が指示を求める文書に無料で対応してくださいというのも無体な話と思いましたが、医師団体は特にそれについては触れていません。

つまり積極的ということで、他機関からでも主治の医師の指示を受けるべきだとされています。そうすると僕は医師会で徹底して周知して何科の医師でも公認心理師の指示受け文書を無料で作成する義務を負わせるべきでないの?と思うわけです。

公認心理師制度は始まったばかりですが、連携連携と連携するのは構わないしこちらも患者さんのためには正確な情報のやり取りは患者さんのためになると思うのですが、当の医師側に何の受け入れ態勢がないのが甚だ疑問です。日本医師会に電話照会したところ「電話でいい」と言われたのはこの運用基準に反していると思うのです。

(おまけ)

P病院長:この医療情報は機密扱いだから、よく注意してL病院の院長にパスワード付きで送るっと。でもメールにパスワード書いておかないとわからないからなあ。よし、本文内にPW1234っと書いとこ。えっと、向こうのアドレスは・・・よし。送れた。
K病院から電話:うちの病院の全員にメール送られて来てるんですけど。アドレスリスト全員に送られていますよ。
J病院から電話:あの、あれ機密文書ですよね。どうなってるんですか?
(以下2時間ほど対応略)
P病院長:「先ほどのメールは誤送信でした。添付ファイルは全部削除してください。」→送信
T病院から電話:あの、「第2報」って添付ファイル、ますますまずいんじゃないですか?また全員に送られてますよ?
僕:ふーん、なんかすごい資料だなあ。両方とも保存しとこ。
あくまでもフィクションです。

72298EDC-4990-44B2-9FD7-555D99E26E0A

◯ 公認心理師法3

第四章義務等(続き)

(連携等)

第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。

2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

第2項には行政上の処分規定があります。

(登録の取消等)
第三十二条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を取り消さなければならない。

 一 第三条各号
(第四号を除く。)のいずれかに該当するに至った場合

 二 虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合

2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が第四十条、第四十一条又は第四十二条第二項の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。

復習を兼ねて再掲すると、公認心理師の登録取消、期間を定めての公認心理師、心理師の名称使用禁止は、

(欠格事由)
第三条 次の各号のいずれかに該当する者は、公認心理師となることができない。
一 成年被後見人又は被保佐人」(法改正により2019年12月14日に変更
第1号 心身の故障により公認心理師の業務を適正に行うことができない者として文部科学省令・厚生労働省令で定めるもの
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
三 この法律の規定その他保健医療、福祉又は教育に関する法律の規定であって政令で定めるものにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して二年を経過しない者
四 第三十二条第一項第二号又は第二項の規定により登録を取り消され、その取消しの日から起算して二年を経過しない者

に当たるようになった時か、

第2項の
1.信用失墜行為の禁止(第四十条)
2.秘密保持義務(第四十一条)
3.(連携)主治の医師の指示(第四十二条第2項)の義務を履行しなかった場合
に当たるようになった時に処分対象となります。

また、秘密保持義務違反だけはこれに加えて一年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。「主治の医師の指示」は、医療機関に勤務する公認心理師であればその場で指示を仰ぐことができます。しかし、私設心理相談所等に勤務している公認心理師がこの義務を懈怠した場合も処分対象となります。それでは「主治の医師」とは何についての主治の医師なのか。クライエントが風邪で内科にかかっていれば、風邪についての主治医ですが、指示を受ける必要はないでしょう。

辰巳ドリルでは「当該支援に係る主治の医師」と表現しています。ただし、線維筋痛症ASのように原因不明、精神的要因が強いと言われている疾患だと病院ですでに心理療法を受けている可能性もありますし、心身症で精神科以外に主治の医師がいても、整形外科のように他科だと主治の医師がいることに気づかない場合もあります。

この条文は刑法上の不真正不作為(刑罰はありませんが)に近いと解釈すれば、主治医がいたということを知らなかったという事実をやむを得ない事情で錯誤していたなら、(クライエントが主治の医師はいないと断言していたなど)行政処分の対象にはならないでしょう。

医療過誤訴訟の場合の基本的な考え方ですが、通常の専門家としての注意義務を十分に払っていたか否かがこの法律適用の分かれ目になると思います。

ただし、辰巳ドリルでも紹介されているのですが、これについては厚生労働省からのガイドラインがすでに出ています。

「公認心理師法第 42 条第2項に係る主治の医師の指示に関する運用基準について」

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000192943.pdf

(以下厚生労働省文書から引用)

3.主治の医師の有無の確認に関する事項 公認心理師は、把握された要支援者の状況から、要支援者に主治の医師があることが合 理的に推測される場合には、その有無を確認するものとする。

主治の医師の有無の確認をするかどうかの判断については、当該要支援者に主治の医師が存在した場合に、結果として要支援者が不利益を受けることのないよう十分に注意を払 い、例えば、支援行為を行う過程で、主治の医師があることが合理的に推測されるに至った場合には、その段階でその有無を確認することが必要である。

主治の医師に該当するかどうかについては、要支援者の意向も踏まえつつ、一義的には 公認心理師が判断するものとする。具体的には、当該公認心理師への相談事項と同様の内 容について相談している医師の有無を確認することにより判断する方法が考えられる。なお、そのような医師が複数存在することが判明した場合には、受診頻度や今後の受診予定等を要支援者に確認して判断することが望ましい。また、要支援者に、心理に関する支援に直接関わらない傷病に係る主治医がいる場合に、当該主治医を主治の医師に当たらない と判断することは差し支えない。

また、主治の医師の有無の確認は、原則として要支援者本人に直接行うものとする。要 支援者本人に対する確認が難しい場合には、要支援者本人の状態や状況を踏まえ、その家 族等に主治の医師の有無を確認することも考えられる。いずれの場合においても、要支援 者の心情を踏まえた慎重な対応が必要である。
(以上引用終わり)

※ このガイドラインに明示されていることですが、主治の医師と公認心理師が全く違う機関で活動している場合にはどのようにしたかよいかということについては、情報提供を主治の医師に書面で提供するなどして、主治の医師の指示を仰ぐこととしています。

ただし、その場合も情報提供について要支援者、未成年者の場合は要支援者の家族の同意を得るものとしています。また、重要なポイントとしては、公認心理師は主治の医師から指示を受けた日時、内容について記録を残さなければならない義務があるとこのガイドラインでは明記されています。

災害時緊急を要する場合は要支援者の手当てを優先しなければならない時には後日主治の医師からの指導を受けます。

どんな支援にかかわらず、公認心理師が行うのは要心理支援行為で、医師のみが専権的に行うことができる「医行為」ではありません。したがって診療、服薬指導は公認心理師の業務として行うことはできません。

もし要支援者が主治の医師と公認心理師との連携を拒んだ場合には公認心理師はその重要性と必要性について丁寧に要支援者に説明することとしています。

(以上、運用基準の説明終わり)

※ 第四十二条に戻ります。第四十二条の注意点ですが、第1項、保険医療、福祉、教育関係者との連携は保たなければならない連携義務はありますが、罰則規定はありません。したがって第1項は努力義務と解釈すべきでしょう。

(資質向上の責務)

第四十三条 公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。
※ これに関しても罰の科せられない努力義務・作為義務です。

(名称の使用制限)

第四十四条 公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。

2 前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。

※ これは刑事罰規定があります。

第四十九条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第三十二条第二項の規定により公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ぜられた者で、当該停止を命ぜられた期間中に、公認心理師の名称を使用し、又はその名称中に心理師という文字を用いたもの
二 第四十四条第一項又は第二項の規定に違反した者
※ 第四十九条文第二号(1項しかない法律の条文は項を特定する必要がないので第◯◯条△号と表記します。)は、辰巳法律研究所に例題が掲載されていました。

「公認心理師でない者が『街の心理師』と名乗っていたら処罰対象になるか」ということですが、公認心理師は第四十四条の法律に規定されているとおり、名称独占資格なので、「心理師」という文言を使用するだけで処罰対象です。それでは「心理士」ではどうなのか。現在でも認定心理士、臨床心理士、臨床発達心理士などの心理士名称の資格が出ていますが、「心理士」と名乗ることで公認心理師と欺罔するような名称はダメでしょう「公認心理士」「公認心理カウンセラー」はアウトだと思います。


◯ 主治の医師は指示しなければ死ぬ。公認心理師は指示がなくても死なない。患者さんは死にます。

医師の指示依頼書を出したら5千円取られたという話の続きです。

ハイパー電凸ブロガーとしては厚生労働省公認心理師制度推進室に電話した後に日本医師会にも電話して聞いてみました。

その前に上司医師にこの場合に患者さんから文書料を取るのが適切かどうか聞いてみたら、「うーん、保険診療外の文書は書いたら取るかな?」とのこと。

で、もし僕がそういう請求を外部機関から受けたらどうしますか?と聞いたら「ひなた君と僕とで支払い半々にしようか」とのこと。

「違うでしょ」と僕。

次に日本医師会に電凸して聞いてみました。

担当者「所轄の厚生労働省◯◯局に聞いてみて、こちらで判断してみたのですが、行き違いですね。」確認したら、主治の医師の指示は口頭で可だそうですね。医師は患者に指示をしたらお金がかかることを説明しましたか?

僕「していないみたいですねえ。」

担「じゃ、それで話し合ってみたらどうでしょうかねえ」

この件で医師がどんな思いをしたか推察してみます。

例えば1人の心理職が不手際だと患者さんや家族から糾弾されて、職場の上長、所属団体の日本臨床心理学会、都道府県臨床心理士会、公認心理師協会、日本臨床心理学会など当該心理職が所属している全ての学会や厚生労働省に内容証明でも出されたら

僕だったら泣きながら退職してもう心理の仕事はしないかもしれません。

内容証明(PCからでも出せる)というのは「おたくの団体の会員のひなたはこんな悪さしてることを通知するよ。法的最終通告だから、この内容証明に然るべき措置をしないと訴訟提起するけど?いいの?」という受け取った側の団体にとっても大変恐ろしい書簡です。

今どきはどんな団体でも顧問弁護士がいます。医療過誤で訴えられることをある程度想定している医師でも各団体から照会があってそんな事態になったら他の仕事は全部すっ飛びます。

さて、そうした経緯で医師が請求を諦めたとしてもイヤな思いをしたのは患者さんです。そのケアは?

厚生労働省の運用基準は医師団体の強力なゴリ押しによって決まりました。

開業心理師が医師の指示を受けなければならないなんて無茶じゃないですか。

以前開業心理師北川清一郎先生もその問題点について指摘していました。

公認心理師試験に頻出の薬剤副作用があれば心理師は「主治医の先生に相談してね」と言います。

「今飲んでるメジャーを半分量にしてベンゾジアゼピン系を抜いて自己判断で抜いていた眠剤は毎晩しっかり飲んで。寝酒もいいですよ。」というのは心理の仕事ではありません。

そんなバカなことを言う心理職はいないでしょう。

要するに医師団体は絶対服従を誓う、外部機関であってもそういう心理職が欲しいので、全ての権能を行き渡らせたいわけなのでしょう。

一人一人の医師は心理職に理解ある名医も多いのですが、団体になると豹変します。

感音難聴はストレスと関係していると言われていますが、1日百人単位の診察をしている耳鼻科医に主治の医師の指示を求めても「ナニソレ?」状態でしょう。

厚生労働省も公認心理師が指示を受けるに際して協力を求めるような通達を出していません。

要するに公認心理師は足場となるハシゴがない状態、徒手空拳で「医者のいうこと聞かないと資格剥奪だからね」と脅されているだけで、そのためのガイドラインは何もありません。

公認心理師は法の定めがある主治の医師の指示受けを求め、こんな危険性があるけどどうします?という依頼書を出します。

それがカルテに綴られて忙しい医師が見落としたり無視したとします。

そして患者さんが自◯でもしたら、医師は不真性不作為による◯人罪に問われる可能性があります。

心理師はきちんとカルテに記録しておけば指示なしにつき何もできなかったという無実が証明できます。

医師は傷害や業務上過失致死傷罪に問われる可能性もあります。

医師専権の医行為は通常人と異なる高い専門性による注意義務があります。

そこで指示受けを依頼する公認心理師の文書の中で危険性を指摘して、それに対する注意義務を医師が懈怠したら民事上では債務不履行、不法行為に対する損害賠償請求権が発生します。

僕は気が弱いので「どうしてこんな事態になったんですか?」と詰め寄る遺族に対し、力ない表情でカルテ開示請求権について説明します。

うっかりその場でコピーを渡してしまう心理職もいるかもしれませんが、それは法律上何の処罰もされません。

公認心理師活動領域によっては主治の医師の指示依頼書の写しを渡すことについて何の法的縛りがないことも多いでしょう。

さて、精神科医すら大部分が知らないこの42条2項について、多忙な腫瘍科医が受け取って戦場の現場にいる中で何だかよくわからない文書に対して口頭でも指示出しができるでしょうか?

心理師も多忙なのでカウンセリング、会議、講義、出張や研究会が詰まっています。

お互い多忙だったら文書でやりとりするしかないのですが、保険点数にはなりません。

いっそのこと保険診療点数化すればいいと思うのですが、今回の中央社会保険医療協議会でもそんな議論があるわけではなかったです。

心理師が身を守るためには全てを文書化して、患者さんが自費請求された、それについて患者さんが怒った。カウンセリングからスピンアウトしたなら全てそれを診療録に記載しなければなりません。

実際こういった記録の重要性については僕も様々な医師の講義で叩き込まれていますのでその通りにしています。

文書料支払いについて患者さんが怒るというのは当たり前の事です。

多数を占める良心的な医師、傷つきやすい患者さんに対してこの仕打ちはないだろうと僕は思うわけです。

民事上では公認心理師法のこの条文は心理師さえきちんと指示を受けようとしていれば、医師に対して債務履行義務を追及できます。

またその結果についても債務不履行による不法行為の損害賠償請求ができると解します。

医師団体が「やれ」と言ったことを唯々諾々と受け入れたことは精神領域にかかわる全ての医師が迷惑を被るという結果になったものだと思います。

というわけでこの記事も厚生労働省等に送信しておきます。741F1767-31C4-4793-9462-0978E6B56BB1

7F191053-6A48-48B6-9655-A9874138A49C

厚生労働省公認心理師制度推進室御中

昨日電話でお伝えしたとおり、主治の医師の指示を得ようと公認心理師が勤務先機関とは異なる医療機関に主治の医師の指示依頼文書を患者様に持たせたところ、患者様が自費で5千円支払い、それを心理師が自腹で払わなければならない事態になりました。

こういった事態は想定の範囲内外いずれにせよ由々しきことと考えます。

今後の対応のガイドラインや施策につき公認心理師制度推進室の公式見解を伺わせていただきたいと存じます。

当該記事url

http://hinata.website/archives/23482275.html

by公認心理師bloggerひなたあきら

↑このページのトップヘ