ひなたあきらの公認心理師でポン!

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: 倫理

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◯ キャリアポートフォリオ、職業的成長プロセス、多職種連携、チーム医療、倫理、個人情報

キャリアポートフォリオについては、就職の際の履歴書、大学生がこれまで自分が学んで来た内容、専門分野などについて細かく書く図表形式となっています。

フリーター、就職希望学生や転職者は要心理支援者ともなり得るのですが、専門家である学術研究者や心理職にとってもキャリアポートフォリオの作成は大切です。

キャリアポートフォリオを記述することによってそれまでのコンピテンシーの達成度合いを知ることができます。

◯ 職業的成長プロセス

Michael H. RønnestadとThomas M. Skovholtによって研究された心理職の発達について、100人の被験者に対し、テーマとなっている発達課題をそれぞれの成員から抽出した研究結果です。

ブループリント「心理職の成長モデル」から、外せない学習項目でしょう。

当初は14のフェイズに分けられていたのですが、6フェイズ(期)の発達段階に分けました。

https://experts.umn.edu/en/publications/the-journey-of-the-counselor-and-therapist-research-findings-and-

1.素人援助期
心理職の教育を受ける前の段階で、近親者や友人、同僚等の相談に乗り、心理職を目指すようになります。

2.初学者期
専門家となることへの熱意は強いが不安も強い。情報量の多さに圧倒される。

3.上級者期(博士後期課程)
完璧主義、ひとつの流派のモデルに固執、臨床家としての自己に注意を向ける。

4.初心者専門家期
(博士課程修了から臨床経験5年)
訓練で会得したことを何度も見直す。理論のみでなく、自己(のパーソナリティ)が臨床に影響していることを認めて、統合しようとする、理論モデルよりもクライエント一人一人との最適な治療関係を目指す。

5.経験を積んだ専門家期 (経験15年程度)
様々な現場で数多くのクライエントとの臨床経験を積む。自分の価値観、世界観、パーソナリティを反映させていく。
臨床家としての自分と一個人としての自分に境界を引ける。
技法、理論を柔軟に使いこなし、困難な状況にも対応できる。

6.熟練した専門家期(臨床経験20年から25年)
職業人生を振り返る。臨床家としての自己の力量を認識、限界についても謙虚に受け入れる。多くの理論を見てきたので冷めた目でそれらを見ることもある。デメリットとしては喪失を予期して意欲が低下することもある。

・クライエント同様に心理職も生涯発達をします。生涯学習をすること、クライエントとの関係を通じて臨床家が苦しんだ経験は他者理解、臨床家自らのオープンネス、ウェルビーイングにつながります。

※ よりよい遂行能力、コンピテンシーは医療関係者や教育者などの学習者特有のものですが、ウェルビーイングやエンパワーメントは心理職にもクライエントにも共通することがテキスト等からは読み取れます。

◯ 多職種連携

この試験で重要な視点として幾度も強調されているのは、生物bio心理psyco社会socialモデルです。

これらの職種の中で公認心理師資格を取得する方々も多いと思いますが、それぞれの領域の代表的な専門家をあげておきます。

・生物
医師
看護師 精神保健福祉士
言語聴覚士 理学療法士
作業療法士

・ 心理
公認心理師
臨床心理士
臨床発達心理士
認定心理士

・ 社会
児童福祉司
社会福祉士
教員
スクールカウンセラー
産業カウンセラー

◯ チーム医療

○チーム医療とは、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提 に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的 確に対応した医療を提供すること」と一般的に理解されている。

○ 質が高く、安心・安全な医療を求める患者・家族の声が高まる一方で、医療の高度化・ 複雑化に伴う業務の増大により医療現場の疲弊が指摘されるなど、医療の在り方が根本的に問われる今日、「チーム医療」は、我が国の医療の在り方を変え得るキーワードとして注目を集めている。

○ また、各医療スタッフの知識・技術の高度化への取組や、ガイドライン・プロトコール 等を活用した治療の標準化の浸透などが、チーム医療を進める上での基盤となり、様々な 医療現場でチーム医療の実践が始まっている。

○ 患者・家族とともにより質の高い医療を実現するためには、1人1人の医療スタッフの専門性を高め、その専門性に委ねつつも、これをチーム医療を通して再統合していく、といった発想の転換が必要である。

○ チーム医療がもたらす具体的な効果としては、1疾病の早期発見・回復促進・重症化予防など医療・生活の質の向上、2医療の効率性の向上による医療従事者の負担の軽減、3 医療の標準化・組織化を通じた医療安全の向上、等が期待される。

○ 今後、チーム医療を推進するためには、1各医療スタッフの専門性の向上、2各医療スタッフの役割の拡大、3医療スタッフ間の連携・補完の推進、といった方向を基本として、 関係者がそれぞれの立場で様々な取組を進め、これを全国に普及させていく必要がある。

○ なお、チーム医療を進めた結果、一部の医療スタッフに負担が集中したり、安全性が損 なわれたりすることのないよう注意が必要である。また、我が国の医療の在り方を変えて いくためには、医療現場におけるチーム医療の推進のほか、医療機関間の役割分担・連携の推進、必要な医療スタッフの確保、いわゆる総合医を含む専門医制度の確立、さらには 医療と介護の連携等といった方向での努力をあわせて重ねていくことが不可欠である。

チーム医療の推進について (チーム医療の推進に関する検討会 報告書)
厚生労働省 平成22年3月19日
(原文のまま)

https://www.mhlw.go.jp/shingi/2010/03/dl/s0319-9a.pdf

※ この厚生労働省のガイドラインにはいくつかのポイントがあります。

チームメンバーとして仕事をする際には、それぞれのメンバーが日ごろから高い専門性を身につけ、その技術をチーム内で再統合すること

チームの中で仕事をするには所与の専門性についてのガイドラインやプロトコールを遵守することは、他専門職と連携するために必要(ある専門職が期待されているのと全く違った働きをしているのではチーム医療は成り立ちません)

それから、確かに現代医療は先進化、高度、複雑化していますが、心理職は旧態依然とした学習によるアセスメント機能やカウンセリング技法だけに固着しているのでは十分に機能していくとは期待されないでしょう(この辺りはコンピテンシーや生涯学習、心理職の成長とも関係してくるでしょう。)

心理職がチームの中で特に期待されるのはアセスメントの部分でしょう。

ある患者さんがいて、認知機能、知能発達段階、知能下位検査のディスクラパンシー(重大な差異があれば発達障害が疑われます)、性格検査です。

正に公認心理士法第四十二条第2項の主治の医師の指示にかかわる事柄なのですが、エビデンスベイスドなアセスメントを行うのか、当該心理職が熟達していて正確度が高くなっているナラティブなアセスメントなのかは主治の医師からの指示によるでしょう。

もちろんカウンセリングによる要心理支援者の心情把握やクライエントとの信頼関係の醸成は心理職にとって必要不可欠です。

現任者テキストではクライエントとの信頼関係を常に強調しています。心理職はチームの一員として活動しながら、クライエントだけとの信頼関係という、ともすれば矛盾しかねない目的に立たされる場面があるでしょう。

守秘義務がどこまでの範囲であり、チームメンバーには伝えるべきだという事態があればクライエントに対する十分な説明を常に求められます。

◯ 公認心理師の倫理

・命令倫理
命令倫理とは、法に定められている、あるいは必ずしなければならない、してはならない最低限の職業倫理を指しています。

・ 職業倫理の7原則(命令倫理と言っていいでしょう)

1.相手を傷つけない、見捨てない。

2.エビデンスのある技法を使う、マニュアルからの逸脱をした心理的行為(アセスメントを含む)をしない。

3.相手を利己的に利用せず、多重関係を持たない。

4.クライエントを人間として尊重、公認心理師の感情をある程度伝える、欺かない。

5.守秘義務

6.インフォームド・コンセント

7.援助を拒否しない、差別しない。社会的問題にも介入する。

これらの命令倫理とは別に公認心理師には理想追求倫理という、相手に対して専門性ある最高の行動基準を目指すレベルの倫理があります。

秘密保持義務の秘密1)2)については何度か書きました。

※ 「秘密」は当事者にとってもっぱら限定された人的領域でのみ知られ、その当事者が、彼の立場上、秘匿されることにつき実質的利益を有することかつ本人のみが知っている事柄」という定義があります。(辰巳ドリル)本人が隠しておきたいと考えるだけでは足りず、それを隠しておくことに客観的・実質的な利益のある事柄が法的な保護の対象になります。

刑法上の秘密漏示罪第134条では秘密というのは一般的には知られていない事項で、

A(客観説)一般人であれば他人に知られたくないだろうと推察される

B(主観説)本人が秘密にしておきたいと考える事項

C AかつBを備えている

という3説あります。
(刑法上及び個人情報保護保護法上の「人」は生存者のみ)
ただし、死者であるから何でも公表してもよいというわけではなく、厚生労働省には死者の情報についての厳格なガイドラインがあります。
医療介護関係者の個人情報保護の取り扱いについて記載されている資料なので一度ざっと目を通しておくことをおすすめします。

同ガイドラインは死者の秘密も生前と同じように慎重に取り扱うこと、本人の生前の意思や遺族の意向を尊重するべきとしています。

本人が意識不分明な場合は家族の同意を得る、合目的的で、例えば他医療機関と治療のための連携を取る場合には本人の秘密は限定的に(その目的に沿った内容のみ)明かされます。

身元不明で意識不明、災害時などの場合には公開しなければ本人の特定ができないので例外となるでしょう。

「医療・介護関係事業者における 個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/seisaku/kojin/dl/170805-11a.pdf

また、クライエントの秘密を漏らすことは、うっかり電車の中にノートやカルテを置き忘れてしまうなどでも過失による、秘密を守るという事項の債務不履行または不法行為に民事上は当たり、損害賠償義務が発生します。

ただし、どんな場合であっても公認心理師法第四十一条の秘密保持義務に反してないと断言はできず、罰則対象とならなくても行政処分の対象となり得ます。

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◯ 公認心理師法 試験・登録・信用失墜・守秘義務・連携

第四条(資格)
公認心理師試験(以下、「試験」という。)に合格した者は公認心理師となる資格を有する。

※ 「有する」だけで、自動的に公認心理師となるわけではありません。

(試験)
第五条 試験は、公認心理師として必要な知識及び技能について行う。

(試験の実施)

第六条 試験は、毎年一回以上、文部科学大臣及び厚生労働大臣が行う。

第七条 試験は、次の各号のいずれかに該当する者でなければ、受けることができない。

 一 学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に基づく大学(短期大学を除く。以下同じ。)において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業し、かつ、同法に基づく大学院において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めてその課程を修了した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者

 二 学校教育法に基づく大学において心理学その他の公認心理師となるために必要な科目として文部科学省令・厚生労働省令で定めるものを修めて卒業した者その他その者に準ずるものとして文部科学省令・厚生労働省令で定める者であって、文部科学省令・厚生労働省令で定める施設において文部科学省令・厚生労働省令で定める期間以上第二条第一号から第三号までに掲げる行為の業務に従事したもの

 三 文部科学大臣及び厚生労働大臣が前二号に掲げる者と同等以上の知識及び技能を有すると認定した者

(試験の無効等)

第八条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、試験に関して不正の行為があった場合には、その不正行為に関係のある者に対しては、その受験を停止させ、又はその試験を無効とすることができる。

2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、前項の規定による処分を受けた者に対し、期間を定めて試験を受けることができないものとすることができる。

(受験手数料)

第九条 試験を受けようとする者は、実費を勘案して政令で定める額の受験手数料を国に納付しなければならない。

2 前項の受験手数料は、これを納付した者が試験を受けない場合においても、返還しない。

第三章 登録

(登録)

第二十八条 公認心理師となる資格を有する者が公認心理師となるには、公認心理師登録簿に、氏名、生年月日その他文部科学省令・厚生労働省令で定める事項の登録を受けなければならない。

※ 公認心理師試験合格者は届出を行って登録を受けないと公認心理師、心理師の名称を名乗ってその業務を行うことはできません。

(公認心理師登録簿)

第二十九条 公認心理師登録簿は、文部科学省及び厚生労働省に、それぞれ備える。

(公認心理師登録証)

第三十条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師の登録をしたときは、申請者に第二十八条に規定する事項を記載した公認心理師登録証(以下この章において「登録証」という。)を交付する。

(登録事項の変更の届出等)

第三十一条 公認心理師は、登録を受けた事項に変更があったときは、遅滞なく、その旨を文部科学大臣及び厚生労働大臣に届け出なければならない。

2 公認心理師は、前項の規定による届出をするときは、当該届出に登録証を添えて提出し、その訂正を受けなければならない。

(登録の取消し等)

第三十二条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が次の各号のいずれかに該当する場合には、その登録を取り消さなければならない。

一 第三条各号(第四号を除

く。)のいずれかに該当するに至った場合

二 虚偽又は不正の事実に基づいて登録を受けた場合

2 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師が第四十条、第四十一条又は第四十二条第二項の規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めて公認心理師の名称及びその名称中における心理師という文字の使用の停止を命ずることができる。

※ 取消処分には「任意的取消処分」で、監督者が任意的に裁量で取り消したり取り消さなかったりするのですが、必要的取消処分と言って、必ず取消しを行わなければならないので、かなり厳しい処分と言えるでしょう。

※ なお、法律の条文を読むときの条、項、号の復習にこの第三十二条を使ってみます。「取り消さなければならない。」の後には「第1項」が隠されています。透明文字で「第1項」と書いてあるとでも理解しておきましょう。
第1項の後の漢数字「一」「二」が「号」です。「2」の登録取消し、名称使用禁止はアラビア数字なので第2項ということになります。

(登録の消除)

第三十三条 文部科学大臣及び厚生労働大臣は、公認心理師の登録がその効力を失ったときは、その登録を消除しなければならない。

第三十九条 この章に規定するもののほか、公認心理師の登録、指定登録機関その他この章の規定の施行に関し必要な事項は、文部科学省令・厚生労働省令で定める。

第四章 義務等

(信用失墜行為の禁止)

第四十条 公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。

※ 信用失墜行為は、公務員、国家資格所持者についてそれぞれ法で定められています。
信用失墜行為とは何か?

1 交通事故、飲酒運転などの道路
交通法違反
2 万引き、、暴行、喧嘩
3 わいせつ行為(業務内外を問わず)強姦、強制わいせつ、痴漢、盗撮等
4 インターネット上での個人の誹
謗中傷
6 不正経理、公金横領、リベート
収受、贈収賄
7 地位を利用した不法行為
8 ハラスメント行為

※ どこまでが信用失墜行為となるのかは線引きが難しいですが、児童ポルノ法違反があります。
単純所持でも法違反になりますし、サイバーパトロールはこういった犯罪には手厳しいです。怪しいサイトに入って、ついうっかりクリックした経歴であってもIPアドレスから警察が常に捜査しているということを忘れない方がいいでしょう。

(秘密保持義務)

第四十一条 公認心理師は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。公認心理師でなくなった後においても、同様とする。

※ 「正当な理由」があれば、の正当性についてですが、タチアナ・タラソフさんがあやめられた際にクライエントが「銃でやる」と言っていたのにもかかわらず主治医が守秘義務のために何もしなかったというものです。

この後主治医はアメリカ最高裁で敗訴し、タラソフ論争も巻き起こるわけですが、明白な危機が迫っている場合にはカウンセラー側には「第三者保護義務」が発生します。

・犠牲者となり得る相手への警告義務

・犠牲者に危険を知らせてくれる可能性のある人に知らせる義務

・警察への通告

・他の合理的方法

ちなみにこの後アメリカではタラソフ型判決が多数出て、判例として確立しています。自死についてもこの保護義務は発生します。

心理職なら経験したことのある人は多いと思いますが、クライエントが強い希死念慮、具体的企画、意図を明言し、入院ともならなかった場合には医師や心理職から家族にその危険性を知らせ、クライエントが単独で帰宅することがないように家族に送らせるということがあるでしょう。

クライエントが家族に心配をかけたくないから希死念慮について話さないでくれと言っても守秘義務履行よりも患者の生命を優先するわけです。

また、虐待の通告義務も公認心理師の秘密保持義務に優先します。犯罪者がクライエントの場合、警察から捜査関係事項照会書が来た場合も守秘義務は外されます。(薬物事案については信頼関係のため、絶対に秘密にするという約束が治療上は好ましいです。)

医療現場では患者のケースカンファレンスが多く行われるでしょう。「医者には言わないでくれ」と言われていてもそのクライエントの秘密を守ることはかなり困難です。また、医療保険会社は患者のカルテ開示請求を行う権利がありますので、ここで守秘義務は外れます。

また、安全に配慮すると特に産業場面のカウンセラーは守秘義務より多くの人々の安全を守らなければならない場合もあるでしょう。

パイロットのクライエントが幻覚幻聴に悩まされている、死ねという声が操縦中に聴こえてきて衝動的に航空機を墜落させたくなる。秘密にしておいてくださいと言われてもそれは安全への配慮から無理でしょう。

教育・産業場面のカウンセラーは「もっと自分を取り巻く環境をこうして欲しい」と言うことも多く、それを周囲に伝えて欲しい、そういう要望があれば守秘義務は外されます。

その場合、誰に、どんな風に何を伝えるべきかはきちんとクライエントの了解を取らないといけません。それから、これは注意が必要なのですが、学会や学会誌で事例発表をしたいという時です。

その場合にはクライエントには十分に口頭及び書面による説明、書面による同意書が必要ですし、発表原稿をクライエントに見てもらうことも必要でしょう。

医療、心理の倫理は厳しいものです。
病院なら倫理審査委員を経ないと、同意書があったとしても手続き面に不備があればその発表は不可能になります。

何をクライエントの秘密として守るべきかは難しい問題です。例えば死者の情報は個人情報保護の対象とはならないのですが、その情報の中に生存している家族などの情報が入っていればそれは個人情報です。

個人情報はその他にも個人の生年月日、メールアドレスや電話番号、健康診断結果の数値、経済状況など多岐にわたります。

また、辰巳法律研究所のドリルによれば、団藤(法律学者)説では秘密とはあくまでその個人のものなので、クライエントがとある企業が経営不振で倒産しそうだ、というクライエントが知り得た秘密についてその漏示が禁止されるわけではないとなっています。

※ ここは大事な部分ですので、罰則規定条文も掲載します。

第四十六条 第四十一条の規定(秘密保持義務)に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。
2 前項の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

※ 下記の条文も必出と思います。

(連携等)

第四十二条 公認心理師は、その業務を行うに当たっては、その担当する者に対し、保健医療、福祉、教育等が密接な連携の下で総合的かつ適切に提供されるよう、これらを提供する者その他の関係者等との連携を保たなければならない。

2 公認心理師は、その業務を行うに当たって心理に関する支援を要する者に当該支援に係る主治の医師があるときは、その指示を受けなければならない。

 (資質向上の責務)

第四十三条 公認心理師は、国民の心の健康を取り巻く環境の変化による業務の内容の変化に適応するため、第二条各号に掲げる行為に関する知識及び技能の向上に努めなければならない。

 (名称の使用制限)

第四十四条 公認心理師でない者は、公認心理師という名称を使用してはならない。

2 前項に規定するもののほか、公認心理師でない者は、その名称中に心理師という文字を用いてはならない。

世の中のこの騒ぎの中、コロナのために本務でなくとも健康保健管理業務に追われている心理職の方々も多いと思います。

本ブログを試験対策で読んでくださっている方も、知的好奇心から読んでくださっている方々もいらっしゃると思います。

時節柄くれぐれもご自愛ください。

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◯ 患者さんの握ったおにぎりを食べられますか?

横浜市立大学医学部の論文試験に出題された問題を改変したのがこのタイトルです。

正しくは、高校の教員が生徒たちを引率、農業実習をさせた生徒に対して農家のおばあちゃんが握ったおにぎりを食べられなかった。

あなたが高校教諭だったら

1.食べられなかった生徒たちをどう指導しますか?

2.食べられなかった生徒が多かったことをおばあちゃんにどう伝えますか?

という設問でした。

これが医療者としての適性を試す質問とすれば、1.の「食べられない」という価値観を多様性のひとつとして否定しない。

どんな際にもマイノリティの人権を否定しない。

そして2.はインフォームドコンセントICの問題になるでしょう。

とある難病になり、数年後生存率はほぼ数パーセントという患者さんのICに立ち会ったことがあります。

ベテランのXy部長医師が「◯◯さん、今は病気が悪さしているけれど、絶対に2本の足で立って帰れるようにしますから。」

と満面の笑みで患者さんに伝えました。

結局患者さんは小康状態になり本当に二本足で帰り、生きられた時間を楽しみ、その後急変して亡くなったという例がありました。

このご時世ですから患者さんもよく自分の病気を勉強していますから末期には覚悟をしていました。

患者さんは、残された生きられる時間を大切にしようとしつつも治し切ってくれなかった医療者を恨んでいたかもしれません。

「おにぎりをみんな喜んで食べましたよ。」

と言いつつ高校教諭はおにぎりを持ち帰ったのかもしれません。

それをおばあちゃんは悟っていたかもしれません。

それは「優しいウソ」です。

「私、死ぬんでしょ?」

「そうですね。生きられる見込みはあまりありません。」

というやり取りは医療現場ではありません。

この20代の若い研修医でも命がかかっているICはかなり慎重に行います。

さて、この横浜市大設問の隠された根源のひとつとして「患者さんからもらったプレゼント」の扱い方があります。

時にはプレゼントをこちらから与えることもあります。

真夏に走ってカウンセリングの時間に間に合うように汗だくで来たクライエントさん、喋るどころではなくぜいぜい言っている、そんな時には「麦茶でも飲みますか?」と聞きます。

患者さんと一緒にお茶を飲みながら和気あいあいとカウンセリングするのはいけないことという暗黙のルールもあります。

厳しい倫理がある公務員の世界では当事者から出された「お茶を飲んではいけない」という規定があります。

特に司法や福祉で判断業務を行うところはそうで「あの時お茶を飲ませてやった。お茶菓子も買ったから持たせたのに」とまで思われるかもしれません。

公務員でもユルい時代には保護者からビールを飲まされたり、遠距離の当事者宅に行くのに原付で駅から自宅まで2人乗りで送り迎えしてもらったこともあると聞きます。

児童臨床をしている心理職が子どもが一生懸命作った折り紙や工作を断ることはないでしょう。

もう少し年端のいったティーンエイジャーの女の子がスワロフスキーで作ったアクセサリーならば?

確かにクライエントさんは喜んで欲しがっているからこそ作るわけですが、「わあ、また作ってね」と何度も作らせていたという臨床家がいたと聞いてかなりがっかりした思いがあります。

直接の知り合いだったら叱り付けていたかもしれません。

精神分析では子どもの排泄物は親への何よりの「贈り物」と言われています。

心理職はクライエントさんの友だちではない、これはその通りです。

福祉現場では利用者さんと指導員が一緒にご飯を食べる機会はままあります。

それもまた生活をともにするという臨床の立場だと思います。

どこまでが許されてどこまでがまずいのか、その線引きは心理職にとって常に曖昧な危険性を孕んでいます。

「今日は暑かったからペットボトルのお茶を買ってきましたから先生も飲んでください」

「また来週の時間を決めましょうか」

「お茶、持ってってください」

こういう場面に困った心理職の人はいないでしょうか?

「これまでお世話になりました。母と私で選んだネクタイです。受け取ってください」

プランド物の高級なネクタイでした。

どうしますか?

僕の実体験です。

以下、産業領域の心理職の人たちは経験していることも多いでしょう。

カウンセリングを受けたくてしょうがない、だけど工場の生産工程が読めないので連絡の取りようがないし、現場には内線電話がなくてカウンセラーの私物携帯しかない。

こういう時、私物携帯の番号を教えるカウンセラー、教えないカウンセラーを多数決を取ったら見事に半々に分かれました。

僕は人を選んで慎重に時には携帯番号を教えることがあるのですが、時間外に1時間電話で泣きつかれると困ったなあと確かに感じます。

産業領域では「カウンセリングに来るのにお昼しかないっすよ。お腹減っちゃうからここで飯食ってもいいっすか?」

「◯◯君、お茶どう?」

「あざーっす!」

偉いどこかの人が聞いたら激怒されそうです。

「カウンセラーさんに食べて欲しいからケーキ焼いてきたの」

これはどうしたらいいでしょうか?

じゃ、手作りお弁当は?

と思考実験ではなくて実際にそういう体験をした人もいるだろうなと思います。

物のやり取りだけがまずいのではありません。

言葉もかなりクライエントさんにとっては凶器になります。

「カウンセラーさんみたいな優しくて素敵な旦那さんが欲しいなあ」

「いやいや、僕は私生活では女房とはケンカばっかりでちっともダメですよ」

こういうカウンセラーの返し方は二重の意味でまずいのです。

昨日、今日と医学部試験から医療倫理、対人関係援助職の倫理について考えさせられました。

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◯ 公認心理師がもし猫を轢いたら

医学部入試に「昨夜猫を轢き殺したるわれにして人の規則に許され働く」の短歌についての感想を述べよ。

という出題されたことがネットのニュースで話題になっています。

この短歌を詠んだのはタクシードライバー歌人、高山邦夫さんです。

タクシードライバーは多くの距離を運転していますが、小さくて交通ルールの守れない猫を完全に避けることは難しいです。

運転を生業とするドライバーでも轢いたら、子ども相手なら重罪、猫ならばそれは「モノ」相手として「人の規則に許され働く」ことができます。

公認心理師第40条には信用失墜行為の禁止義務があり「公認心理師は、公認心理師の信用を傷つけるような行為をしてはならない。」とあります。

猫を轢いたとしても、どの資格職もそれは信用失墜行為にはなりません。

しかしながらずっしりと重い罪の意識に苛まされる人も多いでしょう。

医師はその扱う患者さんの数とリスクから、人命が失われることが通常でも多く予想される職務です。

心理職もまた人の命を預かる仕事なのは間違いなく、一日中希死念慮が高い患者さんの話を次から次へと聞くことがあります。

以下のような発言を精神科医からも心理職からも聞いたことがあります。

「結局あの人は◯◯だから誰も死ぬことを食い止められなかったんだよ。だから仕方なかったんだよ。」

(カッコ内には病名やその人が置かれた環境、トラウマなどが入ります。)

もし上記医学部試験でそういう解答をしていたら×で、きっと合格点はもらえなかったでしょう。

「あの黒猫は夜道を一目散に渡って行ったから避けようがなかった。」

それは真実です。

クライエントさんが自死、不審死を遂げた時に心理職は毎週濃密に1時間を過ごしていたクライエントさんをどうすれば食い止められたかという理由を事後であっても探し続けます。

自分が眠れない思いをしても探し続けます。

医療事故はあらかじめ患者さんの死が予想されていなかったものについて事故とみなします。

※ ちなみに医療事故とは医療法では下記のように記されています。

第6回医療事故調査制度の施行に係る検討会 資料2-3

平成27年2月25日

医療事故の定義について

厚生労働省医政局総務課
医療安全推進室


医療事故の定義について

1医療に起因し、又は起因すると疑われるもの

2当該死亡又は死産を予期しなかったもの

3死産について

法律

通知事項

第6条の10

病院、診療所又は助産所(以下この章において「病院等」という。)の管理者は、医療事故(当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起 因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるものを いう。

(以下この章において同じ。)

が発生した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、遅滞なく、当該医療事故の日時、場所及び状況その他厚 生労働省令で定める事項を第6条の15第1項の医療事故調査・支援センターに報告しなければならない。

(以上引用)


医療の世界では次々と患者さんが亡くなっていく、リスクが予測できる科も多いです。

心理職の世界は希死念慮が高い患者さんが次々とやって来ることが多く、ただそれを漫然と毎日のようにこなして1時間面接時間をこなしていると患者さんはそのままで帰ります。

1週間192時間、面接時の1時間以外の191時間、患者さんがまた次に生きて面接にやって来る来週に繋げていくか多くの心理職は必死だろうと思います。

「あの患者さんは元々死にかねない、そういう人だったから」

「自分にはどうしたらいいかわからないし、報告しても医師もどうすればいいのか教えてくれなかったから」

「そもそも自分にはあんなに重い人の生き死にをどうにかするような実力はなかったから」

どれも理論的には正しいことです。

医療においては先読みリスク管理をした上で危険性の発現を少しでも減らすことが大切です。

「この薬には◯◯という強い副作用があります。それでショックを起こす可能性がxパーセント、退院できるようになる確率がyパーセントです。」

というのが通常のインフォームドコンセントICです。

ICなしに死ななければならない、言葉が通じない、しかも避けようがない猫の飛び出しについての刑罰はありません。

この問題の正答は、医療過誤にならないし、避けようがない患者さんの死でもきちんと真摯にそれを受け止める、原因を究明してそして次の治療に生かすということではないかと思います。

そして医療者の内心の良心としては、医療過誤にならなくても患者さんの死から学べるものがなかったのか考えること、これが多分正答に近かったのではないかと思います。

心理職の世界では患者さんのバイタル(心拍、血圧、呼吸などの生命徴候)から一刻を争って救命をすることはありません。

ふと待合室で見た、あるいはカウンセリングルームに入ってきたクライエントさんの顔、声色、服装を見た時に感じる「直感」があり、それはたいてい当たっているものです。

証明力があるエビデンスでなくとも、患者さんの雰囲気全体から何かを感じたいと自分自身でも自戒したいと思っています。

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◯ 公認心理師・臨床心理士の研究活動はプライバシー配慮や倫理的問題はクリアできているのか?

公認心理師・臨床心理士に限らない事ですが、研究活動におけるプライバシー保護、守秘義務の遵守は大きな問題です。

臨床家は研究者であるというアメリカの科学者-実践家モデルは正しい事です。

確かに日常業務に追われて自分の目の前の仕事に取り組むのに手一杯で研究どころではない、そういう臨床家は多いと思います。

それでも実践家であるからには様々な研究書や論文は読んでいるわけです。

実際、公認心理師試験も基礎知識を問うような問題でありながらも法律やきちんとした公的機関(厚生労働省・文部科学省・法務省・裁判所)などの通達、ガイドラインを読んでいないと答えられない問題は多いです。

研究を日々絶やさない、少なくとも知識を日夜ブラッシュアップしていこうという姿勢がないと合格しにくい試験ではないかとも思っています。

公認心理師試験に無勉で高得点で合格した人の話を聞くと、いつもその辺りの心理職やカウンセリングについての周辺知識や法規に絶えず目配りをしていたそうです。

さて、心理職や精神科医の学会専門誌、学会発表では事例(クライエントさんや患者さんへのかかわり)の発表が行われることがあります。

この研究活動におけるクライエントさん、患者さんの守秘義務倫理への配慮は、大抵の場合、様々な形式で慎重に行われています。

必ず論文や学会大会抄録に、どういった倫理的配慮を行ったのかは記載しなければいけません。

「プライバシー保護のために個人が特定されないように事例の改変を行い、本人に了解を取った」

というような記載を見る事がありますがこれは最低限のことですし、問題があると思います。

精神医学、心理学領域には限らないのですが、対象者がいる研究をする際には厳しいルールがあります。

患者さんやクライエントさんに対してプライバシーに配慮して心身に害を与えない(侵襲的でない)事、著作、研究論文や発表抄録、発表原稿が国立国会図書館に記録として収納(収納義務があります。)されるまで、いついかなる時点でも研究結果データを使うことをクライエントさんやその家族が拒否、撤回できる事が明示された説明書を渡します。

治療中の患者さんに対する研究ならば、(治療後も同じですが)研究参加を拒否したり参加後に撤回したことで何ら不利益がないという一文も入れます。

(でも患者さんは断りにくいだろうなとは思いますので、それに対する工夫も必要と思いますが)

そしてクライエントさんに同意書に書面でサインをしてもらいます。

全て書面にして双方が保管します。

さらに原稿ができたらもう一度ご本人や家族に見てもらい、修正点があれば修正します。

そしてその研究者が所属している組織の倫理委員会に諮って倫理的問題がないかどうかの審査を受けます。

委員会で患者さんの人権保護に問題があるとされ、リジェクト(却下)されたらそれまでです。

大病院ならしっかりとした倫理委員会がありますし、大病院でない研究機関が大病院の倫理委員会を通して発表をすることもあります。

何の審査も受けていない発表は問題があると感じています。

医療関係者だけでなく弁護士が人権擁護の目的で、また他領域人文科学者の専門家が倫理委員会に入ることもあります。

病院の院長を始めとして医療従事者たち、医療安全評価者、看護師を始めとしたコメディカルなど医療従事者も倫理委員会に入ります。

逆に倫理審査の公正さが保てないということで同じ病院職員の発表については院長等管理職は外れるということもあります。

ただ、事例論文を読んでいると精神科医でも心理職でもずいぶん大事な部分をすっとばして発表している場合があります。

(小さな学会、研究会、団体ではそんな事が散見されます)

「今度さ、内輪の小さな勉強会があるんだけどAちゃんのことカウンセラーとかお医者さんの研究会で話してみてもいい?匿名希望でいいからさ」

と小さな子どもに言いっぱなしで「同意」とするのは×でしょう。

きちんと保護者に説明書を渡し、同意書をもらい受ける必要性があります。

読者のネズミさんが公認心理師倫理について触れていましたが、今後の事を考えていくと倫理を自重していくことはとても大切なことです。

昔々はかなり有名な御大たちが結構適当にクライエントさんの同意を得たかどうかわからないような論文や著作で事例発表しているものがありました。

(今現在販売中のものもあります。)

公認心理師は今後社会的認知が広がるにつれ、各研究団体や一般人からの目がどんどん厳しくなるでしょう。

個人情報保護については公認心理師試験にも出題されます。

何が個人情報に当たり、とういう手続きを経たら個人情報取扱いに問題がなくなるのかは試験対策だけでなく心理職にも医療者の方々にも知っておいて欲しいなと思います。

だからこそ研究における事例のプライバシー保護にはかなり神経質になってもなり過ぎではないと自戒の念を込めて思うのです。

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