ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: サイコロジカルファーストエイド

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◯ COVID-19に期待される心理職の役割・学校休校措置・医療体制減弱化・感染症回復へ・支援の現状と課題

臨床心理士も公認心理師も心理職はあらゆる局面で人の不安に今向き合う必要性を感じてこの記事を書いています。以下、まずは知識を得ることが大切と思い、浅学ながら僕が焦点化して考えていることを書いてみます。

1.学校休校による医療体制減弱化

日経メディカルニュースの定期配信を受けているのですが、新型コロナウイルスCOVID-19 CoronaVirus Disease 2019の流行による休校措置は医療体制に危機をもたらすとの記事が掲載されていました。「シリーズ新興感染症 休校要請、6割強の医師が診療への悪影響を危惧しているとのアンケート結果が掲載されています。

考えてみればそれは当然のことで、幼子や小学生を抱えた看護師さんが子どもだけを残して家を空けるわけにも行かず、この記事によると30パーセント看護師さんが出勤不可能となる呼吸器外科もあるということでした。

日本はCOVID-19にメンタルパンデミックを起こしています。初動が遅かったという批判はあるものの、国家・行政は感染症対策はできうる限りのことはしていると思います。

人ごみや密閉空間に相対するのを人々が避けられるようにして休校、そして産官学の医療的措置は実は全て情報公開されているわけではないのですが、相当な対策を国家レベルで行っています。そのうちに情報公開されるかもしれませんし、されないかもしれません。

医療体制は人員が確かに不足するでしょうけれどもその補填計画は進んでいます。

ただ、医療関係者たちは学校の閉鎖措置は良かったと評価をしており、医療従事者も人の親ということでしょう。

2.感染者回復例

COVID-19に罹患したとしても80パーセントは軽症例です。ワクチンが開発されていない、ということであっても水分が不測していれば点滴、隔離、バランスよい食事と休養ということです。2020年3月3日日本の罹患者241人死者6人ということで致死率2.5パーセント弱です。(内閣官房)ちなみに世界中では罹患者89,977人死者31,08人で致死率3.5パーセント弱です。

PCR検査をクルーズ船3,063人に対して行ったところ、陽性者は634人、無症状病原体保有者延べ328人でした。(J-CASTニュース2月25日)

回復例はあると2月24日厚生労働省の基本方針にも述べられています。また、JETROビジネス短信3月3日によれば中国での3月1日の感染者報告は、同日1日で新規感染者202人、回復者2,837人で、同ニュースでは中国におけるCOVID-19感染はピークアウトしたとみなしています。

また、そのニュースによると、中国での3月2日午前0時時点で累計感染者数は8万26人、うち現在の感染者数は3万2,652人、累計回復者数は4万4,462人と内閣官房発表の数字だけ見ると感染者が爆発的に多いように見えますが、実は回復者も多いということです。よって中国では警戒レベル引き下げ(警戒をしないという意味ではないです。)をしました。

今日本では「なぜWHO(世界保健機構)やCDC(アメリカ疾病予防管理センター)でパンデミック(爆発的大流行)レベルを最高度に引き上げないかという世論が大きいのは知っていますが、多分双方ともこういった事情からパンデミック警戒としながらもパンデミック宣言はしていません。

感染症対策は大切だと思います。密閉された空間の中で感染力が高いわけなので今回の出席停止措置や集会等の自粛要請は正しい対策だと思います。

3.不安定な人々の心にどう対処するのか?

日本臨床心理士会、日本公認心理師会がセーブザチルドレンジャパンと急性ストレス障害様症状が子どもに起きた際のパンフレットのようなものを作りましたが、辛口の言い方をすると「もっと早く、そして密度の濃いものを作っておいてもよかったんじゃないの?」と読んでみて思いました。

セーブザチルドレンジャパンは国際的NGOで、2月7日には湖北省に3万6千枚のマスクを送るなどその活動はめざましく、心理団体の呼応に答えただけのような気もします。

国境なき医師団も2月13日発表で物資の寄付や医学的援助活動を行っています。心理団体はお互いに何千万円の寄付をし合って会員から徴収した会費を使うのではなく、社会貢献活動として地域に物資援助をする、あるいは心理的支援の派遣要請を聞いてみるという活動が期待されたのではないでしょうか。

今子どもたちは自宅でゲーム三昧の日々を送っています。臨床心理士は文部科学省認定資格、公認心理師は文部科学省と厚生労働省の共管資格です。
子どもへの学習支援活動をオンラインなどで行うのは本来は文部科学省や各地方教育庁の仕事かもしれませんが、社会的な責任を持つ一般社団法人ですからさまざまな面からの支援活動をする余地はCOVID-19発症からずいぶん経過していたので文書を作りました、やってますよというアピールでなく、もっと実効性がある活動はできたのではないでしょうか。

サイコロジカルファーストエイド専門教育を受けた専門家が電話相談対応をするとか、養成されたSNSカウンセラーが休校になり不安な子どもの相談に乗ったりすることも大切です。休校して給食を食べられなくなった被虐待児や貧困家庭がどうなっているのかも気になります。厚生労働省は感染症対策部局だけでなくさまざまなセクションから人員を集めて対応に当たっています。

心理職は心理が専門だから心理の仕事しかしないということでは自ら地位を貶めるようなものだと思います。大学院卒の教育を受けているのですから、記録を取る、統計的に分析する、関係各所との連絡調整をするなどできることはたくさんあると思うのです。そして実際にやっている人々も多いと思います。心理職が不安定だとその揺らぎはクライエントさんに伝染します。心理職のみなさまにおいても家庭や自分を大切にしながら安定した気持ちで全ての人々への支援を行って欲しいと思う所存です。

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◯ コロナウイルス流行に期待される公認心理師・臨床心理士の役割

結論:心理職ができることは数多くある。ただし派遣要員は公認心理師に限られる可能性が高い。

1.危機への対応

総合病院でも小さな診療所でも病床があればコロナウイルス患者の受け入れが始まっています。ちなみにはみなさんの不安を煽る意図的でこの記事を書いているのではありません。

こういった危機場面というのはまさにサイコロジカルファーストエイド、Psychological First Aid ; PFAで心理職の活躍が期待されるのではないかと思われるからです。

過去感染症についてはHIV研究でも多くの臨床心理研究者が成果を上げています。例えば新潟大学医歯学部病院は関東甲信越のHIV対策最先端拠点病院です。こういった拠点病院は全国にあります。

感染症と臨床心理学については先達の方々が多くの研究結果を著していて、その成果に学ぶことも多いでしょう。こういった場合に精神保健介入を迅速に行うのがDPAT
災害派遣精神医療チーム

(Disaster Psychiatric Assistance Team ; DPAT)

で、そのホームページにはすでにコロナウイルスへの対応がアップされています。新型コロナウイルスへの医療的介入における臨時の診療報酬が請求できることほか、自治体担当者向けの情報提供を行っていて、対応は迅速です。

さて、DPAT先遣派遣隊のチームは精神科医、看護師、事務スタッフの3者で構成されています。臨床心理技術者として過去臨床心理士がチームに参加したこともありますが、ごく少数のケースでした。

臨床心理士よりは精神保健福祉士の方がこういった場合には役立ちます。先遣派遣隊の一員としてケースワーク的な調整業務ができるからです。臨床心理技術者が派遣される場合には国家資格保持の公認心理師が優先されるのは信頼性担保になるでしょう。

さてそれではこうした感染症が起きた場合、心理職としてはどのように対応したらいいでしょうか?

2.事務スタッフとしての役割

インフルエンザ、ノロウイルスなど大量発生した場合には施設で働く心理職は帰宅できない場合があります。緊急の患者さんを除いてはカウンセリングを停止、保健所だけでなく発生源となった学校や企業体、そして企業内部や福祉で働く心理職は多忙です。

医療、他組織内で起こった食中毒の場合には警察から過失の可能性はないか、院内でも他組織でも対応します。

また、保健所への連絡調整、保健所担当者は検体を集め、分析、原因します。その結果をさらに分析します。

時事刻々と患者数は増え、スタッフは泊まり込み関係機関連絡、報道対応もしなければならないこともあります。

クロノロジーという経過記録をきちんと残して書いておく役割、感染症患者数の集計、一人一人の所在確認。ベースラインの糖尿等の基礎疾患があればその患者さんをピックアップしておきます。

後から訂正できるので、まず第一報を流します。本来ならその心理職が所属している上長の役目です。情報がないことが最も不安を煽ります。今回のコロナウイルスも情報不足が混乱の元になっています。

公認心理師試験なら、情報を公開するよう、アドバイスする、が正解ですが自らその役割を取ることもあります。

3.知っている情報を伝え、つなげる。

多くの人々が今回、日本人患者も大量発生したことで怯えています。人々が多く集まる場所でさまざまなイベントが中止されました。この疾患の恐怖がクローズアップされています。

コロナは死亡率2パーセントです。鳥インフルエンザ63パーセント、エボラ出血熱50パーセント、SARS(重症急性呼吸器症候群)9パーセントに比べると低い数値です。SARSは治療法確立の前に収束しました。

朝日新聞デジタルによると感染者は国内で2月18日現在615人です。37.5℃以上の熱が4日間続く、息苦しい、だるい症状が続くなどの場合には受診が勧められています。そのための相談ダイヤルは厚生労働省や地域の各保健所にも設けられています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/covid19-kikokusyasessyokusya.html

心理職は患者さんが不安がっていたら感染予防に関する情報は伝えてもいいでしょう。不正確な知識を伝達するわけにはいきません。

4.感染対策を自らも取り、患者さんを安心させる。

心理師も患者さんの被服や皮膚に触れる場合は考えられるわけです。傷がなくてもお互いに不安を覚えるので、アルコールでの手指消毒は徹底しましょう。またそれも伝えます。

医療機関における予防としてマスクは必須です。従前、マスクをしての心理面接は表情がわからない。

また患者さんに対して拒否的に取られかねないと消極的な心理職もいました。マスクをせずに面接時、くしゃみや咳をしたら患者さんはどう感じるか医療関係者としては考えるべきです。

医療機関における清潔さの概念は通常より慎重な注意が必要です。医師、看護師は時計、指輪を外しています。長い髪の女性は束ねることも大切です。

そして心理職も十分に休息と栄養を摂り、明るく振る舞い患者さんの安心感につなげたいものです。

5.スティグマ(社会的烙印、偏見)への対応

今回の事態で箱根の旅館が「中国人お断り」の看板を出して大顰蹙を買ったという事案がありました。心理職はダイバーシティの概念から、常にマイノリティの味方であるべきです。

マイノリティの人たちのアボドカシー(権利擁護のための運動)に影響することも十分に考えられます。心理的な支援だけでなく、あらゆる意味でクライエントさんを支援することが大切だと思います。

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◯ サイコロジカルファーストエイド
Pshycological First Aid

ツイッターの某心理職のツイート

「サイコロジカルファーストエイド、私の心がクライシス」

http://www.j-hits.org/psychological/pdf/pfa_text.pdf#zoom=100

サイコロジカルファーストエイド
実施の手引き 第2版から

National Child Traumatic Stress Network

日本語版作成:兵庫県こころのケアセンター

本手引きによる定義: サイコロジカル・ファーストエイド(Psychological First Aid;PFA)は、災害やテロの直後に子ども、思春期の人、 大人、家族に対して行うことのできる効果の知られた 1 心理的支援の方法を、必要な部分だけ取り出して使えるように構成したものです。
(以上手引きから引用)

※ 3.11の未曾有の大災害をへてPFA教育、PFAの考え方は対人援助職の人々にも浸透してきましたが、PFAが困難な作業で、心理の専門家が現場に入ることが侵襲的になってしまう可能性もあります。

僕も某所でPFA教育を受けてきたのですが、その介入のタイミング、ターゲット、留意点は相当な困難を伴います。

まずPFAを行うタイミングについてです。

1.時期

報道等で大災害(戦乱かもしれません)。情報が正確に入って来ていないかもしれません。

ここでDPATのような公的機関の出動に合流していないのに自ら現地入りしてはいけません。

(DPATは精神医療ですが、それに先立って身体医療救援チームDMATがまず組織されます。)

災害派遣精神医療チーム
Disaster Psychiatric Assistance Team(DPAT)

は確かに臨床心理技術者を同行して災害現場に向かうことがあるのですが、ごく少人数の派遣ですし、

チームの陣容が
https://www.dpat.jp/images/dpat_documents/2.pdf

災害派遣精神医療チーム(DPAT)活動要領(厚生労働省策定)

にあるとおり、

「1.2 都道府県等 DPAT における各班の構成」


「 以下の職種を含めた数名(車での移動を考慮した機動性の確保できる人数を検討)で構成すること。

・精神科医師※
・看護師 ・業務調整員(ロジスティクス):連絡調整、運転等の後方支援全般を行う者

※先遣隊を構成する医師は精神保健指定医でなければならない。先遣隊以外の班を構成する医師は精神保健指定医であることが望ましい。

被災地のニーズに合わせて、児童精神科医、薬剤師、保健師、精神保健福祉士や臨床心理技術者等を含めて適宜構成すること。」

(引用終わり)

となっており、全ての被災地で臨床心理技術者は求められていません。

発災後、まずは医学的な救命措置、それから安全な救護所、食料資源確保、トイレの整備、紙おむつ、生理用品の準備など膨大な物的資源のニーズに現場は応えなければなりません。

少なくとも心理学的にきちんと倫理規定、要領のしっかりとした団体が支援を呼びかけるまで、心理職がボランティアでも現場入りをすると自らが救援を必要とする対象になりかねません。

3.11ではまず地元の保健師が人心の安定に大きく寄与しました。

地元のことをよく知り、顔を知っている人の心身両面にわたる援助をすることは机上の心理技術より心強いでしょう。

2.対象

被災のような特殊な状況では弱者、被災で弱者に追い込まれた人々が特に重点的な心理的援助の対象になります。

・子ども
・障害を持つ子ども
・発災で親を失い、事態を理解していない子ども
・老人
・障害のある老人
・身体障害者
・精神障害者
・傷害を負った人
・トラウマティックな風景に出くわした人
・家族、家屋を失った人
・マイノリティ
・何をしたらいいのかわからず困っている人
・アルコール、薬物依存者

(継時的概念から)

・ハネムーン期を過ぎて空虚感を味わっている人(この災害をこの国も自分も乗り越えられる、と援助者が多い時期には思っていたのが、援助者も少なくなり、撤退すると「この事態は良くなる」と思っていたのが、精神的に孤立感を感じるようになる)。

・救援活動を行う災害派遣チーム(警察、消防、海保などへの心理的支援も必要です。ただし彼らは自前で救援者のためのメンタルケアチームを同行していることが多いです)

ちなみにDPATの活動履歴はこれまで熊本震災、御嶽山噴火、東北水害など多岐にわたっています。

3.活動内容とその留意点

・被災した人に被災体験の詳細を微に入り細に入り聞きたださない→二次的トラウマを負わせることになる。

・生活上の不便(医療、食料は整っているか、「被災者が今一番困っていることは何か?」のニーズを聞き出す。

・心理至上主義に陥らない。
大切なのは心理支援よりもライフライン整備であることがほとんど。

・全ての人がトラウマティックな体験をしていると決めつけて話をしない。

(被災者の中でも義務感を持って他の被災者の援助をしている人もいれば、トラウマティックな体験をしてもダメージが僅少な人もいます。トラウマを負っているだろうと決め付けるのはスティグマを負わせることになります。)

・ストレス反応を全て「症状」「疾患」「病気」と呼ぶこともスティグマになります。

以下サイコロジカル・ファーストエイドの 8 つの活動内容(前掲 サイコロジカル・ファーストエイド実施の手引き第2版からの引用)

1. 被災者に近づき、活動を始める Contact and Engagement 目的:被災者の求めに応じる。あるいは、被災者に負担をかけない共感的な態度でこちらから手をさしのべる

2. 安全と安心感 Safety and Comfort 目的:当面の安全を確かなものにし、被災者が心身を休められるようにする

3. 安定化 Stabilization 目的:圧倒されている被災者の混乱を鎮め、見通しがもてるようにする

4. 情報を集める―いま必要なこと、困っていること Information Gathering: Current Needs and Concerns 目的:周辺情報を集め、被災者がいま必要としていること、困っていることを把握する。そのうえで、その人に合った、PFAを組み立てる。

5. 現実的な問題の解決を助ける Practical Assistance 目的:いま必要としていること、困っていることに取り組むために、被災者を現実的に支援する

6. 周囲の人々との関わりを促進する Connection with Social Supports 目的:家族・友人など身近にいて支えてくれる人や、地域の援助機関との関わりを促進し、その関係が長続きするよう援助する

7. 対処に役立つ情報 Information on Coping 目的:苦痛をやわらげ、適応的な機能を高めるために、ストレス反応と対処の方法について知ってもらう

8. 紹介と引き継ぎ Linkage with Collaborative Services 目的:被災者がいま必要としている、あるいは将来必要となるサービスを紹介し、引き継ぎを行なう

(引用終わり)

※ PFAチームの中で心理職が何をするか、ですが、ASD、 PTSDの違いなど心理教育も有効と思われます。

深呼吸をする、現実感を取り戻す働きも有効です。

成人も子どもも精神障害のあるなしにかかわらず怒りとイライラの感情を誰かにぶつけたい、それが心理職かもしれないということを理解しておく必要があります。

3.11の時のように子どもは津波ごっこなどトラウマティックプレイをするようにトラウマや悪夢を語り続けることがありますが、それが悪影響を与えることもあります。

PFAはあくまでもファーストエイドです。

今後どのような支援を受けることが可能か、心理的支援に限らずあらゆる支援内容を保証して欲しいと思っています。

適切に引き継ぎを行うことが良いPFA活動です。

ここで真剣にカウンセリングをして子どもを依存させて別れ際に子どもが泣き出すような心理支援はマイナスになります。

支援者もまた自らの心身の安定化を大切にしながらPFA活動を行うことが大切です。

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僕自身の3.11〜心理職として

1.当日

職場で事務仕事をしていたら、ぐらっと揺れて「何事か?!」と思い、事務室の医療勤務員と机の下で揺れをやり過ごしたあとに堅牢なコンクリートの建物を出ました。

あっと思ったらちょっとパニックを起こしやすいS君が走り出して道路に飛び出して行きそうだったので慌てて首根っこを文字通り掴みました。

その後すぐに携帯がつながらなくなり、取り残されたまま、医療機関なのでひたすら待機を命じられて夜12時、臨床検査技師でいつも準備と手際がいいUさんがランタンを出して停電中の灯りを確保してくれました。

非常食はありましたが、レンチンできない固いパックご飯に冷たいレトルトカレーにかけて、みんな食べられずに残していました。

夜中12時にやっと家族と連絡がついて、今日は泊まり込みかなあと思ったら、当直勤務員を残して解散です。

2.以降

震源地からは離れていましたけれども救急派遣の可能性があるということでかなりの間早出出勤、淡々と僕はカウンセリングをやっていました。

テレビで何回も津波の映像をやっていたのを見て気持ち悪いというクライエントさん続出、「見ないでくださいね」とセンシティブな人たちにはなるべく震災関連のニュースには触れないように言っておきました。

3.現地派遣

医療関連職ということで初期対応のためのそのまた初期計画アセスメントということで、医師、看護師と現地入り、福島県南相馬市の惨状を目にしてきました。

心理的な手当てが不可能だった悲惨な、心理とは関係のない話を見聞きしたことが多かったのですが略します。

4.心理職としての働き

IES-R、出来事インパクト尺度やK-10といった心理テストを現地で施行しようという話がありましたが、心理専門家が立ち会っていないと侵襲的な検査なのでその場でケアする必要もあるといって反対、その後の動きはばらばら。

徐々にカウンセリングの中でも現地に係累がいた、放射能が怖い、仕事で被災地に行ったという人たちの面談をしました。

これだけ大きな災害になると、多分被災者の方々は張り詰めていて直後はサイコロジカルファーストエイドのテキストどおりの進行だったのだと思います。

元々レジリエントではなく、心的抵抗力が弱いクライエントさんは通学できなくなったり仕事に一時的に行けなくなった、僕とは別機関に勤務している心理の人からは被災者でない人がショックで入院したという事例を聞きました。

その後は結構ぼかして改変して書きますが、どうしても仕事でライフラインの復旧作業に当たらなければならなかった人たちがいます。

そうすると仮設作業場に寝泊まりです。

現場監督が指揮能力を元々発揮できない優しいタイプの人で突き上げられ、作業場内では狭い宿舎内で閉じ込められ、ぎすぎすした人間関係のトラブルがありました。

復旧資材到着が遅れると仕方なく待機、いつまで経ってもライフラインが確保できない被災者から、作業員がタバコを吸って休憩していたのを罵倒されたという場面もありました。

みんな苛立っていました。

クライエントさんはみなどこか元々辛さを抱えていて、離れていても、また、どこかに被災者や被災地に近さがあったり、現地入りして2次受傷した人たちもいました。

病状が重くなった人も多く、結構忙しく働いていたのを覚えています。

後日(半年後ぐらい)東北の病院で働いていた若い女性心理職の人と話したのですが、発災から2カ月はずっと泊まり込み、最初はずっとお風呂も入れなかった。

夜中も誰かが心的危機からやってくるのかわからないから院内相談室で待ち受けをしていたよーとのことでした。

5.事後

僕自身もお金を出してもらってサイコロジカルファーストエイド研修を受講しました。

また、自費で別の精神医学心理人道支援団体の研修に参加しました。

かなりこの爪痕は大きく人々の心を抉りました。

避難してきた子どもを含む住人への差別も起きました。

少しの刺激にも脆弱になってしまった人たち、クライエントさんと日ごろから接していて、まだ3.11は心理的収束を迎えていないのだなと感じることがあります。

南海トラフ地震を想定して国は動いていますが、学者が地震を正確に予測できたことはありません。

心理職として、というよりも国民の1人として激甚災害国家日本のどこでどんな災害が起こっても対処できるようにして欲しいと思っています。

14時46分黙とう

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