ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: サイコロジカルファーストエイド

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photo&lyric by SORA (@Skylit_Blue)
晴天の陽をうける幾何学模様が好き。


○ サイコロジカルプラクティショナー制度 

1.序 

ナースプラクティショナー制度は、アメリカでは実現されています。患者さんにプライマリーケアを提供、医師がいないへき地では医師のかわりに常駐、診断、治療などを独自で行うことができます。

そのためには通常の看護師よりも高等教育を受けなければならないという制度です。州によってさまざまな取扱いで、簡単な診断、投薬などを行うことができます。

さて、アメリカの臨床心理士は博士号取得必須、基礎心理学中心の出題になっていますが、合格率 50 パーセント、州によっては投薬治療もできる場合があります。

本格的なナースプラクティショナー制度は日本では医師会の猛反対に遭って実現していません。

2. サイコロジカルプラクショナー

さて、標題に書いたサイコロジカルプラクショナーについては、実は第1回公認心理師カリキュラム等検討会(2016年9月20日)でも話題に出ていました。盟友うさネズミさんが、公認心理師に関する情熱が感じられてとても迫力があっ
たということなので、僕も再読してみたわけですが、多職種連携、医学知識、文系理系の問題、子安構成員、石隈構成員(双方とも心理・子安委員は日本心理士会。石隈委員はスクールカウンセラー団体代表)によるプラクティショナー制度に言及しています。

また、その後に開催された 2016年11月4日第1回公認心理師カリキュラム等検討会ワーキングチームでは日本臨床心理士資格認定協会評議員吉川構成員は、公認心理師制度について、きちんと制度が施行されたところで、待遇面はどうなのかということについて資格の重みづけについて述べていました。

各々立場は違うものの、医師の構成員からは出ていなかったサイコロジカウプラクティショナー制度について心理の立場から言及があったことについてはこの 2016年という初期の検討会で話があったことが大切だと思います。北沢座長(内科医師)は公認心理師が多職種連携をする上で、医学一生物学的な知識なしで文系の心理師が医療の世界で多職種連携はできない、現状で心理職に対して医学的知識を持って欲しいと述べていることから、公認心理師試験は医師団体のその意を受けて医学的な知識が相当に重要視される試験となったのでしょう。

脳神経系解剖学、神経心理学、一般医学、医療知識、医療関係法しかり、どれも公認心理師という横断的な「5領域」を標榜するのに必要な知識として扱われています。司法で言えば家庭裁判所調査官の上司は当該家庭裁判所所長である裁判官、矯正で言えば同じ心理職や行政職の施設所長が上司となり、精神医学的な知識が必要となることはあっても、詳細な身体系医学の知識は不要なわけです。

しかしながら横断的資格としては「公認心理師」という資格所持者は一定の医学的知識があり、医療にも対応できるし基礎心理学にも通暁しているという高レベルの知識が要求されているわけです。

医療における公認心理師の立場は医学的知識を持っていても心理職としての立場が臨床心理士よりも劇的に高くなるということはないわけです。

そしてアメリカのようにナースプラクティショナー、大学院レベルの医療知識を持っていたとしても、看護師はたとえ感冒であっても診断、投薬はできません。

公認心理師が専門的医療知識を要するというだけでも従来の心理職とは毛色が変わった資格になっており、そこはきちんとした評価の対象になるべきですし、ここに至るまでは多くの医師団体の意見を取り入れ、試験委員にも多くの医師が入っています。 

医師団体がかなり出題に医療的な色彩を入れたことによって、公認心理師そのものの現状での制度がプラクティショナー的な色彩を持っていると僕は考えます。確かに医行為はできなくとも、集団精神療法や医療機関におけるペアレントトレーニングは医師の関与がなくても実施可能なわけですし、医師が行った場合のカウンセリングと、公認心理師が行った場合のカウンセリングの保険点数にも差異がなくてもいいわけです。

公認心理師上位資格には僕は首尾一貫して反対しています。学会認定資格であろうが、権限はない、ただ専門性が高いぞ、お前ら取っておかないと就職に不利になるぞというような赤貧を洗うがごとくの心理師から資格商法で金を巻き上げようとするよりも「権限を与えます。そしてそれに対する対価も払います。そのためにはきちんと勉強してください。そのための試験(学歴)はこうです。」

と言われれば、それはただの二階建て資格ではなく、新たな資格として認められると思います。特に災害時のサイコロジカルファーストエイドについては、大規模災害の際にはD-PATチームを指揮できる公認心理師の有資格者を養成してもいいと思うのです。

精神科医における精神保健指定医と同じような制度です。さて、果たして医師団体がそれに対して賛同してくれるか、ですが、医学部定員増員に対しても医師会は既得権益擁護のために反対 し、明らかに国民の利益になるはずのナースプラクティショナー制度にも反対しているので、サイコロジカルプラクティショナー制度を打ち上げようとしたら猛反対されることは間違いないでしょう。


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◯ COVID-19への国境なき医師団、D-PAT、D-MAT、セーブザチルドレンの活動

本記事はCOVID-19新型コロナウイルスに関する記載がほとんどです。心理的に抵抗がある方は直ちにこのページを閉じてください。

国境なき医師団MSFのメンタルヘルス部門での活動のめざましさは以前記事にしたことがあるのですが、今回MSFはCOVID-19の世界的大流行については寄付を募るとともに相当の広い地域で医療的支援を行っています。

欧州、中東アジア、北半球、中南米の感染制御を行うとともに難民キャンプでの感染者や予防のための活動も行っています。こういった地域でも医療支援をしています。

サイコロジカルファーストエイドPFAの考え方は、まず被災者の生命身体の危機を乗り切ってから次に地元の専門家の支援を行うというもので、実際東日本大震災3.11の際にはD-PAT、D-MATなどの緊急支援チームが現地入りしてから地元の保健師など医療と精神保健専門家にバトンタッチをしていたわけですが、今回のCOVID-19の場合には特効薬もなくワクチンもない中で活動をしているわけです。MSFはエボラ出血熱のような致死率50パーセントのような感染症の中でも活動をしていました。

そして医療者も生命身体の危機に自らを晒しながら活動しているわけです。ナイジェリア難民キャンプなどの困窮地域では手洗いを推奨しようにもまず水がない、そこからスタートしなくてはならないわけです。

国境なき医師団はその活動内容の中に心理的支援も謳っていることから、今回もウクライナでの心理援助活動を行なっています。オランダではストレスマネジメントを行っていて、心理療法士がその任を負っています。不安に怯え続ける人に対しては心理的支援活動も必要になります。

香港でもメンタルケアは行われていますし、オランダも同様です。また、心理的支援活動が重視されていますが、それはオンラインという試みがなされているのは日本と同様です。

D-PAT、D-MATなどの初動対策チームも何らかの活動が行われていることは確かでしょう。過去心理技術者の活動の機会は3.11では長期的な視点で日本臨床心理士会などが行っていました。が初動チームでは心理職が入ることは少なかったようです。

セーブザチルドレンも寄付を募って今回多くの子どもたちのための活動をしています。

今回、そして昨日の記事でも日本臨床心理士会及び日本公認心理師協会の活動は認められるべきものだと書きましたが、こういった状況では活動をすること自体が正義なのです。

そういえば一昨日無差別的にさまざまな組織に無差別的にメールを送信したのですが、愛知県公認心理師協会からは
 
「ひなたあきら様

ご提案をいただきありがとうございました。
当会はまだ設立して間もない会です。したがって、まだ組織的に動く準備が
十分に整っているとは言えません。
ただ、今回のコロナウイルスの国民のみなさんに与える心的苦痛は
いろいろな現場で発生しております。そのことについてのさまざまな情報や
対処法の文献やデータなどは収集して会員へ発信して行く予定です。
会員各自のおかれた現場で積極的に取り組んでもらえるようにバックアップしていく所存であります。
ひなた様には激励をいただいた感があります。感謝申し上げます。」

という返信がありました。感謝よりはどこでもそうだと思いますが、欲しいのは人手です。この医療崩壊と言われる事態での人手です。という意味ではもうちょい頑張れ愛知公認心理師協会と思います。

さて、心理職はごく特殊な例外の人々を除いてさ医療従事者としての注射はできません。日本で起こっているこの状況下、出勤停止や隔日出勤を余儀なくされている心理職が多いのは百も承知です。それが上長が決めたものであればきちんとした感染症対策であることは言うまでもありません。

そして心理職の方々も自ら、配偶者、ご両親やお子さんの身を守りたいという人間としては当たり前の感情があるのは当たり前のことです。

スクールカウンセラーの方々が子どもと会えない、その中でデータとしてスクールカウンセラーだよりを作っている人たちもいます。

この状態下、人の生命に直接かかわることができない心理職が何をすべきかというと、やはり心理職としての本旨の心理業務だと思います。できる事が制限されているのであればそれも守らなければならない事ですし、多忙な医療職場で前線で働くかそれとも休業するかも上長の判断次第です。

上述の国際支援活動団体の活動に参加できるかというと、家庭や自分の事情、そして求められる高い能力に比しての薄給を考えて、ほとんどの人はできません。

僕もできないのですからそれを他者に対して強要したり責めたりするつもりは毛頭ありません。

結論として、何が言いたいかというと、今できることしかできないわけで、それが休業であればそれも仕事なのだと思います。

前線で活発に動くことが可能な人がどれほどいるのかわかりませんが、それはCOVID-19対策に限らないと思います。全く関係なく自死の危険性が高い人やCOVID-19で不安や怒りを感じているクライエントさんを多く見ている心理職も多いと思います。そういった人たちに真剣に対峙するのも今回のCOVID-19に関する対処対応策です。

公認心理師が国家資格となった事で、この状況下でも心理職の求人は増えていると実感しています。どの現場でも心理職がCOVID-19と無関係な領域はないのですから、積極的に心理職の方々は高いレベルの求人に応募して欲しいなと思っています。

今回がっくりとしている次回受験者の方々にすぐに気持ちを切り替えて、という意図は毛頭ありません。受験者も心がある人間ですから。全国民の気持ちはこの感染症と連動しています。さまざまな対策の試みるもだんだん報じられるようになりました。その実効性はわからないのですが、それでも希望に向かっていきたいと思っています。

「二択にならない世界にすればいい」

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◯ COVID-19について公認心理師・臨床心理士が知っておくべきこと・私見(2020.4.6)

本記事はCOVID-19新型コロナウイルスについて書かれたものです。この情報によって精神的ダメージを受けそうだと思った方はそのままページを閉じることをお勧めします。

※ タイトルにかかわらず、「全ての対人援助者に対して」とした方が良かったかもしれませんね。

1.承前

憶測、数字による推測や恐怖が先走るとパニックの元にしかなりませんので今日現在については語りません。COVID-19については厚生労働省専門家会議の分析結果は今日現在の数値とは違うと思う方もいるでしょうけれども、今日や昨日の数字を元に予測や分析を行うのは専門家の仕事です。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00093.html

2.情報洪水とその取捨選択

さて、手元にAERA2020.3.30日号があります。3月10日から16日までにつぶやかれたCOVID-19関連、日本のツイート数2000万、アメリカでは4900万、イタリアは120万です。日本ではどこよりもSNSがいち早く生の、そして現場の情報を掴み取って流しているような気がします。ただし、その中には信頼性が薄い誤情報もあり、恐怖を煽るだけの情報もあります。

多摩のクリニック院長が変異株ができると再感染者はかなり死亡率が高まるだろうという、根拠がないものもそうです。

僕が以前から参照にしているのはトラウマティックストレス研究センターCSTS(Center for the Study of Traumatic Stress)の資料は日本語版だけでもしっかりした翻訳で、かなり参考になるので再掲しておきます。

https://istss.org/public-resources/covid-19-resources

不確かな情報が多すぎる世界では人々は容易にパニックを起こすようにもうすでになっています。

3.社会的差別(スティグマ)

⑴ 患者及びその家族への差別

患者さんが重症で入院した、濃厚接
触があっても期間が徒過すれば平気なはずなのですがそれでも差別されます。そして軽症患者さんを家庭内で隔離さておくには接触を少なくすることが推奨されていますが、明確なガイドラインはありません。隔離場所が不足することは間違いないと思われる患者さんやその家族はは治っても「元患者」はウイルスをまだ持っていると思われかねません。遺族もまた同様の扱いを受けかねません。

⑵ 医療従事者への差別

COVID-19を扱っている病院の医療従事者が商店や学校の保護者から差別される、来ないでくれと言われたという話もあります。リスクは通常人に比べれば確かに高いかもしれませんが、今心身共に疲れ果てた医療従事者へのさらなる攻撃は医療崩壊を招くだけです。医療従事者を差別対象としたあなたは感染したらどうするのか?あなたを決して差別しない、その人たちが働いている病院に行ってください。

⑶ マイノリティへの差別

外国人差別があることは以前書きましたが、国家が経済的援助をしないと明言した風営法管轄店、女性は幼子を抱えて途方に暮れている社会的弱者が多いです。心理職は彼女たちが今まで被虐待の経験者が相当に多いことを知っています。生活保護受給者に対する差別的発言も多くなっています。

⑷ 教員への差別

これは差別というよりも怒りかもしれません。保護者は子どもを登校させたくない、でも登校しない児童生徒は評価点が悪くなるから登校せざるを得ない。厚生労働省の専門家会議は閉校も検討すべきという見解を述べています。文部科学省と足並みが揃っていません。もし子どもを出席させたがために子どもが感染したならばまず怒りは現場の教員に向かうのです。

4.マスコミは常に煽情的であるということ。

多くの文献やガイドラインが、こういった事態に際して情報に晒され過ぎないように警告しています。僕の場合であれば、客観的な全体数と厚生労働省専門家会議しか信じていません。

5.見えない恐怖が不安を増幅させる

これが自然災害ならば崩れた山を見て近づかないようにしようとすることもできるわけですが、どこに危機が潜んでいるのかわからないわけです。支援者は心理的初期介入、サイコロジカルファーストエイドがD-PAT(D-PAT: 災害派遣精神医療チームがDisaster Psychiatric Assistance Team)入ってたとしても支援の内容が可視化されにくく、助かったという実感も湧きにくいわけです。そうすると回復過程のハネムーン期、この世は支援を受けて協力してよくなるだろうというプロセスすら経験できないわけです。つまり不安は先に進まないで不安なままです。

6.公衆衛生的拘束

外出禁止が長引けば長引くほど「コロナ飽き」が起きてクラスター間の推奨されない移動は多くなります。組織によっては厳しく移動を禁じていますが、そのために自分がいた場所を隠し、どこにいたのかわからない、感染経路不明者が増えて感染の起源がわからなくなります。要するに対策が取らなくなります。自粛は必須ですが厳罰をもって臨むと公衆衛生的には悪影響をもたらします。もうこのCOVID-19「騒動」に飽きて自由きままに動きたいという欲求不満が爆発寸前なのはわかっています。しかしウイルスは人々の心理状態など構ったことではありません。ウイルスは「飽きる」ことなどないのです。引き続き外出抑制は続きます。それができなければ、あるいはできたとしてもいつロックダウンして都市閉鎖が起こってもおかしくない状況です。

7.遺族へのグリーフケア(悲嘆へのケア)の困難さ

感染症の持っている宿命は遺族にとって残酷です。死に立ち合うこともできなければ、大抵はご遺体を見ることもできずにそのまま火葬されていきます。通常の緩和ケアの常識はできないわけです。

8.基礎疾患保有者、ハイリスク者への手当て

基礎疾患保有者はその軽重はあれ、不安から心身も弱ってしまう可能性があります。そして精神疾患患者さんは大きな不安がひとつ追加されたわけです。この人たちへのケアは心理職が必須としてやらなければならないでしょう。

9.医療従事者のメンタルケア

前述、自然災害ならば最大の支援者として扱われてきた医療従事者は差別される対象となっています。よく休んで睡眠と食事をとって、というストレスケアの常識はクラスター内で患者さんが増えている地域ではすでに医療崩壊という現場の声もあります。国境なき医師団ではオランダへと心理療法士を医療従事者へのメンタルケアに差し向けています。果たして医療従事者にはケアを受ける時間が保証されるのでしょうか?それよりも家族の顔が見たい、眠りたいという基本的な欲求は満たされるのでしょうか。

10.対策

⑴ SNS活用

誤情報は多いもののTwitterは今や政府や行政がその存在を無視できないほどの発言力があります。情報統制は絶対にあってはならないです。ただし、諸外国に比べると国家のSNS活用は日本は立ち遅れていると言われています。最新の信頼できるSNS活用をして欲しいものです。

⑵ 経済的損失への対応

COVID-19は長引くほど日本経済への打撃を強めます。それは3.11を凌駕するかもしれません。官民ともに大幅な給与や人員削減が容易に想像されます。初期ら早めの手当てがなされること、その可視化がされることが不安を低減して結局は早期経済救済にもなると思います。これまでのように「請求したら出してやってもいいけど、知らない人には教えてやらない」という行政の態度は大転換を迫られているのです。

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Message body

【コロナウイルスやその他の新興感染症の発生時における患者の心の健康ケア:臨床医向けガイド】

※ 以下新型コロナウイルスCOVID-19に関する多くの情報が多く含まれている記事になります。こういった内容の記載によって精神的にショックを受けそうだと感じた方は読まずにこのページを閉じることをお勧めします。辛い思いや不安を抑え込むことは勇気ではなく、自らを傷つけることにつながります。

先日記事にさせていただいた白川美也子先生が院長を務める「こころとからだ・光の花クリニック」アカウントは国際トラウマティック・ストレス学会に掲載されている【コロナウイルスやその他の新興感染症の発生時における患者の心の健康ケア:臨床医向けガイド】をTwitterで紹介しています。

読ませていただいたところ、心理職にもかなり役立つ内容なので紹介がてら記事にしたいと思います。
以下要約しながら私論を交えて記述します。きちんと読みたい方は上記ツイートリンク先を参照してください。臨床医が行わなければならないのは、米国であれば米国疾病管理予防センター Centers for Disease Control and Prevention (CDC)の情報を確かなものとして信頼すること、正確な情報を入手、患者教育として医療教育、心理教育を行い、誤情報を正すことです。

また、メディアの見聞きについて制限をすることです。

(僕が感じるメディアのあり方は常に煽情的という事です。例えば日本地図を映し出して今まで感染者がいなかった県を1人感染者が出たらその県を赤色で塗り潰す、今まで1人でも感染者が出ていた地域も赤く強調し、人にショックを与える演出をしています。売り切れの空の棚、ひと気がなくなった街を放映することにも悪意すら感じてしまいます。)

ストレス反応から何が起こるか予測、こういった普通時ではないアウトブレイクが起きた時にこういった心配を人と話すのが気分を向上させるという事の大切さも記載されています。医行為として医師が正確な医療情報を伝えた方がいいこともあれば、心理職が行えることもあるのではないかと感じました。

このガイドの監修を行っているのは災害精神医学の専門家で災害救援者メンタルマニュアル発刊に際しても監修を行った重松淳防衛医科大学校教授、翻訳は筑波大学で災害地域精神医学を教えている高橋晶准教授です。

ちなみに原文はCenter for the Study
of Traumatic Stress(CSTS)のものです。PFA、サイコロジカルファーストエイドにかかわった心理職の方なら肌身に感じて知っていると思いますが、あまりにも長時間ストレスを抱えながら患者さんたちの凄まじい体験や不安の物語に暴露されていると<b>自らも精神的に二次受傷することが多々あります。

心理職は医療領域だけでなく、教育、福祉などあらゆる場面で不安をクライエントさんと共有することになります。福祉施設で大量に感染者が発生したニュースがありましたが、対人援助職のみなさんはどのように援助をしながら自らも危険の中に置かれながらどのようにしたらいいのでしょうか?

【コロナウイルスやその他の感染症アウトブレイク中における医療従事者の健康維持】
国際トラウマティックストレス学会のホームページ、日本語版もあるのでご参照ください。

きっとこのCTCSの文献が役立つでしょう。心理職は直接の被災者だけでなく、支援者のPTSDや急性ストレス障害ASD Acute Stress disorderに接することもあります。近年はこうした保安関係者に対するメンタルケアが徐々に整備されてきているとはいえ、十分過ぎるということはありません。

僕ら心理職は治療の最前線現場に出ることはおそらくないわけですが、タイベックスという宇宙服のような防護服を着て治療に当たらなければならない、トイレにも行けない、タイベックスの着用法に少しでもミスがあればウイルスが侵入してくる、そして救援活動を行った後は医療者も隔離される可能性があります。

現在治療に当たっている医療者もそうですが、使命感がある一方で過労に倒れそうになりながらどれほどの恐怖や不安と戦いながら孤立感を味わっているのだろうかと思います。

医療者も人間です。医療者もリラックスして休みを取り、同僚と支え合ってコミュニケーションを取り、可能な限り家族と連絡を取ることが望まれます。これが医療崩壊につながれば医療者もどんどん追い詰められます。だから外出制限が厳しく行われつつあるのです。手洗い励行で医療を守り人命を守るということを一般の方々の義務的な責任となっているということを理解して欲しいと思います。

【コロナウイルスやその他の新たな公衆衛生上の脅威直面時のリーダー用リスクコミュニケーションガイド】は情報の正しい選択の仕方についての知識をコミュニティにおけるリーダーが行うことにとって役立つでしょう。リスクコミュニケーションは通常とは異なる、さまざまなチャンネルを人々に提供していくものだからです。

そして僕がかなりインパクトを受け、心理職の方々に知っておいて欲しいと思ったのは【コロナウイルスやその他の新興感染症発生に対する準備と対応のためのメンタルヘルス・行動マニュアル】です。

1918年のスペイン風邪から始まってSARS、エボラ、ジカウイルスによる教訓を大切にすること。そしてこのパンデミックそのものがPTSD、不安やうつを引き起こす原因となることが示唆されています。

以下私論です。マニュアルの指摘していることは今の日本の現状を示しています。このパンデミックはマニュアルに記載しているとおり、スケープゴートを求めます。日本では厚生労働省や保健所といった行政、そして医療に不満がぶつけられています。最も働いている人々は最も忙しく、そして時間がなくヒューマンリソースは限界に達しています。そして残念ながら本当なのはあまりに人手が足りなくて対応がおざなりになりがちで、COVID-19以外の重症罹患患者たちが危機に晒されているということです。

そして不正確な情報は人々を混乱に陥れます。味覚、嗅覚を感じ辛くなるとコロナの疑いがあるという報道は救急医療機関をパンクさせました。人工呼吸器を量産しろという要求は24時間体制で人工呼吸器や体外肺、エクモ管理をする医療者を膨大な数必要とすることを要求している人々は知りません。

さて、マニュアルに戻ると震災などの被災ではコミュニティの中の被災者同士のコミュニケーション、支援者と被支援者との連携は密になります。しかし感染症はどんどんそれらの関係を疎遠にします。タイベックスを着た異星人の姿をした医療者を見て患者は絶望感を感じるかもしれません。

何もかも隔離するということはメンタルヘルスに悪影響があるとマニュアルは指摘しています。通学や最小限の買い物、礼拝を禁ずると人々は無力感を抱きます。そして指摘のとおり少数者に対する差別、スティグマ、社会的烙印は始まっています。中国人差別は日本に長らく居住している2世、3世には関係がないことです。

悲嘆のプロセスの阻害要因についても指摘がありますが、患者の死に立ち会えない、葬儀には儀式よりも感染症対策が優先されるということは遺族の悲嘆を強めます。

以上です。ここまで調べる機会を与えていただいた、白川美也子先生に感謝いたします。国際トラウマ・ストレス学会ISTSS: International Society for Traumatic Stress StudiesのホームページはCOVID-19のためのあらゆるリソースを提供しています。

アメリカ心理学会American Psychological Association:APA

アメリカ精神医学会 American Psychiatric Association :APA

European Society of Traumatic Stress Studies :ESTSSもCOVID-19がトップの記事になっています。

世界的なメンタルヘルス救援の必要性、こころとからだ・光の花クリニックで行っているような遠隔治療法のようなオンライン支援の必要性は各所で指摘されています。  

マスコミと医療との共同戦線は最も難しいという指摘もあります。そしてマスコミは政府や行政を動かし、現場はとてもその要求に応えることは不可能で、PCR検査を大量に行えば医療はストップします。せめて国民の方が正確な情報を選択できればと思います。

photo by excellent artist,sora

soraさんの写真のようにみなさんの心に平穏が訪れるよう、祈っています。

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◯ パンデミック宣言WHO・COVID-19新型コロナ最新情報2020.3.13・パニック回避の心理学

1.序

僕は一介の心理職ですが日々新型コロナウィルスCOVID-19条情報を更新することにしています。というのも正に人心とその行動に関連している最大限の関心事はCOVID-19だからです。

これについては多くの人々をパニックにわざと陥れるのではないかという誇張した情報発信をする人たちがいます。アメリカの感染症研究家がアメリカ国内で9600万人が感染、48万人が死亡というシナリオが予想されるというコメントをしていてそれを翻訳してすかさずネットのニュースに流します。

多摩にあるクリニック院長が新型コロナウイルスは変異する、そして一度感染して治った人が変異ウイルスに再感染した場合には死亡率が高くなるという発言をYouTubeで流していました。
これだけの短期間でウイルスに変異株ができるわけがなく、また、ウイルス感染は通常一度感染した人は変異株にかかりにくくなるという常識からも外れています。

実際2009年に流行した新型インフルエンザでもその当時40代ぐらいで子どものころにインフルエンザに罹患したことがある人は、新型インフルエンザのいとこ株ぐらいの感染力だったので感染しにくかったのです。

2.パンデミック宣言

最新の情報では2020.3.11WHO事務局長はパンデミックと宣言しました。(日本経済新聞)

ただし、朝日新聞digitalでは「パンデミックの脅威、現実に」 WHO事務局長が会見という記事を3月10日付けで出していますが、まだパンデミックではないと事務局長が述べていて、さらに「歴史上、管理することができる最初のパンデミックになる」、状況に応じてその感染力を抑制することができるという内容のコメントをしていますし、その基本方針は変わっていません。

要するにパンデミックであろうとなかろうと対策は一緒ということです。この記事では、中韓で感染者数が減り、回復者が増えている、インフルエンザよりも感染力は弱い、など「タイトルと内容が違うんじゃないの?」と思っていました。情勢は日々刻々変わります。何も暗澹たる気持ちに自らなる必要はないのです。

パニック商法は確かに炎上商法と同じで多くの人々の目に触れ、広告収入は上がるかもしれませんが目に触れた広告とパンデミック情報が交錯して、いずれスリーパー効果(印象が薄くてもあとからだんだん思い出す)となった場合には悪印象と結びつくだけではないの?と思ってしまいます。

3.日本の優れた水際作戦

こういう時にあてになるのはやり行政の情報です。厚生労働省が2020.3.9に発表した新型コロナウイルス感染症対策専門家会議「新型コロナウイルス感染症対策の見解」は、危機的な情報も載せていれば、冷静に情勢分析をしていて、予断を許すわけではないが、感染症対策はしっかりやらなければならないという、大変客観的な記述がなされています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00093.html

国際的に見れば日本は確かに政府の初動は遅れたかもしれませんがウイルス封じ込めや治療は高い評価」を受けています。この「見解」によれば、感染者小集団のクラスターを伝播させない、早期診断と重症者治療医療体制の確立、市民行動の変容の3本柱を戦略としています。

感染者は増加している、これは感染症である以上どこの国でも同じ現象は起こっています。しかし二次感染による新感染者数を計算した実効再生産数(感染力を示す数値)は1平均値です。実効再生産数は感染症学では少し難しい概念なのですが、他の感染症に比べると格段に低い数値で、今後治療や封じ込めが進んで数値1未満になればかなりの確率でこの流行を抑えることができるでしょう。

日本の死亡者数は少ないという指摘もされています。北海道では対人接触を低くする試みをしています。

専門家会議では「今回、国内での流行をいったん抑制できたとしても、しばらくは、いつ再流行してもおかしくない状況が続くと見込まれます。また、世界的な流行が進展していることから、国外から感染が持ち込まれる事例も、今後、繰り返されるものと予想されます。

と危険情報もきちんと書いてあるのですが、日本は一定の水準で現在爆発的な感染は広がっておらず、持ちこたえている状態と評価しています。これは外国からの日本の対策の評価が高いことと一致しています。

北海道隔離施策は3月19日にその結果を公表予定です。実は科学的根拠はないそうですが、密閉空間、多くの人の密集、人と近距離で接しないという方針が出されています。

厚生労働省によればこれまで退院した人の数は427人(クルーズ船含む)です。

それでも人は不安ですので、より悪い情報に飛びつきます。その悪循環スパイラルは買い付け、そしてパニックに陥ってしまいます。

4.心理的支援情報

ここでひとついい情報もあります。確かに遅まきではありますが、日本心理臨床学会ではかなり詳細な新型コロナCOVID-19に対する情報提供やリンク集を掲載しています。
https://www.ajcp.info/heart311/
教員、子ども、保護者向け情報、サイコロジカルファーストエイド、

※ 本記事の内容をそのまま子どもに伝えるのは差し控える方がいいのではないかと思います。

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