ひなたあきらの公認心理師でポン!

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。 ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: 司法

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◯ 警察庁は本格公認心理師シフト-臨床心理士は採用せず

警察庁のホームページには公認心理師制度が大きく紹介されています。

https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/whitepaper/w-2019/html/gaiyou/part2/s2_3t01.html

混同されやすいのですが、警察庁は各都道府県に置かれる警察本部を管轄し、警視庁は東京都内の警察署を管轄しています。

ざっと見てみましたが、警察庁管轄下警察本部全体で心理職警察官を採用するに当たっては全て公認心理師を要件としている場合が多いようです。

広島県警青少年育成官、兵庫県警も公認心理師のみが心理相談員の採用対象になっています。

北海道心理専門官(主任)もそうでした。(リンク切れ。以下リンク切れは貼りません。)

福井県警では公認心理師資格取得は昇任試験の加点対象です。

http://www.pref.fukui.jp/kenkei/kemubu/keimuk/khpg/ichiran/knrei/keimu/kn1214.pdf

警察庁も厚生労働省と同様の中央官庁なので、その地方部局に当たる各都道府県警察本部も右へならえということでしょうか。

思えばこれは当然予想されていたことで、静岡市は令和元年度の心理職試験で600点中50点を公認心理師または臨床心理士資格取得者に加点していたのです。

相模原市も臨床心理士に加えて公認心理師の資格を加えています。

http://www.city.sagamihara.kanagawa.jp/shisei/shokuin_annai/shiyakusho/1018084.html

沼津市も公認心理師を社会福祉士資格、精神保健福祉士資格、臨床心理士資格と併せて募集したのです。


大阪府は教育委員会で公認心理師を募集しています。

http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/4212/00317298/2020jukenannnai.pdf

僕も全国の募集を全部調べて掲載することはできないのですが、全国的に市役所や教育委員会では公認心理師加算を臨床心理士等と同様にしていくことが考えられます。

そしてそれがだんだんと公認心理師だけに置き換わって来る事も考えられるのです。

実際、警察庁は公認心理師以外の採用を考えていないようです。

この傾向は今後も続くでしょう。

元々臨床心理士は文部科学大臣から認証を受けている資格なので、スクールカウンセラーの任用資格として生き残っているのはわかりますが、採用基準のトップには公認心理師が掲載されているのです。

しかし他省庁や自治体が心理資格職として専門職を求めた際には公認心理師を必須としていく可能性が高くなります。

以前僕が書いた記事でも
http://hinata.website/archives/17773858.html内閣府作成のギャンブル依存症対策には臨床心理士ではなく公認心理師の積極的活用がうたわれています。

臨床心理士という用語は一言も書かれていません。

このブログを書いているといろいろな思いや考えに至るのですが、

1.臨床心理士→公認心理師への素早いシフト

臨床心理士資格は思ったよりもかなり早いスピードで淘汰され、公認心理師に置き換わりつつあります。

2.臨床心理士の国家資格化失敗

元より臨床心理士をスライドさせて国家資格化することは無理な要求だったと思います。

ただし、どんなに大きな団体であっても日本臨床心理士会の働きかけはこの資格化を推進するには弱過ぎたのです。

心理学諸学会連合、医師団体等この資格が成立するためには実に数百以上の団体がかかわって来ました。

臨床心理士だけがその権利や権限を主張しても詮無いことだったと思います。

どの民間資格も国家資格化される際には必ず通過試験がありました。

また心理関係団体が、臨床心理士関係だけの専横と思われる制度構築は無理な事でした。

3. 今後

臨床心理士制度は生き残るとは思います。

ただしだんだんとその数は減っていくでしょう。

臨床心理士養成大学院も減りつつありますし、学生が双方の資格取得に耐えられるほど単位が取れるとは思えないのです。

一部臨床心理士の理事監事が提唱していた、臨床心理士を公認心理師の上位専門資格として残そうとした構想はついえてしまったと考えています。

あくまでも僕の予想ですが、公認心理師専門上位資格がもしできるとすれば公認心理師団体で協議をして紛糾していてもそれは何十年経っても無理な事でしょう。

公認心理師関連の民間団体にはそれほどの力量はなさそうです。

公認心理師上位専門資格は医師団体から下りて来る形で決められてしまう可能性は高いと思うのです。

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◯ 法務省・家裁から公認心理師をめざす・インターンシップの活用

法務省矯正局、家庭裁判所では常に優秀な学生を採用したいと考えています。

一昔前なら公務員は心理職に限らず「受けに来たいなら本番の試験を受けて」とか「自由に(アポは自分で入れて)省庁訪問してね」というところでした。

知り合いの心理士から「いい時代になったねえ、私もこんな制度があったら積極的に見学に行きたかったあ」と言われました。

インターンシップ説明会注意書きに記してあるようにインターンシップに参加したからといって採用が有利になるというわけではありません。

ただし、民間企業でも同じですが志望動機は面接で必ず重点項目として聞かれます。

ですのでこのインターンシップで得た知識で

(長いので途中改行します。)

「家裁では多種多様の事件を扱っていて、少年の科学的調査、健全育成にこれまで学んだ心理学が生かせそうです。

私は発達障害と子どもの性格との関係で卒論を書きました。

少年の性格特性を考えた上で処遇に関する意見を出す、また家事事件ではその子どもの特徴を明確にとらえる事が子の福祉に寄与すると考えました。

そのために裁判官、調査官、書記官事務官も一体化して目的のために熱意ある姿勢で働いていらっしゃるという事をインターンシップで学びました。

そして、少年審判廷がなごやかな雰囲気、調査面接室がプライバシーが守られる構造で、家事でも申立人、相手方控室が分けられていて人権に配慮、面接交渉等についてもビデオで当事者の方にわかりやすく説明、家庭裁判所と国民との距離が近く、親しまれる存在ということがよくわかりました。」

(一例・もっといい言い方はいくらでもあるでしょう。)

公認心理師養成学部卒から公認心理師を目指すには限られた医療機関の少ない定員に選抜されて養成を受けることが選択肢に含まれています。

そして最高裁家庭局(家裁調査官)か法務省矯正局(法務技官(心理))が公認心理師法第7条第2号に規定されている施設なので、学部卒でも公認心理師を目指すことができます。

家庭裁判所インターンシップ制度

http://www.courts.go.jp/saiyo/internship/index.html

法務省矯正局インターンシップ制度

http://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei03_00033.html

双方とも試験は今年度は終了しています。

家裁調査官、法務省総合職人間科学区分受験者の方、来年受験する心理学専攻者は学部卒でも公認心理師受験要件を得られます。

現任者Gルートで司法領域の公認心理師になった方も多いでしょう。

法務省矯正局法務技官(心理)は採用1年目に基礎科研修を行っています。

裁判所総合研修所でも家裁調査官補に座学、研修、実習等幅広い研修を行っています。

精神科・心理の世界ではかなり有名な大御所の先生を読んで講義をしたり、実習も充実していて大学院レベルの教育があり、公認心理師法に規定された2年間の実習が受けられます。

公認心理師になってからこれら司法職を目指す、それも十分選択肢の中に入れてもいいと思います。

ただし「自分は公認心理師という素晴らしい資格を持っているから実力がある」というような自己アピールをするときっと合格できません。

「公認心理師になりたいから受験しました」もきっとまずいでしょう。

ただ、法務省矯正局や最高裁家庭局は優秀な人材を求めていることは確かです。

そのために公認心理師法7条第2号に規定する施設として認定を受けているのかな?と思うので、チャレンジする価値は十分にあると思います。

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◯ 俳優新井浩文女性暴行5年実刑判決・性犯罪厳罰化は再犯率を助長のジレンマ/公認心理師更生プログラム関与へ期待

出張マッサージの女性に暴行を働いたとして俳優新井浩文被告に一審で懲役5年の実刑判決が出ました。

こういった「卑劣で悪質」(裁判官)な性犯罪について、報道される度にその量刑の厳罰化が叫ばれています。

PTSDの教科書で読んだのですが、性被害に遭った女性が、犯人特定ができていない性犯罪の犯人を探し出して逮捕させるというNPOに所属して活動する事にやりがいを感じ、症状を軽快化させる事が出来ていたという事例が紹介されていました。

社会的に認められた代理的報復が彼女を癒していると言えるでしょう。

重大犯罪に対して世間からの刑罰強化の要求は当然の事で、被害者感情、社会的防衛、社会的感情からは当然の事です。

ところが性犯罪には量刑を厳罰化しても全く効果がないという研究結果が多く出ています。

英文: Does being tough on crime actually deter crime?「犯罪厳罰化は抑止力になるのか?」

https://arstechnica.com/science/2019/05/does-being-tough-on-crime-actually-deter-crime/

この英文記事によると犯罪者が社会的に犯罪をしなくなる抑止力が見受けられるのは「刑務所に入っている期間だけ」という事です。

犯罪への心理学的更生プログラムとしては北海道追試でも出題された、Andrewsが提唱したRNRモデルは、

RISK(再犯リスク)原則、リスクに応じた処遇密度を行う。(低再犯リスク者に高密度処遇をすると再犯率が高まる。精緻なアセスメント必要。)

NEED原則、処遇は仕事状態、交友関係、反社会的パターン、態度等の犯罪誘発要因にターゲットを絞る。(精神疾患に焦点を当てても意味がないとされています。)

RESPONSIVITY原則=応答性原則は教育学における適正処遇交互作用同様に受刑者の個性に応じた処遇が必要ということです。

RNR原則は以上です。

また法務省矯正局もRNRモデルを取り入れた処遇をしています。

http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/62/nfm/n62_2_6_3_1_1.html

犯罪=病的行為としてとらえていた医療モデルは古いと言われていますが、重い疾患=重犯罪は重い処遇で、という世論を現在も立法府は無視できません。

RNRモデルによればは重犯罪は高濃度処遇となるのですが、それでも死刑、去勢という厳罰が重大性犯罪者に処遇として適用されることはありません。

本来ならRNRモデルを敷衍していけば相当な厳罰も可能でしょうけれども、憲法36条は「公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる」と規定しています。

一方、認知行動療法を主軸としたRNRの効果については疑念も出ています。

そこでGLMモデルGOOD LIFE MODELという、更生に向かう犯罪者が人生に喜びを見出せるようになれば再犯率は低下するという研究が各国で行われています。

(確かに幸せな生活をしていて充実していればそちらの生活を大切にするでしょう)

今回新井被告は即日控訴をしました。

新井被告が有罪か無罪なのか現時点では断定できません。

三審制で被告人が控訴、上告をするのは国民固有の権利だからで、それまでは推定無罪だからです。

傷ついた被害者への心理的ケアを行う必要性がある事には間違いがありません。

そして心理職も人間なので被害者臨床を担当したり、報道があれば性犯罪者=「許せない悪」と思うのも自然でしょう。

性犯罪者の社会適応と再犯防止には十分な配慮ときめ細やかな対応を受刑者に対して行っていくという、司法矯正公認心理師にとっては難しい課題が常に存在しています。

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◯ 家裁における公認心理師への悲痛な期待

結論:最高裁家庭局からの公認心理師制度への期待は増すと思われます。

少々古い資料になりますが長野家庭裁判所で、平成29年6月13日午後3時から午後5時まで開催された第33回長野家庭裁判所委員会議事概要議事録が公表されています。

この家庭裁判所委員会は毎回テーマを決め、裁判官を含む裁判所職員と外部から弁護士を呼んで行われ、議事録もこのようにインターネットに公表される正式なものです。

http://www.courts.go.jp/nagano/vcms_lf/20170613.pdf

テーマは「家裁調査官について」でした。

下級裁判所(という言い方をします)長野家裁が家庭裁判所職員採用制度について話題にしたところで、上級裁判所部局(最高裁判所家庭局)の耳に入りはするものの、だからといって制度がすぐ変わるわけではありません。

議題は家裁調査官の数が足りない、それはどうしてか、どのようにアピールしていけば家裁調査官数が増やせるかといった事が中心です。

出席委員のうち家裁調査官が主となって議論をしています。

昔は家裁調査官は女性より男性の割合が多く、7割程度が男性だったのが今は逆転しています。

旧国家I種、上級職は全国移動が当たり前、女性よりも異動能力が高そうな男性を以前は「下駄を履かせて」採用していた言われていましたが、男女雇用機会均等法が施行されて厳格に運用されている現在、このような差別採用は決して許されるものではありません。

また、少子社会が全国異動職種志望を阻む影響についても話題となっていて、手元に子どもを置いておきたい親の立場からは自治体に就職させたがっているのではないかとも言われていました。

現在裁判所総合職家庭裁判所調査官補倍率は毎年10倍前後、裁判所総合職事務官は合格率3.6パーセントと大きな開きがあります。

調査官試験のこの倍率はだいたいバブル期の公務員倍率と同等で「公務員よりも民間の方がお給料もらえるから」「ハイパーメディアクリエイターみたいなカタカナ職業カッコいい」という時代とあまり変わらない競争率です。

あまりにも倍率が低いままだと総合職という位置づけが難しくなり、家庭裁判所調査官制度の崩壊に繋がりかねないので確かに申込者数の減少は家裁にとっては死活問題です。

受験母数となる学生が少ないことに加え、心理学系院卒者は臨床心理士や公認心理師という、司法臨床よりも別の心理専門性を追求していくのではないかという話も出ていました。

家庭裁判所でも法務省でもインターンシップ制度や説明会を開いて受験生の興味関心をひきつける工夫をしています。

この議事録でも触れられていますが、家裁調査官の仕事の醍醐味は子の福祉にかかわる心理的専門的調整、成年後見人先任における被後見人の権利擁護、家事紛争におけるお互いの心理調整などやる事は山ほどあります。

少年事件では調査官が少年保護、中間処分における試験観察等少年の健全育成のために出来る事は多くあり、調査官が少年事件処理の中心と言っても過言ではありません。

公認心理師法第7条2項では心理学大学院卒後に調査官経験2年以上で公認心理師試験を受験することも可能となっています。

家裁は優秀な心理系学生を求めています。

確かに臨床心理士、公認心理師を持っているからといって採用に有利になるわけではないですし、採用後に特別扱いするというわけでもありません。

公式発表ではそうなっているのですが、家裁は公認心理師制度施行で受験者増も期待していますし、公認心理師取得レベルのある優秀な司法心理職が家裁内で働いてくれる事も願っているのではないかと思っています。

参考:きっと受験に役立たない?拙記事

「家裁調査官公認心理師さらみちゃん」
http://hinata.website/archives/17730351.html

「公認心理師家裁調査官さらみちゃん再び」
http://hinata.website/archives/18254099.html

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◯ 京アニ事件から考える公認心理師の役割・加害者臨床

京アニ事件で加害者が医療スタッフに対し「こんなに優しくしてもらったことはない」と感謝の気持ちを述べたそうです。

この事件の動機などの解明は捜査機関や専門家に任せるとして、僕が感じたのは、医療者や臨床家というものはどんな加害者に対しても決して差別せず、全力で対処して行くということです。

どう考えても社会的には許されない犯罪をした人々がいる、犯罪行為はそれ自体が行動嗜癖となっていることが多いです。

そうすると世間からは同情の余地がないサイコパスと思われてなお自尊心を低下させた人が累犯者となることもあります。

心理臨床家にとって、犯罪のトラウマを負った被害者を1人救うのに何十年もかかり、それでも死を遂げてしまう被害者は多いです。

犯罪経済学という学問分野があります。

犯罪者を逮捕、勾留して裁判にかけて刑罰を与える、更生プログラムに参加させる。

あるいは判決に不服があれば二審、三審まで進む。

例えば1人の重大犯罪者に対して裁判を行い、死刑執行が行われるまでには1億円かかるという試算があります。

こういった、犯罪が社会に与えるマイナスのコストを行刑面だけで考えるのではなく、被害者が治療を受け、救われて欲しいわけです。

そう考えると、例えば何百件という犯罪を繰り返すことで知られている小児性愛犯罪者1人を更生させることができたなら、どれだけの被害者が救われたかと思います。

加害者臨床は困難で、相手に共感をしていくことが時として難しい分野です。

「負い目」「引け目」「劣等感」「自尊心の欠如」「他者への共感力の乏しさ」「自己中心性」等々様々なネガティブワードで犯罪者は更生可能性を捜査機関、裁判官、行刑機関に否定されていくことが多々あります。

加害者臨床に携わった心理職ならば、どんな加害者でもその更生したいという気持ちの真実と、そして見えてくる光明に心を打たれたことがあるのではないでしょうか。

犯罪者は一度ラベリングをされてしまうと立ち直るのが困難になっていく一方です。

彼らは犯罪を24時間起こしているわけではありません。

加害者臨床にかかわる心理職には、その動機の陰に隠れているその人の傷ついたプライドの理解、本当はあったはずの自己承認欲求や自己肯定感を強めて更生の道を見つけ出して欲しいと思うのです。

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