ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: PTSD

◯ PTSD.AC.BPD.繊維筋痛症、慢性疲労症候群と公認心理師の可能性

さて、ICD-10がICD-11(世界保健機構が定めている疾病及び関連保健問題の国際統計分類)にバージョンアップされました。

2019年に日本でも適用されるのではないかということで、ICD-11では正式にCPTSD(複雑性心的外傷後ストレス障害)が認定されることになるでしょう。

ICDは日本の保険制度の親玉のような疾病分類で、病名にそぐわない治療法や投薬をすると保険機構から支払いがされません。

だから双極性障害の人に精神病薬を出すのに、統合失調症診断名も同時につけたり、医療機関の現場は苦労しているわけです。

さて、PTSDやCPTSDに現場でかかわる心理職の人たちは相当な努力をしているだろうと思います。

難治性というだけでなく、カウンセリングからドロップアウトもしやすいですし、精神療法家にネガティブな怒りをぶつけてくることもありえます。

それは精神療法家への怒りではなく、加害者への怒りをカウンセリングルームの中で投影同一視しているからです。

さて、PTSD、CPTSDは医療機関だけに関係しているわけではなく、施設内の社会的養護を受けている児童にも起こっていることは、児童精神医学者の杉山登志郎先生がよく指摘しているとおりです。

2016年に日本でも訳書が出たベッセル・ヴァン・デア・コークの「身体はトラウマを記録する」は大変興味深く、評判がいい著作です。

専門家だけでなく、患者さんにもよく読まれています。

心理職が患者さんに「先生、読みました?知ってますか?」と聞かれるかもしれませんので必読の書だと思います。

PTSD、CPTSDの人は解離、回避、フラッシュバック、過覚醒以外にも、激しい全身疼痛を訴えることがあります。

難病指定を受けている繊維筋痛症FMには古くからトラウマや虐待との関連が指摘されています。

繊維筋痛症は慢性疲労症候群CFSと併発していることが多く、日本でも認知行動療法が行われていますが、著効がなかなか出ない疾患です。

「PTSDにはどんな治療法も効きやすい、薬物療法も認知行動療法も精神分析も効く」と言われていますがどうなのでしょうか?

クライエントさんに「病者の役割」を与え、治療に専念させる、クライエントさんが現在かかわっている対人関係に焦点を当て、クライエントさんの言うことをきちんと語らせる対人関係療法IPTはシンプルPTSDには効果があるかもしれません。

しかし幼少期から繰り返し虐待を受けていて、現在対人関係そのものが欠如しているCPTSDのクライエントさんをIPT技法16回で完治させることは困難でしょう。

「身体はトラウマを記憶する」ではCPTSDに対するさまざまな心理療法の可能性を検証しています。

認知行動療法はPTSDに効果があるということから、持続エクスポージャー法PEが使われることがありますが、週1回のセッションでトラウマ体験を語ってもらう、その時の録音テープを少なくとも毎日1時間聞いてもらうというのは凄まじい暴露、エクスポージャーです。

僕はクライエントさんに「持続エクスポージャー法もありますけどやってみますか?」と言うとたいてい断られます。

PTSDもそうですが、アダルトチルドレン、境界性人格障害の人たちも幼少期からの深いトラウマを心に負っていることが多く、便宜上診断名としてうつ病、発達障害、双極性障害、統合失調症、恐怖症などあらゆる診断名がついていることもあります。

多彩な症状を示すので前の病院から次の病院に移ると別の診断名がつくことも多いです。

PTSDに薬物療法が効くか、というとPTSD治療ガイドラインではSSRIを第1選択薬としてあげていますが、僕の知っているクライエントさんはSSRIが全く効かない、抗精神病薬を出してもらっても実感がないという人もいます。

PTSDの病態が重い人に多いようです。

それでは精神療法はどうかというと、さきほどの認知行動療法のPEは何しろ脱落例が多く、1日100分テープを聞かないと効果がない、CPTSDには認知行動療法は効かないという研究が出ています。

「身体はトラウマを記憶する」だとじゃあ何がPTSDには効くかというと、EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing:眼球運動による脱感作と再処理法)が効果的と指摘しています。

そしてまたEMDRから派生した自我状態療法も効果的です。

EMDRも術者によって上手下手はあるでしょう。

指を動かしながら認知の編み込み(EMDRは認知行動療法も精神分析も取り入れています)をすればいいんだというわけではありません。

侵襲性(外科手術だと病変部を切ることによって生体に害を与える可能性があること)はどんな心理療法にもあるので、きちんとクライエントさんに確認しながらセッションを進めないとなりません。

セッション中、心的に安全な場所を確保しながら、クライエントさんがトラウマ記憶でフラッシュバックしそうなところをうまくコントロールすれば相当な効き目があります。

EMDR3回でPTSDがかなり軽快する人は70パーセントだとEMDR創始者のフランシーン・シャピロは数字を上げています。

公認心理師になりました、でもPTSDや虐待、トラウマが背景にある可能性が高い繊維筋痛症、慢性疲労症候群、境界性パーソナリティ障害はわかりませんということでは世間や患者さんからの大きな期待にはこたえられないでしょう。

公認心理師という箱ができたのですから、トラウマへのかかわりが可能な技法はきちんと習得して欲しいと思います。

グラント博士はBSPブレインスポッティングという、侵襲性が低いイメージ療法をEMDRにヒントを受けて生み出しました。

「身体はトラウマを記憶する」はヨガ、太極拳、ダンス、瞑想など身体性の追求に活路を見出そうとしています。

催眠、BSP以外のイメージ療法も効果的でしょう。

これらNBMの心理療法はソマティック・エクスペリエンスとしての新しい治療法の可能性が秘められています。


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前回の続きでPTSDについての書いたのですけれども、今回はPTSD CPTSD概念の本来の源流及び精神分析、そしてそれから自由連想法的に公認心理師制度の雑感について触れます。

1.精神分析

精神分析学創始者のジグムント・フロイトはブロイアーのヒステリー研究を礎として共同研究を行い、精神分析学を構築しました。

ブロイアー医師の患者だったアンナ・Oことベルタパッペンハイム当時21歳は、ブロイアーと結婚した、子どもを生んだとまことしやかに流布されているが、後世の研究者はそれを否定しています。

19世紀ウィーンは厳格な道徳的戒律によって統制されていた都市で、遊郭は認められていませんでした。

だからこそ親子、伯父や叔父姪での近親相姦が頻繁に、男の欲求によって行われていたと言われていますが、そうだとしたら犠牲者となった若い女性たちはPTSD CPTSD 症状を起こしていたのは間違いないでしょう。

当時のウィーンの若い女性がヒステリーと呼ばれる突然の解離発作を起こして次々に倒れたのは了解できます。

PTSD CPTSD が原因と思われる解離症状は昔から存在していました。

日本文化では狐憑きと呼ばれる宗教性憑依妄想症候群、文化依存症候群の中で片付けられてしまったのではないでしょうか。

中南米エクソシスト、中国の悪魔祓いも同様でしょう。

文化の名の下にPTSD CPTSD 、及び統合失調症的な短期精神病に対する熾烈な差別的虐待が起こりはしまいかという危惧をDSM-Ⅲケースブックを読みながらしていました。

文明文化の進展はスピリチュアルの放逐という科学万能神話の流布を引き起こしました。

そしてこれらの疾患の存在を患者の責に帰することによって性的加害者の隠匿につながっていった可能性すらあるということを指摘するにとどめておきます。

さて、フロイトは著作の中で40代にして既に自分は年齢的に性的な行為に関心を持たなくなったと記述していました。

また、男根期を迎えてペニスに対する羨望を持つようになった女性がやがてその影響でフェラチオを行うことになっただろうと推測し、それについて、まことにけしからんと評していました。

フロイトこそが小児性欲、女性の性欲のみでなく、人類の性欲全てを抑圧していたのではないかと訝しみます。

精神分析が人間の精神そのものに切り込んで仮説を立てて行ったその功績は大きなものです。

しかしその裏で男性視線からのみの精神構造理論が構築されたとも思えます。

こういった傾向は後世になって女性精神分析家、ヘレーネ・ドイッチェらが修正を試みていたし、さらに後世、ウィニコットの児童に対する精神分析は現在でも遊戯療法の礎となっています。

フロイトは禁欲原則という、現在で言えば公認心理師倫理における多重関係の禁止という、クライエントとの性的な個人的な関係を禁止していました。

精神療法の創始とともにそうした弊害に気づいていたのは慧眼です。

しかしフロイト自身は娘アンナ・フロイトの教育分析を行っていました。

また、気ままに精神分析家とクライエントの結婚を勧めていたのは創始者ならではの自らを神格化してしまった特権なのでしょうか。

繰り返しますが、精神分析そのものが悪いわけではなく、黎明期の混乱はあり、その後幾度となく修正が加えられた結果としての現在があるのでしょう。

2.公認心理師の倫理

日本で臨床心理士制度成立以前の心理カウンセラー倫理は緩やかだったが、クライエントのためには必要な個人的つながりがありました。

クライエントから夜中に自宅に電話がかかって来てそれに対応した心理カウンセラーは多々いたでしょう。

公認心理師は今後多重関係禁止と、危機介入としての自殺予防とどちらを優先すべきか迷う場面が出てくるでしょう。

心理カウンセラーがクライエントの秘密保持義務に固執したことで殺人事件が発生したタラソフ判決は有名ですが、安全配慮義務と倫理、守秘義務の拮抗は心理を扱う職種の宿命と言えるでしょう。

境界性人格障害に特化して始まった弁証法的行動療法DBTは今や他疾患への適用も次々と行われています。

DBT創始者リネハン自身、リストカット痕だらけ、70代現在も度々自殺衝動にとらわれているといいます。

だからこそクライエントの自殺防止に対処するために夜中でも電話を受け付けている心理療法のでしょう。

ある精神医学者が話していたのが、希死念慮が強いクライエントを持った治療者はクライエントに電話番号を教えるべきか教えないべきかという命題だった。

患者は死にましたという報告の電話を夜中に受けるのがいいか、これから死にますという電話を受けるのがいいか?

教科書的には連携によって他職種とも情報共有を行って自殺を食い止めるというのが模範的回答でしょう。

bio social psyco、生物学的、社会的、心理的複合的視点は確かに大切だが、今後それらの連携でどのように自殺防止を実施していくかは大きな課題でしょう。

公認心理師法を厳密に守ろうとして法にない事項まで遵守を強要するような相互監視態勢はまずいと思います。

多くの心理カウンセラーはさまざまな技法を用い、医師のいない1人職場でカウンセリングを行っています。

全ての技法、心理検査について医師の指示を仰がなければならないという行き過ぎた強迫観念は公認心理師の職責として期待されていないと思いたいものです。


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フラッシュバックもPTSDの主症状で、何もしていない日中に外傷記憶が想起され侵入してきます。

悪夢でうなされることもしばしばで、休むこともできません。

解離が激しく起こるこの疾患では、人格が分裂する多重人格になることも多く、20ぐらいの人格が交代して出現し、人格分裂によってトラウマ記憶を分散させて自殺を免れているようです。

ただし、攻撃的人格や自殺に向かう人格が出現することもあるし、元々の主人格から第2人格への交替が何年も続くことがあります。

EMDRや催眠を併用されます。

仁木医師が入院病棟を作ってこの治療に当たっています。


多重人格の治療目的は全ての人格の統合ではありません。

もしトラウマ記憶を統一してしまったらその患者は死んでしまうかもしれないのです。

余分な人格は統合、それぞれの人格が助け合って生きていくことが治療目標になります。

子どものPTSD研究の権威である杉山登志郎先生は、4セットの簡易EMDRでも徐反応という、発作様のトラウマ想起、暴れるといった症状が再燃するといった研究を発表しています。

僕もPTSDのカウンセリングに当たっていると、泣きながら頭を床や壁に打ち付けながら転げ回るような激しい徐反応に接することがあります。

ただし、徐反応は全て出し切ることが大切で、中途半端にストップすると自殺念慮が出現しかねません。

徐反応が終わったあとの患者さんはけろっとしていて、あれ?と言うが、カタルシス効果のせいか晴れ晴れとしています。

PTSDの人は感情コントロールが難しくなっていて怒りの発作が出やすいが、徐反応を通じて解消することができます。

PTSDの中でもCPTSDと言われている複雑性慢性型PTSDはかなり治療困難で、年単位、それこそ10年以上の治療を覚悟しないとならないことがあります。

CPTSDは幼少期から長年の虐待や犯罪被害で起こります。

虐待によるCPTSDの生育史は悲惨なもので、性的虐待、暴力による制裁、経済的肉体的搾取が何十年も続いた症例もあります。

アメリカのように専門機関が確立していたらもっと日本も救われるのになと思います。

対人関係療法(IPT)はシンプルPTSDには効くかもしれません。

病人は休まなければならないという病者の役割をPTSD患者に付与して、恐怖が汎化してしまい、対人過敏状態になって何もかもに怒りをぶつけることを周囲が理解して対応します。

理屈は簡単ですが、CPTSDにはIPT全16回のセッションは少な過ぎると思います。

EMDRと併用されている自我状態療法はかなりの有効性を認められています。

自己と自己の対話です。

また、身体イメージに注目するソマティック ・エクスペリエンスはPTSDという病が身体へのフラッシュバックも引き起こし、激しい痛みを伴うこともあるので、やはり有効でしょう。

禅やヨガ、瞑想といった療法も価値を認めることができます。

こう書いているとPTSDの治療法は百花繚乱のように思われるかもしれませんが、PTSD症状の多彩さに比してあまりに打つ手が少ないのが現状で、患者数に比べて専門治療機関はあまりにも少ないです。

PTSDはあらゆる他の疾患や障害との誤診の可能性が高いのです。

もちろんPTSDの元となる刺激体験でレジリエンス(打たれ強さ)が弱体化しているので、他の疾病や障害を併発していることも多いでしょう。

あまりにも信じがたい虐待経験を妄想と片付けて、家庭に戻そうとする藪医者や藪臨床心理士に引っかかったら自殺の危険性さえあります。

過覚醒は双極性障害の躁状態で不眠になっているのかと誤診されます。

損なわれたコミュニケーション能力は発達障害と誤解されます。

致死的な思考と激しい情動の揺れ動きは境界性人格障害という誤診もあります。

PTSD患者の抱えている感情は悲壮で、その辛さを思うだに同情を禁じ得ないのが通常の医療者です。

共感ができない治療者は失格だと思います。

PTSD治療で注意しておかなければならないのはその外傷の二次受傷があり得るということです。

トラウマ記憶の話を読む、聞くことが治療者を傷つけ、一説ではPTSD治療専門家は5年間が平均バーンアウト(燃え尽き)期間と言われています。

東日本大震災のとき、テレビが津波の映像を繰り返し流していて、気持ち悪くなった人も多いでしょう。

あれも二次受傷です。

根掘り葉掘りトラウマ記憶を話したくもないのに聞き出そうとするのは危険です。

ただ、患者さんが話したくなったとき、そばに寄り添ってくれる人がいるということはどれほど心強いかとも思うのです。

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きっと今から書く戯言は公認心理師試験の試験範囲に入っているから、多分このあたりの知識も出るんだろうなあと思って書き連ねてみます。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)治療研究はEBM(証拠に基づいたメソッド)とNBM(ナラティブ、物語による自然流派の治療法)とに拮抗していて、最近ではどうもどんどん進んでいたNBMに対し、EBMがその論証をするという形でどうもNBMの巻き返しが激しくなっている感じがします。

京都大学でも箱庭療法をしてfMRIで脳内を観察、PTSDに箱庭療法というNBMが有効という研究の成果を証明しつつあります。

最近ではグラント博士がブレインスポッティング (BSP)という何の統計にも基づいていない技法を開発しました。

くるっと患者さんの目の前で棒を回してマイナスイメージ、プラスイメージを語らせながら、プラスイメージに対する認知の編み込みを行ってPTSD治療を実施して成果を上げています。

元々グラント博士はEMDR(眼球運動による脱感作)というPTSD治療技法の第一人者だったから思うところがあったのでしょう。

PTSD治療は認知行動療法家がEBMとして、持続エクスポージャー法(PEという暴露法)が有効だと主張しています。

カウンセリングセッションの中でトラウマ記憶を語らせる、その1時間程度の録音を毎日家で聞いて刺激に暴露法して汎化させるという技法なのだけれども、想像するだけで相当苦しい技法だと思います。

僕もPEをやり通したことはありますが、かなり患者さんはきつかった様子でしたし、認知行動療法では脱落例をきちんと統計化した上でPEの有効性を検証したのだろうかという疑問も持ちました。

僕も心理カウンセラーの端くれとしてPTSD治療技法はいくつか習得していますが、全技法は普通の人間では無理でしょう。

EBMの最前線としては、内閣府imPACTが行っているPTSDに関する革新的研究開発推進プログラム脳科学研究があって、トラウマティックな刺激を与えた後に緩和刺激を与えてストレスを低減させるというDecNef技法が千葉俊周研究員らで試みられています。

日米共同研究で、日本の大学も20ぐらい入っているらしいので相当気合いが入った研究になっていると思います。

ただし、プレスリリースによると健常者への17例の施行で効果があったという発表がされているが、実際のPTSD患者さんにはどれほどの治療効果があるのだろうかと今後の展開を期待したいものです。

https://www.nict.go.jp/press/2016/11/22-1.html

https://r.nikkei.com/article/DGXMZO27766540W8A300C1000000

また、防衛医科大学校では人工的にPTSD刺激を与えたラットについて、BDNF(脳由来神経栄養因子)が症状を和らげることや、EE(環境富化処置)が影響しているという研究が科研費で行われています。

元々PTSDの疾患単位としての確立がベトナム戦争後の1980年、米軍帰還兵団体からの強い働きかけでDSM-Ⅲ(精神障害の診断と統計マニュアル)に取り入れられるようになったので、各国軍がその対策に力を入れているのは当然だと思います。

特にベトナム戦争では徴兵されて無理やり戦場に駆り出された18、19の青年が帰国すると時は反戦ヒッピーの全盛期、国賊扱いされてなお傷つきました。

防衛医大によるとシャトル箱に入れたPTSDラットは母子分離、刺激前の環境悪化で症状が悪くなります。

ランニングホイール、からからと回るラットがくるくる回れる遊具や玩具で好転する、ただしあまりにEEが高い環境からPTSDになると回復が遅れるという中途結果が出ています。

防衛医大も軍事精神医学研究を行っているので、十分な兵站というBDNFを与え、あまり高過ぎるEEでなく、日ごろからある程度の訓練負荷をかけた方がPTSDにはいいという結果を出しています。

さて、戦争とPTSD研究の関係は深く、EMDR技法創始者のフランシーン・シャピロの教科書に掲載されていた症例は悲惨極まりないものでした。

ベトナム戦争に従軍し、同胞が隣で爆死して手足ばらばらになったのを見た兵士の中で何かが壊れて村の少年を含む民間人を銃を乱射して殺害、レイプを行ったというもので、帰国してから弁護士になったこの男性は20年来のPTSDに苦しむことになりました。

日本でPTSD概念が一般化したのは阪神大震災からで、このような重篤な精神疾患があるということが流布されました。

PTSDにかかると解離といって、その当時の記憶を忘れる、覚醒亢進状態が起きて、不眠になるということが示されています。

PTSD患者は、いつなんどきまた命を奪われるような恐怖に晒されるかわからないので、交感神経が刺激された状態に常になっています。

したがっていつも心身ともに戦闘態勢にあるわけです。

解離も激しく、ひどくなると記憶が3年間ぐらい飛んでしまうこともあります。

昔はカウンセリングで解離記憶を呼び覚ますような治療をして患者が悪化、自殺例もあったが、今では解離記憶を思い起こさせ、パンドラの箱を開けるのは禁忌とされています。

回避は、その当時の記憶に似た状況を避けること。(続く)

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