ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: カウンセリング

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○ カウンセリングでは問題は解決しない?

カウンセリングに来る人たちは話を聞いて欲しい人、話をする中で自分で「気づき」を得たい人がいます。

他方、現実の問題をカウンセラー室に持って来る人もいます。

「気づき」を得たい人というのはカタルシスとして色々とカウンセラーに話したい、また、精神分析やメンタライゼーションの中で自分の生育史とそれらを癒す方法を知りたい、認知行動療法や弁証法的行動療法で自分の思考法の「クセ」を知りたい、EMDRでトラウマケアを受けたいetc…実にさまざまな動機を持って来ます。

クライエントさんの中の「心理的事実」について否定しないというのがカウンセリングのセオリーなのですが「ストーカーをなんとかして欲しい」「パワハラ上司をなんとかして欲しい」「転勤したいから『診断書』!を書いて欲しい、などの動機で来る人もいます。

カウンセリングルームの中で起こることはクライエントさんの「心理的な洞察」であって事実は変えられません。

「ああ、苦しみが話しているうちにホッとしました」とドアを開けたその先にまたストーカーがいる、ということではカウンセリングの問題、というよりは現実の問題です。

心理カウンセラーは現実の問題を扱わない、精神科医療も何が現実で何が現実でないか(明らかな妄想でない限り)扱わないということになっていますが、ともすると「さあ、どうしたらいいんでしょうねえ」とばかり繰り返していたら冷たいカウンセラーとして見られることもあるでしょう。

難しいのはこれからですが、カウンセラーが人手が足りない職場だとケースワーク的な役割をすることもあります。

前述ストーカーの場合だと「警察には行きましたか」パワハラの場合だと「職場にパワハラホットラインのような相談機関はありませんか?」

などですが、「もうそこには相談してみたけどどうにもならなかった」というと息が詰まるような感じを受けます。

目の前のクライエントさんはどうも本当らしいことを言っている、それではどうしたらいいのか?心理カウンセラーの仕事ではないものの、踏み込んで「警察の監察に言ってください」「労働基準監督署に行ってみたらどうでしょうか?」というのは踏み込み過ぎた介入の気がします。

心理職は現実とクライエントさんの悩みのはざまの中で苦しみますが、クライエントさんはもっと苦しんでいるでしょう。「精神障害者でもできる仕事はありますか?」と言われてフッ軽な心理カウンセラーや精神科医師がどこかに電話をするというのはどうも違うだろうと思います。

地域連携室があるような病院だとサクッとワーカーさんにつなぐのが正解だと思います。困るのは僕が勤務していた小規模のクリニックや診療所で、困っているクライエントさんを見ると、こちらも知識を持っているので色々と紹介したり電話してあげたくなるのですが、何もかもしてしまうとクライエントさんの自立性を奪ってしまいます。

お金があれば解決するだろう事柄もありますがお金を出すわけにはいきません。

また、クライエントさんが著しく混乱していて機能が低下していたら解決の糸口を差し伸べたくなるものです。

「カウンセリングは役に立つのか?カウンセリングは解決に導いてくれるのか?」本当に蜘蛛の糸をたぐってくるように来た人をリファーする、見捨てられたと思われないようにしてそれをスムーズに「つなぐ」ことは難しいことです。

「法律のことは弁護士へ」は確かなのですが、法律家のところに相談に行く前にクライエントさんの気持ちを整理する手助けをすることはできるものでしょう。

だからこそ、ではないのですけれども日本では故宮田敬一先生はソリューション・フォーカスド・アプローチSFA(解決志向アプローチ)の中で稀代の催眠療法家、ミルトン・エリクソンを紹介しておられた。

SFAを突き詰めていくと催眠が確かに早道のような気がします。もちろんクライエントさんが言いたいことを受容、傾聴を十分にした上で「催眠」というと抵抗を示されないだろうか?と思いつつ提案してみると意外のほかすんなりとトランスに入っていくのを僕は常に見ています。

心理職ができるのは「終わったこと」「終わっているけれどもどうにも気持ちの整理ができないこと」「現在進行形で気持ちが収まらないこと」などなどいろいろあります。

気をつけなければならないのは心理職が「心理至上主義」に陥ることで、上記に述べたような身に危険がクライエントさんに迫っている場合、また身体症状が出ているにもかかわらずそれをカウンセリングで「解決」してしまおうとすることです。

近年整形外科でも心理職の採用が進んできているのは喜ばしいことだと思っています。医師がきちんと見立てた上で心理職がカウンセリングを行う、これで慢性腰痛などが軽快したという事例も聞いたことがあります。

耳鼻科では感音難聴や失声も扱いますし眼科も心因性視覚障害に取り組んでいます。

「解決」の糸口はどこにあるのかわからない、しかし「解決」ばかり追い求めていると大きな陥穽に落ちかねない、難しい仕事を求められているものだなあと思うのです。
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スーパーヴィジョン

1.はじめに
このところスーパーヴィジョンにかかわる議論がTwitterで盛んに行われるようになって、僕も思うところあり、この拙文を書き起こしてみました。

2.結論

スーパーヴィジョン、SVは受けておくに越したことはないし、受けるべきだと思います。

やはりケースの見立てというのは初学者や心理1人職場だと自分自身で不安なものですし、不安、というよりもSVを受けておくことで独りよがりのケースマネジメントを先達の目で見てもらえる、という大きなメリットがあります。

SVがいなかったらこのケースはこれほどまでにうまく行っただろうか、SVを受けたおかげでクライエントさんを文字どおりその命を助けることができたのではないかという経験を受けた人たちも多いのではないかと思います。

3.推論過程

(1) 受けなくていい、受けられない理由

やはり「お金」の問題は大きいと思います。無料でSVを受けられる人もいればそれを羨む人もいる。受けない、受けられない理由はいくらでも挙げられるでしょう。

ア.天才と言われる先達はどこでSVを受けてきたのか。受けていない人もいるのではないか。
イ.SVというよりハラスメントのようでサディスティックで厳しすぎると聞いた(場合も本当にあります)。
ウ.心理が多い職場の中で常にケースマネジメントについて学ぶ機会がある。
エ.SVを受けている人を見ているが、それほどぱっとしない。
などなど「受けない理由」探しをしたらそれこそキリがありません。

(2) 受けた方がいい理由

これは受けないよりも受けた方がいいに決まっています。どんなにお金が苦しくても自分の生活を犠牲にしてでも高いお金を払う。それだけケースに対して真摯に取り組んでいるということは素晴らしいことです。実際、個人的な人格は?というような人でも(人のことは言えない)夢中にSVを受けてケース対応能力が高い人もいます。

SVというのはヴァイジー、SVを受ける側を抱きかかえてホールディングして大切に扱うコンティナーのような機能もありますが、思い出してみると僕も経験した、ピリピリとした「対決」「対峙」のような場面は多々ありました。そしてそれでもそれだけのお金を苦心して工面して貪欲に学ぼうという姿勢は尊いものです。

SVを受けて独りよがりの見方だったことを気づかされるとケースに向かう際に何よりの糧になることは多いのだろうと自分の体験を振り返っても思います。

さて、僕は精神分析のプロパーではないですし、それほどの勉強をしているとはとても恥言えませんが、世の精神分析家と言われる人たちは教育分析、SVこそが全てと言ってもいいほど分析やSVを受けています。

知人の精神分析家は1回1万5千円の教育分析を週1で受けていました。別の人は渡米して精神分析を学びました。その人の話を聞くと約1,500万円ほどかかったということです。僕の知っている分析家は知見豊かで透徹した物の見方ができる素晴らしい人たちです。

ただし、そうすると精神分析を学ぶ、行うというのは特権階級に許されたことだけのように思えますが、実際そうかもしれません。かなり価格を抑えてSVをしているところもあるにはあるのですが。

4.お金の問題

高額なお金を払ってでもSVを受けることはケースに対する最高の礼儀だと思います。ただし、人には人の理由があるので「SVを受けない奴はダメな奴だ」というのはまた違うのではないかと思います。

遊びほうけていて高額なものを買いあさり、それなのにSVを受けない、というのは必死にSVを受ける人から見たら到底許しがたいものに思えるかもしれません。

考えてみましょう。心理職というのは高額な学費を出して大学院まで出た、心理職が見ているクライエントさんよりもたいていの場合、はるかに経済的に恵まれている人が多いでしょう。経済的に恵まれていない心理職の人たちは地頭がよく、成績のいい人に与えられる奨学金で進学をしている人かもしれません。何をおいても心理職というのは人より恵まれていて「特権階級」とみなされかねない、それでもワープアが多い仕事なのです。

5.おわりに

SVは大切です。大抵の場合、受けないよりは受けておいた方がいいに越したことはありません。ただし、SVを受けない人に対して「受けなければならない」と言うことについては賛否両論があると思います。

僕も初学者のころを離れて久しく、それほど自分が熱心にSVを受けてきたわけでもないのにSVを頼まれることもあります。これも賛否が多いと思うのですが無料で引き受けてしまっています。「甘い」というそしりを受けても仕方ないでしょう。

SVを受けるか否か、これは心理職、というよりもその人の人生にかかわる問題と言えるでしょう。仕事、お金、どれを取っても根源的です。この駄文をつらつらと書き連ねたところで結論は出なかったのですが心理職にとって大きな問題であることは間違いありません。

※ この記事に対するS女史のコメント

臨士会の調査では半数近くがSV受けていないとか。ではその男女比は?女性が3/4程の職種であるが、受けない層もその比なのか?

Twitterではお金の問題もさることながら、育児や介護との兼ね合いの問題への言及もあったような。

これもまたステレオタイプな偏見かもしれませんが、家のことを妻に押し付けてSVを受けに行く夫。家計を顧みずに「俺の稼いだ金に文句言うな」という夫。

これだけ女性の多い職種で、指導層は男性が多いというねじれ構造がある以上…

「受けなければならない」に賛否両論があるとして、それに賛を唱えるのはやはり男性が多いように思うので…

育児は女性が担いがち。仕事の間は保育所を利用できるとして、じゃあSVを受ける間は誰が子どもを見るの?とかはお金ではなくライフスタイルの問題かも?

本邦のSVを考える際に、それが仕事の一部として包含される制度になっていないというのが大きいんじゃないかなと。

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経営心理士、顧客心理士、産業カウンセラー

心理関係の民間資格は山ほどあれど、
経営心理士協会

が認定する「経営心理士」「顧客心理士」「コミュニケーション心理士」「組織心理士」は異色です。

ホームページを見てみると、ドラッカーも引用されていて、大企業や官庁での講演実績もあって、実績のある団体ということが銘打ってあります。

民間心理資格は「臨床心理○○カウンセラー心理士」といったとても紛らわしい心理資格が多く、経営心理士は全く違った異色の心理資格であることを謳っているのがむしろ好感が持てました。

例えば経営心理士は「人の心・感情の性質に基づいて、人を育て、営業・マーケティングの成果を高め、組織を成長・拡大させる力を身に付ける、あるいはそういった指導ができる力を身に付けることを目的とした資格。」とホームページ上に記載されています。

顧客心理士は顧客の心理をつかむ力を育て、コミュニケーション心理士はその名のとおりコミュニケーション能力を高めること、組織心理士は組織分析と、それぞれに若干違った目的を持って資格が作られています。

受講料がそれぞれに数十万円かかるので「資格」というよりも勉強会なのかもしれません。

これらの資格を取ったことで従業員が増えたとか、顧客が増えたなど体験談や断言形で銘打っていて、そこはまあ民間資格なので目をつぶることにして、他の心理系の資格とは違っているところは個別のカウンセリングを一切しないというところで、そこが最大の違いです。

むしろ個別カウンセリングをしない、ということで他の怪しげな「この資格さえ取れば心理カウンセラーとして就職も選び放題、独立して仕事もできるよ!」といった資格に比べて潔さを感じます。

さて、産業カウンセラーは従業員支援プログラム(EAP)に似たようなところがあり、働く従業員がその中でも困ったことを個別に解決するという資格です。

したがって産業カウンセラー試験の中にはカウンセリング実習もあるわけです。

産業カウンセラーはそれを取っただけでは仕事はなかなかないということが以前から言われていましたが、僕の知人は産業カウンセラー&開業や、産業カウンセラー&保健師、医療従事者で、立派に仕事をこなしています。

2人ともなんとか公認心理師を取得したのですが「特にメリットは…」と言っていました。ストレスチェック実施者になれたことはよかったとのことでした。産業カウンセラーはキャリアコンサルタントと両方持って産業場面で活躍している人も多いようです。

実は僕も産業カウンセラーは持っていて、なんだか更新性になったということで資格を取ったのが昔なので失効してしまったかと思って連絡してみたら「一回取った資格は一生大丈夫ですよー」と言われたので安心しました。

産業カウンセラーは割と求人が出ていて、非常勤でハローワークや市区町村役場の就労支援の仕事もあります。調べてみたらそれらの求人が200件近くありました。

きっと産業カウンセラー協会に入っていれば非公開求人も出ているものと思います。実際電話して相談員をEAPプログラムで産業カウンセラーを雇用している事業所もあり、まあ常勤でバシッとこの資格だけを武器にして就職するのは難しそうですが。

ただ、産業カウンセラーの1段階上のシニア産業カウンセラーが臨床心理士と同等の資格として扱われていて採用条件となっていた求人は見たことがあります。

僕が民間会社でカウンセラーとして働いていた時は人事部の人がリワーク支援やメンタルヘルス理解のために産業カウンセラーを取得していたようで、自分がやっている仕事に幅を持たせるために、上述経営心理士や産業カウンセラー等を取得する、といった選択肢は十分にありそうです。

実務には生かさない資格とは、という意味でGルート論争を聞いているといつも頭が痛くなりそうです。経営心理士や産業カウンセラー資格の使い方として、就職だけを目的としない、こうした資格がきちんと自己研鑽のためだけという、羊頭狗肉にならないように詐欺的な商法をしていないのは好感が持てます。

「○○心理士」「○○カウンセラー」というと確かに資格商法のようで2、3日ちょっとだけ講習会に出たら取れる資格もあるわけですがそれを売り物にして独立開業して仕事をするのはなかなか難しいことではないでしょうか…(実情は誰かが言った「野良カウンセラー」が多く、そうでもないのですが)

専門職としての臨床心理士、公認心理師はだんだんと必要としている職場ではきちんと認知され、採用はその資格がないとされないようになってきています。

公認心理師という国家資格は実務経験者Gルートの人たちにとっては今回の試験を逃すと大学学部からやり直さないと資格を取得できません。

公認心理師試験は今回かなりの受験者数が見込まれます。そこで難易度がどうなっていくのかもはっきりとはわからないのですが、自分の領域で自己研鑽を深めるためならば他の資格もあるよ、と広い視点で物事を見てみてもいいのかなあと思い本記事を書き起こしました。

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しんどいカウンセリングをしていないか?

1.はじめに

昨日の続きです。心理職にとってはカウンセリングという日常繰り返される営み、それがクライエントさんにとってしんどいと思われたら、また、苦しいと思われたらそれはいったいクライエントさんのためになっているのでしょうか。僕自身の体験を振り返って、また、聞いた話などを混じえて考えてみたいと思います。

2.本論

⑴ カウンセリングでしんどい思いをさせていないか?

これはある程度やむを得ないこともあるのかもしれませんが知っておくべきことでしょう。僕が知っている、主に思春期の子たちは精神科・心療内科に行く時に泣きながら行って泣きながら帰っていました。

ただでさえ敏感な感性を持つ思春期の子たちにとっては「精神科・心療内科」というのはそれだけで敷居が高く、治療を必要としていてもそのスティグマ(烙印)を押されたよう、行かなければならない自分の影に怯えていることがあります。

精神科では何を聞かれるのか、薬は精神に影響します。薬を医師からの懲罰のように感じている子たちさえいましたが、「カウンセリングを受けた方がいいね」と優しい医師が言ってもカウンセラーは精神科の添え物のようで、カウンセラーのように傷つけない、相手が受容してくれる相手でも恐怖の対象になるかもしれません。

大人でもそういう人は当然いるでしょう。カウンセラーは「心理至上主義」に陥りやすいのですがこういった人々にとっては病院で待たされて長時間滞在して薬をもらうのにまた待たされてカウンセリングまで付録につけられるという侵襲性が伴っている、ということを考える必要があるのかもしれません。

⑵ 自らに直面化するのカウンセリングという行為はつらい作業である

これも昨日書いたことと共通するのですが、自分自身の傾向や性格と向き合うというのは大変に辛いことです。

心理職の人ならばスーパーバイザーについた経験はあるでしょう。あまりにもサディスティックな扱いを受けたというなら別ですが、クライエントさんの見立て、そして自分がしてきた面接についてスーパーバイザーと真正面から対峙して緊張した覚えはないでしょうか。

何人かのスーパーヴィジョンを僕も受けたのですがかなりの緊迫感を持ったスーパーバイズを受けた覚えがあります。

自我がしっかりとしている(方が望ましい)カウンセラーですら、鋭く切り込んでくるスーパーヴィジョンに辛い思いをして、時に泣きながら帰ってきます。

これがクライエントさんだったらどうでしょうか。カウンセリングでカウンセラーが「あなたはこういう人だよ」と例えカウンセリング中に決めつけられなくてもハッと洞察に達して落ち込むことはきっとあるでしょう。 

その気持ちは十分に受け入れなくてはならないと思います。僕自身そうやって知らず知らずのうちにクライエントさん、患者さんに辛い思いをさせ、にこにこしていつも来ていても本当は気落ちしている方々、そしてもう面接に来なかったりすることは多いのではないかと思います。

ドロップアウトした患者さんは僕も数多く経験して来ました。その時に漫然とまた次の仕事に取りかかって振り返りをしないことはカウンセラーとしてどうなのかと自戒を込めて思います。

⑶ カウンセラーは信用されているか

カウンセラーにとってクライエントさんの信用を得ることは何よりも大切です。カルテを見ながらでも、多くのクライエントさんとの面接をしていると記憶がおぼろげになってしまうことが(僕には)たまにあります。

それは面接後に自分が「この患者さんならばこういう思いをしても当たり前だろう」と思って書き忘れていて、そしてそのことこそがとても大切な事柄だったりするのです。

クライエントさんにとってはとても大切な、自分だけの宝物のような秘密をカウンセラーに話していたのにその気持ちを軽く扱われるなんて、とカウンセリングが信用できないと思うのも無理はないでしょう。

僕自身自分を振り返ってみるとカウンセラーが信用されないと思うようなことは多々あったと思います。「薬は怖いからもらってから実は一度も飲んでいません」とカウンセラーだけに話したはずの事実を医師に伝えなければならないと思った時に息が詰まるような思いをした心理職の方はいないでしょうか。

「インフルエンザで熱がありましたが今日は我慢して来ました」と言われたらどうすればいいのか、このコロナ禍の中で同じような経験をした心理職の方もいると思います。

3.おわりに

カウンセラーはカウンセリングという行為でクライエントさん、患者さんを傷付けてはならないのは事実ですが「誰がカウンセリングを希望しているのか」(往々にして本人ではないこともあります。)にも気をつけなければならない隠されたニーズが存在していることもあります。

その人の人格を大切にしながらカウンセリングを行っていくのは実に難しいものだと日々痛感しています。

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「メンヘラせんばい」等オンラインカウンセリングについて考えてみた

某社でサービスを提供している「メンヘラせんぱい」がネットのニュースになっています。

恋愛のことや仕事のことなどを女性限定のクライエントさんがチャットでできる相談サービスです。

相談するのもされるのも女性ということですが、この相談サービス事業はどうかと思っています。「キャバ嬢せんぱい」という現在または過去3カ月以内にキャバクラで働いていた女性が相談に乗ります。

まあこれだけだと「あー、また無資格カウンセラーが幅をきかせているのかあ」で済むのですが(よくないとは思います。)メンヘラせんぱい」はキャバ嬢せんばいのほかに臨床心理士、公認心理師も募集しているということです。

えと、キャバ嬢せんぱいにこういうサービスをするのはまあ自由と言えば自由?なのかなとも思わないのですが、さらに臨床心理士、公認心理師も募集しているということに結構空いた口が塞がらない思いをしてしまったわけです。

こういったサービスを提供している会社の常として、ばーっと「利用者の声」がサイト内に網羅されて書かれています。

おかゆ先生(岡村優希先生)がYouTubeで話していたとおり、こういったクライエントの声が掲載されているカウンセラーは危ない、と僕もそう思います。

元々クライエントさんが相談した内容というのは守秘の義務があって明らかにするようなものではないわけですし、たとえクライエントさんの同意を得られていたとしても「その倫理性に問題がないのか?」と考えます。

恋愛や仕事の相談がほとんどなわけですが、臨床心理士、公認心理師とキャバ嬢3カ月の経験と並べられてしまう、こういうサイトに登録して相談者になるというのは君たちは大学院
で何を学んできてそのスキルを生かすために何をどうしたいのかね?」
と思ってしまうわけです。

2018年に運営会社は大学生起業家によって起業されて、なぜこの時期にまたニュースになったかというと、スペシャルサービスとして、これまではチャットで聞きっ放しだったのが、具体的なアドバイスもしてくれるというスペシャルサービスもしてくれるようになったというわけです。

ここのカウンセラーとなるためには模擬チャットやロールプレイングを受けなければならないわけで、このあたりは通常のオンラインカウンセリングでの研修と同じかもしれません。

確認してみたところ、実際に登録している「心理士」が数人ぐらいいるようで、キャバ嬢と並べられるのはなんだかなあ、と思ったわけです。

キャバ嬢がキャバ嬢の仕事をしている分には別に誰もなんとも思わないわけで、キャバ嬢がカウンセリングの仕事をしているというというとと思うのですが、そこにさらに臨床心理士が加わるとさらに??と思います。

オンラインカウンセリングシステムというのは僕も経験があるのですが、立ち上げ作業というのは実に難しいもので、カウンセリングをやる技能がある、というだけではなくクライエントさんの秘密を守れるようなシステム作りもしなくてはならないです。

オンライン各社がしのぎを削る中、僕も「これからカウンセリングの会社始めたいんだけど」という全く異業種の人たちからの相談を受けることがありました。

「カウンセリング」という響きはなんだか格好良さそうだと思って始めたいと思っても立ち上げの時点で何をどうしていいのかわからないのでとん挫してしまったようです。

また、実際にオンラインカウンセリングをしたこともあり、そこは1往復5千円でした。が到底それだけで食べられるようなものではありませんでした。某大手企業の付加価値サービスとしてのメンタルヘルス相談に登録しましたが全く相談のニーズがなく、結局相談が来なかったのでサービスをやめてしまったわけです。

文部科学省もLINEによる青少年向けの相談事業を行っており、こちらの方は年間1万件の相談が来ていたということで、SNS活用による相談を官の側が主導的に行った成功例だと思っています。

オンラインカウンセリングには各社が参入していて、果たしてうまくいくのか、行っていないかの実際の稼働状況や利益が上がっているかどうかについてはわかりません。

システムを構築しながら実際のオンラインカウンセリングを行っていくというのは結構大変な作業で、そこまでこの「メンヘラ先輩」がしっかりとした事業構築をしているかどうかはわかりません。

恋愛経験が(多分)豊富であろう勤務歴3カ月のキャバ嬢と同格に並べられて心理士(師)の仕事をやるということは一体どうなのかなあと思います。

確かに心理職には仕事はない、あっても給料は安い、のないない尽くしなのですが、自分の仕事は専門性が高い、素人とは違ったものであるという自負と矜持を持って仕事を選んでやって欲しいなあと思った次第です。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_

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