カウンセラーひなたあきらが公認心理師について考えてみた

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。 ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: 心理学

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◯ 公認心理師法第42条2項「主治の医師の指示」再考

公認心理師法では公認心理師は全て「主治の医師の指示」を受けなければならないとありますが、この条文自体が他法律と照らし合わせ、適切性が疑われるのではないかという可能性について指摘します。

法律は憲法=最高法規、そして民法、刑法が上位法としてあり、あくまで公認心理師法はその下位法です。

憲法上で考えると

〔国民たる要件〕
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
〔基本的人権〕
第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

カウンセリングを受けたクライエントさんが公認心理師によって勝手に守秘義務違反に当たりそうな秘密を医師に話さなければならないということは、クライエントさんにとって基本的人権の侵害に当たらないか?

第十三条の「幸福追求権」個人としての権利は尊重されるものであるという視点からも問題はありそうです。

第十三条はクライエントさんや患者さんの自己決定権とインフォームドコンセントを定めているものと理解できます。

〔個人の尊重と公共の福祉〕
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

クライエントさんが主治の医師への報告を拒否した場合、無理に報告すればそれはインフォームドコンセント違反になるでしょう。

そして民法第一条の「信義誠実の原則」に公認心理師が従って秘密を守れるかという点にも疑念があります。

(判例)

東京地方裁判所「カウンセラーが面接により知り得 た相談者の私的事柄等を無断で書籍に記載したことについて、守秘義務違反として債務不履行責任が認めら れた事例」
平成7年 6 月 22 日判決

もあります。

また、民法709条、不法行為「故意または過失によって他人の権利を侵害」は公認心理師にとってどこまでクライエントさんの権利と主治の医師の指示遵守規定と拮抗するわけです。

精神的な損害や病状の悪化が発生した場合、刑法典での傷害罪、民事上の損害賠償義務も当然に発生します。

「主治医に報告したらこのクライエントさんは死んでしまうかもしれない」のに報告して死んでしまったらそれは未必の故意となり違法性阻却事由にはなりません。

公認心理師に求められる注意義務は、一般人が「ま、なんとなく大丈夫だろう」という軽いものではなく、高い専門性を持つ専門家が当然に予見可能だったことについて適用されます。

ここで主治の医師の指示が公認心理師法で定められているので報告、指示をそのまま100パーセント行い、しかも患者さんの不利益にならないようなインフォームドコンセントが必要になるわけです。

主治の医師に報告する前に診断名や心理的・身体的特質がわからない患者さんの全てを把握して質問をしなければならない義務も生じるでしょう。

もし医療過誤事件、カウンセリング事故による患者の死が発生した際、「それは主治医の了解を取ったから」という言い訳は「なんで勝手に秘密を漏らしたの?」という訴訟が起きたら公認心理師が敗訴する確率は濃厚にあります。

原告の患者、その家族が記録開示を求めても事実が明らかになりにくいので
そうすると医療者側が「一応推定」で原告側に有利な裁定や判決が下ります。

平成12年にはエホバの証人判決で輸血を同宗教の教義に反して十分にインフォームドコンセントを行なっていなかったことについて最高裁で医療側が敗訴しました。

厚生労働省のガイドラインでは主治の医師の指示を仰ぐことは、それを行うことについて十分にクライエントさんに説明、ただし患者さんが納得していない場合には懇切丁寧に説明をするとありますが、そこでも患者さんが納得をしていない場合、どうすればいいのかという指針はありません。

こういった矛盾を孕む42条2項の規定が今後どのように運用されていくか、どこからどういった指針が示されるかについては注視しなければならない課題です。

参照、参考文献「精神科医療事故の法律知識」(星和書店 深谷翼著)

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◯ 日本心理臨床学会第39回大会

心理臨床学会がパシフィコ横浜で2020年8月27日(木)〜30(日)に開催されます。

それについて会員への案内が手元に届き、学会ホームページにも詳細案内が掲載されました。

正会員26,877人を誇る心理関係では最も大きな学会で、年2回開催されていた時期もあったのですが、あまりにも大規模大人数が参加するので現在受入れ可能なのは横浜パシフィコと神戸ポートピアになっています。(第40回も横浜パシフィコ開催)

昨年の一般公開プログラムを見るとわかるのですが、学会テーマは身体性が中心になっています。

今年僕が気になるのはこれまで非会員だった新公認心理師がどの程度新会員となって学会に参加するだろうということです。

例年7,500人から8,000人の参加者なのですが、公認心理師ホルダーの方々がどれだけこの学会に加入して参加するのかは気になるところです。

臨床心理士は学会参加すると更新のためのポイントになるのですが、公認心理師のみの資格ホルダーはそういった縛りはありません。

ただ、心理臨床学会は公認心理師制度の後押しを従前からしています。

そして今回公認心理師となった方々の中で例えば短大や専門学校卒でも心理実務8年以上、それから実務経験が心理臨床学会が定めるものと異なっていた場合(産業関連などは判定が難しいかもしれません)、果たして入会が認められるのだろうか?

という疑問もあります。

せっかく心理業務に長けた実務家も多く合格している公認心理師試験です。

また、公認心理師試験そのものも研究法や統計も多く出題されていて、科学者―実践者モデル (scientist-practitioner model)の視点が重視されているように思われます。

優れた臨床家は優れた研究者にもなり得るという考え方です。

この機会に多くの新公認心理師の方々が研究活動に参加して欲しいなあと思うのです。

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◯ 公認心理師◯◯をぶっ壊す!

※ 今回は雑記回です。

まだ年の瀬には早いのですが、流行語対象ノミネート用語が出てきています。

色々と大人の事情もあるのでしょうが「●●●をぶっ壊す!」と小学生も真似をしている用語は選外になったそうです。

この方のYouTubeを見たのですが相当な迫力があり、パフォーマンスも上手で、内容はともかく感心しました。

さて、今回物騒なタイトルですが、「公認心理師◯◯をぶっ壊す!」というフレーズがあったら何を想像するでしゃうか?

団体名や個人名が入ったらそれはかなり危うげな話なのですが、「制度」そのものに不満を持つ人も多いかもしれません。

そうすると「試験」はどうなのか?

などといろいろと推測してしまうわけです。

だんだんこたつみかん(人によっては+猫)の季節になって来るわけですが、日本茶をすすりながら過ぎてきた今年とこれからの来年に思いを馳せ、受験生の方々は難試験のために必死になっている人たちも多いのではないかと思います。

今回こんなテーマにしたのは、発足後2回の試験を経て定着しつつある制度になってもいいと思っているのですが、僕の所感としては「あれ?公認心理師について誰もあまり気にしてないんだなあ」というところです。

公認心理師の記載がある名札をしていない、お給料もそのまま、もちろんクライエントさん、患者さんから「すごいですねえ、国家資格ですかあ」と言われるわけでもありません。

少なくとも僕の狭い世界の周囲ではそんな話は聞かないわけです。

日々淡々と、きちんとカウンセリングをすることが大切であって、クライエントさんや関係者にはカウンセラーが何の資格を持っているのかはあまり関係がない場合が多いでしょう。

そしてクライエントさん、患者さん、家族の方々や他の職種の人たちもいうも心理職が誠実に仕事をしてくれるのを期待しているわけです。

冒頭過激なタイトルで始めましたが、まだまだ出来たばかりで不安定さを多く内包している制度です。

それでも一般の方々からも関心を持って欲しい、そうでなければ発足後5年目の公認心理師制度見直しの時に「何もありませんねえ」だと何も変わらないわけです。

いろんな人たちに興味を持ってもらって「ぶっ壊す!」ぐらいの意見があってもいいかもしれません。

例えそれがネガティブな評価であってもその裏側にある国民からの期待に応えられるようにしようという気持ちが大切なのかなと思います。

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◯ 国家資格公認心理師と国家資格ヒーリング

ヒーリングというとプロの心理職の人は「それは何?ヒーラーは怪しそう、えせカウンセラーなのか?」

と思う方もいるかもしれません。

ヒーリング、レイキ、ホメオパシーと代替医療とされていて医学に基づくエビデンスには欠けるものの、実際にはアメリカでは州によって、また諸外国でも医療保険適用となることもあります。

実際ヒーラーが国家資格や公的資格となっている国や州もあり、ヒーリングに倫理が定められていて、ヒーリング禁忌となっている疾患、向いている場合と厳しく峻別もしています。

心理職がカウンセリングをしていると「いや、メンタルの部分は◯◯先生(無資格者)にいつも相談していますから」というクライエントさんに会ったことがあるかもしれません。

「そんなエビデンスで証明されていないものを信じているよりきちんと自分のカウンセリングを受けて欲しいなあ」と思う人はいるかもしれませんが
僕はそうは思いません。

その人が騙されているのでなければ、心から信じている対象を否定する権利は誰にもないと思っています。

ホメオパシーはボツリヌス菌や蛇などの猛毒を100万分の1に薄めて砂糖玉に加工した「レメディ」に治療効果があるとしてアメリカの保健師さんに一時爆発的に広がりました。

ホメオパシーに傾倒するあまり必要な医療を受けさせなかったということでが問題になり、諸外国では保険適用にもならず副作用事象補償賠償対象外とされています。

実際のところ、ただの砂糖玉なので効き目はないという考え方は科学的です。

しかし科学実践のみでなく、精神科治療と並行しながら自費治療の一環としてレメディを推奨、腕のいいヒーラーに患者さんを紹介する精神科医もいます。

エビデンスに基づく治療のみでなく、公認心理師試験や公認心理師養成課程、シラバスにも例えば精神分析は必須科目となっています。

エビデンスは薄いけれどもひごろ心理職が効果を実感しているのは各種イメージワークや箱庭、描画、最近ではブレインジムやブレインスポッティング等でしょうか。

しかし次々にこれらの効果にもエビデンスは認められつつあります。

公認心理師の会の認知行動療法家、丹野氏はサルコフスキ、バーチウッドの翻訳書を出しています。

苦しい幻聴が聞こえる患者さんについて「神が試そうとしているのだからこの試練に打ち勝てば神の試練を乗り越えられる」と幻聴を積極的な意味合いに変換して軽快した治療例が掲載されています。

ここで使われている大切な信念変容のためのキーワードは「神」「信念」でそれは非科学的なものかもしれませんが、決してそれをカウンセラーが否定することはできないものです。

カウンセリングは柔道のようなものかもしれません。

もうすでに出来上がっているその人のポジティブな信念や考え方に少し力を加えるだけで効果が発揮できればいいのかなと個人的には思います。



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◯ 公認心理師制度のダブルバインド

公認心理師制度そのものがアンビバレンツさを内包した二律背反の特殊なものです。

それがゆえに当然批判も出てくるのですが、一般人から言われることがある、また予測される批判はなんでしょうか。

1.秘密保持義務

「果たして公認心理師はきちんと秘密を守ってくれるのか?」

これは公認心理師法に秘密保持に罰則規定があるにもかかわらず、一方では多職種連携の中で情報共有することが強調されていて、心理師自身が板ばさみになります。

臨床心理士でもスクールカウンセラーは「集団守秘義務」と言われていましたが、チーム学校の観点からは、スクールカウンセラーが児童生徒保護者の秘密を独り占めにしてしまうという選択肢を選ぶと公認心理師試験では不正解になります。

クライエントさんの秘密は校長を頂点としたチーム学校の中に組み込まれます。

クライエントさんはスクールカウンセラーが全ての秘密を守れない立場だということを理解していたら信頼して話をしてくれるでしょうか?

また主治の医師の指示についてもクライエントさんが絶対医師に黙っていてくれという事柄は公認心理師が説得して医師に伝える努力をすることにガイドラインでは定められています。

それでも黙っていて欲しいというクライエントさんが医師の指示に従って医師に言う、医師から家族に情報が流れる、さてどのようにして心理師はリカバリーしたらいいのでしょうか。

説得している過程で信頼関係は壊れてしまう可能性も大きいわけです。

また、労働契約法5条の安全配慮義務と守秘義務の問題もあります。

運転中に眠ってしまう、意識消失してしまう運転手はそのまま続けさせると大事故を起こすかもしれません。

ただ、運転手は他に生計を立てる手段がなかった時、どうすればいいのでしょうか。

2.公認心理師のカウンセリングの満足度

ここでは仮に認知行動療法としておきます(精神分析やイメージワークでも別の切り口から同じ事が言えます。)

「それは認知様式が普通と違いますね、認知の歪みです。」と言われて1回で腑に落ちて情緒と行動が劇的に変化するクライエントさんはいません。

認知行動療法ではクライエントさんの行動をつぶさに観察、時には「行動記録表」のようなホームワークをクライエントさんに出します。

ここでもクライエントさんのためのオーダーメイドの手法でカウンセリングを実施しないとクライエントさんは宿題をこなさなければならない、生活指導されているだけで共感されていないと感じるかもしれません。

認知行動療法はエビデンスに基づくものだといっても過激な暴露療法でドロップアウトしたクライエントさんの救済については何も書かれていません。

他の心理療法の研究では人道的見地からドロップアウト群や、治療を全く受けなかった統制群についても治療を試みた例が報告されています。

精神分析で過去に触れられるのが嫌な人もいます。

イメージワークだけをしていると現実は置き去りにされます。

要するにやり方と流派との相性によってはクライエントさんはカウンセリングに対するアレルギーを起こしかねないですし、その役割を担っている、新しい制度、新しい資格は相当にいいものだという期待と現実が相違した時に不満が募る可能性があるということです。

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