カウンセラーひなたあきらが公認心理師について考えてみた

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。 ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: 心理学

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◯ Gルート現任者公認心理師の強み・弱み

1.序

あちこちで心理専門職の心理プロパー公認心理師、そうでない非心理専門職公認心理師との対立構造がクローズアップされているように思います。

心理専門職の人たちは縄張りを荒らされたようで面白くない、専門知識がそれほどなく、非専門家は心理テストが取れない。

「心理テスト取れないからやっておいてよ」「心理テストの取り方教えて」と言う発言があれば確かに心理職の琴線に触れるでしょう。

そしてもしそんな事を言えばそれは有資格者になったというだけで専門性がないよというその人の弱みを露呈していることにしかなりません。

ただ、現実に非心理専門職の人たちが公認心理師資格を取得しているのも事実でお互いにただ争っていてもなんだかなあと思うわけです。

5年後の制度見直しを見据えた上で、非心理専門職の方々が公認心理師を取得したことの意味合い、資格の活用、元々の心理職との協働協調体制について考えた方がはるかに生産的だと思います。

2.非心理専門職が公認心理師を所有することのメリット

⑴ 多資格所持者は横断的視点の人間観・制度を理解することができる

こういった人々は多いと思います。

元々福祉、医療、教育などさまざまなバックボーンがある中で活躍してきた人が高い心理的専門知識を持つことで、心理専門職が何をやっているのかわかる。

心理専門職の強みも弱みも理解した上で心理専門職をチームの一員として考えるとより円滑な協調体制が取れるのではないでしょうか。

⑵ 資格取得のために学んだ知識の習得を仕事に生かす

これも大きなメリットです。

心理職を長年やっているとどこでどんな知識が役立つかわかりません。

医療、教育、福祉、司法、産業5領域は無関係のようで実は深くかかわることがあります。

認知症老人専門施設でも成年後見人の申立てがあると家裁が調査の申入れをしてくる場合があり得ます。

心理職同士でも思わぬかかわりがあるでしょうけれどもこれが関係領域職種になるとさらに輻輳してかかわりが出てくる、その時に「心理職の考えていることや立場はよくわかる」と思ってもらえればそれは非心理専門職の強みです。

そしてお互い仕事もやりやすくなると思うのです。

3.結語

非心理専門職の公認心理師受験機会はあと3回に限られています。

また、すでに行われた2回の試験でも多くの非心理専門職がいるはずです。

「初回試験はたやすかったから資格の価値が低い」という意見もすでに聞いたことがあります。

多分、ですが3回目以降の試験は2回目と同じ水準の難易度と思います。

Gルート非心理専門職の合格者を生かすのも生かさないのもその資格を取得した人、そして周囲の環境によるところが大きいでしょう。

とある大規模クリニックでは臨床心理士が公認心理師を取得したことと同時に、作業療法士、精神保健福祉士が公認心理師を取得したことを心理に理解が深い院長自らが大変喜んでいました。

単にクリニックの箔付けということではなく、スタッフが心理専門領域の知識を身につけて資格を取ることが患者さんのためになるという考え方で、僕はこれはこれで十分に納得できる考え方だなあと思います。

この資格の価値は新卒者が心理職の第一線として働いていくであろう10年後、20年後までわからないし、評価も定まらないものだと思っています。

互いに争うよりも、磨きあって新しいものを構築していくことが将来につながっていくと思うのです。

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◯ 公認心理師現任者Gルートへの批判に対する批判とそれに対する批判

この話題はくどいようですが、実際に公認心理師受験生たちの間で多く取り交わされているという実情もあります。

「元々心理の仕事をしてこなかったのにこれから心理の仕事をやるためじゃない、自分のキャリアアップのつもりだけで取るの?」

「ペーパーテストができればカウンセリング能力や心理テスト能力が認められるのってのはおかしくないの?本当に心理業務ができるの?」

「試験に通ったからといって心理の領域に口出しされたらたまらない」

等々です。

元々公認心理師カリキュラム検討委員会(2016)では現任者として週一回でも心理実務経験者を認めていました。

例えば週一回しか稼働していないけれどもその日はスクールカウンセラーをしている、週一回でクリニックのカウンセリングをしている人も現任者として認めようというゆるい受験者要件を現任者としていたからです。

実際、そういった働き方をしている心理職もいたわけで、そういう人に公認心理師国家資格を与えるのは理にかなっているような気がします。

カリキュラム検討委員会で把握していた全国の心理職の稼働人数はおよそ数万人、その心理職の人たちを対象とするという趣旨でこの試験は行われています。

つまり現職心理職の国家資格化を狙った試験だったと思われるのですが、公認心理師法施行令に定められた26施設で働いてきた相談業務担当者はカリキュラム検討委員会では心理を主たる業務としない場合には「心理職」としての読みをしていなかったことになります。

そして実際に現任者Gルート受験者、合格者を見てみたら心理を主とする業務としない人々が多かったのはカリキュラム検討委員会や試験委員会の予想外、ただし当局は試験後には把握していた事実だったでしょう。

邪推になりますが、だから第2回試験のハードルを上げて心理を大学院で専攻した対象者でないと合格できないレベルにしたのではないかと思うのです。

カリキュラム検討委員会も日本心理研修センターもザル審査しかしないことはすでに決定事項です。

今さら「看護師はおかしい」「教師は違う」「せめて心理学部卒」と言っても試験制度がそうなっている以上、さまざまな合格者も出ている、これからもGルートで多種多様の合格者が出てくるのは事実です。

博士号を持つ臨床心理士でもその他の民間心理資格取得心理職でも1点点数が足りなければ合格できません。

そしてこの試験によって受験者の臨床対応能力は正確に測定できません。

それは他の心理試験でも同じことです。

だから他領域専攻者でも点数が取得できれば資格は取れます。

これはきちんと試験カリキュラム検討委員会でも試験委員会でも定めていることなので、つまりはそういうことです。

2024年からはもう新課程の院卒者が受験者の中心になり、精神科医であろうと現任者を逃すと公認心理師にはなれません。

旧院ルート、科目読替えができなかった人たちもGルートに入っています。

「過渡期」のこの時期に公認心理師となった人々がどのようにこの資格を活用していくかがこの資格の価値を決めるでしょう。

5年後の制度見直しにも色々な意味での影響を与えていくことに繋がっていくと思うのです。

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◯ 公認心理師試験は文系?理系?

公認心理師第1回カリキュラム検討委員会では

(以下引用)
○北村座長 ありがとうございます。心理士というのは文系ですか。
○林構成員 文系です。
○北村座長 精神科医は文系ですか。
○林構成員 理系です。
○北村座長 高校段階で文系と理系にきっぱりと分けてしまうのは、非常に問題かなと。今、先生がおっしゃったように、心理士の人にも医学を勉強してもらおうと思ったときに、往々にして生物学の基本を知らなかったりして、びっくりすることがあります。そんなに文系、理系と早い段階で分けなくても、やっていただいたほうがいいと思うのですけれどね。
 公認心理師の人というのは、ほとんど文系出身ですか。理系というのは、余りいないのですか。そうすると、このインタープロフェッショナル・エデュケーション、多職種連携教育と言うのですが、こういうものも会話が合わなかったりすることがあります。そういうことから、やはり教育してほしいかなという気もします。」

(引用終わり)

※ 北村座長は内科医、林構成員は精神科医です。

という質疑がありました。

考えてみれば統計的手法は完全に数学的分野ですし、高校数学の域を超えた出題もされています。

実験法、研究法についても同様です。

さらに言うならこういった統計的手法を用いた分析を利用して効果的な心理療法を行うわけですから、医学における治療と同様にエビデンス・ベイスドの要素も強いわけです。

また、脳科学領域は医学・生物学的分野です。

神経細胞の生理や視床下部に関する出題が過去にありました。

そしてこれは医学の中でもアメリカ診断基準DSM-5やICD10(11)による精神疾患の分類も精神医学分野となります。

抗精神病薬副作用についても薬学、医学的知識ですし、医療制度論については文系とも言い切れない分野です。

身体疾患はALS (筋萎縮性側索硬化症)や女性更年期障害等についての出題がありました。

こういった出題が心理職にとって適切かどうかということについて、研究活動を行うためには統計法、調査法、実験計画法は必須、不要の知識とは思えません。

ただし心理学や関連諸科学専攻者で受験する人々の中には文系の人が多く、手こずる、というか苦手な人は多いかもしれないと思います。

また医学的な知識や薬理学的副作用の知識についてですが「さっきお医者さんの診察では言えなかったんですけどこの薬(ラモトリギン)を飲んでから身体中に湿疹が出ましてね」と言われたら心理職といえども「えっ、なにそれヤバい」

と思って滅多に出ない副作用でも出たら命にかかわりかねないスティーブン・ジョンソン症候群(重度の皮膚の壊死で致死的になりかねない)かもしれないのですぐに医師に報告しなければならないでしょう。

公認心理師試験は臨床心理士試験に比較して基礎心理学分野、科学的、医学的、生物学的分野が多く出題されていることがよく言われていますし実際そのとおりです。

法律や制度、五領域分野が臨床心理士より詳しく出題されることも事実です。

看護師さんや保健師さんのように理系知識が十分にあると思える人たちがこの試験に苦心して挑戦しているのも知っているのですが、文系領域オンリーでは解けない問題はこれからも出てくるでしょう。

解剖学や精神腫瘍学も出題領域として明記されているこの試験で得点率を上げようとしたらそれなりの理系学習も必須ということになります。

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◯ 公認心理師試験不合格者からの怨嗟の声

なんだか物騒なタイトルだな、と思う方々が多いと思います。

SNSなどで自分の合格点数を記述している人たちがいます。

そこでどういった勉強法で合格できたか、人に対して勉強のやり方を勧めるというのは僕は生産的で見ていて良いなあと思うわけですが、人によってはそれをものすごく嫌う人たちがいます。

不合格だった人たちの中でも「よし、次は頑張ろう」とか「◯点足りなかったからここの分野にもう少し力を入れて勉強しよう」

というのはとても前向きな姿勢だと思います。

その一方で「自分の高得点を自慢しやがって、とんでもない、落ちた人間のことを考えて発言しろ」という人たちもいます。

この試験は特に第2回目、深い専門知識がないと解けない知識問題や事例問題でも知識と経験値とセンスを求められます。

したがってこれまで心理専門職をしていた人でも不合格となる人たちが多々出るほどの高い難易度があります。

第2回試験では合格率46.4パーセント、そして心理専門家でない人たちも多々いるだろうGルートの合格率は41.8パーセントと実に低率で、第2回試験で不合格だった人は9084人、中には試験制度そのものに疑念を持つ人たちもいるかなと思います。

特にGルートの受験者の中には心理専業でない人も多く、基礎心理学の出題が多かったこの試験では相当苦戦しただろうと思います。

いろんな人が指摘しているのですが、大学院新卒に当たるD2ルートの人たちの合格率は58.8パーセントとほぼ臨床心理士と同じぐらいで、この第2回試験は適正レベルだったという説もあります。

僕自身は臨床心理士試験をこの公認心理師法案が通った直後に過去20年分ぐらいやってみて試験に備えようとしましたが、ブループリントを見たら「何これ!違うじゃん」と思いました。

公認心理師試験では意外な不合格者も出て、現場で第一線の臨床心理士として活躍していた人が不合格になっていることも聞いています。

とても業務で多忙、深夜まで残業している心理職の人もたくさんいます。

勉強時間はなかなか取れません。

そんな中で割と簡単に(見える)合格者の人が自分の高得点をSNSなどに書いているわけです。

もちろん実際にはこの試験は無勉強で門外漢が合格できるようなものではなく、合格した人は熱心に参考書を読み、わからない単語は検索したり専門書を当たったり、模試を受けて復習、予備校や通信教育を受けていた人も多いです。

また、公認心理師試験に受かりたいと熱望している非心理職の人も多かったですが、力及ばず数点差で不合格だった人たちも多いでしょう。

僕がこの試験を見ていて思うのは受験までに短時間でも要領よく多くの知識を得て、この試験向けのコツをつかむことが必須だろうということです。

例えばなかなか心理学の教科書には掲載されていませんが、ジストニア、セロトニン症候群、賦活症候群、アカシジア、プロラクチン血症、ジスキネジア、抗コリン作用など薬物による副作用は一度覚えてしまえば忘れることもないですし、事例問題なら3点取れます。

現任者はあと3回のチャンスがあります。

知識を積み上げてぜひチャレンジして欲しいと思います。

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◯ 公認心理師Gルート現任合格者への反発

僕のブログへのコメントを含めていろんなところで公認心理師合格者、非心理職Gルート合格者への反発や危惧を聞くことがあります。

「ペーパーテストに合格しただけで心理専門職としての能力があると認めてもいいのか?」

「そもそも受験資格を甘い基準で合格させてしまって心理職として使い物になるの?」

という厳しい意見、

「臨床心理士は大学院で心理テストを取れるトレーニングを受けているけど公認心理師に非心理職から合格してもテスト取れないでしょ?」

などなどです。

公認心理師合格者で非心理専任職として合格している職種としては小中高教員、精神保健福祉士、社会福祉士、作業療法士、介護福祉士、ケアマネジャー、キャリアコンサルタント、看護師などなど多数の職種の人たちがかなりの努力をして心理の勉強をイチからして合格している人たちがいます。

実際に聞いたことがあって?と思ったのは受付事務員、年数が明らかに足りない現任者です。

そしてこういった人々への反発は主に臨床心理士のように心理専門の心理職の人たちが抱くことが多いでしょう。

勉強オンリーだけで合格した、公認心理師施行令に定める施設勤務者が受かっている、ここに危惧が発生しています。

これをどう解釈するかというと、まず試験機関の日本心理研修センターはこれまで約2万8千人の(第1回、第2回合計)現任者の精査をすることは無理なので、最初から審査をしないことに決めて願書を受け付けています。

そして実際のところ、上記の職種の人々が心理相談業務をしていないかというと、少なくとも週1回定期的継続的に相談業務を行っていればOKという基準からすれば実際その資格がある人たちはとても多いわけです。(受験していない人たちでも)

そして結局どういった現象が起こっているかというと、病院など心理専門トレーニングを受けている人材を求めている職場では臨床心理士及び公認心理師双方資格保持者のみ採用という求人が出ています。

また、上記の心理非専門職種の人々でも心理専業職に職種転換するために元の資格職を捨てて心理職になることがあります。

しかし心理職は職種転換してまでなるのにそれほど魅力的なのか?

という問題があります。

何しろ他職種で築いてきたキャリアを全て捨ててしまうわけですから新卒扱いで給料は大幅にダウンします。

実際そういう人がいて心理職をどうしてもやりたいから、という理由で他職種から臨床心理士に進路転換して年収150万以上減った例があります。

公認心理師試験は特殊なクセがある試験で現役の臨床心理士でも落ちることがあります。

一方で非心理専業者がこの資格を取得することへの反発があるわけです。

資格は取ることに意味があるわけではなく、どうやってそれを生かすかに意味があります。

例えば危険物取扱主任者でも玉掛け、クレーンでも取得してその資格と関係ない仕事をしている人は多いです。

ただしさまざまな資格を持っていると自己啓発意欲が高いと周囲から見られる、非心理職でも転職に有利かもしれません。

特に事前審査はない資格です。

心理職は大学院を出てから自己研鑽を積んで各種技能、技法を身につけている人たちがほとんどです。

もし公認心理師資格取得した他職種の人が心理職のやり方に異議を唱える、心理職としての見立てをする、ということになると確かに反発は出そうです。

現任者ルートは公的に認められているのでそこで公認心理師間で軋轢を生じさせるのは詮無いことのように思えます。

非心理職資格取得者と心理専門職がどのように協働協業していくかが今後の課題となると思います。

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