ひなたあきらのおけまる公認心理師たん

新制度公認心理師の検証をしばらく続け、この制度がよりよいものになるための問題提起を行いつつ、カウンセリングの在り方について考え、最新の情報提供を行っていきます。ほか心理学全般についての考察も進めていきます ブログ運営者:ひなたあきら メールアドレスhimata0630★gmail.com(★を@に変えてください。)

カテゴリ: 心理学

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営業に生かせる心理学5 「メンタルリハーサル」

「近代中小企業」
発行:中小企業経営研究会
https://www.kinchu.jp

1 メンタルリハーサルの重要性

営業という行為は売れた時は嬉しい、売れれば今度は新しいタスクが生まれる、売れない時には落ち込んでしまう、大変な仕事であることは間違いありません。

そんな時には「売れた自分」「売れて仕事をうまくこなしている自分」を想像することが有効です。もし「営業活動がうまく行かなかったのは顧客の性質が悪いからだ」「相性が悪い」「この商材は魅力はない」という誤った原因帰属をさせてしまうとそれは「セルフ・ハンディキャッピング」と言って失敗する自分を想像してそれを実現させることで妙な安心感をもたらすことになってしまいます。

そういった誤ったイメージに陥らないようにするためには「楽しく営業活動をしている自分」をイメージすることも大切になります。過去に営業活動をして成功したことを思い返すのは「自己効力感」を高めることにも役立ちます。

自己効力感はセルフイメージを高めることにもなります。ある具体的な状況において、人は目標を立て、その中で適切な目標を遂行できうるであろうという確信の程度が高ければ高いほど人は行動に対する動機付けが高まるのです。

2 イマジネーションを大切にする

先日YouTubeを見ていたら、自動販売機でどこにでも売っているような水1本を「相手に1万円で売るにはどうするか」という動画があり、興味を持って見ました。常識的に考えて水1本を1万円で売ることなど不可能です。

ところが営業マンはうまくその水を相手に1万円で売ることができたという内容のものでした。営業には付加価値が必要です。もし相手にその水を1万円売ることで、顧客の利益が100万円になることが約束されているとしたらどうでしょうか。筆者が経営者ならば喜んで買うでしょう。一見不可能と思えることでもそれを可能にしようというイメージは大切なことだと思いました。

心理学的な考え方ではいきなり成功をすることが大切だとはされていません。ひとつひとつ地道に前進をしていく「スモールステップ」が大切になります。さて、営業マンにとって大切なスモールステップとはなんでしょうか。

それは商材の内容や相手の対応によっても異なるのですが、少しずつ「売る方法」の行動やお互いの気持ちを考えていくことが大切になります。自己効力感について考えてみます。ある特定の行動が成功をもたらすそのプロセスについて細かく考えていきます。

そうすると「今、ここで」自分が何をしたらいいのかを見つめることになります。よい結果を出すためには何が必要で、必要な行動をどういった方法で行っていくかを分析してみます。そうすると自己効力感は高まり、成功体験がさらに営業マンの能力を高めることに役立つでしょう。

営業は形のあるものを売ることもありますし、形のないコンテンツを売ることもあります。さて、売れた時のことを考えてみましょう。どんな内容にせよ、売れた時、売れたものをうまく切りまわしてお客様が喜んでくれたことを考えてみます。それはとても営業マンにとっては嬉しいことです。

営業に訪れた時に暗い顔で受付を通ったら、まずは会社の顔である受付の人が「なんだか変な人が来たようだ」という情報はすぐにキーパーソンにも伝わってしまうと考えた方がいいでしょう。

キーパーソンに売ることだけ、ノルマだけを考えて元気なく営業先に行っていてはその表情や気持ちは相手にも伝わってしまいます。まずは受付を通る時から元気に挨拶をすることが大切です。自分というものは、あたかも鏡を見ているかのように知らず知らずのうちに自分のイメージを作り上げているのです。

もしそういった自分が人にどう映っているかを考えてみると、カメラを向けられている自分を想像してみるといいでしょう。自分が自分自身にどういったイメージを持っているかを考えてみると、客観的な自己意識が高まり、望ましく、理想としている自分のイメージに近づけることがっできます。こういった概念は「自己制御」とも呼ばれるのですが、これを意識して高めることも大切です。

人の気持ちには様々な要素があります。自己の状態や反応は行動、認知、感情、コントロール能力を高めることにつながってきます。明るい気持ちでいること、なぜそれが大切かというと、相手にいい印象を与えて対人魅力を高めるというだけでなく、自分の気持ちのテンションを上げることにも役立つからです。

対人コミュニケーションをうまく取ることに成功すれば、それは良好な関係を作ることにもなります。このプロセスを分析していくと①ある話題(営業活動)について自分の意見を言ってみる②相手の意見を十分に聞いてうなずく、③自分が相手に対して好意を十分に持っていることを、傾聴する、相手の目を見てはっきりと話すことも大事です。

こういった時にひどく萎縮していたり、その反対に「どうせ売れないだろう」と投げやりな気持ちになっていたら相手はそういった営業マンの気持ちを敏感に察知してしまいます。営業マンが売ろうとしている商材に詳しいのは営業マンです。

しかし、顧客はとても頭がいい方々なのです。顧客から「教えを乞う」という気持ちでコミュニケーションを取ることは顧客の自尊心を高め、スムーズに営業活動を行うことにもなります。営業は時として自分が話して相手の興味を高めようとしてしまいがちなものですが、自分が常に教えてもらうつもりで熱心に興味を持って聞くことが大切です。

こういった「共感力」は自分の魅力を高めることにもつながります。共感性の高い人はユーモアもあり、自主的、自発的で他人に感心があり、外交的、そしてこれらの要素によって感情が柔軟であり、何が今起きているか、正確に認知をすることもできます。そうすると共感力との相乗効果によって相手との関係性は安定していくのです。

このような親密性が高まっていくと自然にお互いの非言語的なコミュニケーションにおける好意も高まります。お互いに相手のことを知りたいという興味がわいてくるのです。営業で大切なのは相手への「視線」だともよく言われています。積極的に売ろうとばかりしていて相手の顔を見ていれば、その態度は敏感に察知されてしまいます。おどおどして「売れないだろう」と思って視線をそらしていてもそれは上手な営業はできません。

3 気分一致効果

なぜ上記に書いたことが大切かというと、人には「気分一致効果」というものがあります。例えばもし訪問する時に営業が失敗したことばかり考えていてクヨクヨしていたとします。そんな時に訪問をしたら、落ち込んだ気持ちになってしまうでしょう。

逆に成功した嬉しい体験を思い出しながら訪問したとしましょう。そうすると楽しい気分のまま訪問することができます。どちらの方が営業に役立つかは自明に思えます。

人間の記憶は恐怖ばかり感じていると、そのことばかりにとらわれてしまいます。恐怖を感じているとそのことばかり思い出されてしまいます。顧客のところに行く時にはよく行ったイメージを思い描いてから面談することも大事です。うまく行った体験をきちんとイメージングしてから訪問すれば、新規顧客であっても、継続営業をしているのであっても、うまくいく確率は上昇するでしょう。

これもひとつの学説ですが「人は悲しいから泣くのではない。泣くから悲しいのだ」とも言われています。悲しいから泣くのではなく、泣けば悲しくなります。これは好意的な感情についても同じことが言えます。意識的に笑顔でいること、その気持ちのまま営業活動をすることは顧客に対しても好印象を与えるのだと思います。 

5.感情制御・自己の再評価

相手との関係をうまく運んでいくためには自分の感情を上手に制御していくことも大切です。もしあまり緊張ばかりしていて、以前にうまく行かなかった記憶ばかりが蘇ってきて、その感情で営業に臨めば、笑顔もなかなか出てこないし、自分も不快になるばかりでしょう。

緊張がうまく低減していけば、それは自分と顧客、双方とも気持ちがほぐれてうまく商談ができます。

そのためには自分を責めないで自己をうまく見つめなおす批判的思考「クリティカル・シンキング」が大切になることもあります。対人関係を築いていく上では、その中で起こっている膨大な情報を人は処理しています。その情報をきちんとまとめることが大切なのではないかと筆者は考えます。

それは①集められた情報を明確化すること。情報は明らかになっているものだけではありません。隠された情報や感情のやり取りがその中で行われている事は多々あります。

そして②その情報は確かなものかどうか自分の中で吟味する、これまでの経験や、今そこで起こっていることを再評価することも大事です。

③ そしてその中で起こっていることの価値判断、今バランスの取れた思考法をしているのかどうか、何をここで話したらいいのか、決定権は相手にあるのか自分にあるのかということを観察します。

④人間の行動には様々な無数の選択肢があります。その中で現在起きていることも再評価します。最終的にその中で最も効果的と思われる価値判断をして、相手にフィードバックしていくということを営業マンは知らず知らずのうちに行っているのですが、それをきちんと意識化していくことが大切だと考えます。

その上で、行き当たりばったりに任せるのではなく、論理的に考えていくこと、好奇心や探求心を持って関係性を探っていくこと、客観性の重視、熟慮していくことも大事でしょう。今そこで急に決められないことが起こったならば、こちらが一旦持ち帰って自分の考え方やするべき行動について誰かからアドバイスをもらうことも必要になります。

感情をコントロールできるようになるとお互いに親密な感情が生まれるようになります。古来から日本では「以心伝心」と言われていて、阿吽の呼吸でお互いを知ることができるのです。

うまく行っていても、あるいはうまく行っていなくても、自己と相手の間に何が起こっているのか吟味することも無意識的・日常的に起こっているのでそれを観察します。そんな時にあたかも鏡の中を見ているように自分と相手との関係を見つめ直していきます。

そうすると感情だけに流されず、営業にとっては必要な自己意識や自己制御力が意識化できます。相手が自分に好意を持っていれば相手との笑顔のコミュニケーションが生まれてくることは当然の事のように思えますが、笑顔の向こうに「買う気はないよ」というメッセージが含まれていればそれ以上進展することはありません。

営業の際にはこちらも笑顔で相手に接するわけですが、隠されたメッセージを読み取ることも必要です。言外の視線や表情が何を意味しているのかということを考え直します。

自己の再評価・自己制御には自分自身をコントロールすることが大切になります。営業活動はコミュニケーションです。そのコミュニケーションの中には「何を今しているのか」(行動)、何を感じて見ているのか(「認知・感情」)、自分が衝動的になりすぎていないかという内省力、それらが上手にかみ合った時に営業活動はうまく行くと筆者は考えます。

今何が起きているのか、自分をあまりに卑下することがなく、また、相手のことを軽んずることなく誠実な態度でいることは大切なのではないでしょうか。

営業マンは確かに自分が売りたい商材のことは一番よく知っているわけですが、たいていの顧客、キーパーソンはとても営業をされることに慣れているものです。相手を立てること、知識と経験がある人と話しているのだから教えを乞うという姿勢は大事です。

自分が営業活動の中で何をしているのか、そして相手との間に何が起こっているのかを正確に再評価することがいい結果につながるのではないでしょうか。

そしてそれらの認知と行動がおおむね一致した時に成功体験は生まれるものだと思います。営業マンにとっては成功体験というものはとても大切です。失敗した時に自分を振り返ることも大事ですが、成功した時にも「たまたま成功した」と手放しで喜ぶのではなく「なぜ成功したのか」という事を精緻に考えていくことも必要だと考えます。

そういった成功体験と成功体験の原因を探求していくことは次の成功する営業活動にもつながりますし、さらに自己効力感情を高めていくことにもつながって行くのだと思います。

今回の記事のpdfです。
いつも丁寧に校正していただき感謝しております。

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心理職を応援する臨床心理士高原あきこ先生をぜひ国会議員へ!



2022.6.22参議院議員選挙公示が行われ、臨床心理士の高原あきこ先生が正式に立候補しました。

高原あきこ先生は障害福祉の専門家、のぞみの里から始まり、熊本大学教授などを経て現在は社会福祉法人玄洋会やまと更生センター施設長をしています。

高原あきこ先生は臨床心理士の資格を持ちながら、日本の心理職の待遇を良くしようとも考えていて、臨床心理士・公認心理師の地位向上にも尽力していきたいと考えています。

僕たち心理職は人の命を左右する仕事をしている割には常勤率が低い、仕事がない、給料が低いという、ないない尽くしでこれまで長年過ごしてきました。

悲しいかな心理職制度の歴史は組織内で分断、葛藤を持つことを続けながらのものです。それは現在も職能団体が2つに分裂していることから明らかなことなのですが、心理職の知人たちと話す度、この混沌とした心理職の世界を取りまとめてくれる大きな力はないものかと何度も話を続けて来ました。

あるひとつの職種が自らの権利を正当に守ろうとした場合、職種内団体だけでそれを成し遂げようとするのはとても難しいことです。

医療関係職種では医師、看護師、薬剤師、柔道整復師etc…が国会に議員を送り出し、それぞれ大きな影響を政界の中に持ち、地歩を築き上げてきました。

考えてみると実働3万人以上はいると思われる心理職の中から国会議員がこれまで選出されていなかったことは不思議にすら思えます。

高原あきこ先生はただ単に心理職の地位を底上げする、ということが目的なのではなく、もちろん心理的要支援者、障害者福祉施策の充実も考えていて、災害時の心のケアやいじめ、虐待、家族関係など、社会と心の問題について真剣に考えています。

心理職が仕事をしようとした際に大きな力で守られていること、そして心理的要支援者が守られていくような法制度の整備やシステム構築ができていくのならばそれはどれほど心強いだろうかと思います。

高原あきこ先生が国会議員になることを切に願っています。
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「近代中小企業」
発行:中小企業経営研究会
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営業マンが自分の活動に役立てる「メタ認知能力」

1「メタ認知能力」とは

まず、メタ認知能力とは何かについて説明したいと思います。

通常の認知は営業マンの「これを売りたいなあ」という自分自身の考え方、発想なのです。「メタ認知能力」は、その時に「顧客は本当にこれを必要なのだろうか?」「自分は『売りたい』という気持ちばかりが先走っていて、外から見るとこれはどう見えるのだろうか」という、自分を見るもうひとりの自分、さらに言うなら、あたかも自分を頭上から見下ろして自分の活動を見るという能力です。

このメタ認知能力が低いと社内でも社外でも自分勝手なわがままな人としか見られませんので注意が必要です。

例えば自分は自分、人は人と、自分だけの認知、認識にとらわれてしまうと「まあ遅刻してもいいだろう」という極端な考え方になってしまいます。

車で営業する場合に信号、道路の渋滞状況などを考えて客先へとなるべく早く到着するように心がけるというような人は知らず知らずの内にメタ認知能力を身につけていて、自分と他者のことをきちんと客観的に見るメタ認知能力を使用しています。

また、顧客がAという商品が欲しいと思っているのにBという商品ばかり売り込みたがっているのも顧客からすれば不快な思いをするだけで、営業マンはその時にはメタ認知能力を使用していません。

2 メタ認知能力を身につけるためには

メタ認知能力を身につけるためには「批判的思考(クリティカルシンキング)」が大切です。

自分だけの考えに陥ってしまって他者のことを見ない傾向を「自己中心性バイアス」と言います。

この傾向が強いと自分だけは正しいと思い込んでしまい「自分はこう思っているのだから他の人もこう思っているのは間違いないだろう」という、まるで自分だけにスポットライトが当たっているような誤った概念にとらわれてしまいます。

この傾向から抜け出すためには常に自分を振り返り、批判的思考を行うという行為が必要となります。批判というと他者を批判したり、行き過ぎた内省的な考え方をして自分が悪いとクヨクヨしてしまうことを想像しがちなのですが、真の批判的思考とはそういう概念ではありません。

誰しも人は推測、推論をして動きます。メタ認知に欠ける人は先ほど述べたように誤った推論をして動くわけですが、営業のためには証拠や実績に基づいた推測が必要になるわけです。

例えば「顧客は〇〇という提案を以前にしたら気に入ってくれた」「こういった手法を使ったら売れたけれでも別の時に別の手法を使ったら気に入ってもらえなかった」と考えて振り返るのが批判的思考です。つまり相手と自分との関係を常に客観的に見ているわけです。

直観的な思考システムだけに頼って動く勘は誰しも使用していますが、これは人が行う簡単な「ヒューリスティックシステム的思考」と呼ばれています。勘に頼るだけではなく、論理的な思考を行い、データに基づいて行うより緻密な思考方法は「アルゴリズム的思考」と心理学では言われています。

勘だけに頼ると単純に物事を見がちですが「なんとなく考えるとこうだろう」と決めつけてしまうのではなく、過去の思考・発想の成功体験、失敗体験やデータに基づく緻密な分析がアルゴリズム的思考です。物事を考える時にこのアルゴリズムに基づいた発想の方が有効なのです。

アルゴリズム的思考はメタ認知概念の中では重要な概念です。何かを売る際には相手が直観でヒューリスティック的思考で物事を考えることもあるでしょう。

しかし相手もメタ認知能力を使っていて「この営業マンはこういう売り方をしていて、以前もこうだったから買わなかった」あるいは「この営業マンはあの時には自分にとって役立つ提案をしてくれたことがある、今回はどうなのだろうか」という筋道だった論理的なアルゴリズム的思考で営業マンのことを吟味していてより客観的に考えていることも多いのです。

それでは営業マンがメタ認知能力を身につけるためにはどうしたらいいのでしょうか。

それは常に自分が行ってきた営業活動を振り返り、アルゴリズム的思考をしていくことが求められます。例えば営業日誌を書くことひとつ取っても、「今日は何件訪問してA社は乗り気だった」と単純に振り返りをするのではなく、訪問して乗り気ではなかった、すぐに相手が立ち去ってしまった時にはどういった要因が働いていたのかを冷静に分析することも大切です。

それは単純に相手が忙しかったからかもしれませんしタイミングが悪かったからかもしれません。

しかし自分と相手との関係をより客観的に見て、何か自分の言動や行動に問題はなかったのか考えてみることも必要です。心理学は失敗したことだけを自分で反省させる学問ではありません。

うまく行った時、なぜうまく行ったのか考えることも必要です。メタ認知能力が低いといつまでも売れた要因は「たまたま売れた」という偶然的な過程と結果を見ることだけに終わってしまいます。

論理的に考えてみて「どうしてあの時は売れたのだろうか」と考える、成功の要因を分析して振り返ってみること、そして売れた理由を考えてそれをまた応用していくという「Do more」(ドゥー・モア)的な発想が大切になります。

売れる営業マンは「今日は何をして結果はどうだった」と単純に考えるのではなく「どうして」「なぜ」という洞察を深めていき、無意識のうちにメタ認知能力を高めているます。

売れる営業マンのことを考えてみます。売れる営業マンは精緻にメモをしています。誰から何を言われたか、そしてどういった対応を自分をしたか書いています。そしてさらに一歩踏み込んで相手と自分の関係がどうだったか、顧客がどういった考え方をしていたのかを緻密なメモの中に書いている人もいます。メモしていなくともそれをきちんと記憶しています。

3 リテラシーという概念
最近、小学校でも「メディアリテラシー」の授業が行われています。メディアやインターネット上に溢れる情報の中から正しいものを取り出し、判断するという能力がリテラシーです。

メタ認知能力は正にこのリテラシー的概念を応用したもので、自分が行ったこと、そして相手の反応はどうだったかという、膨大なデータの中から役立つものを抽出するというものです。

そのためには言ったこと、言われたことを考えるだけではなく、もう一歩踏み込んで考えてみることも必要です。つまり、訪問のタイミングや時間は適切だったか、自分の発言に対して相手はどんな表情や声色をしていたか、態度はどうだったのか等細かく相手の、言語だけではない非言語的なノンバーバルコミュニケーションに着目していくことも大事でしょう。通常の直観的なリテラシーだけでなく、より高次な分析的リテラシーが役立ちます。

4 メタ認知能力に必要なプロセス

(1) 隠れている要因を明確化すること。

人は何気ない会話の中でも上述のように膨大な情報のやり取りをしています。

したがって、営業場面でその問の課題は何だったのか、その時にどんな仮説を立てたのか、仮説にしたがってどんな言動、行動を取ったのか、相手はどうだったのか、相手はどんな態度や言動だっのかを細かく分析していくというプロセスが必要になります。そして相手も同じことをしていると考えた方がいいでしょう。多くの人は直観的ヒューリスティック思考に従って動いています。

ヒューリスティック思考情報処理の手間を少なくしてより単純な経験則だけによって動いています。しかしヒューリスティック思考の中にもアルゴリズム的な論理性が無意識的に働いていることがあります。相手が直観的な観察力だけで自分を見ているだけではなく、こちらも言動、態度等ノンバーバルコミュニケーションで見られているのです。

営業が嫌いな人は営業の時に緊張して声が震えていたり、目が泳いでいたりします。そういった時に相手は必ずこちらを見ています。緊張することは誰しもあり得ることですが、そんな時こそ笑顔で明るく振舞ってきちんと相手の目を見て話すことが大切です。

(2) 推論の根拠について考える

人は様々な情報に触れます。例えば新規訪問先のホームページを見た時にその内容を吟味してから行くことは多いと思います。訪問先の情報を伝え聞いていたり、何らかの手段で知識を得ていることもあるでしょう。そういった際に推論をする能力が必要になるのです。推論が誤っているのか正しいのか、判断することがここでは重要になります。

(3) 推論と実行のバランス

ただ「推論が必要です」と筆者が言ったところで、「簡単に言われてもそんなことは時間がかかるからできない、面倒だ」と思う人もいるかもしれません。しかし自分について、自分と相手との関係について常に振り返り、考えていくことはメタ認知能力を高めることにつながります。

この「振り返り思考」を論理的、客観的に行っていくことこそ推論の能力を高めていくことになります。常に推論を繰り返そうとしてデータの分析ばかりしていて今度は客先の訪問頻度が減ってしまったら逆効果です。「大変だからやらない」という理由を100個探すことは実行をひとつ行うよりもはるかに簡単です。データを分析しながら実行手順について考えていくことは営業先に向かう車中でも電車内でもできることです。

(4) 行動決定

メタ認知能力は、自分の認知的プロセスを適切にコントロールする能力と、頭でわかっていてそれを実現するための方策、行動に至るまでの意志決定の2つに分かれます。

理解していれば必ずできるという単純なものではないので、常にメタ認知的にはこう考えられる、その推論の根拠は何だったのか、常に過去の経験から次に自分の行動を決定するという段階が大事です。

5 メタ認知能力を鍛えるには
メタ認知能力と並んで大切なのは「メタ記憶能力」です。失敗しても成功してもその体験の記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっていたら、いつも偶然にしたがって試行錯誤的に動いているだけになってしまいます。試行錯誤的な行動が悪いというわけではありません。営業は考えているだけでなく、動かなければどうにもならないところがあります。

試行錯誤的にスピーディに顧客訪問をする中で常にメタ認知について注意をしてそれをメタ記憶の引き出しにしまっておくと、だんだんとメタ認知能力が高められるようになります。

イメージ能力を高めておくことも大切です。じっくりとデータを積み上げて分析したり、細かくメモを取るということは誰にでもできることではありません。最初は経験則や勘に頼るヒューリステック的な思考でも構わないので、その記憶を後になってから内省的に分析していくことが役立ちます。そして自分が直観だけに頼っていないか、何度も考え、特に成功体験について振り返りを行うことがメタ認知能力を高めることにつながるのです。

人は自分で意識しているほど自分のことを知っているわけではありません。他者はその人のことをどう見ているのか明確でも、人から見ると客観的にはこういう人だ、ということがあります。メタ認知能力は常に自分を振り返る能力です。自分のことを謙虚だと思っていても人からはそう見られていないかもしれません。また、自分のことを気ままにやっていると思っていてもその人は周囲の感情や動きに敏感で感性が優れている人かもしれません。

人は他者から指摘されないとどういった人間なのかということを意識できないものです。常に他者と自分との関係を意識することは大切な能力です。また、それを他者がやんわりとでも受け入れられるように指摘することも大事です。

6 結語
営業はある意味で過酷な仕事です。しかし達成できた時、そこには大きな喜びが伴います。経営者は第一線で働く営業マンのメンタリティを常に気にかけていることが必要です。

成績を上げられたことについては褒めて、そしてなぜ成功できたのか考えてもらうことが営業マンの成長につながります。営業がうまく行かなかった時にはその理由を冷静かつ論理的に考えてもらうことも必要です。営業マンがあまりにも残業で負担がかかっていないか、それ以外にも心身の状態に気をつけるということは経営者から見た社員への「メタ認知」能力につながります。

営業マンは経営者がどの程度自分を気にしてくれているかを敏感に察知します。筆者が会ってきた経営者はみな優れた営業マンかつ心理学者とも言えます。経営者は常に自社の製品と自社を売り込むことを考えているので、営業マンを束ねるトップです。自社と顧客の関係性についてメタ認知能力を駆使していつもポジティブな内省力を持って考えています。そして経営者がそうやって身につけているメタ認知能力を営業マンに伝えていくことが営業マンを育てていくことにつながるのではないでしょうか。

※ 今回の記事もpdfにしていただきました。いつもありがとうございます。

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医師団体が公認心理師認定資格を作ることの是非

以前から僕は公認心理師職能団体が2つに分裂していることについて、職能団体が統一しなければ公認心理師制度そのものが危機に晒されるという持論の持ち主なのですが、ここに来て、もし医師団体が公認心理師の専門認定資格を作ってしまったらどうなのだろう?

と思うわけです。

思い返すに2資格一法案の時から(従前国家資格として「臨床心理士」と「医療心理師」を創設しようとした試み)医師団体と心理団体は微妙な対立、というか緊張感のある関係にあってなかなかお互いの主張が噛み合わないという印象を受けていました。

資格問題とは直接関係ないのかもしれませんが公認心理師法第42条2項についても主治の医師に対しての守秘の義務を患者がどのような意向であろうと、必ず患者の合意を取り付けて医師に報告しなければならないという意見を見て、意思のある患者さんの合意を必ず取り付けなければならないという医師団体の主張に絶句した覚えがあります。

さて、もし医師団体が公認心理師にかかわる認定資格を創設するとすれば、公認心理師制度に大きくかかわってきた日本精神科病院協会(現任者講習会も主催していた)わけです。

というのも日精協(略称)は看護師、栄養士についても認定資格を作っており、医療にかかわる職種の専門資格を認定していました。

ここで看護師の認定資格を見てみると認定されるのは年間40〜50人と決して多くはないものの、こういった資格をもし公認心理師で作るとすれば、この時期日本公認心理師協会(師協会)と公認心理師の会(の会)が上位資格構想をぶち上げてしまった今、かなりナーバスになっている公認心理師を刺激することになるのは火を見るより明らかです。

結論から言えば僕はこの時期に公認心理師の専門資格を医師団体(医師の職能団体にしても医師の学会にしても)創設することについては「否」という見解を示すことしかできません。

職能団体が公認心理師側で分裂していてあたかも大喧嘩をしているかのように上位資格を作り上げてしまった今、医師団体が専門資格認定を始めてしまったらかなりの緊張状態が、今でも十分崩れているバランスをさらに崩すことになりかねないと感じるからです。

仮に医師団体が公認心理師の医療領域における専門性を高めるつもりで認定資格を作り上げたとしてもそれはまた上位資格問題と複雑に絡まり合う概念になることは必至であり、この制度を混乱させるばかりになると思います。

もし医師団体の専門認定資格ではなく、本当に医師団体が公認心理師上位資格を創設してしまったら「師会」も「の会」もいい気はしないでしょうし、何よりも現場の公認心理師が困惑することになるのは自明の理でしょう。

思うにこの辺りの上位資格問題については以前から注目していた人たちはともかくとして、師会が上位資格を創設した時、何も知らない公認心理師からは「新しい資格ができたからまた取らなくちゃならないのかなあ、またお金がかかるなあ」との相談を受けたこともあります。

僕はすかさず「その必要はないよ」と言ったわけですが、厚生労働省が新設された公認心理師制度の普及に必死になっている時にあたかもドヤ顔で「どうだ、専門性を高めてやったぜ」というような職能団体2つの動きにはげんなりした気分でその動きを見ています。

僕は開業心理師としてあちこちの法人を営業回りをしているのですが、だいたいにおいて臨床心理士も公認心理師も産業カウンセラーも知名度が低く、誰も資格そのものを知らず一般人にとっては「ナニソレ?」状態で、相当に心理学に理解を深めようとしている人しか知りません。

福祉職で公認心理師を取得している人も多いのですが、福祉職が働く現場でも公認心理師のことは誰も知らないことは多いです。

クライエントさんに至っては長年の歴史がある「臨床心理士」の方が有名で公認心理師の名称は知らないことが多いでしょう。

そこで僕も面倒になって、公認心理師の名称を冠したこんなやくたいもないブログを書いているわけですが、自己紹介をする時には面倒になって「臨床心理士です。」と言うことが多く、それでも知らない人たちがかなりの割合でいます。

そこでなお上位資格を作り上げて「○○公認心理師です」と鼻の穴を膨らませるように言ったとしても意味はありません。まず誰もが知らない公認心理師名称と専門性があることを広めていかないとどうにもならないというのが初手だと思います。

「師会」も「の会」も勝手なことばかりをしているという印象を僕は受けているのですが、もしこの上医師団体が公認心理師上位資格にしても専門認定資格にしても作り上げてしまったら、なお現場の公認心理師は混乱するばかりだと思います。

僕はもちろんこの辺りの動きの中枢にはいないのですが、医師団体と心理団体がお互いに牽制し合っているように感じられるような動きは素人ながら肌で感じています。ここでくんずほぐれずしてさらに何かの資格を創設してしまったら悪い意味での三国志にならざるを得ないと思うのです。

さて、市井の一介の心理職としてはこのように感じるのですが、資格ホルダーのみなさんとしてはどのように感じるのでしょうか。

資格商法がひとつまた増えただけでワープア心理職からまた上納金をみかじめ料として支払わせるという意図に取られてしまうのではないかと危惧する次第です。
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「近代中小企業連載第3回 ・営業に生かせる心理学『心理学的な付加価値が営業を成功させる。 』

「近代中小企業」
発行:中小企業経営研究会
https://www.kinchu.jp

(ひなた元原稿)
〇はじめに
どんなに魅力的な商材でもその存在や有用性が知られていなければ売れることはありません。したがって、売るためには「心理学的な付加価値」が影響します。
本連載の中では何度か出てくるのですが、人の認知、情動を変えて行動もポジティブに変化させるには「認知不協和理論」が営業活動の中で大切です。

よく営業で言われているのは「フット・イン・ザ・ドア・テクニック」です。相手にドアをあ開けさせてそこに足をはさみ込むと「自分がドアを開けたからこういうことになっている」という、自分の選択した行動を正当化するためにドアを開けたという小さな行動から、購買行動という大きな行動につなげるまでの一連の流れを説明しています。

〇段階的要請法と認知不協和理論による営業テクニック
実際にフット・イン・ザ・ドアテクニックを無理やり使ってしまうと押し売りになってしまうので、これは論外なのですが、段階的要請法や認知不協和理論を応用したこのテクニックは営業にとっては有用です。つまり、小さなことから承諾を取り、だんだんと大きな要請をしていくということです。

例えば無料でノベルティを付ける、そして安価でもいいから小さなモノを販売する、そうすると相手は「モノをもらった、安く買った」という自分の行動が誤っていなかったということでポジティブに自分の行動をとらえるために、大きな事柄でも承諾しやすくなるということです。常に小さなお願いは大きなお願いにつながります。

例をあげます。最近服飾等の小売店ではいわゆる「売る」押しつけがましい営業よりも顧客優先の選択をしてもらうように心がけています。「どうぞご自由に見学してください」(顧客の自由度が高い)そして顧客が迷っているようだったら「どうしました?もしよろしければ説明させてもらえませんか?」と顧客の意志決定を重視し、顧客が「自分で選択した」という認知が大切になるわけです。

ここで「30分ほど説明させてもらえませんか」と言われたら顧客はあまりの手間に嫌がってしまうでしょう。それよりは「少しお時間いいですか」「10分ほど見ていきませんか?」の方が受け入れられやすいのは当然のことのように思われます。

結果的にその説明が30分になってしまった時、人は自分が費やした時間を無駄だと認めたくないわけなので、購買行動につながりやすくなります。

人間は自分が選択した行動の過ちを認めたくありません。これをザイアンスの「単純接触理論」と組み合わせると硬軟使い分けた営業手法になるのではないでしょうか。つまり、他愛のない挨拶程度でも営業マンが毎回接触してくると「売る」という積極的な行動に営業マンが出なくても顧客は営業マンと接触してきた時間の長さが無駄だったとは認めたくないために購買行動につながりやすくなるでしょう。

単純接触効果は相手が忙しい時間を過ごしているのに無理に面会を申し入れるのは逆効果になります。「たまたま通りかかったので」と名刺1枚受付に渡しておくのでも構いません。不在でもいいのです。

新商品のパンフレットができた、あるいは従来ある商品のパンフレットがマイナーチェンジされて新しくなった、など直接顔を見なくても潜在的顧客は「あ、また来たなあ、こちらが忙しいと思って面会を無理強いしなかったんだなあ」と好意を持った単純接触効果になるでしょう。

これは営業マン自身が「広告」として機能していることを示します。ただテレビのCMが流れているのとは違い、手間がかかっている広告です。営業マンがわざわざ足を運ぶことはっこの手間がかかった広告の効果としては、相手の認知、記憶にとどまり、感情を良好にして次のステップとして面談をしてみよう、最終的には購買行動につながるものと考えられます。

さて、認知不協和理論は大切な営業テクニックで、人は自分の認知(認識=例えばこの人はいい人だ)というものは情動(感情、好意を営業マンと商品に抱いている)、そして最終的には購買という行動に出るのです。これは臨床心理学の最前線で使われている、誤った認知を正しい行動に変える認知行動療法にも応用されています。

また、購買行動に関する認知は、認知不協和理論にも似た、A―B―Ⅹモデル(バランス理論)でも説明できます。例えば、巨人ファンのA君と阪神ファンのB君が仲がいいけれどもどうしてもA君は野球の好みが許せない。そうするとA君は自分の認知を変えて阪神ファンになろうとするかもしれません。また、巨人ファンになるようにB君のことを説得するかもしれません。

以上は比較的前向きな行動なのですが、A君はお互いの認知が違っているという緊張状態を解消するためにB君が嫌いになり、B君との仲を解消するようになるかもしれません。つまり、認知の違いというのはそれほどまでに人の感情を動かすわけです。

「だから」「でも」などといった相手がなかなか納得をしないキーワードを使っても顧客の心を動かすことは難しいでしょう。例えば顧客がいったん「買わない」という言葉を口にしたとしてもその意志を無理やり変えようとするのではなく、徐々に相手の態度変容を期待する方が効率的でしょう。

〇 ポジティブな心理学の活用
従来、心理学は病人の治療のために発展してきましたが、そうではないポジティブな側面にも注目されているのがポジティブ心理学です。あたかも営業マンが治療者のように顧客に接していたら、営業マンの方が上位に立っていて顧客が不快に感じやすいのは想像に難くないでしょう。

人間はネガティブな感情よりポジティブな感情を望みます。そこで、相手が好きなこと、没頭することに話を引き入れていくことは大切なテクニックです。最初から売り込みをかけられるよりも趣味の話や大切にしている家族の話、好きな話題を好みます。

ポジティブ心理学から少し離れるのですが、会話術として上記の説明をより深めて考えてみます。人間の会話には「クローズド・クエスチョン」とそして「オープン・クエスチョン」
があります。営業をするのに「今日は暑いですね」と営業マンが言ったなら「そうだね」と一言返されて終わりでしょう。「暑いと食欲が落ちますね」も「そうだね」「そうでもないよ」の一言で終わってしまいます。

それに引き換え、「オープン・クエスチョン」は話題が広がる会話術です。同じ天気の話でも「今日の天気はどうですか?」と聞くと「暑いね、暑いのは僕は苦手でね、北の方の出身だからね」「そうなんですか、私は南の出身ですけれどもこちらの気候は蒸しますよね」と話が広がります。「食欲が落ちますよね」よりも「暑いと冷たいものが食べたくなりますよね」「そうそう、そうめんとかね」「私もそうめんは〇〇産が大好きなんですよ」等話が広がります。

話を広げて相手との親しい関係を作り上げていくのは営業の基本です。また、顧客は常に自分で選択を行ったという思考を好みますので、そこには「ユー・ミーニング」(「あなた」が主語)よりも「アイ・ミーニング」(「私」が主語)の話し方が好まれます。

読者の方は、販売のために「私はあなたにモノを売りたい」という発想とはまるで逆に感じるかもしれません。「私は売りたい」はどちらかというと押しつけがましく感じられないでしょうか。「私(アイ)はこの商品を〇〇と考えますけれど、どうでしょうか?」と聞いた方が先ほどのオープン・クエスチョンと相まって話はどんどん広がりますし、それに加えて選択権はあくまでも顧客にあるということで、満足度も高まるでしょう。

ポジティブ心理学について触れておきます。ポジティブな感情がまず大切になります。最初から高値で販売を提案されるよりもサービスや品質の積み重ねでその値段になったことを示していく方が受け入れられやすいと筆者は考えます。誰しも不愉快な人生よりも心地よい時間を過ごしたいと思っていることは間違いありません。一方的な押しつけは禁物です。

そしていったん顧客が自社の商品、そして商品そのものでなくても商品が持っている価値に自分が没頭し、夢中になっていけばそれに対する集中性は増します。常にポジティブな感情を持ってもらうことがこの没入状態に関係しています。精神的に健康度が高い人ほどこの没入状態になりやすいことが知られています。

営業マンは顧客の健康度を高めるためのユーモアや相手が興味を引く話題の引き出しを多く持っていることが大切なのはこのポジティブ心理学でも説明できます。そのためには関係性も大切です。お互いに不快な感情「売ろうとする―無理やり売られようとする」という関係性は良好とは言えません。営業以外にも付加価値が多いサービスを提供することが大事になるでしょう。

ポジティブ心理学では人間がいかにして幸せになるか、ウェルビーイングという概念を大切にしています。そこには社会的に良好な人間関係が影響しています。思い描いてみると(例外はもちろんありますが)幸せそうで、人の(社員の)役に立つものを購入したいという顧客は笑顔のウェルビーイングに満ちているわけです。

「営業」というのはただの仕事、というよりはその営業マンの価値観や人生観が強く反映されるものです。営業活動をする中で、自分は正しいことをしている、ポジティブに顧客に喜んでもらっているという感覚、人生の意味や意義をそこに見出すことはとても大切なっことです。そしてそれは顧客にも通じることです。幸福度を達成する上で、なぜその商品が大切なのかを知ってもらうことが大切でしょう。それは大袈裟過ぎないと思うのですが、意味や意義を人生に見出すことが営業活動に通じるということになるでしょう。

ポジティブ心理学の中でも大切な概念は、達成感情です。これも営業マンと顧客双方に通じることで、いいものを売った、いい買い物をしたという達成感情がお互いに生まれたら営業はさらに次の営業につながります。仕方なく買ってしまったというよりも、お互いにwin-winの関係性が大切なのはこのためです。

〇精緻化見込みモデル
精緻化見込みモデルは2つのルートをたどると考えられます。
例えば商品についてとても詳しい顧客がいたとします。詳しいからこそ、周辺情報や他社の製品と比較検討することができる、この顧客は購買行動について「中心ルート」と言えます。関心、興味を持っている中心ルートをたどる人は潜在的顧客として大きな役割を果たすと言えます。

中心ルートの人は商品に対する知識が優れているだけに、世間の評判がどうなっているのか、この商品の雰囲気は、ということについてはあまり関心を抱きません。この人たちが専門的な知識を持っているのならばこちらも懇切丁寧に専門性について説明した方が効果的ということです。

また、商品そのもののことはよく知らない、ですがSNSやインフルエンサー、芸能人等が勧めているから、と周辺からその商品に興味を持つようになった人のことを「周辺ルート」の潜在的顧客と呼ぶことができます。商品そのものに強い関心がなかったとしても「結果的にこれはとても役立った、役立っていると言っている人が多い」ということで周辺ルートの人は知識が増えなくても購買意欲は高まるわけです。

こういった周辺ルートの人たちに対して無理やりに商品の持つ魅力や性能、知識を売り込もうというのは逆効果になりかねません。周辺ルートの人たちは商品の持つ雰囲気や役に立っているというメッセージの方を重視しているからです。ただし、こういった人たちは雰囲気で選んでいるので流行が変わると中心的な興味も異なってしまうことも十分に考えられます。その商品を売りたいのであればその流行が続いているうちに、そして流行が変わった場合には別の商品を売っていくという工夫が必要となるでしょう。

〇おわりに
今回は、商品よりも商品に対してつけられる付加価値が大切ということについて述べてみました。人は認知、情動、そして認知や情動に関連したポジティブな感情についてを中心に書きました。付加価値というのは本稿では営業マン自身と、営業マンの持つ魅力、そして営業マンの持つコミュニケーション能力です。これら全てを一致させることは難しくても、その強度が強いほど営業マンは「売れる」営業マンとなっていくことが期待されるのではないでしょうか。

※いつも拙文を校正の上、綺麗なpdfにしてくださってありがとうございます。

近代中小企業「営業に生かせる心理学3」

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