1 知ることから始まる

元々は1970年代から、社会心理学者で依存症の問題に取り組み、研究をしていたクラウディア・ブラックによってこのアダルトチルドレンという概念は提唱されました。

日本でもトラウマ・サバイバーズ・ユニオンがACと深いかかわりを持っています。

クラウディア・ブラックのトラウマ理論はその治療方法とも深いかかわりがあります。(後述)

繰り返しトラウマ記憶を想起して述べることはインナーチャイルドの成長に役立つと言います。

アダルトチルドレン、ACの概念は社会福祉から始まったもので、精神医学、臨床心理学の立場からは決して正式な疾患単位として認められることはありませんでした。

しかしあまりの症例数の多さに精神医療現場でもアダルトチルドレンの存在を無視することができなくなり、カルテの表表紙や症例研究にもACと書かれるようになってきました。

しかしACそのものの名前を疾患単位として保険制度の中に認めることは今後もないでしょう。

アダルトチルドレンという概念は確かに存在しています。

そしてそのために苦しんでいる人々も確実にいるにもかかわらず現代精神医学の中では黒子のような存在として扱われ、他の病名で精神医療を受けています。

ACの人たちはその生育歴からストレスへの脆弱性を抱えることになります。

遺伝子病と言われている統合失調症、双極性障害も遺伝子を持っていても、発症しないこともあるでしょう。

また、PTSDの教科書でももはや服薬治療が必要なくなった精神的遺伝子疾患の存在が語られていますり

痛めつけられた経験はさまざまな疾患を引き起こします。

心身症、自らの体の痛みを言語化できないアレキシサイミアは弱体化させられたレジリエンス(打たれ強さ)の中で発症しやすくなるでしょう。

ACもPTSDも身体にフラッシュバックを起こし、さまざまな痛みを引き起こすことがあります。

虐待を家庭の中で受けて育った年月だけその 人は弱っていくのにもかかわらず、子どもには到底自立は望めません。

元々持っていたはずの高い能力や資質をへし折られることによって引きこもりになることすらあります。

社会性やコミュニケーション能力という芽すら摘み取られてしまいます。


2.逃れることも大事

さて、アダルトチルドレンの人たちが発達して原家庭の軛から逃れたとき、恋愛をしようとすると、DVモラルハラスメントの相手に捕まって酷い目に遭う事も多いわけですり

だいたいにおいてこういった相手はアルコールなど物質依存、ギャンブルの行動問題を抱えていたり、ACの人は強引な相手に絡め取られてしまう。

そうすると恋愛そのものが機能不全の連鎖となり、共依存を引き起こしやすい。

いい人たちは強引でもなければ無理もしない。

ACの人たちは抑え付けられた分だけ従順になっている。

心理学の教科書に載っている症例では、いつもニコニコしていて美人の受付嬢AさんがDV男に無理やり交際を迫られて受け入れざるを得なかったという例がありました。

いい人は紳士的だから、すぐに引き下がる。

この事例ではDV男が交際してくれなかったら死ぬとAさんを脅していました。

3.自信回復過程

ACの人たちは自信を喪失しているから、いい人にはふさわしくないと思って交際を申し込まれても断ってしまいます。

だから強引な相手が有利になるのです。

この負のエネルギーにACの人が巻き込まれないためには、まずは自分がAC、アダルトチルドレンと自覚するということが一番でしょう。

弱さを知っているから巻き込まれないように防衛することができればそれは何よりの強みになります。

自分がACということに無自覚な人たちはあまりにも弱く、また機能不全家庭を作り上げていかなければ気が済まないのです。

傷つきの裏にはアダルトチルドレンの人たちが自分のインナーチャイルドとの対話を必要としているという事実があります。

幼いころの自分、虐げられて育った自分に対して優しい言葉を果たしてかけてあげられるでしょうか。

もうそんなに苦しまなくていいんだよ、大人の自分がインナーチャイルドを優しく抱きしめて頭を撫でてあげて慰めることは可能でしょうか。

それが可能となった時、アダルトチルドレンの人は自分の未来への可能性を信じることができるでしょう。

暖かくて包まれた安心感の中で優しいパートナーに恵まれて恋愛をし、結婚をして機能不全の家庭を自分はもう作らなくて済むようになります。

子どもに優しくできて、粗暴なパートナーから弱い存在を守らなければならない必要性にも迫られないわけです。

4.回復のためのプロセス

翻ってカウンセラーはACの患者さんに何をすることがきるでしょうか。

小さくてまだ幼いインナーチャイルドと対話して、徐々に育てていくことはカウンセリングの中で可能です。

小さなあなたは幸せになる権利があるんだよと繰り返し伝えていうことが基本で、そして何より必要性が高い事柄でもあります。

カウンセリングルームの中は安全だと保証すること、ここではいくら泣いても大丈夫だということ。

インナーチャイルドの成長と癒しのためには催眠が有効な場合があります。

インナーチャイルドを成長させていくのは精神療法家とクライエントとの協働作業となります。

催眠でなくともACということを受け入れてくれる場所、自助グループへ参加できる人々はまだ僥倖でしょう。

外に出られない、自助グループが存在しない地域に居住する人々もたくさんいます。

だからこそネットでの繋がりも大切なものとなってきているのが実情なのです。


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