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○ 公認心理師資格オンリーの人のための就転職術

1.はじめに

公認心理師ホルダーオンリーで心理職に就転職をしようとする人もいます。きっとこれから増えて来るものと予想されます。例えばこれまでやっていた福祉関係の職業はどうにも待遇が満足がいかない。金銭的に(or労働時間)を考えるとどうしても心理職に転職したい人がいたとしましょう。

元々臨床心理士資格を取る条件がなかった、また新卒者で臨床心理士の条件を満たしているのに公認心理師は不合格だったなどのなんらかの理由で取らなかった、そういう人はどのようにして心理職に就けばいいのでしょうか?

2.新卒者の場合

今はまだ過渡期、ハローワーク求人を見ると公認心理師の資格の方だんだん幅を効かせているようです。臨床心理士は「きちんと今年取ります」と言っておけば大丈夫と思います。

ただし厳しい事業所だと(特に病院など)は両方資格を取得していることが求められていることが多いようです。

3.他職種から心理職への転身

これがなかなか難しい問題で、心理テストやカウンセリングの経験がない、しかしながら都会でもスクールカウンセラーに公認心理師オンリーホルダーも徐々に出てきているようです。

就職、転職というのは経験値、志望動機、そして一緒にいて働きやすい人かどうかを見ます。

以前書いたのですが心理の人は40代になっても志望動機を述べるのがとても下手です。「家族の面倒を見るのがひと段落したから就職したい」というような「遊ぶ金欲しさです」と犯行動機に似たような志望動機では落とされてしまう可能性が高いでしょう。

ですので他職種でも志望動機をきちんと言えて、これから就職したい事業所と似たような職務経歴を持っている場合は就転職は有利と言えます。

例えばこれまで社会養護や放課後デイサービスで情緒不安定な子どもの心理的支援を行っていたり、発達障害の子どもの面倒を見ていた、などの経験は教育領域や小児領域で大きなアドバンテージとなるでしょう。

医療領域を見てみます。小さな病院やクリニックだとそれほど待遇がよくない場合も多いです。しかしながら保険点数請求の関係で公認心理師ホルダーは優遇される傾向を最近の求人情報を見ていると思います。

アルコール依存症減酒の治療、ナメルフェンの服薬教育ににかかわる専門職は心理では公認心理師のみです。

福祉領域だと公認心理師ホルダーが保険点数となっているので公認心理師も必置資格となっていることが多いです。

産業領域でもストレスチェック実施者は公認心理師等で、臨床心理士は入っていません。

さて、司法領域を見てみましょう。僕が公認心理師の就職に関する取材を始めた2019年ごろは「公認心理師を取得しようがしていなかろうがその後のキャリア形成には関係ない」と明言していた最高裁家庭局や法務省矯正局は公認心理師養成課程となる7条2号施設になりました。

どの省庁でも優秀な人材が欲しい、そのためには国家総合職としてある程度の倍率の中からいい人物を採用したいわけです。

実際、地方の家庭裁判所では協議会で公認心理師になれることを優秀な人材確保に活用できないかという論議がされていました。

そして2021年になると家庭裁判所も法務省も「公認心理師を取得するぐらい心理の勉強に熱心だった、取得したいと思うぐらい勉強したいという人は積極的に採用するかもしれない」と大きな転換点がやって来たように思いました。

公認心理師制度を創設した厚生労働省は臨床心理士資格はどこ吹く風になってしまい、厚生労働省管轄の就職は臨床心理士から公認心理師へとバタバタと変わっていきました。

政府や10省庁を超える官庁で構想がある国営カジノについての法律(IR法)のギャンブル依存治療者は(マッチポンプ的な政策で僕はどうかとも思うのですが)臨床心理士の記載はなく、公認心理師にも依存症治療を任せるようになっています。

臨床心理士は今は心理職就職市場の中で重宝されている花形資格であることは間違いありません。しかしながらだんだんとそれが公認心理師ホルダーに置き換わっていることは事実です。

3.おわりに

心理職はいつも書いているように常勤の仕事がない、待遇が悪いのないない尽くしであることは事実です。

それでは福祉職は高待遇かというとそうではなく、心理職と同様に非常勤掛け持ちをしている人も多いです。

心理職の採用は資格採用だけではなくてスキル採用のところもあります。これまで高齢者領域しか知らなかった心理職が乳幼児の発達検査を知らずして転職をすることは困難です。

僕の知っている福祉職の人は自分で勉強したり、講習会に熱心に出たりしていて発達検査のスキルを身につけ、それで心理職&福祉職の二足のわらじを履くことに成功しました。

どうやったら就転職できるかというのは、上述したように資格だけよりもスキルや人物評価にかかわってくるところも多いです。

そういった意味では臨床心理士単独ホルダーや臨床心理士、公認心理師ダブルホルダーの人にもぜひ頑張って欲しいと思うところです。
photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_