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○ 公認心理師の将来性

1.はじめに

何度も心理職は給料が安い待遇が悪いとばかり書いていたのですが、さて、公認心理師には将来性がないのか、せっかく国家資格になったのにそのままなのかということについて考えてみると、そればかりではないということを考えてみます。

いわば思考実験みたいなものですが、公認心理師として働く心理職の待遇について、将来性が明るくなっていく可能性も大いにあるだろうということです。その理由について考えてみます。

2.将来性がある理由

これには何十年もかかる課題になるかもしれないということを最初に言っておきます。

学部からの公認心理師養成課程純粋培養組が公認心理師となるのが2024年、ここをターニングポイントとして公認心理師の質は大きく変わることが予測されます。

公認心理師は実習が多いだけに学部段階でGPAでかなり絞られます。しかしながら心理職の実情は厳しいもので、これまでも学部段階で臨床心理ゼミや臨床心理大学院を出た後に一般就職をする人たちはいました。

しかし今回はそれよりもかなり母数が限られてくる、精鋭集団になってくるでしょう。

2023年までに公認心理師を取得した層と2024年以降に取得した層とは平均的な質の点でかなり上がっていくことが予想されます。

しかも数が少なくなるでしょう。これまで臨床心理士は1300人程度が毎年の合格者でしたが、2024年からは公認心理師については1000人足らずの数値になることが十分予想されます。

「大学院を出た、試験に受かれば心理職」→「学部でなんとか公認心理師課程に入れるチケットを手に入れた、終わった、大学院に入ることを決めた、大学院卒業後、心理職になることを決めた」と臨床心理士よりも踏まなければならないステップが多いので「少数精鋭」になるのではないかと思うのです。

3.現在〜2023年の公認心理師は?

僕も含めてですが、2024年になるまでは純粋培養組ではないということで、それなりの目で見られることにはなると思います。

ひどく穿った見方をすれば「あー、あの年代に資格を取った人ねー」ですが、先人は常に後進の育成のために存在するとも思っていて、多くの医療関係職の職能団体倫理規定にも後進の育成は理想追求倫理として明記されています。

大学教官も実習先でも公認心理師がいないと新人が公認心理師にはなれないので、そのためのステップとして僕らが活躍できるとしたら、それはこの制度創始の大きな役割を果たしていくことになるでしょう。

世代は必ず入れ替わります。公認心理師がどの程度のクオリティを持って育って行き、10年後、20年後にどうなるのかは楽しみです。

4.阻害要因とその解決策

⑴ 歴史的意味

多職種連携でやっていきたいのに、ここまで年数が経ってしまうと、もう他の職種にかなり独占されている領域へ参入していこうとする領海侵犯は縄張り荒らしと取られません。

しかしながら医療領域はこれから高齢社会が進展していき、大きく変わりつつあります。

政策がどのように変わっていくかによりますが、少子社会の中で少ない子どもを大切に育てること、それから高齢者や高齢者福祉に関与していく人たちのメンタルケアはかなり大きな課題になっていくと思うのです。

そこに活路を今後見出していくことはできないかと思っています。

個人的には僕は賛同できないのですが国営ギャンブル構想、IR法にはギャンブル依存への公認心理師の関与が明記されています。

新しい事業、新しい時代変遷とその課題に公認心理師が積極的に関与することには大きな前進があると思っているのです。

⑵ 職能団体分裂

これは公認心理師制度の生死を賭けた課題です。行政は公認心理師全体の政策を前向きに考えていますが人手はいくらあっても足りません。バラバラの職能団体がバラバラなことを言っていては何も解決しないでしょう。

生臭い話ですが柔道整復師が国会議員を選出できたように心理職を全面的にバックアップしてくれる政治家が出てきた時に何か変革が出来るかもしれません。

惜しむらくは河合隼雄先生御大が亡くなられた後に河合先生に代わるような大物臨床心理学者の世代間継承ができていないことです。

何事も不可能と決めつけるということはできないのですが、心理から国会議員が出るということは大変可能性は薄いことです。

せめて大きな味方をしてくれる勢力が政界にあればとも思っています。

そして上位資格にかなりイラついているのも何十回も書いているのですが、勝手に各々の職能団体が適当な上位資格を作り上げたら、まだできたばかりの脆弱な国家資格を揺るがすことになると思うのです。

敵を内部に作るようなことはやめた方がいいと考えます。キャリアポートフォリオなんぞは例えば看護師が就職してからどんなキャリアポートフォリオを経て心理職になったかは全くできなくないでしょう。

5.おわりに

マイナス面もありますがさまざまに考えるとこの仕事の将来性はあり、待遇面でも徐々に良くなってくると信じたいです。レベルの高い後進がレベルの高い心理職として働いて欲しいと願っています。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_