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しんどいカウンセリングをしていないか?

1.はじめに

昨日の続きです。心理職にとってはカウンセリングという日常繰り返される営み、それがクライエントさんにとってしんどいと思われたら、また、苦しいと思われたらそれはいったいクライエントさんのためになっているのでしょうか。僕自身の体験を振り返って、また、聞いた話などを混じえて考えてみたいと思います。

2.本論

⑴ カウンセリングでしんどい思いをさせていないか?

これはある程度やむを得ないこともあるのかもしれませんが知っておくべきことでしょう。僕が知っている、主に思春期の子たちは精神科・心療内科に行く時に泣きながら行って泣きながら帰っていました。

ただでさえ敏感な感性を持つ思春期の子たちにとっては「精神科・心療内科」というのはそれだけで敷居が高く、治療を必要としていてもそのスティグマ(烙印)を押されたよう、行かなければならない自分の影に怯えていることがあります。

精神科では何を聞かれるのか、薬は精神に影響します。薬を医師からの懲罰のように感じている子たちさえいましたが、「カウンセリングを受けた方がいいね」と優しい医師が言ってもカウンセラーは精神科の添え物のようで、カウンセラーのように傷つけない、相手が受容してくれる相手でも恐怖の対象になるかもしれません。

大人でもそういう人は当然いるでしょう。カウンセラーは「心理至上主義」に陥りやすいのですがこういった人々にとっては病院で待たされて長時間滞在して薬をもらうのにまた待たされてカウンセリングまで付録につけられるという侵襲性が伴っている、ということを考える必要があるのかもしれません。

⑵ 自らに直面化するのカウンセリングという行為はつらい作業である

これも昨日書いたことと共通するのですが、自分自身の傾向や性格と向き合うというのは大変に辛いことです。

心理職の人ならばスーパーバイザーについた経験はあるでしょう。あまりにもサディスティックな扱いを受けたというなら別ですが、クライエントさんの見立て、そして自分がしてきた面接についてスーパーバイザーと真正面から対峙して緊張した覚えはないでしょうか。

何人かのスーパーヴィジョンを僕も受けたのですがかなりの緊迫感を持ったスーパーバイズを受けた覚えがあります。

自我がしっかりとしている(方が望ましい)カウンセラーですら、鋭く切り込んでくるスーパーヴィジョンに辛い思いをして、時に泣きながら帰ってきます。

これがクライエントさんだったらどうでしょうか。カウンセリングでカウンセラーが「あなたはこういう人だよ」と例えカウンセリング中に決めつけられなくてもハッと洞察に達して落ち込むことはきっとあるでしょう。 

その気持ちは十分に受け入れなくてはならないと思います。僕自身そうやって知らず知らずのうちにクライエントさん、患者さんに辛い思いをさせ、にこにこしていつも来ていても本当は気落ちしている方々、そしてもう面接に来なかったりすることは多いのではないかと思います。

ドロップアウトした患者さんは僕も数多く経験して来ました。その時に漫然とまた次の仕事に取りかかって振り返りをしないことはカウンセラーとしてどうなのかと自戒を込めて思います。

⑶ カウンセラーは信用されているか

カウンセラーにとってクライエントさんの信用を得ることは何よりも大切です。カルテを見ながらでも、多くのクライエントさんとの面接をしていると記憶がおぼろげになってしまうことが(僕には)たまにあります。

それは面接後に自分が「この患者さんならばこういう思いをしても当たり前だろう」と思って書き忘れていて、そしてそのことこそがとても大切な事柄だったりするのです。

クライエントさんにとってはとても大切な、自分だけの宝物のような秘密をカウンセラーに話していたのにその気持ちを軽く扱われるなんて、とカウンセリングが信用できないと思うのも無理はないでしょう。

僕自身自分を振り返ってみるとカウンセラーが信用されないと思うようなことは多々あったと思います。「薬は怖いからもらってから実は一度も飲んでいません」とカウンセラーだけに話したはずの事実を医師に伝えなければならないと思った時に息が詰まるような思いをした心理職の方はいないでしょうか。

「インフルエンザで熱がありましたが今日は我慢して来ました」と言われたらどうすればいいのか、このコロナ禍の中で同じような経験をした心理職の方もいると思います。

3.おわりに

カウンセラーはカウンセリングという行為でクライエントさん、患者さんを傷付けてはならないのは事実ですが「誰がカウンセリングを希望しているのか」(往々にして本人ではないこともあります。)にも気をつけなければならない隠されたニーズが存在していることもあります。

その人の人格を大切にしながらカウンセリングを行っていくのは実に難しいものだと日々痛感しています。

photo by ᴷᵁᴿᴼ' @PhotoKuro_